ゴルフの歴史コミュのゴルフの起源?

　中国文化というのは意外に西洋文化と深く関わっている。西洋の文化を詳しく調べると、かなりの割合で中国に辿り付く。紙も火薬も羅針盤も皆中国起源である。童話なども原型を調べるとかなりの割合で中国に辿りつくのである。

　スポーツで言うと、どうもサッカーの原型は中国で始まったらしいし、同じくイギリスで盛んなポロもイランから中国へ渡来、ルールなどが整備された後インドへ行き、それからイギリスに渡ったものである。

　だから、ゴルフの起源が中国にあっても何にも不思議なことは無い。

　西暦９４６年中国のある書籍にある遊びが登場する。「捶丸（ツイワン）」である。書籍に登場したのは９４６年だが、９４６年と言えば五代十国の戦乱時代なので、もっと早くから行われていたことは間違いないだろう。遊びが流行するには平和な時代である必要があるからだ。それを考えると唐の滅亡（９０７年）よりも以前から行われていたと考えられる。

　９００年代半ばには中国西部の蘭州という街で盛んに行われていた記録があるという。戦乱を避けて移住してきた上流階級の人々が多かったためだという。蘭州付近や有名な敦煌にもプレーの様子を描いた壁画が残されている。

　唐の滅亡、五代十国の戦乱の乱を経て、趙匡胤によって宋が建国され、中国大陸に再び平和な時代が到来した。すると、捶丸は更に盛んに行われるようになった。１２８５年には「源経」つまりルールブックが刊行されており、統一されたルールの下にプレーが行われていたようである。これは最早遊びではなくスポーツである。

　この捶丸に熱中した著名な人物が、宋の八代皇帝、徽宗（１０８２〜１１３５年）である。

　徽宗は国庫を傾け重税で民を苦しめた挙句、金国に首都を囲まれて降伏、拉致されて五国城で幽死したという、中国史上に残る愚帝の一人である。反面、文化の保護には大変熱心で、自らも絵画の名手として有名だ。その彼が捶丸に熱中していたというのである。このことは恐らく捶丸が、当時の風流人たちの間で広まったゲームだった事を意味する。

　捶丸はそれ以降も盛んに行われていたようであるが、１６世紀ごろ、当時の清王朝が国民の体育活動を制限したために、多くの中国スポーツと一緒に衰退したという。これは清が征服王朝であり、支配される民である漢民族があまり頑健でない方が都合が良かったからだろう。こうして捶丸は歴史の中に埋もれてしまったのである。

　さて、問題の捶丸であるが、これはもうゴルフとしか言いようが無い。ただし、ショットはほぼ無かったようなので、パッティングコースを思い浮かべて頂けば分かり易い。ルールでホールは１００歩（つまり１００ヤード）を越えてはならないとされ、基準打数は３打。ボールは木を削って丸くしたもので「権」と呼ばれ、クラブは「鞠棒、杓棒」と呼ばれた。

　この捶丸、恐るべきことに「一打目以外は、あるがままにプレーしなければならない」とされていて、しかも「疑わしきときは、相手の場合は善意に解釈し、己の場合は不利を選択しろ」とくれば、これはもうゴルフの精神以外の何者でもない。他にもライの改善、誤球、アドバイスの禁止など現在のものと変わらないようなルールが定められていた。残された絵画には、木の根元で苦労しているプレーヤーを仲間がはやし立てているものなどがあるらしい。その様子は正に現在のゴルフを髣髴とさせるものだ。

　唐の時代は、言うまでも無くシルクロードの時代である。シルクロードは唐とローマ帝国との交易の道だ。

　ローマで生まれたパガニカが、シルクロードを通って中国に伝わったことは十分に考えられる。シルクロードにある敦厚に壁画が残されており、盛んに行われた蘭州もシルクロードの出口に近いことを考えれば無理のある想像とはいえない。そして中国で発展した捶丸が何らかのルート、例えば元王朝の皇帝に仕えて捶丸を見たであろうマルコ・ポーロが持ち帰るなどしてヨーロッパに逆上陸、そしてスコットランドに渡ってゴルフになった、とも考えられるのだ。

　そう考えると東洋人である日本人が、意外なほど容易にゴルフに馴染み、夢中になっている理由も納得出来る気がする。