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極短編・携帯小説を書くコミュのsilent trip

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愛、汲めるとき
一人の夜は易しくて別れた君の行き先を想う
愛、汲みこぼしたならば
君の待つ遥かを旅し、枯れ行く大地に涙をこぼす

君を想うは、天よりも大きくて
君を想うは、水面に映る泡沫の夢と同じ

君が想う僕は闇よりも怖くて
君が想う僕は浜辺に眠る一片の砂と同じ

心に魔物が住み着くならば、象徴を掲げて右腕に戒めよう
心に魔物が住み着くならば、生まれ変わりを信じて今を生きよう
2月の雪降るきれいな夜に「扉を開けて」と泣いている君に対して暖かい部屋に包まれて僕は君の声に耳をかさないでいた
一度失った信頼関係 いつかふたりで聴いた曲が流れ続けていた。

そんな夢をまた今ぐらいの時期になるとみてしまう。
僕は飛び起きて急いでドアを開けた。
今は過去の話 そこに映る人影はなし

遠い記憶をさかのぼると彼女とは遠距離恋愛をしていた。
自分の家から電車を二つ乗り換えて終点の駅の二つ手前の駅に彼女が住んでいた。僕が彼女の家に行くのはちょっとした小旅行で電車の中で本を読んだり仮眠を取ったりして、それは悪くなかった。都会の喧騒を忘れさせてくれる唯一の楽しみとなっていた。
彼女のうちに行くと彼女はいつもこう言った
「いつになったらお父さんに私のこと紹介してくれるの?」
「だってわたしん家と近いでしょ?実家。」
「・・・親父は別にいいよ。」
「えっ!会いに行った方が絶対いいよ。お父さんきっと一人で寂しがってるよ。」

「カンッカンッカンッ」
踏み切りの警報音で夢から現実に戻った。懐かしい言葉が頭によぎり少し僕はにやけていた。
どこか遠くに行ったら良いと僕はそのまま家を飛び出して電車に揺られていた。もう大分行く事がなかったが車窓から眺める景色は懐かしいものだ。結局自分の中にも帰省本能があったということだ。今思うと自分は自由という言葉に束縛されて生きてきたような気がする。
実家という牢獄から抜け出したくて、安らぎを省みず、
愛情という束縛から逃げ出したくて、恋人を雪の日に荷物ごと投げ捨てた。
でも今となっては安らぐことや愛情に飢えた悲しい子供だ。
父親はもうこの世にはいなく、葬式も出ずに言い訳ばかりしたんだ。
もう一つ夢を見よう。僕はポケットから睡眠薬を取り出した。

都会から離れた田舎にしては駅の電灯が明るくて僕は少し安心した。なんとなく自分が生まれた家の行き方もわかる。
元自分が育った実家はとてもきれいな家になっていた。
時間は夜の22時過ぎでもう家の電気が消えていた。
   ただ呆然と実家のあった場所を眺める。
学生の頃自分の部屋だったろう場所をなんとなく見上げ
続けてしまった。今日はきれいな夜で透明な空気が肌をつんざく。
     「雪が降ったらいいのに・・・。」

僕は空を見上げ続けた。

コメント(2)

そうなんすっ!!すばらしい!!
「僕」は電車の中で自殺をしてしまったんですけど
昔の彼女とはその後に会ってるんです!!夢の中で。
宮沢賢治さんの「銀河鉄道の夜」のパロディーなんですけど、もし自分が死んだ後は清算したいものがいっぱいあるんじゃないか?っていう思いで綴りましたよ。
kittenさんが優しい人で本当に良かった。

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