「雨のあとに虹」　コミュニティコミュの雨のあとに虹・Ｐａｒｔ５　その６５

「週明けにオフの日がありますよ。」
直子は携帯電話の向こう側にいる見富に言った。
「それならよかった。」
見富は言った。
「どうかなさったのですか？」
直子が言うと
「涼しくなってきたのでバーベキューにお誘いしようと思いました。」
見富は言った。
「楽しそうですね！」
直子が言うと
「久保田さんもいらしてください。」
見富は言った。
「どうしようかしら？」
直子が言うと
「千賀子も久保田さんに会えるのを楽しみにしていますよ。」
見富は言った。
「それ言われるとお断り出来ないわ！」
直子は優しい口調で言った。
「お昼に自然公園で開催します。」
見富が言うと
「解りました。」
直子は言った。
「撮影を開始します。」
小松は大きな声で言った。直子は通話を終えると携帯電話をポケットに入れた。
「次のシーンはドラマのクライマックスだよ。」
黒岩が言うと
「それではお願いします。」
小松は言った。直子はカメラが回ると撮影に集中していた。

「お前がバーベキューとは意外だな！」
牧は言った。
「千賀子がみんなと親睦を持ちたいそうだ。」
見富が言うと
「千賀子さんは家庭的だな！」
牧は言った。ふたりは大通りを歩いていた。近くの繁華街では夜とは違う日中の賑わいがあった。
「俺もあいつと結婚してよかったよ。」
見富が言うと
「お前が電撃結婚した時も驚いたぞ！」
牧は言った。
「俺も愛に飢えていたのかな？」
見富は考えるように言った。
「お前らしくないな！」
牧が言うと
「今回は協力してくれてありがとう！」
見富は言った。
「お前は高校時代からの悪友だからな！」
牧は笑みを浮かべて言った。
「危ない組織からは手を引けよ。」
見富が言うと
「考えておくよ。」
牧は言った。赤信号で立ち止まると見富が右手を上げた。牧は頷いて交差点に止まっているタクシーに近づいて行った。牧が素早くタクシーに乗り込むと信号が青に変わった。見富は牧を乗せたタクシーがスタートすると嬉しそうに見ていた。

「何かあったのか？」
関口は言った。
「実は気になる男がいます。」
遠藤が言うと
「お前が気になる男とは何者だ！」
関口は言った。ふたりはオープンカフェの椅子に座っていた。
「牧武夫という中堅のやくざです。」
遠藤が言うと
「そのやくざがどうかしたのか？」
関口は言った。
「牧はドリーム事務所の見富一之助とは高校時代から親友です。」
遠藤ははっきりとした口調で言った。
「見富は直子さんの共演者でトラブルも起こした男だよ！」
関口が言うと
「さらに牧は中国マフィアの白い虎と関わりがあります。」
遠藤は言った。
「青い龍ではないのか？」
関口が言うと
「青い龍は大組織ですが白い虎は新興勢力です。」
遠藤は言った。
「それほど心配はないだろう？」
関口が言うと
「白い虎は康文成と急速に接近しています。」
遠藤は言った。
「それは本当か？」
関口は確認するように言った。
「間違いありません。」
遠藤が言うと
「康文成が白い虎や牧を通じて直子さんや高村さんに繋がるとは驚いたよ。」
関口は言った。
「これは偶然でしょうか？」
遠藤が言うと
「当分は牧を見張ってくれ！」
関口は言った。遠藤は頷くと素早く立ち上がって歩き出した。

「久美子さんも一緒に来てくれないかしら？」
直子は携帯電話を耳に当てて言った。
「私がご一緒してもいいのですか？」
久美子は言った。
「予定が空いていたらお願いします。」
直子が言うと
「はい！」
久美子は言った。
「見富さんは改心してくれたのは嬉しいわ！」
直子が言うと
「何となく怖いのですね？」
久美子は言った。
「うん。」
直子が言うと

「本当に私でいいのでしょうか？」
高根沢は言った。
「僕は高根沢さんが一番の適任だと思うよ。」
俊之が言うと
「留守をお願いします。」
立花は言った。陽子が珈琲を持って歩いて来ると
「いつもように仕事をすればいいのよ。」
恵子は優しい口調で言った。
「そうですね！」
高根沢が言うと
「緊急時には僕たちの誰かひとりには携帯電話が繋がるようにしておくよ。」
俊之は言った。陽子が珈琲を置くと
「解りました。」
高根沢は頷きながら言った。
「なるべく私に連絡してください。」
陽子が言うと
「少し緊張します。」
高根沢は言った。俊之が微笑むと立花は高根沢の肩を叩いた。恵子が頷くと陽子は会釈をした。総武企画の社長室にはいつもように和やかな空気が流れていた。

To be continued