Patrick Gaumer『Les années Pilote 1959-1989 Autour de la Bande Dessinée』Dargaud, 2002(パトリック・ゴメール『ピロットの時代 1959-1989―バンド・デシネの周辺』ダルゴー社、2002年)
* BD史において重要な役割を果たした『ピロット』誌の歴史。
Hervé Cannet『Angoulême, le grand vingtième』Charente Libre, 1993(エルヴェ・カネ『アングレーム―偉大なる20世紀』チャラント・リーブル社、1993年)
Michel-Édouart Leclerc『Itinéraires dans l’univers de la bande dessinée』Flammarion, 2003(ミッシェル=エドゥアール・ルクレール『バンド・デシネの世界を歩くための道標』フラマリオン、2003年)
Hugues Dayez『La nouvelle bande dessinée』Niffle Profession, 2002(ユーグ・デイエ『ヌーヴェル・バンド・デシネ』ニッフル・プロフェッション、2002年)
* 新しいBD作家たち―ブラン、ブリュッチ、ダヴィッド・B、ド・クレシー、デュピュイ‐ベルベリアン、ギベール、ラバテ、スファール―へのインタヴュー。
John A. Lent『Comic Art of Europe, An International, Comprehensive Bibliography』Greenwood Pub Groupe, 1994(ジョン=A・レント『ヨーロッパのコミック・アート―全世界的書誌』グリーンウッド・パブ・グループ、1994年)
* 全世界の漫画研究を概観する書誌。改題書誌ではなかったような記憶が… 現在は『Comic Art of Europe through 2000: An International Bibliography』(Preager Publishers, 2003)という名前の2巻本で改訂版が出ているようです。
Hervé Bruhat (photo)/ Jean-Luc Fromental (texte)『Figures de la BD』hoëbeke, 1993(エルヴェ・ブリュア[写真]/ジャン=リュック・フロマンタル[文]『BDの顔』ヒューベック、1993年)
* BD作家を肖像写真入りで紹介した本。インタヴューだったような気も… 出版社の発音が自信ありません…
Harry Morgan/ Manuel Hirtz(ハリー・モーガン/マニュエル・ヒルツ)『Le Petit Critique Illustré – Guide des ouvrages consacrés à la bande dessinée(図解小批評―バンド・デシネ研究ガイド)』P. L. G.、2004年刊
コミック・ストリップというのはいわゆる新聞漫画ですね。アメリカの話ばっかです。フランスのBDの話には60ページほどが割かれていて、かなり勉強になります。知らない作家がまだまだ多い… この本が出たのは1989年みたいですが、80年代半ばくらいまでの作家、作品はきちんと押さえています。シュイテン(スクイテン)にも1段落与えられていました。このジャック・サドゥールさんという人は、もともと1968年に『L'enfer des bulles(吹き出しの地獄?)』というBDにおけるエロティシズムを扱った本を書いていたそうで、コミック・ブック(雑誌形式の主としてヒーローもののアメリカ漫画)の章を除く残りの章はその辺の話がわりかし多くなっています。「アンダーグラウンド・コミックス」の章では、いわゆるオルタナティヴ・コミックスの歴史も語っていて、個人的には多いに関心があります。結論部で、前々回のBD研究会で話題になった80年代におけるBD売り上げの落ち込みが話題になっています。作品の粗製濫造と値上げも原因だったとか。そういう状況の中でポッシュ版のBDが持つ意味は大きいということで、何気に同文庫(J'ai lu)の宣伝めいたことをしているのがかわいい(笑)。でも、最終的にはポッシュ版のBDって、それなりの数が出版されているにもかかわらず、それほど普及しなかったみたいですね。せっかくなんでこの本と他の本を参照しつつ、年表でも作ってみようかと思います。
Henri Filippini のEncyclopédie de la bande dessinée érotique(nouvelle édition mise à jour et augmentée)La Musardine 1999とJaques Sadoulのl'enfer des bulles 20 ans après(Albin Michel 1990)を持っていますが、これはどういう評価を得ているのでしょうか?
あまり読んでいないので分かりませんので教えてください。また、この類書はありますか?
Father U さん、ご紹介ありがとうございます。サドゥールの『l'enfer des bulles(吹き出しの地獄)』は、同著者の『93 ans de B-D(BDの93年)』の中でも言及されていて、興味を持っているんですが、残念ながら未読です。ネットで書評的なものがないかちょっと探してみましたが、それらしいものは見つかりませんでした。関連記事としてはこんなものがありますが…↓
「mémoires de Jacques Sadoul(ジャック・サドゥール回想録)」
http://www.special.sudouest.com/bd/index.php?/archives/80-Les-memoires-de-Sadoul.html
上の2つはどうも『C’est dans la poche !(ポケットの中に[訳しにく… 慣用表現でしょうか…])』という2006年にBragelonne(ブラジュロンヌ)という出版社から出たジャック・サドゥールの回想録に関係した記事のようですね。この人、BDプロパーじゃなく、SFにも相当造詣が深い人のようです。このコミュでも何度か名前が出てますが、「J'ai lu(ジェ・リュ)」という文庫の監修をしていたとか。で、この辺の記事を読むと、『l'enfer des bulles(吹き出しの地獄)』はポルノグラフィックなBD(要するにエロ漫画ですな)の百科事典ということですね。「l'enfer(地獄)」というのはフランスの国立図書館にある(あった?)発禁本を収めた書架のことで、エロ漫画を扱うに当たってぴったりだということでこの語を採用したというこの場合どうでもいいエピソードは書いてあった利します…(笑) 「bulles」は吹き出しのことですが、同じ意味の「ballons(バロン)」や「phylacteres(フィラクテール)」と比較して語感で選んだとのことです。と、結局実のある話はできないんですが、このトピの34の書き込みで紹介したHarry Morgan/ Manuel Hirtz(ハリー・モーガン/マニュエル・ヒルツ)『Le Petit Critique Illustré – Guide des ouvrages consacrés à la bande dessinée(図解小批評―バンド・デシネ研究ガイド)』(P. L. G.、2004年刊)のような解題書誌にはこの本の位置づけとか載ってるのかもしれませんね。ちなみに『93 ans de B-D(BDの93年)』にもエロ漫画を扱った章はあって、『ポパイ』や『ベティ・ブープ』のエロ二次創作が戦前に既にあったという興味深い事実が述べられていたりします。
それにしても「Hakudo」はひどいですね(笑)。まあ、こういう間違いは僕らもフランスの漫画に対して犯しかねないわけですが…
『l'enfer des bulles(吹き出しの地獄)』と、『93 ans de B-D(BDの93年)』にもエロ漫画を扱った章はあって、『ポパイ』や『ベティ・ブープ』のエロ二次創作が戦前に既にあったという興味深い事実が述べられていたりしますの箇所についてなのですが…
アメリカにはセールスマンが売り歩いたパロディ・エロマンガ同人誌(あるいはブートレグ)といったジャンルがあって、メキシコのティファナ(サンディエゴからバスに乗って観光する、アメリカと国境を接している町)で作っているということになっているので、Tijuana Biblesとも言いますが、一般にダーティ・コミックというジャンルが1930年代から1950年代にかけてあったそうです。二次創作がほとんどで、作画も素人臭いものなのですが、日本の80年代以降のパロディ同人誌、ヤオイ同人誌作家からプロマンガ家への流れのさきがけではないかと、また妄想してしまいました。
こんな本も出てます。『Tijuana Bibles』 Bob Adelman (Simons and Schuster Editions)。エロマンガやエロ同人誌的な流れはアメリカにもあったとすれば、フランスではどうだったかと考えたのですが、BDではSerpieriがもっとあからさまに表現していますね。この流れの分岐点は68年から70年代以降だと思うのですが…
35の書き込みで紹介した Claude Moliterni(クロード・モリテルニ)著『30 héros de toujours – Chefs-d’oeuvre de la BD 1830-1930(30人の永遠のヒーロー―1830‐1930年の傑作BD)』(Omnibus[オムニビュス]、2005年刊)読了しました。takatakata さんに貸していただきました。takatakata さん、ありがとうございます! これ、非常に素晴らしい本です。世界の漫画黎明期の代表作が、作家のプロフィールおよび作品の簡単な紹介文とともに載せられているんですが、何が素晴らしいかと言うと、特定の作品の1エピソード(場合によってはそれ以上)が丸まる載せられています! 普通、漫画史の本なんかだと1ページか2ページが小さく載せられてるだけで、作品の内容なんてさっぱりわからないんですが、この本の場合そんなことはありません。多くの作品が新聞に掲載された漫画なので、1ページあるいは見開き1ページ分で終わってることも多いですが、中にはテュプファー(トップフェール)の作品のように、複数ページに及んでいるものもあり、ありがたいことこの上ない。この本で取り上げられている作家は以下のとおり。Töpffer(テュップファー/トップフェール)、Nadar(ナダール)、Busch(ブッシュ)、Caran d’Ache(カラン・ダッシュ)、Christophe(クリストフ)、Outcault(アウトコールト)、Tom Browne(トム・ブラウン)、Dirks(ダークス)、Verbeek(ヴェルビーク? 発音不明…)、Pinchon et Caumery(パンション&コーメリー)、McCay(マッケイ)、Forton(フォルトン)、Attilio Mussino(アッティリオ・ムッシーノ)、Antonio Rubino(アントニオ・ルビーノ)、Feininger(ファイニンガー)、Herriman(ヘリマン)、McManus(マクマナス)、Sto(スト? 発音不明…)、Branner(ブラナー)、Messmer et Sullivan(メッツマー&サリヴァン)、Segar(シーガー)、Mary Tourtel(メアリー・ターテル? 発音不明…)、Alain Saint-Ogan(アラン・サン=トガン)、Walt Disney(ウォルト・ディズニー)。24作家の代表作30、厳密には33作品が載せられています。どれも新鮮で面白かったんですが、ナダールの作品(ちゃんと漫画の形をしていてびっくり)、カラン・ダッシュ、アッティリオ・ムッシーノ、ブラナー、メアリー・ターテル(?)が意想外に面白く、ブッシュ(勝手にモーリス・センダックの源泉だと思ってるんですけど、どうなんだろう?)、マッケイ(『Petit Sammy éternue(原題は Little Sammy Sneeze[リトル・サミーのくしゃみ])』って作品も載ってて、初めて知りました)、ファイニンガー、ヘリマン、アラン・サン=トガンは予想通りの面白さでした。シーガーの『ポパイ』とか、サリヴァンの『猫のフェリックス』とか、ディズニーの『ミッキー・マウス』とか、よく知られてるんだけど読んだことがなかったもの(いずれも予想以上に面白い!)も読めてよかったです。8月に出た雑誌『Pen』の「『Manga』の原点を探して、世界のコミック大研究。」特集を読んで、この本を読めばいっぱしの世界漫画通になること間違いなしです(笑)!