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Think About 2030コミュのVol.14 『幸せな犠牲者たち』

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先週は1円でも安いものを求める消費者のことを取り上げましたが、
今回はその逆、つまり、法外な価格をつけた商品に夢中になる消費者のことを書きます。

私は少しだけ服飾界の事情を知っているつもりですが、
昨年読んだ『堕落する高級ブランド』(ダナ・トーマス)http://goo.gl/WBCvには衝撃を受けました。
グローバル・ビジネスの本質が見事に描かれていたからです。

エルメス、ルイ・ヴィトン、カルティエなどの舶来高級ブランドは、
19世紀、欧州の王侯貴族のために高価な服飾工芸品を作ったことから始まり、
その後も大富豪、女優などに愛用されてきた老舗のブランドです。
したがって宣伝や広告などとは縁がなく、
ひたすら職人の鍛え抜かれた伝統技術だけが支えてきた、
いわば宝石にも似た世界最高の工芸品だったとも言えます。

ところが、現在のブランド品のほとんどは中国で作られています。
特に売上げの大部分を占めるバッグは、コンピューターによるデザイン、
鍵はイタリア・中国、ジッパーは日本、刺繍はインド・中国、レザーは韓国、そして組み立ても中国。
最後に「Made in France」「Made in Italy」などのラベルが貼られて出荷されます。
Tシャツやニットなどはメキシコ、マダガスカル、モーリシャス(アフリカの島)といった
賃金の安い発展途上国。

ちなみに、広東省のアパレル工場で働く女性の平均月収は5000〜1万円。
それでも最近はベトナム、カンボジアへ移すらしく、
工場は「安くて豊富な労働力を求めて世界中をさまよう」のがブランド界の現状とのこと。
生産コストは卸値の1/10以下というから驚きです。

その一方で、ブランドメーカーは巨額の宣伝費を投入してメディアに広告を出します。
大都市の目抜き通りにはゴージャスな直営店を配置。
また、ハリウッド・スターやミュージシャン、スタイリスト、
あるいは世界中のセレブたちと組んで周到なイメージ戦略を展開します。

その経営戦略はソニーやトヨタに負けていません。
それもそのはず。
現在のブランドのほとんどはファッションとは縁のない大物実業家が支配する
コングロマリット(複合体)企業。
ちなみに、創業者の家族が参加しており、伝統的製法を続けているブランドは
エルメスとシャネルくらいであり、後はすべて大物実業家のグローバル・ビジネス。

そして、このビジネスに最も貢献しているのが日本の女性というわけです。
高級ブランド市場全体の41%が日本での売上げ、断トツの世界一です。
アメリカは17%、ヨーロッパ全体で16%(2004年のデータ)。
王侯貴族どころか、茶髪のギャルたちや綾小路きみまろに夢中な
奥様たちまでブランド物が日用品となっている。
レザーよりはるかに原価の安いビニールのバッグが、
ブランドのマークを付けただけで数万、数十万円で飛ぶように売れる。
「日本は工業国なのにビニールがないのか」とイタリア業者が真剣に聞いたそうです。

ジャーナリストの都築響一さんは、こうした人たちを「幸せな犠牲者」と呼んでいます。
ブランド戦略にドップリはまりながらもブランド品を買うことで幸せを感じている。
こうした奇妙な消費行動を解明したのがヴェブレンの『有閑階級の理論』(1899年)です。
金持ちは衒示的消費(みせびらかし)によって社会的名声を拡大するという有名な理論。

ヴェブレンは別な著作で、産業を2種類に分けています。
物を作る産業(インダストリー)と収益のみを重視する産業(ビジネス)。
そして、「ビジネス」は「インダストリー」を侵食していくというのが彼の資本主義論です。
彼の予測どおり、ブランド業界は確実にグローバルな「ビジネス」となりました。
そして世界最高の工芸品を生んできた「インダストリー」を見事に駆逐しました。

ともかくも今の高級ブランド業界は、グローバル・ビジネスの本質というか、
からくりを見事に体現しています

ところで、ブランド物に数万円を使う日本の消費者が「幸せな犠牲者」であるなら、
先週書いた、食べ物は1円でも安いものを探す消費者を、
いったいどう呼べばいいのでしょうか?


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