山上智の速報コミュの平成のXファイル・古代・1NO－１４２

名前は、筆者。職業はオカルト・古代史探偵。
相棒のハンターは、ハッキングの名手で身元不明の女の子。
東京ベイテレビの「K」という謎の人物から毎回、不可思議な仕事依頼がある。

朝９時、雲が一面を被っていて肌寒い日である。事務所のソファに横になりながら窓から秋空を眺めていると、携帯電話が鳴った。ソファの前にあるテーブルの上に置いてあった携帯を手にとって見てみると「K」からのメールだった。

「古代ピラミッドか三角すいの山二つ」
Ｎｏ－１４２「熊本日日新聞」１９９１年１月１日～熊本県
　
これだけのメッセージだけだった。
ピラミッドといえばエジプトのギザにある三大ピラミッドを思い出した。たしか、何の目的で作られたのか未だに不明なのではなかったのではないだろうか。
そのような巨大なピラミッドが存在するのだろうか。ましてや三角錐の二基なのである。
　筆者は、モーニングコーヒーも飲む間のないメールだったので不機嫌な気持ちになった。
そのメールをハンターに見せると、ハンターは無言でパソコンに向かってキーボードを叩き始めた。

ハンターは今年で２０才になったばかりの女の子である。
一年前に、横浜駅構内で空腹でうずくまっているのを助けたのがきっかけで、筆者の助手をしてくれていた。
細かな事は、少しずつ話していこうと思う。とにかく若いくせにパソコンの打つ早さときたら並大抵の速さではない。
それと、卵形のマウスを使って操作するのが普通なのだが、ハンターはペンマウスというボールペンのちょっと太くした物で操作しているのだ。

１分もしないうちに、パソコンの画面に、１９９１年１月１日の「熊本日日新聞」の内容が現れた。
一体どのようにして調べたのかは分からないが、「古代ピラミッドか三角すいの山二つ」熊本日日新聞の紙面が目に飛び込んできた。
阿蘇郡産山村（うぶやまむら）山鹿（やまが）に二基のピラミッドが発見された。
という内容である。
「うむ・・・阿蘇郡か・・・」
「熊本空港のチケットの予約は頼んだぞ」
と、ハンターに言って事務所を飛び出した。そして横浜駅から京浜急行で、羽田空港に向かった。

熊本空港に着くと、レンタカー会社に向かった。ハンターが予約してあったのだろう。車がすでに用意されていた。
熊本空港から３００号線通称ミルクロードを通って、１時間ちょっとで産山村に着いた。
メールの着信音が鳴った。ハンターからのメッセージである。
「４０号線沿いの烏帽子塚（えぼしつか）に向かへ」という内容だ。
村役場に寄って、場所を聞くと役場から１０分ほどの距離だった。
又、UFOの目撃も多いという事も話してくれたのだが、筆者はUFOというものに興味は無かったから、早々に村役場を辞して、目的地である烏帽子塚に向かった。
何の変哲も無い小さな丘のようなものが見えた。
「これが烏帽子塚なのか」
高さは約１０メートルと約８メートルの大小と二基並んでいるだけだった。
「なんだ。これがピラミッドなら、日本全国の山は全部ピラミッドということになってしまうんじゃあないか」と、一人でつぶやいた。
これだけでは何とも答えの出しようが無い。とりあえず、付近を調べてみよう。
レンタカーを借りた所からもらった地図があったので開いてみると。平川神社・乙宮神社・嵯嶬神社・片保阿蘇神社の４ヶ所があった。
仏閣と違って、神社にはそれなりの由来があり歴史も残っているものだ。
烏帽子塚の一番近い神社はとみると、平川神社が同じ道路沿いであるのがみてとれた。
案内板にこうかかれてある。
平川阿蘇神社が正式な名称だ。
『阿蘇大神の御嫡孫が御降誕の際に、産湯を沸かす平竃（ひらかまど）を祀り平竃明神と称えた』とある。その言葉がなまって平川とよばれるようになった。
「違うな～」この神社ではないと思った。
再び地図を見ると烏帽子塚の真東に乙宮神社がある。車を走らせていると「国民宿舎久住高原荘」の矢印が目に入った。
なんと、すぐ隣は大分県竹田市ではないか。ずいぶん山の中に来たものだと妙な感心をした。
５分ほど行ったところに乙宮神社があった。
案内書が置いてあったので、読んでみると。
『阿蘇宮六宮に、若比咩神は、彦御子神の妃として祀られているところから、古来より本村では、阿蘇大神御嫡孫、御生誕の地は乙宮であり、「産山」という地名の起こりであると言い伝えられている。』
階段を上ると、山中にしては見事な神殿である。神殿は総ケヤキ造りで、華麗な彫刻と枡組が施され荘厳であった。
筆者の直感が閃いたのであった。
おそらくこの神社と関係があるかな―――
そういえば、来る時通ったミルクロードは阿蘇市だなとも思った。

阿蘇神社には、以前に熊本県八代市の河童上陸地の取材の帰りに寄ったので記憶があった。
たしか阿蘇大神とは、神武天皇の御子神八井耳命（かむやいみみのみこと）の皇子健磐龍命（たけいわたつのみこと）のことだったはずである。その妃が阿蘇都媛命（あそつひめのみこと）だ。
阿蘇初代国造の速甕玉命（はやみかたまのみこと）及び近親１０神を集めて１２神（１２宮）を祀る神社として創建された。
まるでユダヤの１２部族みたいな感じがした事を思い出した。

だが、『古代豪族系図集覧』の皇室（皇統譜）によれば、神武天皇から数えて６代目が健磐龍命・科野国造（しなののくにのみやっこ）であり、その皇子速甕玉命が初代阿蘇国造なので、相当な食い違いがある。

そんな事を考えていると、携帯が鳴った。ハンターからのメールだった。
「明日、上野駅・公園改札口で待つ。１0時」
一体、何だと思っているんだ。筆者は取材途中だというのに。仕方なく、熊本空港へ帰る事になった。日帰りの取材になってしまった。
「K」にどのように報告書を提出するのかを考えながら、羽田空港から上野駅に向かいビジネスホテルで一夜を明かした。
翌日、１０時に上野駅の公園改札口に行くとハンターが待っていた。
チケット２枚差し出された。
「昨日、Kから送られてきたのよ」
それを見ると、「トリノ・エジプト展」と書かれてあった。
不思議な気がして、２人で東京都美術館に向かった。
早いせいもあってか人が少なかった。
入口でチケットを差し出し、中に入って最初に目に付いたのが、中央に置かれてあったケースなのだ。
それを見た筆者は、立ち止まったままつぶやいてしまった。
「おいおい、嘘だろう!!」

報告書Ｎｏ－１４２
阿蘇郡産山村山鹿の烏帽子塚と隣にある三角錐の小高い丘二基は、詳細は不明だがピラミッドというより岩窟墓（がんくつぼ）の可能性が高い。乙宮神社拝殿から西に向かって問題の三角錐ピラミッド二基が建っている。
エジプトの新王国時代１９王朝（前１２９２～前１１８６年頃）の岩窟墓「イリネフェルとナクトミンの墓」と酷似している。発見場所は、テーベ西岸（王家の谷近く）、ディール・アル＝マディーナ出土。高さ１５２センチメートル、幅１４５センチメートル、奥行８９センチメートル。
死者の埋葬後、生きている者は墓に入れないが、墓の上の礼拝所で死者と「出会う」ことが可能とされ、死者への供物は礼拝所に置かれた。礼拝所の上には、小ピラミッドが設置された。
あたかも故郷である西方のエジプトを拝する位置に建立されている。この事からして、烏帽子塚の地下に古代の大物の遺体が眠っていると考えてもおかしくはない。その遺体がミイラ状なのかは発掘してみなければ判別不能。
その礼拝所が乙宮神社かもしれない。いずれにしても、三角錐二基のピラミッドが存在している。
おそらく古代から未来人へのメッセージなのかもしれない。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　イラスト　JUKI

「トリノ・エジプト展」の写真は掲載できないのでイラストを掲載しています。

お勧めブログ小説「猪群山ストーンサークル殺人事件」金曜日UP
今週の内容「草刈り中に死体発見となります」
検索方法・フジテレビ→「清水Pは見た」→「猪群山ストーンサークル殺人事件」