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「ナオキ」ドキュメンタリー映画コミュのショーンの日記から③ 「M氏のオフィス」

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M氏のオフィス

また夜を潰しに、性風俗に満ちた渋谷の街、美しい雪に覆われた通りをうろつきながら

世界的に有名なロシアのドキュメンタリーフィルム制作者、ヴィクトル・コサコフスキー

(2番目に作る映画の監督)はカメラを回す。


僕たちは3月の初めまでにNHKにアイデアを出さなければならず、映画監督は全部で4人いる。

僕とヴィクトルは酔っ払いながら、風俗街の派手な女性たちにカメラを向ける。

バーの中や外…酒とジン、トニックなどなどで煽られる濃い日本人的精神…


まだ日本を探索中で、何か新しいものを見つけたかったから、スクールには戻らなかった。

本当に、話せる誰かを見つけたい。



会話の成り立つ誰か、この狂った社会について疑問を投げられるような、そして、この4週間で僕の心の

内に築かれていった不安に答えてくれような、賢くて、他の日本人ほど追従的でない誰かを見つけたい

……。


僕は、東京でこういった映画作りを手伝っている製作会社のオフィスを撮り始めた。


親切なプロデューサーのマツイ氏(「ハロー、ミスター・ショーン、ようこそ……」

―僕からカメラを取り上げ、こちらを映している)がスタッフ全員に僕を紹介する。

「こちらはマユミさん(23歳、アシスタント)とジンボくん(23歳、男性アシスタント)」

オフィスの中を見るのは好きだ、もう一つの日本の側面が見える。


ハイテクさや、表向けに片付いたところがない―使いにくい古いVHS機器の一式で溢れ、すばらしく汚い

床だ。散らばった紙、デスクでタバコを吸うスタッフ……これが現代の日本か?

第一世界の国である日本と、第三世界のメンタリティをもつ日本との出会い……。

ワォ……。

動揺を隠せない―今カメラを持っているジンボが、それをこちらに向けているのがわかる。

この会社の状況に悲しさを感じていると、孤独で物憂げな瞬間を捕らえようと近づいてくる。

「ミスター・ショーン」彼は言う。

「なんだか悲しそうだな、泣きそうに見えるけど……どうしました?」

僕はちょっと言葉を失って、適当にごまかした。


いろんな意味で、それは未だにここで最も記憶に残っている瞬間で、その時、僕は自分自身に尋ねてい

た。


なぜここにいるんだ? 僕は何をしてるんだ?

そして、ある意味で、この場所に囚われた人々を気の毒に感じていた。

この会社と、日本という国に囚われた人々を。


ここは、共産主義が資本主義と出会った場所だ―一瞬、僕の心はフセイン時代のイラクに戻っていた。



遅くに、マツイ氏は棚から寝袋を下して床に広げながら冗談ごとを言う。

仕事が遅くなった時にスタッフたちが床でどんなふうに寝るか示すため、僕をもぐり込ませる。

ジンボもタイヤつきのチェアーを4つ持ってきて引っつけて、彼の動くベッドを見せる。

マユミはずっと僕のリサーチの仕事を手伝ってくれているが、どんどん疲れてきているのがわかる。

心配になって、マツイ氏になにか言おうと思ったが、仕事を適切に運べなかった彼女の失敗のせいだと

解釈されてしまうだろうから、なにも言わなかった。


マユミはいつも片道2時間かけて仕事にやって来て、終電は東京11:30発で、朝はいつも10時までにオ

フィスに戻る。

ジンボがコンピューターの前でうとうとしているのに気づく。

夕方6時半―恐らく、帰宅時間まであと5時間あるだろう。

カメラをつかみ、彼を撮る。おかしいけどショッキングな瞬間だ。

立ちながら、突っ伏しながら、あるいはコンピューターに向かって座っているだけの姿勢で人がどうやっ

て寝ているのか見るのは興味津々だ。

後ろから見ると、ジンボが寝ていることは決してわからない。

それは彼が若干23歳で身につけた熟練の技だ。

このような忙しい場所では、皆うたた寝には目をつぶる。

しかし、このように拘束された従業員に囲まれていると、罪の意識を感じる。

僕は自分の好きな時にオフィスに来て、好きな時に出ていくことができるのだ。

街で夜遅くまで過ごした後は、午後2時まで寝ていたり。

この生活を変えなきゃいけないと思わせるような空気だ……

日本人に少しも近づいていないのは、いけ

ないことのような。僕は新しいページをめくることに決めた。

少なくともやってみよう。

ここで自分を楽しませ続けるための最新のコンセプト、それは「日本人になること」。

新しい仮題。

僕はマツイ氏(ここの制作部長)を撮りながら、日本人がされるのと同じようにスケジュール

を組んでほしいと話した。

僕の一日を命じて、僕をベッドから、パブから出してくれるようにと。

東側が西側と出会い、でもお互いによく理解していないところで、これは文化の衝突になるだろう。

ある意味、子供心をくすぐる。

マツイ氏は最初、こう言いながら拒んだ。

僕の「リラックスした…人生に対するカジュアルな取り組み方…日本ではあり得ないこと」がうらやましい

と言って。

僕は、自分がここで何もしていないことに気を揉んでいて、安っぽいバーなんかの他の場所で魅力的な

ものや気晴らしになることばかり見つけているから、どうか計画を立てて律してほしいと主張した。


ついにマツイ氏は「ミスター・ショーンのスケジュール」と書いた予定表を持って僕を座らせる。


「OK、ミスター・ショーン、今日は何時に起きましたか?」

「午前10時」僕はカメラの後ろから答える。

彼はそれを表に書きとめる。

「それから何をしましたか?」

「コーヒーを飲みにいった」

彼は僕を見上げる。

「それから何をしましたか?」

「ベッドに戻りました」


僕は笑いをこらえきれなくて、クスクス笑うようにカメラがぐらぐら揺れる。

特に夜が長く、一日をスタートさせるのが難しい。マツイ氏は呆然としているようだった。

「OK、じゃあ、2番目に起きたのは何時ですか?」

「12時」

彼はそれを書きとめる。

「それから何をしましたか?」

「ピザを食べにいった」

「ピザを食べにいった」彼は書く。

「それから何をしましたか?」

「ベッドに戻りました」

「ナニ!」

マツイ氏は後ろへ下がり、信じられないというように首を振る。

「オーマイゴッド……では、3番目に起きたのは何時ですか?」

「このオフィスに来る一時間半くらい前かな」

彼は時計を見る……それは午後4時だ。

「OK、ミスター・ショーン、こちらであなたの計画を立てないといけないようですね」


皮肉なことに、通常の一日の仕事を詰め込んでオフィスを閉めようとすれば、まだ深夜までにはたっぷ

り時間が残るというのに、このオフィスは朝からずっと開いている。

僕はうとうとしているジンボの方を見渡した。

その後、マユミが、彼女は公然とうたた寝するのは好きじゃないから、目を開けていられない時はトイレ

に駆けこむとうち明けた。


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