長崎県長崎市高島町端島
2014年10月06日、史跡に指定。
2015年07月05日、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一環としてUNESCO世界文化遺産に登録。
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軍艦島の俗名で知られる端島(ﾊｼﾏ)は、元来は南北約320ｍ・東西約120ｍの小さな岩礁に過ぎませんでした。文化７(1810)年に石炭の露出が発見され、幕府領と佐賀藩深堀領の間で領有権争いが生じましたが、当時は漁民が漁業の傍らに「磯掘り」と称して、ごく小規模に露出炭を採炭する程度でした。
ここで本格的な採炭事業が始まったのは明治19(1886)年の事で、深さ36ｍの第一竪坑が掘られました。明治23(1890)年、端島炭鉱の所有者であった旧鍋島藩深堀領主鍋島孫六郎茂精が三菱社へ10万円で譲渡し、以後100年以上に亙って三菱の私有地となります。
譲渡後は第二竪坑と第三竪坑の開鑿(ｶｲｻｸ)もあって端島炭鉱の出炭量は高島炭鉱を抜くまでに成長、この頃には社船〔夕顔丸〕の就航、製塩・蒸留水機設置に伴う飲料水供給開始、社立の尋常小学校の設立等の基本的な居住環境が整備されると共に、島の周囲が段階的に埋め立てられました。
その後、大正５(1916)年には日本で最初の鉄筋コンクリート造の集合住宅「30号棟」が建設され、この頃から端島の外観が三菱重工業長崎造船所で建造中だった戦艦土佐に似ているとして「軍艦島」の別名が生まれたのです。なお、土佐は八八艦隊計画によって長門型戦艦の拡大改良型戦艦となる予定でしたが、大正11(1922)年のワシントン海軍軍縮条約で廃棄が決定してしまい、標的艦として自軍の砲撃を受けた後、大正14(1925)年に自沈しています。
端島炭鉱は良質な強粘炭が採れ、隣接する高島炭鉱と共に、日本の近代化を支えて来た炭鉱の一つでした。それを支える労働者のための福利厚生も急速に整えられ、昭和12(1937)年の時点で、教育・医療保険・商業娯楽等の各施設は、既に相当なレヴェルで整備されていました。一方で仕事は非常に過酷で、１日12時間労働の二交代制で、「星を頂いて入坑し星を頂いて出坑する。陽の光に当ることがない」と評されました。
大正中期からは内地人の不足を補充するために半島人労働者の使役が開始され、昭和14(1939)年からは半島人労働者の自主的集団移入が本格化、最重労働の採鉱夫の殆どが半島人に置き換えられた外、昭和18(1943)年からは大陸人捕虜の使役も開始されました。半島人労働者は納屋、大陸人捕虜は端島の南端の囲いの中で居住していました。
昭和16(1941)年から始まった「産業報国戦士運動」の結果、石炭出炭量が最盛期を迎えた同年には約41万ｔが出炭され、端島の歴史に於ける年間最高出炭量を記録しています。昭和18(1943)年には第二立坑より１日に2062ｔの出炭も記録しました。しかし、この時期の端島の生活は極めて劣悪で、当時の端島の死亡者は日本人1162人・半島人122人・大陸人15人が記録されており、爆焼死・圧死・窒息死等で多数の犠牲者が出ていました。昭和15(1940)年の端島の推定人口が3333人なので、住人の40%近くが死んでいる異常事態になっていたのです。
昭和20(1945)年６月11日に米潜水艦ティランテが、端島に停泊していた石炭運搬船〔白寿丸〕を魚雷攻撃で撃沈していますが、これが「米軍が端島を本物の軍艦と勘違いして魚雷を撃ち込んだ」との伝説を生みました。実際にはティランテは白昼堂々内陸側から正確に〔白寿丸〕を雷撃しており、この伝説が生まれた背景には、佐世保鎮守府あたりが米軍の愚劣さを強調して戦意高揚に役立てるため、流言飛語を意図的に流布した可能性が指摘されています。
終戦直後、半島人・大陸人の帰国や生活に困窮した労働者の島外離脱のため一時的に人口が激減しますが、昭和20年10月の石炭生産緊急対策要綱による復興資金の供給、さらに昭和23(1948)年のGHQによる輸入砂糖の出炭奨励特配実施、復員者の帰還等によって昭和23年以降は人口が急激、同時に住宅不足も深刻化しました。
この時期には設備の近代化と同時に、労使関係の近代化が行われた。昭和21(1946)年には端島炭鉱労働組合が結成され、組合闘争の結果として賃金が上がり、ますます転入者が増えました。賃金の上昇と同時に炭坑の稼働率は下がり、余暇が増加、遊び場にブランコも設置され、住環境は改善されました。特に昭和30(1955)年の海底水道開通で、いつでも真水の風呂に入れる様になるなど生活環境は劇的に改善されています。島内には三つの共同浴場が存在し、職員風呂と坑員風呂の区別がありましたが、これも労働組合結成直後に起こった差別撤廃闘争で解消するなど、戦前からあった職員と坑員の差別は戦後から閉山期にかけて段階的に解消されて行きました。
しかし、経営面からすると、労働法規の整備等によって労働者の労働時間が制限されたため、戦時中と比べて人口が急激に増加したにも係わらず、石炭の生産量は大きくダウンしており、稼働率の低さ・労働者の流動性の高さ・出炭量の低さが問題となっていました。
人口が最盛期を迎えた昭和35(1960)年には5267人の人口があり、人口密度は83600人/k�屬叛こΠ譴鮓悗蝓�東京23区の９倍以上に達していたのです。
然るに、昭和35年以降は、主要エネルギーの石炭から石油への移行により炭鉱業は衰退を始め、特に昭和39(1964)年の自然発火事件が痛手となって、炭鉱の規模が縮小されて人口が急速に減少してしまいます。ところが、端島炭坑は昭和40(1965)年に三ツ瀬区域の新坑が開発されて一時期に持ち直し、人口は減ったものの機械化・合理化によって生産量も戦時中に迫る水準に回復を果しました。さらに、空き部屋となった二戸を一戸に改造するなどして、住宅事情は劇的に改善したのです。
でも結局、脱石炭のエネルギー政策の影響を受けて、昭和45(1970)年には端島沖開発が中止になり、会社側が鉱命終了期を発表、その後、数百万ｔの石炭を残したまま昭和49(1974)年に閉山する事になったのです。閉山時に約2000人いた住民も全員退去し、端島は無人島となって、建造物は廃墟と化したのでした。
その後、端島は平成13(2001)年に三菱マテリアルから西彼杵(ﾆｼｿﾉｷﾞ)郡高島町に無償譲渡され、平成17(2005)年に高島町が長崎市に編入された事に伴い、長崎市の所有地となりました。そして、廃墟ブームに対応して観光地化が図られ、平成20(2008)年に「長崎市端島見学施設条例」と「端島への立ち入りの制限に関する条例」が長崎市議会で成立した結果、翌年から島の南部に整備された見学通路に限って観光客の上陸・見学が可能となったのです。平成26(2014)年には国の史跡に指定され、翌年には邪悪な敵国による妨害工作を粉砕して「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成物件としてUNESCO世界文化遺産に登録されたのです。この結果、観光客は激増、現在は五つの会社によってツアー船が運行されています。
2014年10月06日、史跡に指定。
2015年07月05日、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の一環としてUNESCO世界文化遺産に登録。
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軍艦島の俗名で知られる端島(ﾊｼﾏ)は、元来は南北約320ｍ・東西約120ｍの小さな岩礁に過ぎませんでした。文化７(1810)年に石炭の露出が発見され、幕府領と佐賀藩深堀領の間で領有権争いが生じましたが、当時は漁民が漁業の傍らに「磯掘り」と称して、ごく小規模に露出炭を採炭する程度でした。
ここで本格的な採炭事業が始まったのは明治19(1886)年の事で、深さ36ｍの第一竪坑が掘られました。明治23(1890)年、端島炭鉱の所有者であった旧鍋島藩深堀領主鍋島孫六郎茂精が三菱社へ10万円で譲渡し、以後100年以上に亙って三菱の私有地となります。
譲渡後は第二竪坑と第三竪坑の開鑿(ｶｲｻｸ)もあって端島炭鉱の出炭量は高島炭鉱を抜くまでに成長、この頃には社船〔夕顔丸〕の就航、製塩・蒸留水機設置に伴う飲料水供給開始、社立の尋常小学校の設立等の基本的な居住環境が整備されると共に、島の周囲が段階的に埋め立てられました。
その後、大正５(1916)年には日本で最初の鉄筋コンクリート造の集合住宅「30号棟」が建設され、この頃から端島の外観が三菱重工業長崎造船所で建造中だった戦艦土佐に似ているとして「軍艦島」の別名が生まれたのです。なお、土佐は八八艦隊計画によって長門型戦艦の拡大改良型戦艦となる予定でしたが、大正11(1922)年のワシントン海軍軍縮条約で廃棄が決定してしまい、標的艦として自軍の砲撃を受けた後、大正14(1925)年に自沈しています。
端島炭鉱は良質な強粘炭が採れ、隣接する高島炭鉱と共に、日本の近代化を支えて来た炭鉱の一つでした。それを支える労働者のための福利厚生も急速に整えられ、昭和12(1937)年の時点で、教育・医療保険・商業娯楽等の各施設は、既に相当なレヴェルで整備されていました。一方で仕事は非常に過酷で、１日12時間労働の二交代制で、「星を頂いて入坑し星を頂いて出坑する。陽の光に当ることがない」と評されました。
大正中期からは内地人の不足を補充するために半島人労働者の使役が開始され、昭和14(1939)年からは半島人労働者の自主的集団移入が本格化、最重労働の採鉱夫の殆どが半島人に置き換えられた外、昭和18(1943)年からは大陸人捕虜の使役も開始されました。半島人労働者は納屋、大陸人捕虜は端島の南端の囲いの中で居住していました。
昭和16(1941)年から始まった「産業報国戦士運動」の結果、石炭出炭量が最盛期を迎えた同年には約41万ｔが出炭され、端島の歴史に於ける年間最高出炭量を記録しています。昭和18(1943)年には第二立坑より１日に2062ｔの出炭も記録しました。しかし、この時期の端島の生活は極めて劣悪で、当時の端島の死亡者は日本人1162人・半島人122人・大陸人15人が記録されており、爆焼死・圧死・窒息死等で多数の犠牲者が出ていました。昭和15(1940)年の端島の推定人口が3333人なので、住人の40%近くが死んでいる異常事態になっていたのです。
昭和20(1945)年６月11日に米潜水艦ティランテが、端島に停泊していた石炭運搬船〔白寿丸〕を魚雷攻撃で撃沈していますが、これが「米軍が端島を本物の軍艦と勘違いして魚雷を撃ち込んだ」との伝説を生みました。実際にはティランテは白昼堂々内陸側から正確に〔白寿丸〕を雷撃しており、この伝説が生まれた背景には、佐世保鎮守府あたりが米軍の愚劣さを強調して戦意高揚に役立てるため、流言飛語を意図的に流布した可能性が指摘されています。
終戦直後、半島人・大陸人の帰国や生活に困窮した労働者の島外離脱のため一時的に人口が激減しますが、昭和20年10月の石炭生産緊急対策要綱による復興資金の供給、さらに昭和23(1948)年のGHQによる輸入砂糖の出炭奨励特配実施、復員者の帰還等によって昭和23年以降は人口が急激、同時に住宅不足も深刻化しました。
この時期には設備の近代化と同時に、労使関係の近代化が行われた。昭和21(1946)年には端島炭鉱労働組合が結成され、組合闘争の結果として賃金が上がり、ますます転入者が増えました。賃金の上昇と同時に炭坑の稼働率は下がり、余暇が増加、遊び場にブランコも設置され、住環境は改善されました。特に昭和30(1955)年の海底水道開通で、いつでも真水の風呂に入れる様になるなど生活環境は劇的に改善されています。島内には三つの共同浴場が存在し、職員風呂と坑員風呂の区別がありましたが、これも労働組合結成直後に起こった差別撤廃闘争で解消するなど、戦前からあった職員と坑員の差別は戦後から閉山期にかけて段階的に解消されて行きました。
しかし、経営面からすると、労働法規の整備等によって労働者の労働時間が制限されたため、戦時中と比べて人口が急激に増加したにも係わらず、石炭の生産量は大きくダウンしており、稼働率の低さ・労働者の流動性の高さ・出炭量の低さが問題となっていました。
人口が最盛期を迎えた昭和35(1960)年には5267人の人口があり、人口密度は83600人/k�屬叛こΠ譴鮓悗蝓�東京23区の９倍以上に達していたのです。
然るに、昭和35年以降は、主要エネルギーの石炭から石油への移行により炭鉱業は衰退を始め、特に昭和39(1964)年の自然発火事件が痛手となって、炭鉱の規模が縮小されて人口が急速に減少してしまいます。ところが、端島炭坑は昭和40(1965)年に三ツ瀬区域の新坑が開発されて一時期に持ち直し、人口は減ったものの機械化・合理化によって生産量も戦時中に迫る水準に回復を果しました。さらに、空き部屋となった二戸を一戸に改造するなどして、住宅事情は劇的に改善したのです。
でも結局、脱石炭のエネルギー政策の影響を受けて、昭和45(1970)年には端島沖開発が中止になり、会社側が鉱命終了期を発表、その後、数百万ｔの石炭を残したまま昭和49(1974)年に閉山する事になったのです。閉山時に約2000人いた住民も全員退去し、端島は無人島となって、建造物は廃墟と化したのでした。
その後、端島は平成13(2001)年に三菱マテリアルから西彼杵(ﾆｼｿﾉｷﾞ)郡高島町に無償譲渡され、平成17(2005)年に高島町が長崎市に編入された事に伴い、長崎市の所有地となりました。そして、廃墟ブームに対応して観光地化が図られ、平成20(2008)年に「長崎市端島見学施設条例」と「端島への立ち入りの制限に関する条例」が長崎市議会で成立した結果、翌年から島の南部に整備された見学通路に限って観光客の上陸・見学が可能となったのです。平成26(2014)年には国の史跡に指定され、翌年には邪悪な敵国による妨害工作を粉砕して「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成物件としてUNESCO世界文化遺産に登録されたのです。この結果、観光客は激増、現在は五つの会社によってツアー船が運行されています。
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