史跡コミュの周防鋳銭司跡

　山口県山口市鋳銭司(ｽｾﾞﾝｼﾞ)字大畠・四辻

　1973年03月13日指定

　周防鋳銭司(ﾁｭｳｾﾝｼ；ｼﾞｭｾﾞﾝｼﾞ)は古代の貨幣鋳造所の一つで、周防国府からは西方約15km地点にあります。皇朝十二銭と総称される古代貨幣の最初となった和銅元(708)年発行の和同開珎(ﾜﾄﾞｳｶｲﾎｳ)は近江国で鋳造されましたが、その後は産銅地の近くで鋳造される様になり、長門国衙近くの長門鋳銭司が中心となりました。しかし、弘仁９(818)年に嵯峨天皇が発行した富壽神寳(ﾌｼﾞｭｼﾝﾎﾟｳ)からは、ここ周防鋳銭司のみで鋳造が行われる様になり、天徳２(958)年に村上天皇が発行した乹元大寳(ｹﾝｹﾞﾝﾀｲﾎｳ)に至るまでの八銭は全て周防鋳銭司で鋳造が行われました。この地は山陽道に面した交通至便の地だったため、各地から搬入される銅の管理を行うのに適していたのが理由だった様です。周防国司にとっては鋳銭こそが最も重大な任務でした。９世紀前半の最盛期には年額3500～11000貫が生産されましたが、律令制が弛緩し始めた９世紀後半には生産量は落ち込みました。この間、天慶３(940)年には藤原純友の襲撃も受けましたが、施設の破却は免れた様で、その後も発行は継続されました。
　しかし、貨幣経済のシステムが全く理解出来ていなかった平安貴族は、新銭の発行毎に1000％のデノミを強行する無茶をやって自ら貨幣の信頼を損ねており、貨幣の流通は一向に進展しませんでした。しかも当時の製錬技術では日本で大量に産出する黄銅鉱等の硫化銅を成分とする物は利用出来ず、孔雀石・黒銅鉱等の酸化銅を成分とする限られた鉱石しか利用出来なかったため、日本各地の酸化銅鉱山は殆ど枯渇して銅の価値が上がっており、銭を溶かして銅地金として利用する破銭が横行する始末でした。
　周防鋳銭司では応和３(963)年に最後の乹元大寳が鋳造されましたが、朝廷はその後も永観２(984)年に禁破銭令を出したり、寛和２(986)年には諸社諸陵に、翌年には十五大寺に対して銭の流通を祈願させる等の空しい対策を続けました。しかし、藤原道長全盛時代の11世紀初頭以後、銭の流通に関する史料は途絶えてしまう事になり、周防鋳銭司もそれまでに廃止された模様です。
　周防鋳銭司跡は約38500㎡に及ぶ広大な地で、これまでの発掘調査によって工房・倉庫群・炉・井戸等の遺構や、坩堝(ﾙﾂﾎﾞ)・鞴口(ﾌｲｺﾞｸﾞﾁ)・鋳損じの銅銭等の遺物が発見されており、今も発掘調査が続けられています。
　周防鋳銭司跡出土品は山口市指定文化財となっており、東方の鋳銭司(ｽｾﾞﾝｼﾞ)郷土館等で展示されています。
　四辻駅から西北へ約１km。
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コメント(3)

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[2] mixiユーザー 08月15日 21:30

　３月22日金曜日に訪れましたが、案内板もプレートも全く見当たりませんでした。
　鋳銭司郷土館の係員の方の話では「発掘調査中なので一時的に取り外しているのだろう」との事でしたが、国指定史跡なんですから、もう少し何とかして欲しいものです。
　写真は鋳銭司郷土館に展示されている周防鋳銭司跡出土品〔山口市指定文化財〕です。