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shangri-la.coコミュの『象の庭』(記録用)

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『象を鎖につないで飼う。

 象の行ける範囲は、鎖の長さを半径とした円の内側に限定される。

 なんとか円を出ようとする象。けれど鎖で円の外には出ることができない。

 あきらめて、そのまま象は暮らす。

 しばらくして、象の足かせを外してやる。

 ところが象は、もう円の中から出ようとはしない。

 なぜなら象は、自分はその先に進めないと思い込んでいるからだ。』

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(S-1-1)

 騒々しい店内に向き合っている二人。

 店の喧騒とは対照的に、二人は黙りこんでいる。

 会話はない。ときどき料理に箸を伸ばす。

 会話はない。目線の合わない二人。

 たまりかねて男は伝票を持って立ち上がる。

 男は去る。

 ひとり残される女。

 何も言うことができない。

 なぜなら目の前には、誰もいないのだから。

 頭痛がする。

 目の前のサラダを脇へと追いやった。

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(S-2-1)

 ケータイの画面には、受信メールが映し出されている。

『もう無理だよ。

 ごめん。    タツヤ』

(S-2-2)

 ケータイを見つめる。

 ケータイを閉じる。

 ベッドにケータイを投げつけて、部屋を出る。

 ケータイだけが、寂しくベッドに横たわる。

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(S-3-1)

 田んぼが並ぶのどかな風景が広がる。

(S-3-2)

 青空に浮かんでいるようなバスケットゴール。

(S-3-3)

 バスケットボールがぶつかる。ゴールには入らない。

(S-3-4)

 転がり返ってくるボール。拾い上げてもう一度投げる。

(S-3-5)

 ゴールには入らない。

(S-3-6)

 もう一度投げる。

(S-3-5)(S-3-6)繰り返し 

(S-3-7)

 落ちて転がっていくボール。

(S-3-8)

 コートの端へと転がっていく。

(S-3-9)

 ボールを拾いに向かう。

(S-3-10)

 足が止まる。前へ進めない。足もとに目を落とす。

(S-3-11)

 左足にチェーンが巻きついて、南京錠で閉じられている。

(S-3-12)

 チェーンが張っている。

(S-3-13)

 膝を上げて前へ出そうとする。チェーンが揺れる。

(S-3-14)

 しゃがみ込む。

(S-3-15)

 南京錠を外そうとするが外れない。

(S-3-16)

 「君には無理だよ」

(S-3-17)
 
 振り向くと、テーブルにクマが座っている。

(S-3-18)

 クマ:「君には外せない」
 
(S-3-19)

 クマ:「だってここは『像の庭』だから」

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(S-4)

 クマ:「まあ、お茶でも飲んでいきなよ」

 おんな:「... 明日も仕事なんだけど...」

 クマ:「1日ぐらい行かなくも平気だよ」

 おんな:「......」

 クマ:「何も変わらないさ」

 クマ:「君が思っているほど、誰も困らないし」

 おんな:「.....」

 クマ:「はちみつ入りのミルクティーだよ」

 クマ:「おいしいよ」

 クマ:「いつも君が飲んでいる栄養ドリンクより美味しいでしょ?」

 クマ:「サケもあるけど食べる?」

 クマ:「ナマだけど」

 おんな:「... いらない......」

 クマ:「なんで、そんなに不機嫌なの?」

 クマ:「彼氏にフラれたの?」

 おんな:「......]

 クマ:「まあ、いいや」

 クマ:「あの二人、今日結婚するんだよ」

 おんな「......」

 クマ:「祝ってあげてよ」

 おんな:「…おめでと……」

 クマ:「彼はね、旧ソ連で生まれたんだ」

 クマ:「アザラシを狩って暮らしてた」

 クマ:「流氷に乗ったりね」

 クマ:「彼女はね」

 クマ:「アメリカのフロリダ......って場所、知ってる?」

 おんな:「... 知ってる......」

 クマ:「マイアミの動物園で飼われていたんだ」

 クマ:「二人はさ、もちろんお互いを知らなかった」

 クマ:「でもある日、二人は」

 クマ:「カサブランカで出会ったんだ」

 おんな:「......」

 クマ:「彼は生まれ育った北極海を出て」

 クマ:「ヨーロッパを経て」

 クマ:「モロッコに向かった」

 おんな:「......」

 クマ:「彼女も動物園から逃げ出して」

 クマ:「貨物船でアフリカに渡ったんだよ」

 おんな:「...なんで?」

 クマ:「そこに出会いがあると思ったからさ」

 おんな:「...なんでここにいるの?」

 クマ:「新婚旅行だって」

 クマ:「これからどこで暮らそうかって」

 クマ:「相談してるんだ」

 おんな「へえ...」

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(S-5)

 クマ:「どこがいいと思う?」

 おんな:「...えっ,,,?」

 おんな:「パリとか,,,?」

 クマ:「犬のフンが転がる街だね」

 おんな:「......」

 おんな:「じゃあニューヨーク?」

 クマ:「ユナイテッド航空が不時着する街だね」
 
 おんな:「......」

 おんな:「じゃあハワイ?」

 クマ:「どこの国かわからない街だね」

 おんな:「じゃあ...勝手にすればいいじゃん」

 クマ:「そんなこと言わないでさ」

 クマ:「ゆっくり考えてみなよ」

 おんな:「......」

 クマ:「ゆっくり...」

 おんな:「じゃあ」

 おんな:「あたしの部屋はどう?」

 クマ:「いいね!それ!」

 クマ:「最高のアイデアだよ!」

 クマ:「もう迷わず行けるよね?」

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