長崎県長崎市出島町
1922年10月12日指定
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大御所徳川秀忠は禁教令徹底のため、寛永元(1624)年にスペイン船の来航を禁じますが、豊臣秀吉の朝鮮出兵後、明帝国が日本との貿易を禁じていたため、明産生糸輸入のためポルトガル船の来航は認めざるを得ませんでした。しかし、ポルトガル人と一般人との接触は禁教令にとって好ましくない現象だったため、寛永11(1634)年に３代将軍徳川家光はポルトガル人隔離のため、長崎湾内の砂洲を築島と呼ばれる人工島として整備する事を命じ、寛永13(1636)年に工事が完成してポルトガル人の築島隔離が始まりました。
日本初の本格的人工島である築島の建設当初の面積は約15000�屬如∪襍舛鬚靴討�り、波浪に耐えるため頑丈な高石垣が築かれていました。築造費用のうち門・橋・塀等は幕府からの出資でしたが、それ以外は高木作右衛門・高島四郎兵衛等の長崎の25人の有力者が出資しました。彼等は出島町人と呼ばれ、出島を利用するポルトガル商館から賃貸料を徴収する事となりました。
ところが、寛永14(1637)年に勃発した島原の乱に於いて、賊徒の切支丹達がポルトガル軍の来援を妄想してしぶとい徹底抗戦を続けたため、家光は寛永16(1639)年にポルトガル船の入港禁止に踏み切り、明産生糸輸入は平戸に来航するオランダ船に託される事となりました。
このため、長崎での対外貿易は東南アジア在住の華僑の船が時折来航するだけとなってしまい、商売が困難となった長崎の商人達が幕府にオランダ商館の長崎移転を懇願、幕府も外様大名松浦(ﾏﾂﾗ)氏領の平戸よりも天領を貿易窓口にする事が好ましいと判断したため、寛永18(1641)年にオランダ商館移転が実現しました。
オランダ商館は出島と改称された築島に設けられ、商館長以下10〜15名が常駐、次の貿易船乗組員と交替で帰国する事になっていました。オランダ商館も出島商人に対して賃貸料を支払う事になります。
禁教対策としてオランダ人と一般日本人との接触は厳禁され、出島の周囲は塀で囲まれ、本土との唯一の橋は厳重な管理下に置かれて、オランダ人が島外へ出る事は原則的に禁じられていました。出島に入る事が許される女性は丸山遊女に限定され、日本船が勝手に出島へ近づく事を阻止するため、出島の外周には棒杭が打たれていたのです。
この様に、出島は高石垣・塀・杭等で囲まれた海上要塞の如き存在であり、水城(海城)の一種と見做す事が出来ます。
オランダ商館長はカピタンと呼ばれ、来航船の船長が次の船が来るまで商館長を務めました。歴代カピタンは、毎年、通商免許に対する礼として江戸に下り、将軍に謁見して貿易の御礼を言上して贈り物を献上する習慣があり、これを「カピタンの江戸参府」と呼びました。
慶安４(1651)年に長崎諏訪神社が勧請(ｶﾝｼﾞｮｳ)造営され、祭礼「長崎くんち」が始められると、オランダ人の外出制限が緩和されて清国人と共に桟敷(ｻｼﾞｷ)席での観覧が許される事となりました。
寛政10(1798)年、出島は大火に見舞われて西側半分が焼失、カピタン部屋も焼けてしまいました。大半の建物は間もなく復旧しましたが、カピタン部屋はオランダ商館の費用で建てる事になっており、本国がフランス革命軍に占領されて財政難に陥っていたオランダ商館には再建の余裕がありませんでした。
文化元(1804)年にロマノフ朝ロシア帝国皇帝アレクサンドル１世の使者ニコライ=ペトロヴィッチ=レザノフが長崎へ来航して幕府に通商許可を求めますが、レザノフ一行は半年間出島に留め置かれ、翌年に長崎奉行所に於いて通商の拒絶を通告され釈放されています。
文化５(1808)年８月15日、フランス皇帝ナポレオン１世支配下に置かれていたオランダの海外植民地を次々に制圧していたイギリス海軍のフリゲート艦フェートン号が、オランダ船に偽装して長崎港に侵入、オランダ商館員２名を人質に取って長崎港内の捜索を行う事件が突発します。当時、出島は欧州諸国の間ではオランダの植民地と見做されており、オランダ国旗が翻っている世界唯一の地でもあったのです。
ところが、その年の長崎警備の任に当たっていた佐賀藩は財政難による経費節減のため警備兵員を勝手に大きく減らしており、本来の規定の十分の一の100人程度しか藩兵を配備していなかったため、長崎奉行松平康英(ﾏﾂﾀﾞｲﾗﾔｽﾋﾃﾞ)は福岡藩・佐賀藩・大村藩等の周辺諸藩に打払いを命じるものの、迅速な藩兵出動が不可能なのは明らかでした。更に翌16日にフェートン号艦長フリートウッド=ペリュー海軍大佐(18歳)が薪水と食料を提供しなければ長崎港内の船舶や長崎の町を焼き討ちすると脅迫して来たため、康英は自ら先頭に立ってフェートン号へ斬り込むと息巻きましたが、オランダ商館長ヘンドリック=ドゥーフが「日本側に勝ち目は無い」と言って必死で康英を説得したため、康英も要求を全面的に受け入れる決定をせざるを得ませんでした。この結果、フェートン号は食料や飲料水と引き換えにオランダ商館員を釈放して17日に出港したため、人的・物的な被害はありませんでしたが、責任を痛感した康英は17日のうちに自発的に自刃したのです。長崎奉行の自決は泰平に馴れた幕閣に大きな衝撃を与え、表向きは病死として処理される事となりました。
なお、新しいカピタン部屋はドゥーフ商館長の尽力で文化６(1809)年に再建されています。
また、オランダ領東インドを奪取して英国ジャワ副総督となっていたトーマス=スタンフォード=ビングレイ=ラッフルズは、1813年と1814年にオランダ船を偽装した英国船を出島へ送り込み、ドゥーフ商館長に出島割譲を迫りましたが、ドゥーフは断固拒否してオランダ国旗を掲げ続けました。なお、ドゥーフは蘭日辞典『ドゥーフ・ハルマ』の編纂を主導した人物としても知られています。
安政元(1854)年３月に日米和親条約が締結されたのを受け、安政２(1855)年12月23日には日蘭和親条約が締結され、オランダ人の出島から長崎市街への出入りが認められるようになりました。
安政６(1859)年６月６日、長崎開港が実現して欧米諸国との自由貿易が開始されたため、出島のオランダ商館は閉鎖されました。その後の出島は明治32(1899)年まで東山手・南山手・新地蔵等と並ぶ外国人居留地となっていました。
その間、明治19(1886)年から実施された中島川の変流工事に伴う川幅拡張により、出島全体の四分の一に相当する北側敷地が削り取られ、明治21(1888)年には東側の護岸部分から築町との間が埋め立てられて本土と陸続きとなりました。 次いで、明治30(1897)年から始まった第二次長崎港港湾改修事業で南側の埋め立てが進められ、明治37(1904)年の竣工時には完全な陸続きとなって、往時の扇型の姿は完全に失われてしまったのです。
大正11(1922)年に「出島和蘭商館跡」として国の史跡に指定されたものの、既に道路以外の全ての土地が民有地となっていたため、石碑が一本建てられただけの「がっかり名所」と化していました。
しかし、平成時代に入って復元事業が開始され、平成12(2000)年の第一期事業で西端部のヘトル部屋等、平成18(2006)年の第二期事業で西寄りのカピタン部屋等、平成28(2016)年の第三期事業で中央部の蘭人筆者部屋(ﾗﾝｼﾞﾝﾋｯｼｬﾍﾞﾔ)等が復元され、現在は南側エリアで第四期事業が始まろうとしています。
＋ケンペル、ツュンベリー記念碑
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＋デジマノキ
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1922年10月12日指定
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大御所徳川秀忠は禁教令徹底のため、寛永元(1624)年にスペイン船の来航を禁じますが、豊臣秀吉の朝鮮出兵後、明帝国が日本との貿易を禁じていたため、明産生糸輸入のためポルトガル船の来航は認めざるを得ませんでした。しかし、ポルトガル人と一般人との接触は禁教令にとって好ましくない現象だったため、寛永11(1634)年に３代将軍徳川家光はポルトガル人隔離のため、長崎湾内の砂洲を築島と呼ばれる人工島として整備する事を命じ、寛永13(1636)年に工事が完成してポルトガル人の築島隔離が始まりました。
日本初の本格的人工島である築島の建設当初の面積は約15000�屬如∪襍舛鬚靴討�り、波浪に耐えるため頑丈な高石垣が築かれていました。築造費用のうち門・橋・塀等は幕府からの出資でしたが、それ以外は高木作右衛門・高島四郎兵衛等の長崎の25人の有力者が出資しました。彼等は出島町人と呼ばれ、出島を利用するポルトガル商館から賃貸料を徴収する事となりました。
ところが、寛永14(1637)年に勃発した島原の乱に於いて、賊徒の切支丹達がポルトガル軍の来援を妄想してしぶとい徹底抗戦を続けたため、家光は寛永16(1639)年にポルトガル船の入港禁止に踏み切り、明産生糸輸入は平戸に来航するオランダ船に託される事となりました。
このため、長崎での対外貿易は東南アジア在住の華僑の船が時折来航するだけとなってしまい、商売が困難となった長崎の商人達が幕府にオランダ商館の長崎移転を懇願、幕府も外様大名松浦(ﾏﾂﾗ)氏領の平戸よりも天領を貿易窓口にする事が好ましいと判断したため、寛永18(1641)年にオランダ商館移転が実現しました。
オランダ商館は出島と改称された築島に設けられ、商館長以下10〜15名が常駐、次の貿易船乗組員と交替で帰国する事になっていました。オランダ商館も出島商人に対して賃貸料を支払う事になります。
禁教対策としてオランダ人と一般日本人との接触は厳禁され、出島の周囲は塀で囲まれ、本土との唯一の橋は厳重な管理下に置かれて、オランダ人が島外へ出る事は原則的に禁じられていました。出島に入る事が許される女性は丸山遊女に限定され、日本船が勝手に出島へ近づく事を阻止するため、出島の外周には棒杭が打たれていたのです。
この様に、出島は高石垣・塀・杭等で囲まれた海上要塞の如き存在であり、水城(海城)の一種と見做す事が出来ます。
オランダ商館長はカピタンと呼ばれ、来航船の船長が次の船が来るまで商館長を務めました。歴代カピタンは、毎年、通商免許に対する礼として江戸に下り、将軍に謁見して貿易の御礼を言上して贈り物を献上する習慣があり、これを「カピタンの江戸参府」と呼びました。
慶安４(1651)年に長崎諏訪神社が勧請(ｶﾝｼﾞｮｳ)造営され、祭礼「長崎くんち」が始められると、オランダ人の外出制限が緩和されて清国人と共に桟敷(ｻｼﾞｷ)席での観覧が許される事となりました。
寛政10(1798)年、出島は大火に見舞われて西側半分が焼失、カピタン部屋も焼けてしまいました。大半の建物は間もなく復旧しましたが、カピタン部屋はオランダ商館の費用で建てる事になっており、本国がフランス革命軍に占領されて財政難に陥っていたオランダ商館には再建の余裕がありませんでした。
文化元(1804)年にロマノフ朝ロシア帝国皇帝アレクサンドル１世の使者ニコライ=ペトロヴィッチ=レザノフが長崎へ来航して幕府に通商許可を求めますが、レザノフ一行は半年間出島に留め置かれ、翌年に長崎奉行所に於いて通商の拒絶を通告され釈放されています。
文化５(1808)年８月15日、フランス皇帝ナポレオン１世支配下に置かれていたオランダの海外植民地を次々に制圧していたイギリス海軍のフリゲート艦フェートン号が、オランダ船に偽装して長崎港に侵入、オランダ商館員２名を人質に取って長崎港内の捜索を行う事件が突発します。当時、出島は欧州諸国の間ではオランダの植民地と見做されており、オランダ国旗が翻っている世界唯一の地でもあったのです。
ところが、その年の長崎警備の任に当たっていた佐賀藩は財政難による経費節減のため警備兵員を勝手に大きく減らしており、本来の規定の十分の一の100人程度しか藩兵を配備していなかったため、長崎奉行松平康英(ﾏﾂﾀﾞｲﾗﾔｽﾋﾃﾞ)は福岡藩・佐賀藩・大村藩等の周辺諸藩に打払いを命じるものの、迅速な藩兵出動が不可能なのは明らかでした。更に翌16日にフェートン号艦長フリートウッド=ペリュー海軍大佐(18歳)が薪水と食料を提供しなければ長崎港内の船舶や長崎の町を焼き討ちすると脅迫して来たため、康英は自ら先頭に立ってフェートン号へ斬り込むと息巻きましたが、オランダ商館長ヘンドリック=ドゥーフが「日本側に勝ち目は無い」と言って必死で康英を説得したため、康英も要求を全面的に受け入れる決定をせざるを得ませんでした。この結果、フェートン号は食料や飲料水と引き換えにオランダ商館員を釈放して17日に出港したため、人的・物的な被害はありませんでしたが、責任を痛感した康英は17日のうちに自発的に自刃したのです。長崎奉行の自決は泰平に馴れた幕閣に大きな衝撃を与え、表向きは病死として処理される事となりました。
なお、新しいカピタン部屋はドゥーフ商館長の尽力で文化６(1809)年に再建されています。
また、オランダ領東インドを奪取して英国ジャワ副総督となっていたトーマス=スタンフォード=ビングレイ=ラッフルズは、1813年と1814年にオランダ船を偽装した英国船を出島へ送り込み、ドゥーフ商館長に出島割譲を迫りましたが、ドゥーフは断固拒否してオランダ国旗を掲げ続けました。なお、ドゥーフは蘭日辞典『ドゥーフ・ハルマ』の編纂を主導した人物としても知られています。
安政元(1854)年３月に日米和親条約が締結されたのを受け、安政２(1855)年12月23日には日蘭和親条約が締結され、オランダ人の出島から長崎市街への出入りが認められるようになりました。
安政６(1859)年６月６日、長崎開港が実現して欧米諸国との自由貿易が開始されたため、出島のオランダ商館は閉鎖されました。その後の出島は明治32(1899)年まで東山手・南山手・新地蔵等と並ぶ外国人居留地となっていました。
その間、明治19(1886)年から実施された中島川の変流工事に伴う川幅拡張により、出島全体の四分の一に相当する北側敷地が削り取られ、明治21(1888)年には東側の護岸部分から築町との間が埋め立てられて本土と陸続きとなりました。 次いで、明治30(1897)年から始まった第二次長崎港港湾改修事業で南側の埋め立てが進められ、明治37(1904)年の竣工時には完全な陸続きとなって、往時の扇型の姿は完全に失われてしまったのです。
大正11(1922)年に「出島和蘭商館跡」として国の史跡に指定されたものの、既に道路以外の全ての土地が民有地となっていたため、石碑が一本建てられただけの「がっかり名所」と化していました。
しかし、平成時代に入って復元事業が開始され、平成12(2000)年の第一期事業で西端部のヘトル部屋等、平成18(2006)年の第二期事業で西寄りのカピタン部屋等、平成28(2016)年の第三期事業で中央部の蘭人筆者部屋(ﾗﾝｼﾞﾝﾋｯｼｬﾍﾞﾔ)等が復元され、現在は南側エリアで第四期事業が始まろうとしています。
＋ケンペル、ツュンベリー記念碑
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