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53ch仲良し同盟コミュのみんなでリレー小説しねぇ?

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 こんにちは、笹こと今昔笹ノ葉物語です!( ・∀・)ノヤァ

皆様方各々が日々日常を楽しんでいるとおもいます。
ですが、53chの同志達との交流が減ってきている昨今、私笹ノ葉は寂しさと退屈を覚えるようになりました。(´・ω・`)
 そんな中わたくしは、一つの企画を思いついたのです!
それは、この53ch仲良し同盟内にて、みなさんとリレー小説をして触れ合おうというものです。(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!! (`・д´・ ;)
 なぜリレー小説?とお思いの方も居ると思います。
 なぜか、それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「思いつきです」w(゚Д゚;)ナン・・・ダト?
とある女性53ch同志と話しているときにリレー小説の話題となりこの企画を思いつきました!

 というわけで皆さん、私と一緒にリレー小説をしましょう!トモダチ>(゚∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀゚)ノ

 難しいことは一切ありません
 ただ、幾つかのルールを守っていただければ、結構です。Σd( `・ω・´)

 ルール: 1、連投はご遠慮ください。何度でも書き込みOKですが、書き込み後に、同じ人物による連投を禁止します。皆さんの自由な書き込みの幅を広めるために一カキコ一回にしましょう^^
       2、ストーリーのとんでもない方向への飛躍も出来れば控えるようにしましょう。前に書き込んであるストーリを把握した上での書き込みをお勧めします。ストーリを飛躍しすぎると、収拾がつかなくなります。結果何がなんだか分からないストーリーになる可能性があります><;
       3、物語を作る上で、オリジナルキャラ等の登場はOKとします。そのオリジナルキャラにたいして、第三者による設定追加もOK ただし、オリキャラの増やしすぎや、設定の増やしすぎは控えましょう。(設定なし・無名キャラや、一言喋る様なちょい役系キャラは除く)ルール2と同じように、収拾がつかなくなったり、「このキャラクター誰だっけ・・・」っというような可哀想なことが起きかねますのでご遠慮ください。(要らない子と呼ばれる様なキャラは生んじゃダメです><;)私個人としては、皆さんの生んだキャラクター一人一人を愛していく所存ですし、皆さんのどんなキャラクターを生むのか興味があります。ですが、なにぶん記憶力に欠陥がございます><;そういう事もございますので、どうか悪しからず!(目安として、一人一名までオリキャラ制作OKとしますが、ここでこのキャラは要らないと思ったならば、出来るだけ登場を控えてくださるとうれしいです^^)
       4、他人の誹謗中傷等はやめましょう。これは一番守ってください!こういう書き込みは書かれた方も見ている方も気分が悪いだけですので、絶対にやめてください!(ここに居る皆さんはこのルールを守れる方々と私は信じてます^^)
 その他につきましては、皆さんの意見等を聞いていき、更なるルール追加・変更とうしていきたいと思います。連絡方法は、こことは他に連絡用トピックスを用意するので、そちらでどうぞ。

 あと物語を書き起こしやすくするために、勝手ながらストーリー背景を少しだけ考えさせていただきました。(m´・ω・`)m ゴメン…
 気に入らない場合やここをこうした方が・・・って方が居ましたら、同じく連絡用トピックスに書き込みください。(なるべく早いうちに言ってくれた方が助かるかも)
 

 
〜物語〜
 舞台となる世界は、私たちの居るこの世界、セルフィーチャンネル旧バージョン(53chがまだあったバージョン)です。
主人公は私達、53chの同志全員となります。

 いつもと同じように、皆平和にチャットを楽しんでいる時に、それは起こりました!
前触れなく突如発生した世界の崩壊、私たちの意識は、気づけばネットの中に閉じ込められていました。
 何が起こっているのかも分からず、慌てふためく53chの仲間達
 チャットルームから出ると、そこに広がっていた風景は、同じように閉じ込められたユーザー達と、雲をも突き抜ける程、高くそびえる一本の塔
その塔こそ、私たちの知っているはずの1ch〜100chのチャットルームの変わり果てた姿であると知り、彼らは何を思うのか・・・
そして、なぜ世界が崩壊し、彼らをネットの世界に閉じ込めたのか。
その謎を解くことが出来るかいなか、全ては皆さんの想像力と発想にかかっています。ハッピーエンドにするも、バットエンドにするもあなた次第。
 さぁ皆さん、皆で力を合わせて、このストーリーを完成させましょう!!


                                                     以上今昔笹ノ葉がお送りしました
 

コメント(43)

「誰かいないのか!?」 「いたら返事をしてくれ!」
叫び声は空しく、このフラットな二次元空間に響きわたる


青年たちがどれ程声を絞り出し叫ぼうが、どれ程ルーム内を走り回ろうが、人影などどこにも見当たらない


ふと、シマショーは何やら自分の体をキョロキョロと確かめ始めた
「なぁ陸・・・なんか疲れないか?それに喉も渇く」
そんなシマショーの問いかけに、陸は頭を傾げた
「何言ってるんだよ・・・これはネットであってリアルじゃないんだ! 
  疲れ、ましてや喉が渇くなんて感覚あるはずが―」


陸は体に違和感を覚えた。
否本来なら、とうに気付いていただろう。
だが、心はその違和感を受け入れられずにいたのだ。
「そんな、まさか・・・」


無理もない、彼らは突然この場所へとやって来たのだ。
突然信じられない様な怪現象、しかも頬を抓っても痛みがあるときたものだ。それを『はいそうですか』と受け入れられる方がどうかしている
「確か此処は非現実(ネット)だ・・・俺たちの知っているセルフィーチャンネルだ」
シマショーは続ける。
「でも、俺たちの本来の体・・・現実(リアル)はどこにある?陸、お前という体(リアル)は今、どこにあるか意識出来るか?」


『俺たちの“現実(リアル)”は・・・この“非現実(ネットワーク)”の中にある・・・!』


陸の顔から、血の気が引いて行くのをシマショーは見た。口をパクパクと開き、今にも崩れ落ちそうである。本来ならばそんなアクションは実装はおろか存在すらしていない。
しかし現実に陸の顔は青ざめているのだ。
シマショーも同じだ。平然とはしているが、内心不安で押し潰されそうなのだ。
だが、シマショーはそれを表には出そうとはしなかった。
表情にも行動にも出さなかった。
『俺たちの現実(リアル)は非現実(ネットワーク)の中にある』

自らがそう感じ、そしてまた口にした事ととはいえ、にわかには信じられないことである。


見渡す限りの平原にそびえたつ塔…
どうやら、リアルである自分たちの気配はそこからするようだった。


「何やら不気味だな…」
シマショーはその塔を見上げながらどうしたものかと思案する。
しかし、周りに人影もないことから考えると選択肢は一つしかないと思われた。

「行ってみるか。」
シマショーは振り返り、陸に向けそう続けた。

「ああ…」
青ざめた表情はそのままに陸はシマショーの提案に頷く。

確かにここに突っ立っていてもどうしようもないな…、陸は自分の頬を軽くぱちんと叩き先に歩きだしたシマショーの後を小走りで追いかけた。
 一方その頃・・・

 
 「どうしてこうなった・・・;」
その人影は物陰に隠れながら、そう口にした。
一見彼女という呼び方が相応しい姿をしているが、それは遺伝子学的上そう呼ぶべきではない。
そう、彼は「男だ」


 そんな彼の目線の先には人の集まりができていた。彼らは同じように、この世界に閉じ込められた人間たちだろう。
その中には、何が起こっているのか分からず、パニックになっている者、冷静に情報を交換している者、はたまた「二次元入りしたぞ!」と喜んでいる者までいる。


 そんな集まりから彼が隠れる理由、それは
「こんな姿で人前に出れるかょ・・・」


 このセルフィーチャンネルをプレイするとき、彼は確かに巫女服や着物などの服装をし、髪型は基本長髪だった。
だがそれはアバターにさせていた話だ。現実の彼は普段、そんな格好などしない。というかしたことすらない。
しかし、気付けば本当に巫女服(しかもミニスカ)を着た状態、そして髪型も銀色の長髪となっている。おまけにネコミミ・・・
本物の女の子ならば喜ばれる格好を男が、しかも自分がしているという・・・

 
 「くそう、こんな姿でinしてた自分を恨むぜ!マイルームにも戻れないし・・・これじゃあ着替えることすらできない・・・しかもこの髪、本当に頭皮から生えてきてるし・・・」
彼は蹲まり、今にも不安で押し潰されそうな声で唸る
「一体どうなっちまったんだ・・・この世界(T T)」

しばらく隠れていたがいつまでもこうしているわけにもいかない。

「といっても、どこか行く所もないしな(;´Д`)」

何度目かの溜め息をついて、ヨロヨロと立ち上がる笹ノ葉。
巫女服がサラサラと気持ちの良い音を立てた。
その音が、沈んだ気持ちを少し和らげてくれる。

「とりあえず知り合いがいないか探してみようか・・・な?」

前を向いた笹ノ葉の目に、キラキラとした輝きが映り込んだ。
球体のような金色の光がフワフワと浮いている。
ポカンと見つめたままの笹ノ葉の前をクルッと1回転すると、
光球は漂うように動き始めた・・・


それは、笹ノ葉をどこかへ誘うようにゆっくりと、
建物の並ぶ街の方へ流れて行くのだった

後を追う笹ノ葉。その歩みは

コケッ ずべしゃっ!
「痛い!><」

まだちょっと頼りないのだった・・・
「大丈夫?」

躓いた笹ノ葉に光球が心配そうな声色で話しかける。


「え?」

フワフワ漂う光球を目で追い、
そして笹ノ葉は驚きの声をあげた。


「まぅさん…?!」

いや、くまさんって呼んだ方がいいのかな?
以前53コミュのトピにそう呼んでくれと書き込みがあった事を思い出し、すぐ訂正しようとした。
…が、今はどうでもいいことのように思えて口をつぐんだ。


「ちょっと待って…;;
一体、どうしたの?なんか、すごく…小さいです…」


二次元化したことさえ驚きなのに、まぅはそのさらに上をいって小さくなっていたのだ。
陸々とシマショーがしばらく歩いていると、前方のほうに見慣れた姿の人を発見した。
「なあ、あれってもしかして…?」
「もしかしなくても、だな」
陸々は嬉しさのあまりに駆け出し、シマショーはやれやれといったふうに友人の後を追った。

「お、陸じゃん♪」
「やほほー、陸」

「兄者に姫!やっと会えた〜><」
「こんにちは、ぁゃさんに〓かずきさん」

「こんにちは、シマショー」
「こん^^」

お互いに挨拶を交わして、陸々とシマショー、ぁゃと〓かずきが顔を見合わせた。
「陸はどうしてこんなことになってるのかわかる?」
兄者は不思議そうに頭を傾げて質問した。
「うー、俺らもよくわかんなかったからいつものメンバーに会おうと思ってるんだよね」
「そっかー、陸も知らないかー」
姫が困ったような表情を浮かべていた。

しかし、陸々は姫の表情よりも、その手に持っている大きなものに気をとられていた。
先程、遠目からでも認識できたのは何を隠そう、この大きなおでんであった。
「ねぇ、姫…(^-^;)」
「うん?どったの?」
「そのおでん…―――」
「ああ、これ?」
姫が手に持っている人の大きさほどあるおでんを軽々と持ち上げて見せた。セルフィ内でもでかいと思っていたが、実物は何とも言えない威圧感がある。
「なんか持ってたw」
楽しそうに笑う姫に陸々もつられて笑う。
「それって、食べたらどうなるの?」
その言葉に姫は、えっ、という声をあげる。
「まだ食べてみてないけど、どうなんだろう…? 恐いから食べないほうがいいと思うけど」
食べたいなら食べてもいいけど、と心配そうに見守る姫に、次は陸々がえっ、と首を傾げる。
「ただなんとなく思っただけだから、別に食べたいわけじゃ……」
「良かったな、陸!腹空いてたからちょうど良かったじゃないか!」
「おうぃっ! これはまずいだろう、つか恐っ!!」
「遠慮せず食え(にやにや」
シマショーはいつものノリで食べるように促してきた。
目の前に出された巨大なおでんを見つめながら、陸々はぽかーんとした表情になる。
(どうする、俺…)

 「ごめんw冗談だから食べなくてもいいよw」
姫は笑いながらも止めに入ったが、シマショーは食べさせる気満々。
どのようにしてこの化け物(おでん)を陸に食べさせようかと、その頭で企んでいるのが分かる。
ニヤニヤと嗤うその顔を見れば、自分の為にならない事を企んでいるだろうと理解する陸なのであった。
 

 「そういえば、紫樹さんと笹、それにまぅさんはどこにいるんだろ?」
ぁゃのその言葉に、一同はキリッと顔を引き締める。
陸は恐らく、その言葉に救われたと思っただろう。
「心配だね・・・皆無事でいてくれるといいけど」
と言う〓かずきの頭の上には、汗の吹き出しが表示されていた。
「俺たちも周辺を探してみたけど、会えたのは陸とシマショーだけだったしな・・・」
聞き込みもしてみたんだが、と手がかりを得られなかったことをぁゃも同じ吹き出しを表示しながら語る。

 
 そして、沈黙・・・
全員の頭上には「・・・」と、吹き出しだけが虚しく表示され続ける。



 そんな沈黙にたえかねたシマショーが檄を飛ばす。
「えぇい!四人とも会えたんだ!残り三名、なんとか見つけれるさ!」
「でもここだけでも広そうなのに、そう簡単に見つかるのかなぁ・・・」
陸がシマショーの言葉に水を差す。
「あのなぁ・・・」
シマショーは呆れ顔になるが、すぐに整える。
「心配なのは分かるが、行動しか今の俺たちには無い」


 「行動って・・・一体どうすんの?」
陸は理解できないのか、顔を傾けた。
「情報がない以上、やはり情報を集めるしかないんだ」
シマショーは続ける。
「どこか人の集まるところ、例えばセルフィータウンとかに行けば、三人が居るもしくは、手がかりがあるかもしれない」
そしてあわよくば、今起こっているこの現象の情報もあ見つかるかもしれないとシマショーは語るのだった。


 「確かに、セルフィータウンなら人が多いかも」
「うん、決まりだね!」
ぁゃそして〓かずきは、顔を見合わせ頷きあっている。


 「でもシマショー、タウンにはどう行けばいいんだ?」
陸の素朴な質問に、シマショーは固まる。
今まではワンクリックで行けていた本家セルフィータウンも、今となってはクリックをすべきリンクすら存在していない事に気づくシマショー。
しかし大見栄を張った以上、シマショーは引き下がれない。


「俺の野生の感が、こっちだと言っている」


そう苦し紛れだが、言って指をさしたのは、草原の遥か彼方・・・天を貫くあの塔の方角だった。
「野生の・・・」
「・・・勘?」

ポポ( ゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン…

           (゚ー゚;)ウン


「いや、勘と言ってもちゃんと根拠はあるよ?!
 アレだけどこから見てもわかる建物なら、誰しも目印にするものさ。
 それに、自分達の気配・・・とでもいうのか、不思議な感覚をあそこからは感じる。
 とりあえず、あそこを目標に目指すのは悪い選択肢じゃないと思う」
「あ、うん。そうか。言われて見ればそうかも」
「そっか、そうだね。シマショーそこまで考えてたんだ」
「野生の勘にはびっくりしたけどねw」

陸々、=かずき、ぁゃはそれぞれ納得したようにうなずく。
さりげなくホッと溜め息をつくシマショーであった。


とりあえずの目標が出来た一行が、いざ歩を進めようとした時、とつぜん周囲の空気が変わった。
心なしか空から降り注ぐ陽はかげり、気温も下がったような感覚が肌をさらっていく。

「ねぇ、何か変な感じ・・・しない?」
ぁゃが辺りを気にしながら、つぶやく。
「うん」
「ああ」
「え?う、うん・・・」
陸とシマショーは自然と身構えていた。そのただならぬ様子に戸惑う=かずき。

警戒する彼らの前に、闇とでも形容されそうな黒い光が渦巻いた。
それが人の形を成していく。
見慣れた、セルフィが読み込みされる時の様子にそっくりだ。
ただ大きく違うのは、黒い光から生まれたセルフィは、全身が溶かした墨のごとく黒く染まり・・・

『顔全体を不気味な面で覆っていた』
 「な、なにあれ・・・」
 「新しい課金がちゃか何かか?」
 「趣味悪!」
 「気味が悪いな・・・」
 一同は突如現れた“それ”(人型)に警戒しながら様子を見守る。

 「あの〜もしもし?」
 〓かずきが話しかけてはみるが、その人型は一向に反応する気配はない。

 ゆらゆらと、まるで糸が切れた操り人形が如く揺らめく其れは、みるみるうちにその姿を完全な物へと形成していく。
 体の黒はより黒く、揺らめく影はハッキリと、そしてその黒い体にはしる幾本もの模様のような、紅く紅く細い線。
 まるで血管が脈打つかの様な間隔の速さで、その線の上を紅い光が流れている。

 「タãЪケ‰ã-ãクレã♯‰ã-ãã」
 「!?」
 突然、その人型から発せられた言葉ともなんとも言えぬ奇声に、全員混乱した。
 頭上に表示されている言葉も文字化けしており、本来の意味すら理解することが出来ない。

 「タãЪケ‰ã-ãクレã♯‰ã-ããタãЪケ‰ã-ãクレã♯‰ã-ãã」
 その人型は何度も何度も何度もその奇声を繰り返したとおもいきや―

 突如としてこちらへと襲いかかってきたのだ!
 それもこちらが身構えるよりも遥かに速く。

 目で捉えるのがやっと、というスピードで襲いかかってきたその攻撃をかわせたと・・・そう全員が思った。

 しかし二撃目、しかも目標を定めた攻撃があるとは予想だにしなかっただろう。
 「ぅあ!?」
 その声が、自分腹の底から発せられてといる気づいた頃には既に、〓かずきはその体を宙に浮かせていた。
 その間コンマ1秒単位の時間だっただろうがしかし、彼女にはそんな0.1すら永遠に感じるほど長く長く、そして永遠に感じるかのような感覚。
 
 その体が地に叩きつけられるまで、その感覚は続いたことだろう。
 “どしゃり”と音をたてて、その体は彼らと人型の丁度中央に落ちた。

 「姫!!!」
 反応がない
 近づきたい、でも近づけない。
 今近づけば、自分も同じ運命を辿る・・・そんな不安を全員が抱いている。
 
 「タãЪケ‰ã-ãクレã♯‰ã-ãã」
 人型は〓かずきの許へと歩みよる。
 先ほどとはうって変わって、ゆっくりと確実に。

 「う、うおぉぉぉぉ!!!」
 シマショーが突撃する。
 目標は黒い人型―ではなく人影と同じく〓かずきの許だった!

 そんなシマショーを見てか、人影はその歩みを速め、〓かずきめがけて突っ込んでくる!
 
 速度と速度のぶつかり合い。一方は仲間の命のため、一方は確実な止めの為に。
 どんな事があっても負けられない。
 
 幸い、シマショーが先に到着、しかし間髪入れずに人型が襲来!
 シマショーが覆いかぶさる〓かずきめがけて飛びかかってきた―

 が、人型のその攻撃はどこからともなく飛来した棒状のような物で阻止されることとなる。

 見ると、その棒状のような物は剣だった。
 そして、その軌道を辿っていった先には、一人の人影が。
  
 その人影もまた、驚くべき速さで人型へと突撃!
 人型も敵と認識したその人影に両手を広げ飛びかかる!
 その腕の先には、刃物が如く鋭く黒い爪があり、その人影を八つ裂きにせんと振りぬく・・・が、その人影には当たることはなかった。
 人型の攻撃が直撃する寸でのところでしゃがみこみ、避けてみせたのだ。
 その姿勢から人影は、その仮面めがけて強烈な蹴り上げをお見舞いした!

 きれいに決まる蹴り、そして割れる仮面、怯みながら後ずさる人型。
 割れた仮面の下から現れた顔面は、数えるのも嫌になるほどの眼球によって埋め尽くされていた。
 
 それら一つ一つは別々の方向へと向いていたが、一斉に全眼球がその人影へと視線を移す。
 
「紫樹ちゃん!?」ガバッ
「うわっ!!」

気を失っていたはずの〓かずきが目を覚まし、
紫樹の姿を認めるや否やもの凄い勢いで飛びついた!
両足飛びでほぼ水平に、正確にみぞおち目掛けて5メートルは飛んでいく!

(*゚ー゚)『〓かずきは【ミサイルタックル】を覚えた!』


(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー!! ※左からシマショー、ぁゃ、陸々です



まさに弾丸と化して飛びついた〓かずきをしっかりキャッチする紫樹。
そのままワイワイと盛り上がる。
先ほどまでの緊迫感や不穏な空気はどこへやら、その場が一気に明るくなった。

「ちょ、ちょっと待つニャ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

ふいに聞き覚えのない声が響いた。
紫樹が現れた丘の上から一生懸命駆けてくる影。
それはセルフィのマスコットキャラであるココロだった!

『え?ココロ!』
陸々達の声が重なる。

「紫樹ちゃん、危ないから置いて行かないで欲しいのニャ!」
「あはは〜、ごめんごめんw」

どうやら紫樹はココロと行動を共にしていたようだ。
息を整えるココロに軽く答えている。

「あ、ココロ〜。みんなにも着替え出来る様にしてあげてよ!
 そうすればアイツらがまた出てきても、今度はみんなで戦えるから〜」
「任せるニャ!」

一切の遅滞なくやり取りをする二人を、
タイミングを計りかねたように見つめる4人に向けてココロが手を差し出した。

「さ、ボクの手に触れてログインするニャ」
「ログイン?」
「ん?ログインした状態じゃあない・・・のか?」
「触るだけでいいのかな?」
「肉球だ〜〜♪」ギュッ!

疑問を持つ陸・シマショー・ぁゃを尻目に〓かずきがココロの手を握る。
すると、〓かずきの頭上に(ログインに成功しました)と吹き出しが出た。

「ログインが正常になればみんな着替えることが出来るニャ〜!」
どうだと胸を張るココロ。かわいい(*´∀`)

陸々、シマショー、ぁゃもログインし、着替えを試す。
「へぇ、不思議なもんだな。自分が何を持ってるかイメージが見えるのか・・・」
「持ち物は武器にした方がいいな」
「・・・整形てどうなるんだろね?」

「おでんおでん〜」「私もおでんにしようかなw」(カ´∀`)人(´∀`シ)キャッキャッ

着替えたいものを決めると、体の周りに光が集まりそれが晴れると着替えは完了していた。
あの不気味なセルフィとは違う優しい輝きの光。

(これはいわゆる、光の戦士・・・ってやつかな?)
手にした大薙刀を見つめ、シマショーは胸中で呟いた。



―――紫樹が両断してのけた不気味なセルフィの亡骸は、
   誰の目にも留まる事無く再び闇に融けていたのだった―――
 ■■■ 

 それより遡ること数時間前、所変わって―

 笹ノ葉とまぅは悩んでいた・・・
 勿論、これからどうすべきかとか、着替えはどうしたものかとか、元の大きさに戻るにはどうするのかなど、様々な悩みが二人の前に立ちはだかる。

 今二人はセルフィータウンのゲームタウンエリアだ。
 建物の物陰に隠れ、表通りの様子を窺っている。
 「人通りが大分なくなってきたなぁ〜」
 「ねぇ笹さん、隠れる必要本当にあるのかなぁ・・・」
 言葉を発する毎に点滅するそのミニマムな発行飛行体がまぅさんなのだとは、いまだに信じがたいと笹ノ葉は思いながらその言葉を聞く。
 「まぅさん小さくなってるのに怖くないの?もしかしたら誰かに捕まるかもよ?」
 「誰が捕まえるんですか・・・それにいざという時は、笹さんの可動系衣装ということにしてもらう予定ですから」
 「あ、そうか」と、笹ノ葉はグーで手の平をポンと叩く。
 
 「でも恥ずかしいしなぁ・・・」
 「大丈夫ですって、笹さんかわいいし」
 「それが恥ずかしいんだけどなぁ」
 でも、と笹ノ葉続ける
 「確かにずっとこのままじゃ、皆とも会えないしね!」
 うんうんと頭を何度も縦に振る笹ノ葉を、まぅは生き物を観察するような目で見つめるのだった。

 ■■■

 「あの二人、なかなか動こうとしないわね♪」
 「いやはや、あれだけの警戒状態じゃコンタクトがとれないですにゃ・・・」
 
 ここはセルフィータウンのとあるエリア
 そのエリアはゲームタウンと呼ばれ、セルフィータウンのありとあらゆるゲームが集合している場所である。
 そんなゲームタウンに異質な人影が二つ存在していた。
 一方は澄んだ綺麗な声の持ち主で、体格からして女性と判断できるが、ローブを着てフードを被っているため、顔立ちなどは窺うことができない。
 もう一方はそんな彼女の膝下くらいの身長で、デフォルメした猫の様な姿をしており、語尾にも「にゃ」とつけている。
 
 彼女らの視線の先にも同じく二名の人影。
 一方はミニスカな巫女服で銀髪、そして頭にはネコミミ、そして尻尾も付いている。
 もう一人の方は・・・人と言って良いのか分からないが、確かに存在している。
 そう言うのも、その人物はなぜか途轍もなく小さく、宙を飛んで光っているからだ。
 だがローブの女も、その猫も、その光る浮遊体を人と認識できている。
 
 「ねぇココロ、何とかしなさいよ♪」
 ローブの女は命令口調でその猫に話しかける
 が、ココロという名のその猫は溜息を吐きながら、ローブの女に話す。
 「無理ですにゃ・・・ボクがいきなり話しかけたりして逃げ出したら、また探し出すのに苦労するにゃ!」
 「逃げ出すなんてとんでもない、何のために貴方の姿がそんな可愛いみてくれだと思っているのかしら♪?」 
 ローブの女は続ける。
 「それに貴方私の部下なんだから、私に従う権利があるのよ?それに私、動くの面倒だし♪」
 ココロは溜息を吐く。
 「こんな上司を持って不幸だにゃ・・・」
 「なにか言ったかしらぁん♪?」
 「なんでもないですにゃ!」
 言ってココロはもう一度溜息
 
 「それで、どうやって近づけばいいんですにゃ?」
 「それを考えるのも貴方の仕事よん♪」
 「・・・・」
 ココロは何か言いたげな顔だったが、諦めたのか、溜息の後に「はいですにゃ」と一言だけ言い視線の先の二人の許へと向かうのだった。


 ■■■
 
 見渡す限りの平原、その中に建つ一本の巨大な塔
 その塔を目指す一団があった。
『ズンズン』という表現が相応しい足取りで進むスミスの後ろを、スタスタと軽い足取りでついて行く恋奈。
先程からその手に持つライフルを確かめながら弄っていた。

カービンアサルトライフル…簡単に言えば、アサルトライフルの中で銃身の短い物の総称だ。固有の銃の名称ではない。

恋奈が持つそれはセルフィのイメージがそのまま立体化したような物で、恋奈の持つ知識内には無いものだ。
調べた所、構造自体はライフル銃に相違ない様子。

(本物と変わらないってことか?じゃあ…)

恋奈の目には既にハッキリとわかるほどの好奇心が浮かんでいる。

「スミス〜」
「なにー?恋奈」
「試し撃ちしよう(゜∀゜)」スチャッ
「ちょまっ!」

輝かしいまでの笑みを浮かべ銃を構える恋奈の正面から大急ぎで横に逃げるスミス。

「いきなりこっち向けないでよ!(^ω^;)」
「あ、ごめん(゜∀゜*)」
反省の欠片もない。

少し離れた場所にある樹に向けてタタタッと3点バースト射撃。
恋奈の手に、上半身に射撃の手応えが走った。樹にも、確かにその破壊力の痕跡が残された。

「ちょwwwマジですかwww(^^;)」
「それ本物じゃん…危ないよ!((゜д゜;))ガクガク」
「セルフィすげー!これはイイネ!」

興奮する2人(?)の様子を樹の上から伺っている影が1つ。
シマショー達のもとに現れたのと同じ、黒く仮面をつけたセルフィ。

素早く跳躍し、一気にスミス目掛けて降下する!
両の手の太く鋭い爪をギラつかせ、首を跳ね飛ばさんと振り抜きーー

「勘弁してよ〜><;」
「フハハハ!踊れ踊れ〜い!」ズガガガガ!!
「GYAAAAA--!!!!!」

ふざけてスミスの頭上を射撃した恋奈。
当然のように伏せていたスミス。
スミスの真上に降ってきた黒セルフィ。
あわれ全身を撃ち抜かれる羽目になった化け物である。

蜂の巣となり横たわり、次第に霞んで消えた化け物を、スミスと恋奈はポカンと見つめていた…。
 「・・・・」
 「・・・・(^^;)」
 勿論、二人はこの展開を目の当たりにして、暫く思考停止中となるのだった。
 
 「撃っちゃったぜ(゜∀゜;)」
 暫くして恋奈が後悔しているのかどうか知らないが、少し焦るようにそう言った。
 「なにしてんの!?わたしに当たったら危ないじゃん!><;」
 と、続けてスミスは恋奈にお説教!
 「え、そっちなのw?」

 「ところで、一体全体これはどうゆう状況なの?」
 「わからん(゜∀゜)」
 スミスも恋奈も、先ほど現れたと思えば、瞬時に脱落したあのセルフィーと思わしき者の心当たりを互いに確認しあうが、まったく心当たりがない。
 というか、二人ともが、あんな衣装があったのか、とすでに他の話題で盛り上がり始める始末である。
 
 ふと見ると、そのセルフィーが丁度消えた位置にそれが身に着けていた“仮面”がポツリと落ちている。
 
 「いいもんみっけ!(゜∀゜*)」
 恋奈はその仮面を拾い上げるや否や、自分の顔に装着。
 「あ、ずるい!わたしも〜!」
 にげる恋奈
 追いかけるスミス
 「捕まえてごらぁん(´∀`*)ウフフ」
 「ちょwww」

 その、傍から見れば 極 め て 恥ずかしい光景を遮る声があった。

 「フフ〜ン 楽しそうねぇ♪私も混ぜてちょうだいな♪」
 その声の発声元を二人が見ると、そこにはローブに身を包み、フードを被った“女”がいつの間にかそこに立っていた。

 ■■■

 一方そのころ〜 
 
 陸達一行は塔に向けて前進していた。
 野を吹き抜ける風が心地よい。
 この世界が本物ではないなんて、まるで嘘みたいだ。
 
 「それにしても・・・歩けど歩けど全然近づかないなぁ〜^^;」
 出発してもう3時間くらいは経過しているだろう。
 だが、一向に塔の見える大きさは変わらない。

 「お腹空いたねw」
 「そうね^^」
 「これはおでんの空気じゃないw?」
 〓かずき・紫樹・シマショーがニヤニヤと何やら企てる横で、陸は寒気を感じるのだった。
 
 「それにしても、まさかココロがAIだったなんて驚きよね〜」
 「そんな物が秘密裏に開発されていたなんて今でも信じられないよね><;」
 と、〓かずきと紫樹が話している。

 それは今から遡ること三時間ほど前〜

 紫樹とともに登場したのは、紛れもなく本家とセルフィーチャンネルで一度は見かけるあのネコなのであった。
 「僕の名前はココロ、@ゲームス・セルフィータウンのマスコットキャラクターだにゃ!しかしその実態は、G CRESTが秘密裏に開発した緊急時サポート用人工知能:タイプcocoroなのですにゃ〜!」

 テテーン
 どこからともなく鳴るファンファーレに合わせ、ココロはエッヘンと胸を張る。

 「それでココロ、私たちに手伝ってほしいことって?」
 その場にいる全員がココロを隙間が無いように取り囲む。
 何やら集団で苛めているように見えるのは気のせいである。
 
 「実はこの状況について、一つだけ分かっている事があるんだにゃ!」
 ほうほうと全員は相槌をうつ。
 「皆ももう気付いてるかもしれないけれど、今君たちの意識や全感覚といった物はこのセルフィーチャンネル内に存在しているにゃ」
 「それがいまいちよく分からないんだよなぁ・・・つまりは―」
 「意識と感覚が何らかの原因で本来の体から剥離し、セルフィーに宿ったと?」
 先の陸の言葉を遮り、シマショーが言うのだった。
 「そうだにゃ!しかも全世界規模でこの現象が確認されているにゃ・・・」
 「全世界?どういうこと?」
 全員が問う。
 「まぁ〜ボクはもともとネットの中の住人だから、こんな状況でもネットに接続してネットワーク内を移動することができるんだにゃ〜!」
 誇らしげにココロは続ける。
 「検索の結果、他社のネットゲームでもこのようにプレイヤーの精神がゲーム内に宿る現象が起こっていたり、ゲーム以外の所ではアクセス中のページ自体に憑依してしまう〜なんてことも起こってるにゃ!」
 「現実の世界は?一体リアルはどうなっちゃったんだ?」
 「それは現在調査中だにゃ・・・運営側もその殆んどがネット内に閉じ込められてるにゃ・・・それに行方不明者もでてるのにゃ!」
 だから外からの情報が入って来ないとココロは嘆く。

 「そこで、今この世界にいる人々に調査を手伝ってもらえるように、声をかけているにゃ!」
 ぐっとガッツポーズをするココロ・・・だが次には打って変わって、しょんぼりとした表情となる。
 「でも、声をかけるごとに、皆パニックになって逃げたり怒ったり・・・唯一話を聞いてくれたのはこの紫樹さんだけなのにゃ〜」
 涙を流すココロを見ていると、なんだか申し訳ない様に思えてくるのだった。
「話をまとめると、このセルフィの世界に異変が起きた原因があるかもしれないから、みんなで調べようってことか」
「その通りにゃ!ボクもネットワークを通じて調べてはいるけど、接続出来ない場所や不安定な場所もあって、手が回り切らないのにゃ…」

「調べると言っても…どこに行けばいいのかな?」
「ココロ、どこか心当たりないのか?」
首を傾げるぁゃと、手掛かりを求める陸々。

シマショー(ココロのこころ当たり…とか考えてる場合じゃないな)

「みんなには自由に動き回って欲しいのにゃ。みんなログインしてくれたおかげで、ボクはみんなが辿った道を追跡出来るにゃ!その道を通じて、周辺を調べることが可能となるんだにゃ〜」
ココロの高性能さに一同はあまりピンと来なかったが、とにかく色々な所に行けば良いらしい。

そういった経緯から、陸々達は塔を目印として進んでいたのであった。
 しかし、それは突然現れたのだ。
 そう、未知との遭遇
 喋る猫である!というかココロである。
 「ど、どうもですにゃ・・・突然で申し訳にゃいけれど、君たちに頼みたい事があるんだにゃ」
 「ねぇくまさん・・・NPCが話しかけてきてるよ?何かのイベント?」
 「知らないなぁ・・・というかなんか怪しいです」
 二人はひそひそ声で話しているが、頭上には吹き出しが出ているためバレバレである。
 「二人とも、ひそひそ話聞こえてるにゃ!というか、人の話を聞くにゃ!!」

 「・・・・^^;」
 「・・・こほん!え〜と何から説明しようかにゃ」
 ココロは暫く考え話し始める。
 「僕の名前は―
 〜以下略〜
 「・・・で、そのココロ何某さんが私たちに何か用なのですか?」
 「君たちは、今なぜこんな世界にいるか不思議じにゃいかにゃ?」
 その問いかけに二人とも「たしかに」と頷く。
 「じゃあココロ、どうしてこうなったの?」
 笹ノ葉が問う
 「それは・・・分からないにゃ!」
 「・・・・」
 「そんな目で見ないでほしいにゃ!」
 ココロは申し訳なさそうな表情なのだが、笹ノ葉もまぅもそんなことはお構いなしに目を細める。
 「運営仕事しろよ・・・」
 笹ノ葉がボソリと呟いた言葉に、ココロは本当に申し訳なさそうに謝るのであった。

 「で、私たちに手伝ってほしい事とは?」
 まってましたと、しょんぼり気味だったココロの顔が一気に輝く。
 実に表情豊かなのだが、すぐに立ち直るところを見ると、何も気にしていないようだ。
 
 「実は分からないとさっき言ったけれど、一つだけ分かっている事があるんだにゃ!」
 ほうほうと二人は相槌をうつ。
 「二人も感じているかもしれにゃいけれど、今君たちの意識や全感覚といった物はこのセルフィーチャンネル内に存在しているにゃ」
 「いまいちよく分からないけど、なんだ?ってことは・・・」
 「意識と感覚が何らかの原因で本来の体から剥離し、セルフィーに宿ったと?」
 笹ノ葉の言葉の途中でまぅがそう割り込んだ。
 「そうだにゃ!しかも全世界規模でこの現象が確認されているにゃ・・・」
 「全世界?どういうこと?」二人が問う。
 「まぁ〜ボクはもともとネットの中の住人だから、こんな状況でもネットに接続することができるにゃ」
 ココロは続ける。
 「検索の結果、他社のネットゲームでもこのようにプレイヤーの精神がゲーム内に宿る現象が起こっていたり、ゲーム以外の所ではアクセス中のページ自体に憑依してしまう〜なんてことも起こってるにゃ!」
 「現実の世界は?一体リアルはどうなっちゃったの!?」
 「それは現在調査中だにゃ・・・運営側もその殆んどがネット内にいるにゃ・・・それに行方不明者も」
 だから外からの情報が入って来ないとココロは言うのだった。

 「そこで、今この世界にいる人々に調査を手伝ってもらえるように、声をかけているにゃ!」
 ぐっとガッツポーズをするココロ・・・だが次には打って変わって、しょんぼりとした表情となる。
 「でも、声をかけるごとに、皆逃げたり怒ったり・・・もうどうしたらいいのか分からにゃいにゃ〜」
 涙を流すココロを見ていると、なんだか申し訳ない様に思えてくるのだった。

 「笹さん、やりましょう!」
 まぅが突然大声を出す。
 「そうだね・・・やろう!手伝うよ!」
 「ほんとかにゃ!?」
 泣き顔から一転、今度は目を輝かすココロなのであった。
 「ありがとうですにゃ〜!」
 ココロは何度も何度も平謝りをする。なんとも忙しい小動物である。

 そんな三人に拍手を送る人影が一つ―

 「いやいや〜いいもの見せて貰っちゃった♪」
 その拍手の主は惚れ惚れするほど良く澄み渡った声で語りかける。
 その出で立ちはと言うと、薄汚れたローブを纏っており、さらにその付属品であるフードを深々と被り、辛うじて口元だけが覗いている。
 声と体格からして女性である事は分かるが、今の自分の状態を見ると、本来その人物が女性であるかは不明だ。
 「どちら様?」
 笹ノ葉の問いかけに、その人影は「フフ〜ン♪」と軽く笑う。
 見えている口元も弓なりに歪んでいる。
 「ボクの上司だにゃ!」
 笹ノ葉の問いかけには代わりにココロが答える。
 「ココロご苦労さま〜♪おかげで私、別の作業が捗りましたとさ♪」
 めでたしめでたしとその女は言葉の最後につける。
 「あの〜質問いいですか?」
 笹ノ葉の問いかけに対して、ローブの女は半ばふざけた口調で返す。
 「何かしら?ひじりん♪」
 「なぜその名を・・・!?」
 「さぁて〜なんででしょう〜♪」 
 「あなたは何者なのかしら?」
 まぅも怪しんでいるのか(実際怪しすぎるし胡散臭さMAXなのだが)そのローブの女に対して警戒している。
 「私?わたしは〜♪」 
 「・・・・」
 沈黙が続く―
 「・・・・って言わねぇのかよ!」
 笹ノ葉・まぅ・ココロ、三人の声がシンクロするのだった

 「フフ〜ン♪何者なのかは、各々の想像に お ま か せ するぞぉ〜♪」
 本人は可愛い言い方したつもりだろうが、笹ノ葉とまぅは明らかにイラッときていた。
 「まぁ〜名前で呼べないと親しみ湧かないわよね〜ん♪」
 そうね・・・とローブの女は暫く悩む。
 「私のことは、“diva”(歌姫)とでも呼んでちょうだい♪」
 あ、勿論本名じゃないわよ♪と彼女は続けるのだった。

 「ディーバ(歌姫)?歌が得意なの?」
 そんなまぅの質問に割り込むように、divaは言う。
 「ずっと見てた時から気になってたけれど、お嬢さん凄くミニマムねぇ♪」
 「私も気にしてるんです」とまぅは少しばかりムッとした。
 「気になる、凄く気になるわ♪」
 「ねぇどうかしら♪」とdivaはまぅに問う。
 「お嬢さん私の所で実験台に・・・じゃなくてお手伝いしてくれないかしら♪」
 
 「遠慮します!」
 まぅは冗談じゃないという感じに断る。
 「フフ〜ン そう、残念♪」
 
 「さてと、そろそろ行かなくちゃ♪必要な連絡とか聞きたいこととか、あとはこのココロに聞いてちょうだいな♪」
 あ、そうそうと思い出し口調で続けるディーバ
 はいこれ♪ と、渡されたのは何やら透明なカードの様な物だった。
 その表面には、緑の光で何やら理解不能な文字の羅列が永遠と綴られている。
 「なんですかこのカードみたいな物」
 「試供品で〜す♪ と っ て も 重要な能力が手に入るカードなの♪まぁ・・・いつか必要になる時がくるはずよ・・・♪」
 一瞬だが、ディーバの口元が三日月みたいに歪んでいるのをまぅだけが見たのだった。
 「最後におねぇさんから物語攻略のヒント〜♪」
 いぇ〜い!パフパフ!
 「・・・・」

 「この世界に来たなら一度は気になるあの塔〜♪ 一度行っておいた方がいいかもね♪」
 ディーバは言いながらこちらを指さしウィンクをするのだった。
 
 「それじゃぁ〜調査がんばってちょうだいな♪」
 そう言うと、ディーバの体を青白い光が包み、その姿を何処へと転送したのだった。

それは砂に半分ほど埋まったぐっせるボールだった。
ボールの側には、紙切れを握り締めたまま骨と化した腕が落ちている。

「コワイデス^^;」

しかし気付いたからには、見てみないと気になって仕方ない。
ソーッと、紙切れを抜き取るとどうやらメモのようである。

『7つのボールを集めよ。さすれば汝の前に願いきく龍が現れるであろう』
 ■■■

 気づいた時、彼女たちは既にそこにいた―
 
 無限とも思えるような広い広い紺碧の上を、一艘の白いボートがゆらゆらと浮かんでいる。
 ボートは驚くほどに白く、ゆらゆらと揺らめく水面にそのキラキラとした船体を映しだしている。
 そんなボートの上には二つの人影があった。
 一方は全身が黒一色で纏められた少女である。
 しかし、そんな少女には似つかわしくない物を彼女は手にしていた。
 それはカービンアサルトライフルである。これもまた重量感を感じさせるような黒色をしている。
 もう一人は、ボートの真ん中で大の字に寝転がっている。
 その寝転がっている人影は黒っぽいワンピース姿の女性である。
 裾の広がった黒っぽいワンピースは少しめくれあがり、中のガーターが覗いて居るにも関わらず、色気とは程遠い寝姿である。

 そんな彼女をカービンアサルトライフルの少女、恋奈は揺さぶって起こそうとしている。
 「ちょっと」
 「う〜ん」
 「ほら!おやつの時間だよ!!^p^」

 もの凄く見覚えのあるやり取りをしているうちに、その女性スミスは起き上がる。

 「むにゃ・・・あ、恋奈おはよう〜」
 「やっと起きた^^;」
 まだ眠たそうに目を擦るスミス、しかしとある異変に気づき、暫く脳の機能を停止する。
 
 「ねぇ恋奈・・・?」
 「なに?」
 「私のイカ焼きどこ!?」
 「そっちを聞くというのに驚き(°∀°)」

 スミスはゴホンと咳払いをした後に、もう一度口を開く。
 「たしか私たち、変な黒いのに襲われて、そのあとに変な人が現れて・・・」
 あれ?とスミスは首を傾げる。その動きに合わせるように恋奈も一緒に首を傾げる。
 
 「私たちなんで海にいるの?」
 「しらん(°∀°)」
 「・・・・」
 「・・・・」

 心地よい潮の香りが吹き抜けるボートの上で悩める二人がいた・・・というかスミスと恋奈だった・・・
 そんな二人を、太陽は気持ち悪くなるほどに真っ青く雲一つない空から無情にも照らしている。

 「あっつい・・・というかナレーション、なにこの展開!?無茶苦茶すぎるっつうの!」
 スミスさん、ナレーションに突っ込むのはやめてください・・・こちらも色々苦労してますので・・・
 「うるへ〜スミス子は暑いのじゃ〜!」
 スミスは空を見上げながら、登場するはずのない人物に叫ぶ。
 そんな彼女の姿を恋奈は首を傾げながら見守るのであった。
ピンポーン!

「ん?」
「え、な、何!?」

唐突に、やや間の抜けた電子音が響く。
するとスミスの頭上に

メール【新着メッセージが1件あります】

文字が浮かび上がった。

「ぷっwww」
「な、何!?なんで恋奈吹き出してるの?」
「頭の上にw」
「笑ってないでちゃんと説明しなさいよ!(゜д゜#)」
「〜〜っ…ハァハァ…。や、メッセージが来てるよ。それが余りにおかしくてつい(´∀`)」
「つい、じゃなーい!バカ!」

しばしの間ドタバタと騒ぐ2人。
波は穏やか、天気は晴れ渡り、吹き抜ける風の気持ち良い大海原に賑やかな声が広がる…。



「で、メッセージってどうやって見るの?」
「しらん(゜∀゜)」
「ですよね〜」

どうしたものかとスミスは頭上に手を持って行き、ひらひらと文字が浮いているらしき場所を探す。
すると、文頭に付いていたメールの絵文字に指が触れた瞬間、メッセージが紐状の光になりスミスの目前で毛糸玉の様に渦巻くと、パッとはじけた。
はじけた光の中から手紙が現れる。

「わ〜凄いね!どれどれ、中身は…」
「演出過多じゃね?」

早速手紙を読み始めるスミスと、どうでもいいツッコミを誰かに入れる恋奈であった。

手紙に賦されたサインは『ディーヴァ』
果たしてその内容は―――
 『おはこんばんちは♪皆の心のアイドルことdivaちゃんの心ときめくお手紙だよ♪』

 という、なんとも寒気のする内容で始まるその手紙―
 スミスの心中にはただ一点だけ、このメールが本物の手紙ならば破いているだろうという感情のみであった。

 メールにはこう綴られている。

 『突然ですが問題、今スミスちゃんと恋奈ちゃんはどこにいるでしょ〜か♪
 A:海 B:湖 C:意外や意外実は森 D:海に見えるけど実は地雷原みたいに足元には危険が潜んでいて物語展開的にはお約束な場所
 
 さて、どれでしょう♪』

 「・・・・」
 スミスは暫く考えた後、恋奈に質問をする。
 「このメール削除できないのかなぁ」
 「多分出来ると思う^^」
 
 『因みにこのメールは強制的に削除された場合貴方達お二人にとっては凄くまずい展開に発展しますので悪しからず♪』

 「・・・・」
 そう、削除という言葉を心に思いながらメールの行を下へとスクロールした時にその一文はあった。
 その一文を見たとき、まさか心を読まれているのでは、というような感覚に陥ったが、気のせいだと言い聞かせる。

 「一応・・・最後まで読んでおこっか^^;」
 「・・・だね^^;」

 次の行へとスクロールをするスミス、続きにはこう綴られていた。

 『賢い選択をしたわね♪一応正解と褒めておきましょう♪』
 『では、答えを聞かせてもらおうかしら♪』
 「・・・答えって、まぁ、Aの海でしょ」
 スミスは答える
 「Cの森だ m@(°∀°)」
 続けるように恋奈も答える。

 『不正解♪ペナルティーを受けてもらいましょう・・・』
 『という冗談は置いておいて♪』

 ペナルティーという言葉に一瞬恐れを感じた。
 それはなぜか分からない。
 冗談と記されてもある。
 でもなぜか分からないが、理解できないのだが、この文章からは彼女が本当にペナルティーをかせようとしてるような意思が一瞬だが伝わってきたような気がしたのだ。

 『正解はDなのですよ♪あなたたちの足元には危険がいっぱい♪』
 
 その文章を読んだ後からだった。

 「ねぇ恋奈・・・?」
 「(°∀°;)?」
 
 さっきまでの心地よい潮風は、今はもうない。
 今この空間にあるのは、重くて暗い空気のみである。

 「なんか、気持ち悪くなってきた・・・(;´Д`)」
 「恋奈も?私もなんだよね・・・」

 重い空気は、まるで水に濡れた衣服の様に体にへばりついてくる。
 気持ち悪さと比例するかのように、ふたりの体は冷たく嫌な汗を放出している。
 
 『助かる方法は一つだけ♪』

 「うぷ・・・(;´Д`)」
 恋奈はあまりの気分の悪さに、ボートから身を乗り出し、海面に顔を近づけたのだった。
 「大丈夫・・・?」
 「なんとか・・・(;´Д`)」
 スミスの言葉に、恋奈はその姿勢のまま答える。
 そんな恋奈を見て、スミスは重たくなった体をなんとか動かし、恋奈の背中をさするのだった。

  『貴方達はその方法を既に手にしている♪』

 「大丈夫?もう平気そう?」
 恋奈は首を縦に二回振る。
 「よかった・・・なんか恋奈の吐き様見てたら私まで・・・うぷ(;´Д`)」
 スミスは恋奈と同じように海面に顔を近づける。
 
 いつの間にか重い空気と同調するように、太陽も雲の中に消えている。
 辺り一面をまるで日暮れ時のような暗さが支配する。

 『そう、それは ãЪ‰供品♯ã-ãカーãけ― 〜文章はここまでです〜』

 スミスは海面に顔をさらに近づける。

 辺り一面はさらに暗さを増す。

 「?」
 
 暗さでなかなか気付かなかったのだが、その水面には本来映るはずのスミスの顔は映っていなかった。

 なんだか遠くの方で「キーン」という高い音が聞こえているような気がした。


 「なに・・・これ・・・」

 音がどんどん大きくなっていく

 スミスは自分の顔を確かめるかのように頬に手をやる。

 黒板を爪で引っ掻いたように不快な音だ。

 海面に映っている物は間違いおなく自分と同じ動きをしている 

 耳の奥から奥から奥から聞こえてくる。
 
 「いや・・・!」

 だが手に触れている物の感触など感じれなかった。
 
 だが、そんな音もいつの間にか気にならなくなってくる。

 耳の感覚が薄れてきた。
 
 手先の感覚が薄れてきた。
 
 「いやぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 そこに映し出されていたのは

 


 真っ黒で目が幾つもある 顔だった―
恐気が全身に走り無我夢中で後ずさる。

(今の、何?)

目眩や不快な音から来る気持ちの悪さは既に忘れていた。
ただただ、見えた物の気色悪さが呼吸を荒くする。

(目…目玉だった)

見たのは一瞬。しかし、全ての目と視線が合った!
脳が勝手に駆動し、落ち着くために合理的解釈を求め疾駆する。
しかし理解の出来ない事象は恐怖へと収束する以外の行き場を持たず、依り合わされた恐慌はスミスの全身の痙攣へと換わる。

パシャっ……パシャっ……

不意に水音が耳に届いた。
体の震えがピタッと止まり、命令もしていないのに眼が音の方向に動いてゆく。

(嫌だ…イヤ……)

眼は自身の意思に背き、音の正体を暴かんと動き…

脚が――
ダラリと垂れた腕が――
起伏が見受けられない胸元が――
そして、ザワザワと蠢く虚ろな数多の目が、見えた――

息が詰まる。
化け物が、腕を上げスミスに迫る。
その腕に捕まれば、命など握りつぶされてしまうだろう。

パチンと、スミスの中でスイッチが切り替わる――
全身に毒のように回っていた恐怖が、一瞬で怒りへと沸騰する!

(こんな気色悪いヤツに、殺される?そんな理不尽…許さない!!)
「ふっざけんなぁぁぁぁ!!!」

スミスの口から、大音声が放たれた!
ビリビリと空気が震えボートが軋む。
化け物は戦車の砲弾を受けたかのように空中へと吹き飛び、さらには微細にしかし激しく振動する。
歪に四肢をねじ曲げて、見えない巨大な手に弄ばれるようにひしゃげていく様子は、実に奇妙だ。
やがて絶命したらしき化け物の亡骸は、水底に落ちて行った。

『ふふっ、バッチリ課題をクリアーね♪
《音波》が発現するなんて面白い子だわ〜♪』

脳天気な声が響くと共に、スミスは急に眠気に襲われ、抵抗出来ずに意識を手放した。
■■■
『こちら第・・・防衛・・・備隊、既に・・・隊の約四割・・・失!これ以上・・・侵攻を・・・止でき・・・い!』

どこからかノイズ交じりの無線の声が聞こえてくる。

そんな音声に目を開ければ、見知らぬ天井があった。
上半身を起こし周りを見渡してみる。見た感じでは病院の一室と思われる内装となっており、自分の体が横たわっていたのは白いシーツの敷かれたベットだった。

「どこだここ((Д°;))」
恋奈はきょろきょろと周りを何度も見わたすが、やはり病室にしか見えない。

しかし、その病室と言ったら酷いものだった。
一番に目につくのは兎に角埃まみえれという点だ。室内に置いてある椅子から、点滴ボトルや心電図モニターといった物まで全て埃をかぶっていて、カビ臭い空気もする。とてもと言って病院の清潔感というような印象はない。

次にやけに室内が薄暗い。本来光が入り込むはずの窓には板が貼り付けてあり、さらに電灯は全て割れていて点かない。

そんな薄気味悪い空間になぜ自分がいるのか、恋奈は分からなかった。思い出そうとはするぼだが、考えるとピリッと電流が走るような痛みが頭を襲う。

「とにかくこの部屋から出よう・・・」
恋奈は体を動かしベットから降りようとするのだが、埃がたち少しだけ咳き込む。

そい言えば、持ち物がどこにも見当たらない。いつも手に持っているカービンアサルトライフル・・・
室内をくまなく探したがそのような物の影すら見当たらない。
「あれ〜?(°∀°;)」
お気に入りのアイテムであったためか、失くしてしまったことに不安を覚える。
「部屋の外も探してみよう・・・」

出入り口と思わしき扉を開けると、室内と同じように薄暗く埃まみれの廊下が現れる。
その廊下には幾つもの扉が一定の間隔で並んでおり、一番奥はさらに暗くなっており目視するくことできない。
恋奈は扉を閉め、廊下に出る。
進むたびにヒタヒタと足音が音響して、薄気味悪さをさらに引き立てる。

いくつかの病室を見て回るが、殆んどが鍵のかかった部屋で入室することができなかった。

『第・・・部隊・・・ら本部へ・・・被・・・甚大!増援・・・求む!』

先ほど聞いた無線の声が廊下の奥から聞こえてくる。暗い暗い廊下の奥からだ。
恋奈の本能が「行くな」と警告している。
だが、体は勝手にその奥に吸い寄せられていく。

無線の声に導かれるように廊下を進んでいく。
廊下の一番奥の行き止まりには他と同じような造りの扉があり、そこから無線の音が聞こえてきているようだ。
扉に手をかけ引くと、今までの扉と違いスムーズに開く。

部屋の中は恋奈がいた部屋と同じ造りになっており、置いてある物からそれら全て埃がかぶっている事まで、全てが同じ部屋だ。
だが、部屋の造りや置いてある物意外に違う事が一点だけあった。
それはベットの上に人影があることだ。
その格好は兵士の出で立ちそのままであった。
デザートパターンと呼ばれる砂漠用迷彩で統一された上下の服装の上に、防弾チョッキとタクティカルベストを着ており、頭には同じくデザートパターンのヘルメットをがぶっていてゴーグルもしている。
恐る恐る近寄ってみるが、動く気配は全くせず生気は感じられない。
「死んで・・・る?」
声をかけてみたが、起き上がる様子はない。

ふとこの兵士を見ると、ベストのポーチの中にトランシーバーがしまわれていた。
恋奈は徐にそのトランシーバーを手に取った。
恐らくさっきからの無線はこれから聞こえてくるようだ。

次に目が行った物は兵士の傍らに立てかけられたカービンアサルトライフルだった。
凄く見覚えがある形をしたそれを手に取る恋奈。
ずっしりとしたアサルトカービンライフルの各所を確認すると、自分の物とは違うのだとわかる。
さらにそれはセルフィーの衣装アイテムとしてのアサルトカービンライフルではない事も分かった。
それのマガジンには間違いなく実弾、5.56mm NATO弾が装填されている。
そう、それは実銃、現実世界でM4と呼ばれているかの国の主力アサルトカービンライフルなのだった。

「なんでこんな物が?」
そうここは現実ではなくネットの中の世界だととある女から聞いた。
だがなぜ“現実の兵器であるはずの物がここにあるのか。”
恋奈はもう一度そのM4を確認する。
光学照準器やフォアグリップといった追加装備が付けられたそれを見て、少しだけニヤリとするのだった。

部屋から出るとさっきまでとは全く違った風景がそこにあった。
「今さっきまで病院に居たはずなんだけどなぁ・・・(∀°;)」
先ほどとは打って変わって、今度監獄のような廊下に立っていた。
廊下を挟むように格子の牢屋が幾つも続いている。

この摩訶不思議な現象に、恋奈は少々戸惑っていたが・・・
「まいっか^^」
気にしない事にした

だが気にすべきことが起こった。
「!!」
この施設ではなさそうだが、近くで大きな爆発音がしたのだった。
地面が振動し、砂埃が一瞬浮かぶ。
「な、なんなんだ・・・?」
恋奈は牢獄の廊下を進む。
途中牢屋の中に先ほどと同じような兵士の死体がいくつか見られたが気にせず進んだ。
進むしかなかった。

『・・・・デルタ・デルタ・This isオメガ over』
トランシーバーから声が発せられる。後ろではタタタという銃声や戦車が砲撃をしたのだろうか、爆音がする。
恋奈は応答しようかどうか一瞬迷ったが、出ることにした。
「どちら様?(∀°;)」
『This isオメガ break何者だお前は?break over』
「え〜とオメガ・オメガ・ディスイズ・ブレイク・レンナ・ブレイクオーバー(∀°;)」
『・・・レンナThis is オメガbreak 何者かは知らんが、敵ではなさそうだな break over』
「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・YES!YES!敵ではありません!ブレイクオーバー」
無線の声はどこかで聞いたことがある。なんだかスミスの声に似ているような気がした。
相変わらず無線の後ろでは爆音が響き続けている。
『レンナThis is オメガbreak 今君はどこにいるか分かるか? break over』
「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・いや分からない、なんだか牢獄のような場所だよブレイクオーバー」 
『・・・レンナThis is オメガbreak 君がいる所は恐らくだが、我々の近くかもしれない、出口はあるか? break over』
「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・探してみる(°∀°)ブレイクオーバー」

―――1時間後

「出口見つからぬぇ・・・(´Д`;)ツカレタ」

建物内をくまなく歩き回った結果わかったことは、この建築物が2階建てで、各フロアも決して現在地がわからなくなるほど広くはないということ。
しかし奇妙なことに部屋は数えるほどしか扉が開かず、壁などに大きな損傷はないのに2階廊下には穴が開いていたりする。
何よりも、『玄関口』が見受けられないのだ。
窓から脱出しようにも鉄格子がはまっていて通る隙間はない。

ちなみに、フロアの形状は漢字の田を正方形状に4つ並べたような造りで、2階も同様になっている。

田田 ←こんな感じ
田田

階段は中央と、中央を基点にして東西南北の系5つ。
今恋奈は、東階段の踊り場で段差に腰掛けて休憩していた。

「・・・しっかし、明らかに不自然なトコだよな。確かに壁には傷やらヒビやらが見受けられるけど、崩れそうな感じは全くしない。おまけに廊下には穴があったり障害物どころか遮蔽物になりそうな瓦礫やらロッカーが散乱してる。まるで用意されたみたいな・・・」

――ザ、ザザッ――
探索結果からの思い付きを口にしたその時、トランシーバーにノイズが走った。

『レンナ!レンナ!This is オメガbreak! 聞こえるか?!break over!』

先程よりもかなり焦った様子のオメガの声だ。

「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・聞こえる。こっちは出口が見当たらない。どうすればいい?ブレイクオーバー」

『レンナThis is オメガbreak 状況が悪化した。敵部隊の足止めには成功したが、複数の工作兵の進入を確認した・・・。施設内での戦闘となる!我々も援護するので侵入者の対応に力を貸してくれ break over』

「侵入者だぁ?!オ、オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・力を貸してくれって言われても、どうすりゃいい!ブレイクオーバー」

『レンナThis is オメガbreak 相手は南西角付近から侵入したようだ。北東の角部屋にあるサーバールームを占拠されては我々の負けだ・・・。今は少しでも動ける仲間が欲しい! break over』

(南西角・・・?あそこは扉の開かない部屋がいくつかあっただけのはず・・・)
「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・手伝うにしたって、相手がどんなやつかわからない ブレイクオーバー」

『レンナThis is オメガbreak 協力はしてくれそうだな、助かる。簡潔に言うぞ?君の手にしたトランシーバーを身につけていた者と、我々の装備は同じだ。それ以外の者は敵だ break over』

「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・わかった。敵の足止めをすればいいんだよな? ブレイクオーバー」

『レンナThis is オメガbreak よし、いま我々も施設内に入った。そちらに数名応援を回す。場所は? break over』

「オメガ・ディスイズレンナ・ブレイク・東階段だ ブレイクオーバー」

『レンナThis is オメガbreak 了解だ。・・・』

「?」

『レンナ、《やられる前にやれ》、でなければやられる。これが鉄則だ break over』


“さぁて、果たして無事に守りきれるかしら?ゲームの始まりねっ♪”
「いらっしゃいませー♪ファミリーマート此岸淵(しがんぶち)店へようこそ〜☆」カタカタ
軽快な入店音が響いた後、その軽快さに負けないほどテンションの高い店員の声が響いた。

「「「・・・」」」

予想外、いやそれを遥かに超える驚愕の事態に言葉のない3人。
口の回る店員なのか、口上が続く。

「食品・日用品・書籍となんでもござれ、店舗によっては旅先のお土産まで用意している大手コンビニファミリーマート!
きっとお客様の“欲しい”を満足させてみせますよ!さぁ、ご注文は☆」カタカタカタッ



((((;゚д゚);゚д゚);゚д゚)))) ガクガクブルブル

                      (∵皿∵ )??

「が、骸骨がしゃべったぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!」
「いゃ、いやああああぁぁっぁぁ!」
「・・・マジ?(放心)」

店員の声は、3人の傍に転がっていた骸骨の一つから発せられていた!
よほど噛み合わせが良いのか、歯の噛み合う音がカタカタと小気味の良い音を鳴らしている。
・・・化け物の噛み合わせに良い悪いが有るかは謎であるが。


「お客様ー?店内であまり大きな声を上げないほうがよろしゅうございますよ〜?
他のお客様も驚いてしまいます〜☆」


ハッとして辺りを見る紫樹。背筋に寒気が走った。
(ち、散らばってたはずの骸骨がどれもこっちを見てる?!)

反射的に剣を構えた紫樹の横から・・・


「あたしファミマよりローソン派なんだけど^^;」
「というか商品がまず見当たらないよね」

つい数秒前に悲鳴を上げたとは思えない反応をする〓かずきとぁゃの声。
がっくりと力が抜け腰砕けになる紫樹である。


「これは失礼いたしました〜☆ただいま開店いたしまーす♪」カタカタッ

店員骸骨の声とともに、空間に無数の線が走る。
まるでCGデザインを早回しで見ているかのように、線と線が結びつき、
彩色され、みるみる内に『コンビニ』が出来上がっていく。
わずか15秒で、3人は確かにファミリーマートの中に立っていた。
 はたさて、これは一体どういうことだろうか。
なぜこの地にファ○リーマートが存在し、しかも店員が白骨化しているのになぜ動くのか。
屍店員はカランコロンと骨から音を発しながら、よろよろ店内を忙しなく動いている。
見た感じでは危険はなさそうなのだが、いかんせん長年刷り込まれてきた死体という物への恐怖はぬぐえないのである。

 だが、この世界がデータである以上この目の前にいる屍も本物ではないだろうし、自分達自身の体だって本来の物ではない訳で、この屍の姿もアバターというデータであるからしてさほど驚くことではないのだけれど・・・
 
 「ふむぅ これは一体どういう事なのだろうか?」
 紫樹は顎に手を当て考え込むポーズをとっていると・・・
 「お客様、何かお探しの商品でもありますでしょうか?」
 「あ、いえいえ^^;」
 「そうでしたか 何かお困りの事がございましたら仰ってください」
 その顔には既に筋肉と呼べる物はついていないが、その屍店員はにこりと笑ったように見えた。

 
 しかし白骨化した店員とは・・・この姿は衣装なのだろうか?
セルフィーの衣装には様々な物があるが、中には一風変わった物まである。
その中で骸骨になりきれる衣装もあったはずだ。


 だ が 、こ の 屍 や け に リ ア ル な 姿 じ ゃ な い か ?


 そう言えば前に会ったココロの台詞なのだが―

 今の世界はリアルの体及び精神はこの世界のアバターとリンクしている。
そのためか、ここで経験した事象は、データでありながら実物の感覚に反映される。
物に触れば感触が分かるし、お腹が空けば食欲が出てくる。
はたまた、悲しくなれば涙が出るし、傷つけば痛い。
酷ければ血も出るといったことまで起きる。
もしかしたら生命活動の停止といったことも有り得るかもしれない。
勿論この世界で死ねば元の体がどうなるかまでは分からない。
ココロは現在調査中と言っていた。
いや、本当は知っていて伝えていないという可能性はゼロではない。
もし、この屍姿の店員がこの様な姿になったのは、本来の体に何かしらの影響が
もしくは、最悪の答である。

 「いや、それは考え過ぎだよ」
 〓かずきは首を横に振り余計な考えを忘れようとする。
彼女がなぜそんな事を考えるのかには理由がある。
彼女達が異形の者と初めて遭遇した時の話だ。
そう、〓かずきはその時異形の者から攻撃を受け、実際に傷ついているのだ。

 怖かった

 怖くて怖くて、もうあんな体験はしたくないと思った。痛い思いなんてもうこりごりだと思った。
あの後、実は大変だったのだ。
突撃してきた敵は、彼女に恐怖心だけでなく物理的なダメージも与えていたのだ。
今も残る左腕の傷
消える事のない爪痕が・・・
その後は、
怖さと痛さからくる混乱―
傷からの出血―
異様な傷の熱―
仲間の介抱と励ましでなんとか抜け出せることができたが、心に刻まれた記憶は消えない。
あれからずっと彼女の頭の中にねっとりとへばりつき、忘れ去ろうとしても消えないのだ。
「でも、生きてる証しなんだよね」
〓かずきはポツリと呟く。
周りが気づかない程度の小さな声で
「こんな世界になっちゃってるけど・・・私、まだ生きてるんだ」

 時間とは残酷だ・・・
 こんな経験も悪くないかもしれないなどと思える自分を形成してしまうのだから。

 そう、トラウマだけではなく、その傷は彼女に別の物も与えていた。
『現実』では体験できない『死の恐怖から得られる生への実感』
その感情は清々しかった
もっと体感したいと思った。
それは癖になるとまでは“現在”は言えないが、日に日に大きくなってきている。それはまるで麻薬のように。
「でも痛いのは勘弁だなぁ^^;」

■■■
 
 「痛っ!」
今日も左腕の傷(生きている証)が痛む。

〜 そ の 傷 が 黒 色 に 染 ま り 始 め る の は ま た 少 し 後 の 話 で あ る 〜

森の中で二人、いじけた陸々とそれを呆れた表情で見つめるシマショーが、適当に食料がないか漁っていた。

「くそっ、何で女性陣だけで固まるんだよ…」
「いい加減諦めろよ、陸。とにかく食い物見つけて戻ろうぜ、女性陣のためにも(゜∀゜)」
そうだけど…、とぶつぶつ言いながら、陸々は杖を使いながら枝をかき分けて進んでいく。
「ところで…」
「ん?」
「前々から思ってたんだが、その背中の羽使えるのか?」

シマショーは陸々の背に生えて(?)いる白い翼を指さして訊ねた。

「ああ、これ? 使えると思うよ?」

そう答えながら、両羽を撫でて確認する。

「じゃあ、それで飛んでみればこの周囲の状況とかわかるんじゃないか?」
「そだな、じゃあ早速…(゜∀゜)」

それまでほとんど動いていなかった陸々の白い羽が羽ばたき始め、ゆっくりと彼の身体が上昇していく。
そのまま少しずつ昇っていき、気付くと木々の天辺を越えていた。

視界一面に広がる広大な大地。
地平線は遥か彼方にあり、青一色の空が大地を覆っている。
その大地に巨大な塔が一棟聳え立っていた。
塔の天辺が見えず、まるで空に突き刺さっているようだった。

あれが、陸々達が目指している場所である。
(あれが、もしかしたら…)

ヒュッ―――!

しばらくぼーっとその景色を見つめていると、突然陸々に向かって何かが飛んできた。
その何かを咄嗟にかわしたが、バランスを失った彼はそのまま地面へ向かって落下を開始した。

「わあぁぁぁぁぁぁっっっ!」

大きな音とともに、陸々のうめき声が洩れる。
枝が落下の速度を抑えてくれたため大事には至らなかったが、さすがに10数メートルの高さからの落下はものすごい衝撃だった。

「大丈夫か、陸(゜∀゜;)」
「う、うん…、何とか…、いててっ」
「何かあったのか?」
「突然何かが飛んできて…」

「あらん、大丈夫かしら、僕?」

陸々が事の?末を話そうとしたとき、茂みの奥から一人の女性が現れた。
二人とも『知り合いか?』という表情を浮かべ、お互いに首を振る。

「意外とかわいい坊やだこと☆ お姉さん困っちゃう〜」

「へっ?」
「なんだ、あの変なおb(ゲフンゲフン」

「まあ、その話は置いといて…」

その黒いフードを被った女性は、口元に笑みを浮かべて話題を切り替える。

「こんなところにいたら危ないわよ〜。怖い魔物とかがいるから襲われちゃったら大変だわ♪」
「それは親切にど、どうも…」
「いえいえ〜☆ そんな坊やに私から特別良いものをあげるわ〜♪」

そう言って、どっからともなく取り出したあるものを陸々に手渡した。

「これはね、インストールデバイスって言って、その人に特別な能力を与えてくれる素敵なものよ♪」

「へぇー」
「いやいや、まず疑えよ、陸(´∀`;)」

謎めいた女性に警戒心を抱かない陸々を咎め、シマショーは半ば呆れた。

「わ、わかってる!」

「そんなに警戒しなくても、私はただの通りすがりの歌姫ディーヴァよ」

(通りすがりの歌姫ってなんぞ?ってツッコミはダメかな…)
そんなことを考えつつも、二人は一歩距離を置く。


アヤシスグル…(゜Д゜;(゜∀゜;)ソダナ…


「これがあれば、悪い魔物も楽に倒せちゃうわ♪」

二人がぽかーんとしてる間に、ディーヴァと名乗った女性は懐からごそごそと水晶玉のようなものを取り出す。

「百聞は一見にしかずよ♪ これを見て☆」

そこには、見慣れた女性の姿があった。

「スミスさん!」

陸々が思わず大声でその水晶に写る女性の名前を呼んだ。

「なんか叫んでいるようだが…」

まるで彼女の状況を理解するために、シマショーは真面目な顔でそれを見つめる。

黒い化け物に囲まれたスミスが口を開いて何かを叫んでいるようだった。
その瞬間、空気が振動して今にも襲い掛かろうとしていた彼らが消滅した。

「これが、彼女が身に付けた能力よ」

ふふんっ、と胸を張って言う彼女はひとまず置いといて、スミスの能力が何なのか考えてみることにした。

「…超音波ってやつか?」

シマショーが小さく頷き、陸々がごくっと唾を飲み込んだ。
「ご明察♪」

黒いフードの女は歌うようにそう答えた。

「すっごいパワフルじゃない?それに彼女らしい能力だわ♪」
ね、そう思うでしょ?と、ディーバは興奮を隠し切れないといった風に二人に問いかけた。


「まあ、確かにスミスさんはよく喋るしムードメーカーのような存在ではあるよな」
陸はスミスさんの人柄を思い出しながら、シマショーに同意を求める。

「実際会ったことはないが、きっとリアルでもあんなカンジなんだろうな」
陸の言葉に頷きながら、シマショーはディーバの言葉に少し引っ掛かりを覚えた。
「…彼女らしい、と言ったよな?ってことは、そのインストールデバイスで得られる能力は人それぞれ違うと言うことなのか?」

シマショーがそう尋ねるとディーバは

「さあ? ♪♪」

と、不敵な笑みとともにわざとらしく惚けてみせた。

「さあ…って、オマ…」
(;´_ゝ`)

素直な反応を示す陸に満足したのか、ディーバは陸が手にしているインストールデバイスを指差し

「まあ せいぜい楽しませて頂戴♪」

その指を陸の眉間に移し、軽くはじき

「バ〜イ♪」
と、次の瞬間には姿をくらましていた。


「ちょ、楽しませるって… 待てよ!」
陸はインストールデバイスを握り締めながら、半分ムダだと知りつつも辺りを見渡した。

なんだよ、あいつ…と、はじかれた眉間をさすりつつ向き直る。
すると、思案顔のシマショーと目が合った。

「それ、ちゃんと見せてくれないか?」
「これ?」

そう手を差し出され、陸はインストールデバイスと呼ばれた透明なカードを2枚シマショーに手渡した。

「透明、だな… どーゆう素材で出来てるんだ?」
シマショーは天に翳したりしながらそれを観察する。

その表面には文字が浮かんでおり、動いたりして消している。

「可動アイテムっぽいな」
シマショーはそう感想を述べながら、そのうちの一枚を陸に返した。


「お前、使ってみろよ(゜ー゜*)ニヤリ」

「…えええええええ?(゜A゜;)」
「そんなこと言われても・・・おま・・・」

しかしそんな事を言う陸なのだが、半心自分がどんな能力を得られるのか気になってしょうがないのである。

「もしかしたら凄いチートな感じの能力かも知れないぞ^^」

「そ、そうかなぁ?」 

「そうそう^^」

なんだかうまく話にのせられた感はあったものの、進められるがまま、陸は二枚の内一枚を選び見つめる

が、しかし

「・・・で、どうするんだ(´ω`;)」

「・・・確かにな(^∀^;)」

悩む二人の頭上にメール着信のアイコンが点滅する。

「お?同時にメールか・・・なになに?」

シマショーがメールフォルダーを開くと二件の着信が
一方はよく見知った人からのメール
そしてもう一方は差出人不明というなんとも開きたくないメールだった

「俺は姫からみたいだ。早く帰ってきてだって^^」

陸は嬉しそうなどや顔でメールの内容を見せびらかす

「俺も姫からだ・・・ちなみに同じ内容だぞ(^∀^`)」

「・・・(A`)」

さすがに待たせすぎたと反省

「そろそろ戻るか・・・さすがに待たせ過ぎだしな」

「そうだな、でシマショー」

陸は言いだしにくそうな表情で言う

「どうやって帰ればいいんだ?(∀`;)」

「・・・確かにな(ω°;)」

周りを見渡せど、同じような風景にしか見えないこの状況からどう抜け出せばいいのか、悩む両人を見つめる影が二つ
果してその正体とは一体!?

■■■

世界の人類、恐らく全人類がデータ化された世界
そんな世界で最も巨大であり、最も高い一筋の塔があった
この世界には夜という概念が無いのか、一日中昼間であり、いつまでも空は青い
そんな青空に映るその一筋は、背筋が凍るほど白く、この世界にはそぐわない異質な存在感を放っている
その異質さからか、現実には存在しえないほどに美しく、甘く魅惑の夢心地を感じ取る事が出来る
それはもう、見続ければ狂気に陥るのでは?と言っていい程の魅了効果であって―




「でっっっかいの〜」

「だね〜」

さっきから同じ事しか口にしない二人
天を見上げ、口をポカンと開けたまま塞がらない凸凹コンビ、笹ノ葉とまぅである
あの後二人は街から抜け出し、ディーバの言われるがままにはるばるこの巨塔の許へとやってきた訳だが、そのあまりの巨大さに呆気にとられ、早半時間が経とうとしているのである。

そんな塔だが、根元にはこれもまた背筋が凍るほど真白な階段があるのだが、マジマジと見てみると不思議な構造なのであった
その構造はというと全く継ぎ目が見当たらず、光を反射するほど断面が滑らかだった
どのようにしてこの塔が作られたのか、そしてこの素材が金属なのか粘土なのか、それすら彼らには分からないのだ
そんな階段の先にはこれはまた大きな扉らしき物があって、何人たりとも通さないと言わんばかりに入口を護っている
「どうしよっか?」

「ね〜」

これもさっきから何度も繰り返した台詞…。
目の前に立ち塞がる扉には取っ手らしきものがなく、どうやって開けるのかまったく見当がつかない。
とりあえずまぅの意見もあって押してみたものの、その巨大な扉はビクともしなかった。

ちょうど目の高さあたりに鍵口が見つかったが、何をはめ込むのかもわからない…。

「これってやっぱり引き返すべき、なのかなぁ?」
「んー、誰か来るかも知れないし…。もう少し待ってみようか」
「そだね(;´∀`)」

そう言って、すでに半時間ほど経過しているのだが、人が来る気配がなかった。

「結局、このカードって何なんだろ?」
「能力が手に入るって言ってたよね、確か」

笹が話題を変えて、ポケットにしまっていた怪しい女性からもらった透明のカードを色々な角度から眺めながらそう呟いた。
能力、ねぇ…。
SFみたいに身体から炎を出したり瞬間移動したり、目からビームを出したり物を凍らせたり…。

「…って、○-MENかよっ!」

笹の突然のノリツッコミに、一瞬まぅは驚いてビクッと震えた。

その二人のやり取りを遠目で見ていた謎の男が一人、無機質な表情で近付いてきた。

「誰ですか? …ってか人?」

笹がそう言った途端、彼目掛けて先程と同じ表情で突っ込んできた。死んだような目をしているが、明らかな殺意が伝わってくる。
男が振り抜いた拳を何とか避けると、笹がたった今いた大地が陥没した。

え…?

風圧でひらめく裾を手で押さえつつ、笹は突然襲ってきた男を警戒した。

「笹、大丈夫?」

心配そうに近付いてくるまぅ。

「ああ、なんとかね」

男は何かに身体を操られているように不自然な動きでこちらに向き直った。
その違和感のある動きに、笹は警戒を強める。

「痛ぇ…、痛ぇよぉぉぉっ!」

突然男が叫び出して地面を蹴ったと思うと、一瞬で笹に肉薄した。

ダメだ、かわせない…!

…ターーーン…

鋭い射撃音が響くとほぼ同時に、不気味な男は笹ノ葉の横を抜け斜め後方へ転がっていった。
放り捨てられた人形のように慣性で転がった後、ピクリともしなくなる。


「ビューティフォー…」

呆然としつつも、助かったことに安堵し呟いた笹ノ葉へ…

「HSイヤッホォォ(・∀・)」
「笹?!大丈夫?……って何かちっちゃいのが光ってる〜〜〜!」

マイペースな声と、心配しつつもやはりマイペースな声がかけられた。

「スミスさん!スミスさんもこの世界に居たのか!」
「うん、よくわからないけど、気がついたらね〜。
にしても危なかったね笹!恋奈が銃で倒してなかったらどうなってたことか!
あとあと、このちっちゃくて光ってる妖精さん?みたいなの何?ティンク?」
「え、えっと…^^;」
「(確かに今はちっちゃいけどぉ…そんなに言わなくたって…)」
「スナもいいけどやっぱグレとかもブツブツ」

話題を重ねられ戸惑う笹と盛り上がるスミス。
ちっちゃいを連呼され反応に困るまぅと、自分の得た能力に密かに実感を噛みしめている恋奈。


2人と2人が出会い、4人になった。
ディーバの導いた塔に、今ようやく役者が集い始める――
海辺近くにて…―――


「シマさんと陸さん遅いね〜」
「ん〜、道に迷ってるのかな?」
「シマさんがいてそれはありえないんじゃない?」
「そだね^^」

女性3人がそう言いながら、森の中へと入っていった2人の帰りを待つ。
陸々なら迷う可能性がある、ということは誰も疑っておらず、そのため誰一人として彼のフォローをしようとする者はいなかった…。
もし本人がいたらきっと不貞腐れて『画面端』に逃げてメソメソしていたに違いない。

「いつ戻るんだろうね、姫?」
「そ、だね…」

ぁゃのフリに答えた〓かずきの微妙な反応に、ぁゃが不思議そうに彼女の顔を窺う。

「どうしたの、姫?」

一瞬ハッとした様子で、姫が笑顔を浮かべて首を左右に振った。

「ううん、なんでもないよ(;´∀`)」
「そう? それなら良いんだけど…―――」

「あれ? あそこにいるのあずさんじゃない?」

と紫樹。
その指差す方向に視線を向けると、遠くのほうにビーオン姿の人(?)影が見えた。
ちょうど、陸々たちが入っていった森とは真逆の方向のほう…。

「どこ行くんだろ?」
「ちょっと声かけてくるね」

紫樹が軽々と大剣を持ち上げて、軽い身のこなしで駆け出していった。





しばらくして…

取り残された〓かずきとぁゃは紫樹の向かった方向を眺めながら彼女が戻ってくるのを待っていた。

「…戻って来ないね」
「どうしたんだろう?」
「どうする? 探しに行く?」
「そだね、紫樹さんのとこ行こっか」


ピコーンッ―――!


立ち上がった時、一通のメールが〓かずきに届く。

「ん? 誰から?」
「紫樹さんからみたい…。ちょっと待って、えっと…何なに…? …『先に行ってて。あとで追っ掛けるから。ごめんね』だって」
「そなの? じゃあ、陸んとこ行ってあげよっか」
「そだねー( ´_ゝ`)σ」
「ちょwその顔www」
「ん?どしたの、ぁゃ?( ´_ゝ`)σウィー」
「ぃや、やめっ…あははっwwwwww」

そんなやり取りをしながら、ぁゃと〓かずきは陸々と春風亭シマショーが入った森の中へと進んでいった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「んんーっ!」

何かを念じるような声が森の中に響いていた。

「んんんーーっ…、ってダメだぁ(;´Д`)=3」

陸々が脱力してその場にしゃがみ込む。

「ふむ、やっぱり何かしらの条件とか必要なのかもな」

と、冷静に考えてそれを口にする。



「はぁ、疲れた…(汗」
「ねぎらいの言葉は、必要か?」
「大丈夫だ、問題ない(`・ω・)。+゜キリッ」
「…(´∀`;)」
「ん?どした?(`・ω・)キリリッ」
「なんでもねー」

ツッコミ入れると疲れるから、とぼそっと呟く。

「しかし、一体どうしたら使えるんだろうな(゜∀゜;)」

呆れた表情で陸々を見て、やれやれと首をすくめる。

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