史跡コミュの崇福寺の媽姐堂

　長崎県長崎市鍛冶屋町７番５号

　1960年07月13日、長崎県が史跡に指定。

　https://www.google.com/maps/place/%E5%B4%87%E7%A6%8F%E5%AF%BA+%E5%AA%BD%E7%A5%96%E5%A0%82/@32.742296,129.8834039,19z/data=!4m13!1m7!3m6!1s0x3515536aebdeb92d:0xdccc83c7846141f8!2z44CSODUwLTA5MDIg6ZW35bSO55yM6ZW35bSO5biC5Li45bGx55S677yS4oiS77yRIOiKseaciA!3b1!8m2!3d32.7403784!4d129.8799895!3m4!1s0x351553422a279b2b:0xe6687bf458cee468!8m2!3d32.7424641!4d129.8837427

　崇福寺は長崎に四つある唐寺の一つで、興福寺・福済寺と共に「長崎三福寺」に数えられます。原爆の被害を免れたため、長崎県内には三つしかない国宝建造物のうち二つが当寺にあり、その外にも多数の文化財を有する名刹です。
　大明帝国は、豊臣秀吉の朝鮮出兵後、日本を敵国と見做して、日本船の入港や中国人の日本渡航を禁じていましたが、1620年代になると東南アジア経由で長崎に入る者が年々増加し、その多くは福建省福州府の出身者でした。その結果、長崎在住の福州人達は、彼等独自の菩提寺を創建したいと考え、福州出身僧の招聘を企て、福州出身の黄檗宗僧侶超然(ﾁｮｳﾈﾝ；1567～1644)が寛永６(1629)年に来日を果たしたのです。黄檗宗は禅宗の一派です。そして、寛永９(1632)年に長崎奉行が崇福寺の造営を認可、寛永12(1635)年に媽祖堂(ﾏｿﾄﾞｳ)が竣工し、超然が開山上人となりました。明様式の寺院としては日本最古の物になり、福州寺や赤寺の異名もあります。
　明帝国が瓦解した正保元(1644)年に超然は没しますが、正保３(1646)年に清軍が南明(ﾅﾝﾐﾝ)の隆武帝の帝都となっていた福州を攻略した際、福州の黄檗僧である百拙如理(ﾋｬｸｾﾂﾆｮﾘ；？～1649)が長崎へ亡命して来たため、崇福寺の第２代住持に就任しました。当時、長崎には福建省出身の商人が多数亡命して来ており、彼等の寄進で崇福寺には壮大な伽藍が続々と建立される事となります。
　百拙如理が没した翌年の慶安３(1650)年に福建省興化府出身の道者超元(ﾄﾞｳｼｬﾁｮｳｹﾞﾝ；1602～62)が来日したため、崇福寺第３代住持となりますが、明暦元(1655)年７月に黄檗宗トップの高僧である隠元隆琦(ｲﾝｹﾞﾝﾘｭｳｷ；1592～1673)が南明の鄭成功将軍の仕立てた船で長崎へ来航すると、道者超元は崇福寺住持の座を隠元隆琦へ譲りました。
　しかし、同年９月に隠元隆琦は摂津国の普門寺へ移ったため、道者超元が崇福寺の住持に復帰しています。
　明暦３(1657)年に即非如一(ｿｸﾋﾆｮｲﾂ；1616～71)が長崎に来航すると、道者超元は再び崇福寺住持職を譲り、即非如一の下で大伽藍の建設が進展して行ったのです。
　媽祖とは海上守護神で、天后聖母(ﾃﾝｺｳｼｮｳﾎﾞ)・天妃(ﾃﾝﾋﾟ)・老媽(ﾉｳﾏ)・媽祖菩薩等の別名があり、南嶺(ﾅﾝﾚｲ)山脈以南の華南地方で尊崇されます。日本の本地垂迹説(ﾎﾝﾁﾞｽｲｼﾞｬｸｾﾂ)では日本武尊(ﾔﾏﾄﾀｹﾙﾉﾐｺﾄ)の妃である弟橘媛(ｵﾄﾀﾁﾊﾞﾅﾋﾒ)と同一視されました。唐船は船毎に媽祖像を祀り、入津(ﾆｭｳｼﾝ)滞泊中は唐寺の媽祖堂に奉安したため、媽祖堂は寺内でも重要度の高い建物で、長崎の唐寺の草創は媽祖堂の建立に始まる場合が多かったのです。
　現在の建物は寛政６(1794)年に清船主からの砂糖10000斤の代銀12貫目で再建された物です。基壇上の勾欄(ｺｳﾗﾝ)・前廊の黄檗天井・半扉(ﾊﾝﾄﾋﾞﾗ)、その他の黄檗様式と和様の細部様式とが混在しています。船の媽祖像を揚げ卸す儀式のために、前庭の空間が必要となっています。港内から望見出来る目印の旗を立てた刹竿石一対が、鐘鼓楼の前にあります。
　媽祖堂の門である媽祖門〔重要文化財〕は、桟瓦葺(ｻﾝｶﾞﾜﾗﾌﾞｷ)入母屋造の三間三戸八脚門(ﾊｷｬｸﾓﾝ)で、文政10(1827)年の再建です。媽祖門は、大雄宝殿〔国宝〕と方丈玄関を繋ぐ渡廊下を兼ねた巧みな構造をしており、扉の前面は黄檗天井、背面は山形天井となっています。木割が大きく、細部に僅かの塗料を用いる外は全て素木(ｼﾗｷ)のままとなるなど、建築様式は和様が基調です。媽祖堂に門があるのは日本では稀有な例となっています。
　