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人生は感動だ!コミュの12 失敗の“後”が人間を決める

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先日のトリノ冬季五輪で、荒川静香選手の金メダル、これはだれが見てもパーフェクトの成績でしたが、スケートの岡崎朋美選手やスキー回転の皆川賢太郎選手は僅か100分の数秒の差でメダルに届かなかったのは記憶に新しいところです。
桜咲く4月は新入学、新入社の季節ですが、同時に受験シーズンを終えたばかりの時期でもあります。志望校に入るか否か、ここでも僅かの差で合否が待ち構えていました。みんな頑張ったのだから全員合格にしてあげたいところですが、そうはいかないのが現実です。
当家の子供たちも既に社会人になっておりますが、多分にもれず、受験期には喜んだり悲しんだりの繰り返しでした。もちろんその時の成否が人生を決めているわけではありません。いま長男は学業の課題関連の業界に就いていますので、希望の職業というふうに見えますが、妹から間接的に聞いたところでは薄給を嘆いているようです。その妹はというと、理想とした職業に就いたわけではありませんが、就職した会社は業績好調で、どうやら兄より高給取りのようです。
しかし、それまで、その時々の成否は本人にとって「これで人生が決まった」ぐらいに感じてしまうのも仕方のないことです。若い時代に時折り訪れる挫折感や傷心を救ってくれるのは、母親をはじめ、身近にいる人達のやさしい気配りではないでしょうか。
今回は昨年お届けした東井義男さんの書籍の一説から受験の話題をお届けします。    ヤ06.4.1 H.Shinkai

○母が子にしてあげられること

 受験期のお子さんをおもちのお母さん方は、今、お子さんに、どんな態度で何をしてあげてくださっているのでしょうか。ただわが子が、受験に勝利してくれればいいと、叱咤するだけでいいのでしょうか。また、オロオロ、子どものご御機嫌を取るだけでいいのでしょうか。
 勝利しても、失敗しても、それが、人間成長の上に、大きな栄養になるようにと、願ってくださるべきではないでしょうか。
 広島県下のある中学三年生の生徒の詩をご紹介しましょう。

 母と語る
夜 母と話をしていました
母は 静かな声で話しました
なんの話かというと 入試のことなのです
母は 第一志望校に落ちて
第二志望校の高校へいったそうです
合格発表があった日
一歩も家から外へ出ることができなくて
泣いていたそうです

だから世間話などで
あの子は入ったとか あの子は落ちたとか
そんな話は いっさいしません

今になってみると あのときのことが
物の考え方に とても役に立ったといっていました
心のやさしさの大切さがよくわかったそうです

いろんな人の気持ち いろんな人の立場が
少しでもわかるようになったのは
あのときの体験のおかげだと 淡々と話しました

母は 受験では失敗しました
でも やさしさに磨きがかかったのです
不合格を 冷たい目で見ない母を ぼくは尊敬します

そのときは悲しかったにちがいありません
人の目を気にしたかもしれません
でも 今では 静かな声で 話します

年月がそうさせたのでしょうか
人間の気持ちは変わるのでしょうか
今では それが
心の強さ やさしさになっているのです

夜の 母との話は
たくさんのことを考えさせてくれました
話のなかみから
語っている母そのものから……

今夜 母が一番好きになりました
母を 前より尊敬する気になりました
母には いろんな体験があるのです

三月に入って 卒業式がすむと
ぼくの志望校の入試があります
今夜 母から聞いた話を胸の中にしまって受験します

人は 長い長い人生を歩いていきます
その間に いろんなことがあるのでしょう
思いがけないこともあるでしょう
目の前に迫ってきた 入試
これだって たくさんのできごとの中の一つのことです
母みたいに 心の栄養にしていきたいと思います

お母さんと子どもさんとで、一度、この詩を読み合い、話し合ってみてくださってはいかがでしょうか。

○不合格から「祝出発」

昭雄君は、「とても無理だ」と、先生や両親から説得されても、A高校受験の考えを変えようとしません。逆に、お父さんは、「よし、お前の意志通り、A校を受けなさい。しかし、一つだけ約束をしろ。発表は、必ず一人で見に行くこと。そして、自分の受験番号がなかったら、一時間、その合格発表板とにらめっこして考えてくること。これができるなら受験しろ」と、言い渡されました。
 昭雄君は、やすやす、約束しました。
 発表当日、お父さんは、昭雄君に見つからないように発表を見に行かれました。受験は失敗でした。お父さんは、すぐ家に帰って、昭雄君を待たれました。一時間半ほどたって昭雄君が帰ってきました。
「だめだった、ごめんな」と、昭雄君が頭を下げたとき、お父さんは「よし、これだ」と言って、金包みを渡されました。包みには「祝出発」と書いてありました。
 その日のことを、昭雄君は、次のように書いています。
 やっぱり落ちた。悔しい。涙がこぼれた。逃げ出したくなった。父との約束が頭にひらめいた。男の約束だ。破っては男がすたれる。悔しい。こんな約束をさせた父親がうらめしい。残酷だ。どうせ一時間も立っておられるものかと思っているに違いない。なにくそ、一時間くらい何だと、反抗心がわいてきた。が、一時間は長かった。発表板がうらめしかった。
 どうも今まで、真剣さが足りなかった。よし、今から出発だ。D校に行ってがんばり直そう。こんなに考えたら、少し気持ちが落ち着いてきた。だが、一時間は長かった。やっと校門を出ることができた。帰路、心の中で、出発だ、出発だと唱えていた。
 家に帰ったら、父母は何も言わなかった。親父が、そっと「祝出発」の包みをくれた。うれしかった。「やるぞ!」と思った。

「祝出発」の親心に学びましょう。

「東井義雄、『いのち』の教え」(平成4年4月15日初版)より転載。

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