ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

とりあえず怖い話。コミュのでびノート2(第28話)

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【まとめトピ】はこちら↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=46176184&comm_id=4419734


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「じゃ、おつかれさん!」


「お、おつかれさまでした」



夕方五時。


オレは出雲さんに頭を下げ、帰路に着く。



久々の仕事はあっという間に終わった。


やっぱり、嫌な事を忘れる為に集中すると、時間はあっという間に過ぎ去ってしまうんだろう。





 帰り道。


川辺の道を通っていると、オジサンの店が目に入った。


…なんだか、でびノートの存在を頭から消してしまいたかったので、もうあの店には行きたく無い気分だったが、


今月分の100円を支払わなければいけない為、オレはオジサンの店に寄る事にした。







ガラガラガラ…。


「…おじゃまします…」



入り口の玄関を開け、おれはオジサンを目で探しながらあいさつをした。




「じゃますんねやったら帰ってや〜」


普通に番台に座っていたオジサンは間髪いれずに返してきた。




「ほな、失礼します〜」


ガラガラガラ…。

玄関を閉めるオレ。












ガラガラガラ!


そしてまた勢いよく玄関を開くオレ。


「オイ!じゃまするってそういう意味ちゃうわ!」







「やあ、ボウヤかい。いらっしゃい…っと、あけましておめでとう…だな」




「…あ、おめでとうございます…」




一連のボケとノリツッコミの下りに触れる事なく、オレとオジサンは普通に話を始めた。




「…あ、そうだボウヤ。

年明けにね、卸業者からボウヤ宛に小包が届いてたんだよ。

…えっと、どこしまったっけな…」



ゴソゴソゴソ…



「…あった、はい、これ」



オジサンは、何かが入った真っ黒な封筒を差し出した。



「…これは…オレに?」


「ああ。ボウヤにだよ。ちゃんと宛先がボウヤになってるだろ?」




真っ黒な封筒の宛先を見ると、確かに【馬上まさお】と書いてあった。

ただ、住所は載っていなかった。



「な…なんでオレ宛の荷物がここに…」


「…まあ、色々あるんだよ。この業界は…とりあえず、あけてみなさい」


「…」



オレは封筒の縁をキレイに剥がそうとしたが、2センチほど剥がしたところで失敗した為、後は乱雑に破いた。



「…やっぱり…か」


…なんとなく予想はついていたが、中身はやはり【でびノート】だった。



でびノートを手にとり見つめるオレに、オジサンはアゴに手をやりながら話しかけてくる。


「…ボウヤ、ダメじゃないか。長い長いローン組んだ大事なノートなんだから…粗末に扱っちゃいけないよ」


「…オジサンこれ……


  …このノート…一体…どうやって…」

「…さあ、実際のところ、オジサンも詳しくわかんないんだ。


ただ、そこのメーカーはとても優秀で、盗難保障はどこよりも優れてるって事は有名だよ」



「…盗難とか以前に…このノートは…年末に燃やしたはずなんです。

…それがなぜ…」



オレはノートをペラペラやりながら聞いた。


ノートの中は、間違いなくオレの字で、オレが書いた文字が書かれている。




「…燃やすとか…ダメだよボウヤ。物は大事に使わないと」



「…オジサン…。

…このノート…返品とかって出来ないんですか?」


「…もう、使っちゃってるからね。ちょっと出来ないねぇ」


「…オレ…


…オレ、もう嫌なんです…。


本当に…もう…。


去年の暮、オジサンに色々言ってもらったのにアレなんですけど…


…オレ…もう…本当に…」




色んな事が頭の中で蘇った。


…色んな事というか…母さんの色んな事が。



…下唇を噛みしめ、オレの目からは涙があふれて来るのが解った。




「…ボウヤ、どうしたんだい。

…どれ、ちょっとオジサンにノートを見せてみなさい」



俯きながら、オレはでびノートをオジサンに手渡した。



オジサンはノートをペラペラと捲る、


…そして、母さんの事を書いているであろうページを開いたところで、オジサンの表情は険しくなった。



「…ボウヤ…これは…


…母さんを助けようと思って…書いたのかい?」



「…」


オレはコクリと頷いた。



「…フム…」



パタン。


オジサンは目を閉じ、ノートをパタンと閉じた後、ゆっくりと立ち上がりオレの方へと歩いてきた。




「…ボウヤ。

…実はというか…このノートはね、

…人間にわかりやすい言葉で言うと、【悪魔】が作ったノートなんだよ」



「…悪魔?」


「…ああ。


…まあ…あれだよ…つまり…。


…悪魔が作ったものだ…。


何かを幸せにするような願いは…まず叶わないと思ったほうがいい…。

…まあ結果として叶うが…誰かが不幸になったり、そういう間接的な叶い方しかしないだろうから…」



…悪魔が作ったノート…?



「…オジサン…なんで…なんで悪魔が作ったなんて事…今まで黙ってたんだよ…」


…なんだか…怒りがこみ上げてきた。


 …悪魔が作ったノート…ちゃんとはじめに言ってくれれば…母さんの事なんて、オレは書かなかった…。



「いや…まさか、ボウヤがこういう良い事を書くとは思わなかったんだ…」


バンッ!


「思わなかったじゃないよ!!」



オレは思いっきり壁を殴りつけて言った。


「…」


オジサンは静かな顔でオレを見る。




「…母さんの病状は…良くなってたんだ…。


…でもオレはそれを知らず…母さんを助けようと思って…そんな事を書いてしまったんだよ…。


…オレは…まさかそのノートが悪魔のノートだなんて思いもせずに…。


…ただ、なんで今まで悪い事しか書かなかったんだろうって思って…」



「…そういうもんなんだ。

…普通は…悪魔のノートは、悪魔の導きによって悪い事を自然に書くようになっているんだ。

…だから…オジサンもなんでボウヤが幸せになるような事を書いたのか…それが疑問なんだよ…」




「もういい!!

もうオジサンの話はウンザリだ!!」



オレはポケットから、今日菊田さんにもらった香典袋を取り出し、そこから3000円を抜き取った。



「ここに3000円ある!

このお金を…でびノートのローンに当てる。

月100円だから、二年半分くらいにはなるだろう」


バサッ!



オレは3000円をオジサンに投げつけた。



「オジサンの顔なんか、しばらく見たくも無い!!」



「…ボウヤ…


…すまなかったよ…オジサンの説明不足だった…」



「…もういいよ!喋るなよオジサン!


…オレは…とてもイライラしているんだ!」



 自分でもキツイと解る口調でオレはオジサンにそう言い放った。


…言いすぎているような気はする…でも…

…自分の感情が抑えきれない…。



バサッ!!



…オレはでびノートをオジサンから奪い取り、丸めるように握り、オジサンにむかってかざした。



「…オジサン、その気になればな…オレはこのノートにオジサンの名前を書いて殺す事だって出来るんだからな!」



「…







…ボウヤ…それは本気で言ってるのか?」



オジサンは今までに無いような冷ややかな目でオレを見た。



背筋に冷たい汗が滴る。





「…」



…一瞬たじろいでしまったが…だが…ここで引いてはいけないような気がした。



「ほ、本気だからな!


そうやってオレを見下してると…あの世に行く事になるぞ!!!」




「…」



オジサンとオレは、しばらく黙ってにらみ合うようにして立っていた。


…そしてしばらくして、オジサンがそっとポケットから何かを取り出し、それを隅に置いてある古びたコピー機で印刷した。



そしてコピー機から出てきた紙を、オジサンはオレに手渡した。



「…オジサンの免許証のコピーだ。


…オジサンの事をそのノートに書く時に使えば良い。



…名前がわからなければ…オジサンの事書けないだろう…?」



「う…うるさい!」



バサッ!



オレはオジサンの手から免許証のコピーを手荒く奪い取った。



「オジサンは、オレをバカにしてるんだろう!!


そのことを…後悔させてやるからな!」



「…バカになんてしていないよ…」


「うるさい!!せいぜい、死の恐怖に怯えながら生きるんだな!!!


オレはいつでもオマエを殺せるんだからよ!!!


じゃあな!!」





「…ボウヤ…」







ガラガラ!


タッタッタッタッタ…。






オレはオジサンの店を出た。





ザァァァァァァ…





いつの間にか、外は雨になっていた。






店を出る時、最後に映ったオジサンの悲しそうな目がオレの胸を締め付けた。




どうすればこの色んな苦しさから開放されるのか、





まったく解らないオレの胸は、ますます苦しさが増していった。



(つづく)

コメント(1)

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

とりあえず怖い話。 更新情報

とりあえず怖い話。のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング