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WINBコミュの連続テレビ小説「夏もんげ」

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男はマッキーと呼ばれていた。
本名は奥嶋章洋(おくしまあきひろ)。42歳、バツイチ。
歳の割には引き締まったオナカをしているし、薄毛の進行も10年前に止まってしまったので、けっこういいかんじのニッポンダンディーだ。
でもマッキーは死にそうだった。
ここは駅のホーム。
いつもよりずいぶん早く会社を出たので、たくさん人がいる。
いつからだろう、テロとか戦争とか、万引きの蔓延する世の中で、誰もがあまり細かいことを気に留めなくなったのは。
異常気象により大量発生したヘラクレスオオカブトをみんな平気で踏み潰しながら歩いていく。
間もなく二番乗り場を電車が通過いたします、ご注意ください。
アナウンスが流れた。
足元にいる世界最大のカブトムシ、昆虫のキングオブキングスは、千切れかけた胴を引きずりながら、なお、羽ばたこうとしていた。
ねえ、おれが死ぬとこ、見たくない?
隣で一生懸命にケータイをイジイジしている女子高生に心の中で囁くと、マッキーは元気良く線路に飛び降りた。

でもちょっと早すぎた。
けっこう上手に着地した。
電車まで、だいだい500メートル。
どうする?マッキー

つづく

コメント(3)

おそらくこの世に生を受けた生きとし生けるものすべてにたった一度訪れる瞬間。死。
そしてもう一つ権利を持つ。
たった一つの願い。
誰にも平等に与えられる。
大概、我々生物はそのことを知らずにこの世を去る。

彼も 同様に そのことを知っていたわけではない。

彼はつぶやいた。
みんな俺のこと見てくれよ!!

でも誰も気に留めない。
人が飛び降りたことに気づいていないのか、
それとも気づいても見ないふりをしているのか。
なんとも寂しい世になったものだ。
そこに来たのがヘラクレスオオカブト。
足元にふっと止まった。
マッキーにはカブトの声が聞こえた気がした。

どうしよっか?電車来るよ。
マッキーは考えた。
つづく
諭吉郎は結婚式を二週間後に控え、
憂鬱な気持ちでいつもの席に座っていた。
夕日に染まる雲がなんだか物哀しい。
長く伸びたビルの影をくぐって、
緩やかにカーブするレールの上を電車は走っていく。
駅が近づいてきた。
諭吉郎はスピードを落とそうとギアをひとつ下げる。
次の春がきたら引退する旧式の車両のクラッチペダルは、
相変わらず重い。
油圧計を横目に少しずつサブタンクのヴァルブを開けていく。
針が200Mkgf/cm2wを指した瞬間、
激しい衝撃と共に電車は減速した。
いつもこの作業で乗客が2、3人は死ぬ。
悔やみの言葉を車内アナウンスで流しながら、
ほじった鼻クソを指で丸めてはじいた。
そのときだった。駅のホームから人が線路に飛び降りた。

なんだあいつ?
自殺とかまじうぜーし。
命は大切にしろよ。

諭吉郎は普通にブレーキを踏んだ。
電車の制動距離は時速120kmで約500m。
けっこう余裕じゃん?

つづく

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