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カーテン・コール手帖コミュのラック・システム公演「お願い」(再演)

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【 新しい常打ち館 】

わかぎゑふ率いる「ラック・システム」の常設小屋として決定された「世界館」での初お披露目は名作「お願い」の再演である。
「世界館」は2005年INAX出版から出た元・関西大学文学部教授の肥田皓三さんの「肥田せんせいのなにわ学」という本にもカラーで紹介されている。
平成16年にオープンした新生OSK日本歌劇団のアンテナ劇場である。JR弁天町駅から徒歩十分キャパ200人の大正ロマン溢れる清新な劇場だ。

「お願い」はワッハ上方ホールでの初演を観ているが、わかぎゑふ初めてのラブ・ストーリーとして完全に痺れた芝居だった。
一年四か月での再演は早いかとも思うが、オール・ニュー・キャスティングと聞くとじっとしてはいられない!
この劇団、本当に個性溢れる役者さんが揃っている。
これから定期公演されるというだけでも胸が高鳴りではないか。

今年度の演劇鑑賞8  弁天町・世界館  公演初日    観客70%




2005年3月18日にワッハ上方ホールにて観た初演はラック・システム創立10周年記念公演であった。2005年3月下旬号から、再録してみよう。
「お願い」は東京吉原が舞台。ということは、今回は大阪弁じゃないのかと一瞬身構えしたくなるのだが、大阪出身者だけで経営している、大正中期の吉原の遊郭・いてて屋が舞台となっている。
その置屋・いてて屋を切り盛りする女将(生田朗子)はいてて屋の本家筋にあたる河内楼の名妓だったが、新河内屋を改称していてて屋として開業している。
まだ22歳。このいてて屋に海軍中将や雑誌の編集者や大手酒造会社の重役など多彩な面々が集い、河内楼の数多くの遊女が入れ替わり立ち代りやってきて起こる騒動を描いている。
この東京の真ん中の関西空間というのがミソで、カスバあるいはエトランジェとしての予期せぬ効果が面白い。
関東大震災が後半重要なドラマとなるのだが、でなくとも、吉原遊郭という古今数え切れないほど取り上げられてきた場所をあえて今設定したのは、主人公の生田朗子と、初めての出会いから運命的な海軍少尉とのクラシカルな恋愛を成立させるに、この吉原の歴史という背景が俄然光り輝くためであろう。
しかし、この大恋愛の主軸が太いこともあるが、サイド・ストーリーとしての苦界にまつわる哀切なエピソードの巧みなことに驚かされる。
中でも、必ず帰ってくるからと足抜け同然に一日の無断外出に及んだひとりの遊女の足抜けを隠すために河内楼の大女将(わかぎゑふ)が男に化け、その遊女がしつこい客に居つづけをくらっていることで発覚を抑えてやろうとするエピソードの面白さ。
そして還ってきた遊女の哀切を極める義理の果し方。
ここは上田秋成「雨月物語」から上方落語遊女噺の傑作「立ち切れ線香」へのオマージュとして秀逸だ。
たった2時間に歴史と、歴史に負けずに生きた庶民の図太い姿を描くわかぎゑふの独壇場ともいうべき世話物の世界だ。こういう才能にほんとうに偶然にも邂逅できたというのは、運がよかった。
帝国劇場「レ・ミゼラブル」に客演中のコング桑田に代わって販売促進係長を務めるのがポリープが癒えた野田晋市で、彼が扮する蝶蝶亭さなぎという噺家と、宮川サキ扮する女房の愛情の見せ方など、関西人としても痺れるものだった。
おおくの若い有能な役者のアンサンブルの面白さもさることながら、わかぎゑふが登場すると艶やかさとともに、いっぺんに花が開いたように舞台が引き締まるのは流石というしかない。まだまだ見ていきたい世界である。


 まだ初演の印象も強く残っている状態での再演はいったいどうなるのかと考えたのだが、キャストを一新してやったなら芝居はここまで変わるものかと吃驚した。

5月の『夜の姉妹』での男女入れ替わりの芝居の効果といい、演劇の奥深さを味わうことになった。

 最大の驚きは「いてて屋」に集う花魁たち、このキャストが初演ではキャラクターの人の好さが際立って世話物“人情喜劇”としての心地よさが横溢していたのだが、今回の花魁に扮する女優さんたちは妖艶な雰囲気を醸し出し、苦界に身を置く彼女たちのエロティシズムが出ている。

それだけに、男女の、貧富の、時代への怨念など哀切が強調されたように思う。それはやはり演劇としては、いっそう厳しい贅肉のそぎ落としに他ならず、見応えがあった。

登場人物のすべてに、再演では磨ぎ澄まされたかの視線が強く宿っていたように見えた。それだけに、主役のお孝を今回演じたのは小山茜(売込隊ビーム)であったが、22歳という設定により近い配役で初演とは別の魅力が溢れてはいた。

だが、この芝居のタイトルともなっている「お願い」はラストの台詞「お願いされたらしゃぁないわ」から来ているわけだが、この場合の「お願い」は単なる「依頼」というものと、「愛情の表現であるところの性的なプロポーズ」の両面的な意味を持たされている。

それだけに、色里で育ちながらも凛とした禁欲的な生き方を貫いてきたお孝が初めて自分のために愛を受け入れる瞬間であるわけで、大阪弁特有の言い回しを以って主観を一種独特の表現で代弁するには、小山茜の若さと貫禄ではまだ少し難しかったのではと思われてならない。

このラストの1行の台詞は上方色里噺の名作「たち切れ線香」にも似て、ストンっと落とさねば狙いが生きてこない。

初演のお孝は今回初演でわかぎゑふが演じた河内屋の音羽をやっていた生田朗子だが、この台詞の落とし方としては抜群であった。人情噺としての色を強く出せばなんなく出来るものであっただろうが、より社会性、悲劇性を高めるアプローチでは相容れず、芝居の難しいところだと感じた。

ともあれ、1年4ヶ月での再演だというのに、まったく新しい魅力に溢れた芝居になっていて、大いに楽しんだ。
(★★★☆☆☆)

■キャストについては申し分なく、客演の山野順平役・文乗泰さん(真ん中の「乗」は実はなかなかない字で、読み方も分からない。陳謝)の凄まじい男前ぶりには、これから関西では凄いことになりそうな予感がある。

初演で野田晋市・宮川サキが演じた蝶々亭さなぎ・お稲夫婦を上田宏・谷川未佳が演じている。この役は「お願い」の中で実は観客がいちばん好感を持つ役ではないだろうか。おそらくわかぎゑふにしても強い思い入れがあるキャラクターだろうし、客演の俳優さんたちがいくら強力なものでも渡さないでほしいとファンとしては思う。

谷川未佳にしても初めての大人の役であり、やりがいがあっただろう。お梅役のよしもとあさりにしても、谷川未佳やよしもとなどの童顔の若い女優さんの配役が難しいだろうが、再演のお二人はよかった。

「谷川さん『夜の姉妹』で声が凄く通ってきたね。やっぱり修練やね」
「いいえ、あの劇場のつくりのお陰やと思てます」

おお、なんという謙虚さだろう。今夜のお芝居でも声は素晴らしく通っていたよぅ。

■開演前の劇場入り口には初日の華やいだ雰囲気が溢れていた。谷川未佳さんとわかぎゑふさんが素晴らしい浴衣をお召しになっていた。

ボクは去年ぴあ出版から出た十文字美信という人の「日本劇顔」という写真集を持参していった。

これは素晴らしい写真集で68人の舞台俳優の開演前、あるいは終演後のメーキャップ、衣装を着けた状態で撮影された写真集である。

もともとは「シアター・ガイド」という月刊誌に連載されたものの出版である。その参加されているメンバーが凄い。

登場順に挙げれば唐十郎、田中民(当然サンズイヘンが必要である)、深津絵里、石橋蓮司、マルセ太郎、寺島しのぶ、宮沢りえ、片桐はいり、北村和夫、吉行和子、前田吟、わかぎゑふ、松たか子、浅丘ルリ子、中村吉右衛門、長塚京三、藤原竜也、佐藤B作、倉野章子、宮本信子、仲代達矢、真田広之、山田五十鈴、熊倉一雄、宮藤官九郎、麿赤児、緒形拳、伊原剛志、加藤健一、大倉孝二、市川染五郎、小林薫、新橋耐子、白井晃、中川晃教、沢竜二、石丸幹二、広末涼子、日下武史、堤真一、市村正親、稲垣吾郎、渡辺美佐子、島田正吾、岩松了、吉田日出子、大竹しのぶ、段田安則、富田靖子、唐沢寿明、坂東三津五郎、若村真由美、藤木孝、高橋恵子、池畑慎之介・ピーター、大滝秀治、辻萬長、松本幸四郎、麻実れい、木佐貫邦子、串田和美、南果歩、柄本明、梅沢富美男、秋山奈津子、首藤康之、夏木マリ、白石加代子。錚々たる稀代の名優たちと、わがゑふさんが一緒に収められているのだから嬉しい。

これは関西劇壇からはひとりである。高価な本だが、ファンとしてはつい買ってしまった。

そのページは2005年3月27日『お願い』東京公演で下北沢ザ・スズナリで終演32分後に撮影されたものだ。

今回生田朗子さんが演じた「音羽」役でのものである。写真集にサインを乞うとゑふさんは同じ『お願い』での一葉であることを喜んでくれたようだ。

「この本、実際に持ってはる人、初めて見ましたわ」
「いいえ、このページがあるだけで買ってしまいますから」・・・・少年のように返事しただけだった。

■『夜の姉妹』もよかったですね。あの役、いいですね。すると彼が持っていた柄のところに金属での彫刻が施された杖を探して、探し回ったことを教えてくれた。

話題は11月に朝日新聞社が開催する「中之島演劇祭」に及び、先行電話予約でまったく電話自体が繋がらなかったことをグチってしまった。これはいけないことであった。

コメント(2)

>「この本、実際に持ってはる人、初めて見ましたわ」
「いいえ、このページがあるだけで買ってしまいますから」・・・・少年のように返事しただけだった。

そのときの北京波様のお姿をこの眼で見たかった!

カーテン・コール手帖、いつも楽しく拝読しております。北京波様の映画批評も最高に素敵ですが、演劇批評の熱烈なファンでもあります。

わかぎゑふさんは、まだ中島らもが生きていたころ、彼の劇団の役者さんとして、何度かお姿を拝見したことがあります。(ひょっとすると、あれはわかぎさんの劇団だったのでしょうか?)
北京波様も文面から、わかぎさんが「ラック・システム」という劇団の主宰として、たくましく、また美しく歳を重ねておられることを知り、うれしく思っています。

私の住む新潟市にも、“りゅーとぴあ”という素晴らしい劇場があり、ときどき観劇に出かけます。わかぎさんの劇団はそこではまだ公演をしたことがないと思うのですが、いつか観劇できる日を楽しみに待っています。
やはり関西の劇団ですからね、ときどき東京公演がありますが、ほとんど大阪だけ…なんですよ。

わかぎゑふさんの手がですね、華奢な華奢な白魚みたいな指なんですよ。こんなか弱い手であんな図太い世界を書いてしまうのですから…胸が熱くなりました。
ファンとは阿呆らしいほど愚かなものですわ。

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