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ゴルフの歴史コミュのマスターズ物語?

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 はっきり言うと、97年マスターズが始まる前、私はタイガー・ウッズを舐めていた。

 いや、確かに彼は既に凄かった。1996年も半ばを過ぎてデビューすると、いきなり二勝。97年も開幕戦で、前年の賞金王だったトム・レーマンをプレーオフで破っていた。誰もが来るマスターズでの勝利を予想したとしても不思議な話ではない。

 が、ひねくれ者の私は思っていた。マスターズは同じコースで行われるだけに経験がものを言うメジャーだ。彼はアマチュアで二度、マスターズに参加しているとはいえ、それまで60台を記録した事すらなかった。オーガスタ・ナショナルを征服するにはまだまだ経験が足りないだろう。

 初日、タイガーはボギーが先行し、TVに映った11番の時点で4オーバーだった。私は「ああ、やっぱりな」と思っていた。マジで。

 事が起こったのは次の12番である。

 155yのパー3。ピンはグリーン左端に切られていた。タイガーのショットはグリーンを少しオーバーした。ウェッジでのアプローチ。ボールはスーッと転がってカップに転がり込んだ。軽くガッツポーズするタイガー。その瞬間、見ていた私の全身に震えが走った。…これはただ事ではない事が起こるやも…。

 次の13番でバーディ。14番はパー。そして15番パー5。

 スチールシャフトにメタルウッドを装着したドライバー。タイガーはそれを背中にぶち当たる勢いで振り切った。考えられないような振りっぷりだった。落下地点でカメラが待ち構える。と、カメラが大きく右へ、グリーンの方へ振られた。15番フェアウェイの右サイドにはマウンドがある。飛ばし屋はそのマウンドを利用して、距離を伸ばすのが普通だった。

 ところが、タイガーのボールはそのマウンドのはるか先へキャリーしたのである。それは、絶対にここまでは来ないからと設定された、ギャラリーのためのクロスウェイの直前であった。見た事も無い飛距離。カメラがセカンド地点のタイガーを後方から映すと、まるで3打目かと見まごうような近さにグリーンが見えた。タイガーはここからピッチングウェッジでグリーンを狙い、3mくらいにつけ、楽々イーグルを奪ったのである。

 腰を抜かしかけた。96年、飛ばし屋の筈のグレッグ・ノーマンは15番のセカンドショットを7番アイアンで打った。それでも桁違いの飛距離。流石はノーマン。と皆が思っていたのである。タイガーの飛距離はそれまでのゴルフの常識を逸脱していた。

 タイガーはこの日のインコースを30で回り、この日2アンダー。首位ではなかったものの、この時点で私は「タイガーが絶対に優勝するだろう」と宗旨替えしていた。それどころか「今後10年間は誰もオーガスタ・ナショナルでタイガーに勝て無いのでは?」とさえ考えた程だった。

 実際、タイガーは優勝した。70・66・65・69。トータル270はジャック・ニクラウスとレイモンド・フロイドが持っていたトーナメントレコードを一打更新していた。僅か21歳での優勝は、セベ・バレステロスの最年少記録を二年も縮めるものだった。ドライビングディスタンス、パーオン率も一位。正に完璧な勝利であった。

 タイガー・ウッズのゴルフは、当時のトッププロにとってさえ、いやトッププロだからこそ、衝撃的なものであった。それは、この大会でタイガーとペアリングしたプレーヤーの成績を見れば分かる。

 初日タイガーと回ったディフェンディングチャンピオンのニック・ファルドはその初日を75。翌日もショックが抜け切らず81で予選落ち。二日目に組まされたポール・エイジンガーも、初日を69としていたのにタイガーと回ったその日に73を叩いてしまい、三日目、四日目は77・74だった。三日目のコリン・モントゴメリーは欧州ツアーで何年も連続で賞金王になっていたプレーヤーだが、二日目67で回って二位につけたのに、タイガーと回って74。翌日は84も打っている。最終日、3日目を終わって6アンダーの二位だったコンスタンチノ・ロッカも、タイガーと回った最終日に75を打たされた。タイガーのゴルフを間近で見せ付けられた彼らの衝撃の深さが分かろうというものだ。

 彼の勝利はゴルフ界に「タイガー時代」の到来を高らかに告げ、同時にこれまでのプロを一気に古臭いものにしてしまった。飛距離よりもボールコントロールを優先していたボディー・ターン打法は過去のものとなり、太っちょプロは淘汰され、プロたちはアスリートのボディを手に入れるためにジムで専属トレーナーの指導の下、トレーニングに励むようになった。

 オーガスタ・ナショナルゴルフクラブに与えた衝撃も深かった。翌98年には初めてセカンドカットとはいえ「ラフ」が設けられた。ティの位置は順次下げられ、2010年の段階で総距離は7500y近くに達し、96年に比べて500y以上長くなった。そして、木が各所に植えられ、特に15番の右のマウンドの上に植えられた木のために、97年のタイガーのような攻略法は不可能になっている。

 その後、タイガーは2001年、02年と連覇。05年にも勝って30歳を前に歴代二位の4勝を上げている。近年は膝の故障や、オーガスタ・ナショナルを着実に攻略し始め、3勝を上げているフィル・ミケルソンを始めとするライバルに阻まれて勝ち切れないものの、今後10年は出場する限り優勝候補筆頭に上げられ続ける事は間違い無いだろう。


 時代の名手たちが獲得しようとして切磋琢磨することによって発展してきたマスターズ。オーガスタ・ナショナルもまた、当初のそれとはまったく異なるコースになったと言われるほどの進化を遂げ、その時代の名手に対してきた。同時に、ボビー・ジョーンズとクリフォード・ロバーツが創り上げた伝統は現在も守られ、トーナメント中、クラブハウスには往年の名手たちがグリーンジャケットを纏って集い、パトロンたちは彼らのプレーを思い出しながら、現在の名手に声援を送る。故にマスターズは常に新しく、懐かしい。

 マスターズがそういった存在であり続け、オーガスタ・ナショナルからの招待状を心待ちにする名手たちがいる限り、毎年春には再び新しいドラマが生まれ続ける事だろう。

コメント(2)

思わず「イイネ!」のボタンを押したくなりましたようれしい顔


少し長い動画ですけど、タイガーのハイライト風に出来てて見ごたえがありました^^


 ターヘーさん>
 良い動画をありがとうございます。記憶だけで書いていたので助かります。

 この時の4日間は、ずっと口を開きっぱなしで見ていましたね。特に初日は見終わった後何も手につかないほど興奮していた記憶があります。

 マスターズは見ていて本当に面白いのですが、歴史を知っていると更に面白いと思うので、興味があったら色々調べてみてください。

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