群馬県沼田市西倉内町594
1976年03月30日、沼田市が史跡に指定。
沼田城は、北は薄根川、南は片品川が東方から利根川本流に流れ込む川間に位置する大規模な河岸段丘台地である滝棚の原の西北端に築かれた城です。平城とも平山城とも言い難いので、丘城だとか崖端城などと言う苦しい分類が成されているようです。
本来、この一帯の中心は、滝棚の原北方の低湿地で、平家政権時代に八条院領沼田荘が利根荘から分離して成立、荘園北方の台地上に築かれた井土上(ｲﾄﾞﾉｳｴ)館に拠る荘官の沼田氏は鎌倉幕府御家人となりました。
その後、沼田氏は応永12(1405)年に薄根川南岸の台地基部に小沢城、永正16(1519)年に滝棚の原の北端に幕岩城を築いて本拠を移しました。
続いて、沼田顕泰は享禄２(1529)年に滝棚の原の西北端である倉内に築城を始めて天文５(1536)年に完成させ、新たな本拠としました。これが沼田城(倉内城)で、この結果、従来、滝棚の原北麓を指す地名だった「沼田」が河岸段丘全体の名称となったのです。この際、本町・材木町・鍛治町が割り建てられ、生活用水確保のため白沢用水も開削されたため、従来荒蕪地だった地が城下町として発展する事となりました。
戦略上の要地に当たる沼田城は越後の上杉謙信と小田原の北条氏康の激しい攻防の地となり、永禄12(1569)年には沼田氏は放逐されて謙信の直轄領となりますが、天正６(1578)年に北条氏政が奪取、続いて天正８(1580)年に甲斐の武田勝頼の命を受けた信濃国松尾城主真田昌幸が攻略します。
天正10(1582)年３月、織田信長が武田勝頼を攻め滅ぼすと、真田昌幸は信長に臣従を誓って信濃国の本領を安堵されますが、上野国領は接収され、信長の重臣滝川一益が上野国守となり、対上杉の拠点となる沼田城には一族の滝川益重を入れました。ところが、同年６月２日本能寺の変で織田信長が横死すると、滝川一益は６月19日に北条氏直との神流川合戦に敗れて伊勢国へ逐電、益重もこれに従ったため、この隙を逃さず独立した真田昌幸は６月21日に沼田城を奪回しました。
その後、昌幸は、上杉景勝→北条氏直→徳川家康→上杉景勝と目まぐるしく主君を変えながら沼田城を死守、天正14(1586)年６月に景勝が秀吉に臣従した際、上杉家麾下から独立して秀吉直属の大名として公認されました。
天正17(1589)年には秀吉による裁定で、北条氏直には沼田城を含む利根川以東が割譲されて、昌幸は代替地として信濃国伊那郡箕輪領を得ました。この結果、北条氏綱家臣で元沼田城代の猪俣邦憲が同年９月に沼田城代に返り咲く事となりました。
ところが、同年11月に至り、猪俣邦憲は真田領の名胡桃(ﾅｸﾞﾙﾐ)城を攻め落してしまい、この事件が関白秀吉の発していた惣無事令違反と見做されたため、翌年の小田原征伐の直接原因となったのです。
天正18(1590)年７月、小田原北条氏が滅亡すると、関八州は徳川家康領となりましたが、家康は秀吉の奨めで真田昌幸に上野国沼田領を安堵してやり、昌幸は再度旧領を確保しました。昌幸は嫡男信幸を30000石の沼田城主とし、信幸は慶長２(1597)年に沼田城を天守閣を持つ大規模な近世城郭に改築しています。
従来の沼田城は台地西北端の崖上に築かれていましたが、その南側の一番標高の高い地点に本丸が設けられ、本丸東端の水堀に面した地点に天守閣も設置、本丸東方に二の丸、本丸南方に三の丸が広がっていました。また、旧城跡は捨郭と呼ばれ、台地北端の崖上には保科郭があり、三の丸南方の総曲輪（ｿｳｸﾞﾙﾜ）には武家屋敷が立ち並んで、城下町は総曲輪の南方と東方に広がっていました。
江戸時代になっても沼田城は真田氏が保持し続けましたが、明暦４(1658)年に御家騒動が起こり、信濃国松代の真田本藩から沼田藩が独立する事となりました。
沼田藩主真田信利は、金箔瓦で葺かれた壮麗な五層の大天守閣を築いたとされていますが、慶長２年の段階で既に五層の大天守が存在したとの説も有力です。
ところが、天和元(1681)年に至って真田信利は就任直後の５代将軍綱吉によって改易され、翌年、沼田城は破却されてしまいました。
その後、元禄16(1703)年に至って沼田藩が復活、本多氏→黒田氏→土岐氏が「城主」として藩主を務めましたが、沼田城三の丸の一角に「御屋形」と呼ばれる陣屋が設けらて藩庁とされただけで、沼田城の復興工事は行われないまま明治維新を迎えました。
廃藩置県後、御屋形は破却されましたが、大正５(1916)年に至り、旧沼田藩士の子である元衆議院議員で実業家の久米民之助(1861〜1931)が沼田城跡を購入して公園として整備した上で、大正15(1926)に利根郡沼田町へ寄贈、沼田公園が生まれました。
昭和31(1956)年になって沼田公園は102,284�屬梁腟�模な市営公園として整備し直され、野球グラウンド・ゲートボール場・テニスコート・鐘楼・旧生方家住宅〔重要文化財〕・生方記念資料館・旧土岐家住宅洋館〔登録文化財〕・沼小講堂記念体育館・武道場・天狗堂・動物舎・東屋・遊具・花壇等が設けられ、「沼田市の木」である桜や「沼田市の花」である桔梗の名所にもなっており、日本の歴史公園100選に選定されています。
沼田城の遺構は、石垣・土塁・堀の一部が残り、総曲輪の一角に沼田小学校や沼田女子高等学校があります。
◎城下町沼田
http://
1976年03月30日、沼田市が史跡に指定。
沼田城は、北は薄根川、南は片品川が東方から利根川本流に流れ込む川間に位置する大規模な河岸段丘台地である滝棚の原の西北端に築かれた城です。平城とも平山城とも言い難いので、丘城だとか崖端城などと言う苦しい分類が成されているようです。
本来、この一帯の中心は、滝棚の原北方の低湿地で、平家政権時代に八条院領沼田荘が利根荘から分離して成立、荘園北方の台地上に築かれた井土上(ｲﾄﾞﾉｳｴ)館に拠る荘官の沼田氏は鎌倉幕府御家人となりました。
その後、沼田氏は応永12(1405)年に薄根川南岸の台地基部に小沢城、永正16(1519)年に滝棚の原の北端に幕岩城を築いて本拠を移しました。
続いて、沼田顕泰は享禄２(1529)年に滝棚の原の西北端である倉内に築城を始めて天文５(1536)年に完成させ、新たな本拠としました。これが沼田城(倉内城)で、この結果、従来、滝棚の原北麓を指す地名だった「沼田」が河岸段丘全体の名称となったのです。この際、本町・材木町・鍛治町が割り建てられ、生活用水確保のため白沢用水も開削されたため、従来荒蕪地だった地が城下町として発展する事となりました。
戦略上の要地に当たる沼田城は越後の上杉謙信と小田原の北条氏康の激しい攻防の地となり、永禄12(1569)年には沼田氏は放逐されて謙信の直轄領となりますが、天正６(1578)年に北条氏政が奪取、続いて天正８(1580)年に甲斐の武田勝頼の命を受けた信濃国松尾城主真田昌幸が攻略します。
天正10(1582)年３月、織田信長が武田勝頼を攻め滅ぼすと、真田昌幸は信長に臣従を誓って信濃国の本領を安堵されますが、上野国領は接収され、信長の重臣滝川一益が上野国守となり、対上杉の拠点となる沼田城には一族の滝川益重を入れました。ところが、同年６月２日本能寺の変で織田信長が横死すると、滝川一益は６月19日に北条氏直との神流川合戦に敗れて伊勢国へ逐電、益重もこれに従ったため、この隙を逃さず独立した真田昌幸は６月21日に沼田城を奪回しました。
その後、昌幸は、上杉景勝→北条氏直→徳川家康→上杉景勝と目まぐるしく主君を変えながら沼田城を死守、天正14(1586)年６月に景勝が秀吉に臣従した際、上杉家麾下から独立して秀吉直属の大名として公認されました。
天正17(1589)年には秀吉による裁定で、北条氏直には沼田城を含む利根川以東が割譲されて、昌幸は代替地として信濃国伊那郡箕輪領を得ました。この結果、北条氏綱家臣で元沼田城代の猪俣邦憲が同年９月に沼田城代に返り咲く事となりました。
ところが、同年11月に至り、猪俣邦憲は真田領の名胡桃(ﾅｸﾞﾙﾐ)城を攻め落してしまい、この事件が関白秀吉の発していた惣無事令違反と見做されたため、翌年の小田原征伐の直接原因となったのです。
天正18(1590)年７月、小田原北条氏が滅亡すると、関八州は徳川家康領となりましたが、家康は秀吉の奨めで真田昌幸に上野国沼田領を安堵してやり、昌幸は再度旧領を確保しました。昌幸は嫡男信幸を30000石の沼田城主とし、信幸は慶長２(1597)年に沼田城を天守閣を持つ大規模な近世城郭に改築しています。
従来の沼田城は台地西北端の崖上に築かれていましたが、その南側の一番標高の高い地点に本丸が設けられ、本丸東端の水堀に面した地点に天守閣も設置、本丸東方に二の丸、本丸南方に三の丸が広がっていました。また、旧城跡は捨郭と呼ばれ、台地北端の崖上には保科郭があり、三の丸南方の総曲輪（ｿｳｸﾞﾙﾜ）には武家屋敷が立ち並んで、城下町は総曲輪の南方と東方に広がっていました。
江戸時代になっても沼田城は真田氏が保持し続けましたが、明暦４(1658)年に御家騒動が起こり、信濃国松代の真田本藩から沼田藩が独立する事となりました。
沼田藩主真田信利は、金箔瓦で葺かれた壮麗な五層の大天守閣を築いたとされていますが、慶長２年の段階で既に五層の大天守が存在したとの説も有力です。
ところが、天和元(1681)年に至って真田信利は就任直後の５代将軍綱吉によって改易され、翌年、沼田城は破却されてしまいました。
その後、元禄16(1703)年に至って沼田藩が復活、本多氏→黒田氏→土岐氏が「城主」として藩主を務めましたが、沼田城三の丸の一角に「御屋形」と呼ばれる陣屋が設けらて藩庁とされただけで、沼田城の復興工事は行われないまま明治維新を迎えました。
廃藩置県後、御屋形は破却されましたが、大正５(1916)年に至り、旧沼田藩士の子である元衆議院議員で実業家の久米民之助(1861〜1931)が沼田城跡を購入して公園として整備した上で、大正15(1926)に利根郡沼田町へ寄贈、沼田公園が生まれました。
昭和31(1956)年になって沼田公園は102,284�屬梁腟�模な市営公園として整備し直され、野球グラウンド・ゲートボール場・テニスコート・鐘楼・旧生方家住宅〔重要文化財〕・生方記念資料館・旧土岐家住宅洋館〔登録文化財〕・沼小講堂記念体育館・武道場・天狗堂・動物舎・東屋・遊具・花壇等が設けられ、「沼田市の木」である桜や「沼田市の花」である桔梗の名所にもなっており、日本の歴史公園100選に選定されています。
沼田城の遺構は、石垣・土塁・堀の一部が残り、総曲輪の一角に沼田小学校や沼田女子高等学校があります。
◎城下町沼田
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コメント(33)
>>[31]
沼田の地はなかなかに特異な地形をしています。
利根郡は赤城山・榛名山・子持山という巨山に南を隔てられ、北には巨大山脈が連なるエリアゆえ決して豊穣の地ではないのですが、浅間、草津白根という活火山に挟まれた吾妻郡は不毛の地ゆえ真田にとっては拘った。他の大名家にとっての利根郡は交通の要衝ゆえに是が非でも欲し、戦国期に必然的に草刈場となったわけですが・・・。そんな決して肥沃とは言いがたい地に五重の天守閣があったというのが未だに信じられません。
沼田の地は、実は物心がついてから10才まで育っただけなのですが、沼田公園の広大すぎる城跡の敷地には櫓と桜並木があり、父の職場の方々に合わせてお花見が毎年ありました。
自分が育った頃の沼田は80年代であり、新清水トンネルを掘って上越新幹線を作り、関越トンネルを掘って関越道を作り、最後の巨大ダムとなった奈良俣ダムが作られた頃。雪が上州武尊で阻まれて積雪量が比較的少ないため、これらに携わる人は家族を沼田の街に呼んだため別の意味でもバブルの時代でした。市街には住宅が不足し、我が家は片品川側の沼須への台地際にある升形小学校（升形を潰して学校を作ったために学校名にあてたと聞いています）に構えたと聞いています。冬には苗場や尾瀬のスキー場へ向かうための大渋滞あり、今はホテルになってしまった「いせや」が無くなったことから、特需は去ったこと実感しつつ引っ越したわけですが・・・。
その頃から比べると残念ながら今は昔とひっそりとしている沼田市街となっています。今でも自慢は、城下町ということで言えば、江戸時代から続き、地元民がこよなく愛する東見屋の焼き饅頭。そして迦葉山の大天狗。天狗神輿。これだけは今も変わらない誇りです。
真田丸というタイトルから大坂冬の陣、夏の陣だけがクローズアップされるのかと思ってあまり期待していなかったのですが、今年の大河は当初の主家武田の斜陽から真田が独立大名となるまでの下りを前半の主眼に置いているようですので、関が原は中盤の山、大阪の陣は終盤の山となり、関が原の下りもきっちり描かれそうです。
小松姫がどう描かれるのか、その実父忠勝公がどう描かれるか興味深いです。
ちなみに戦国期の名将たちには色々肖りたい気持ちになります。
東海道歩きをした際は、桑名城跡にある本多忠勝公の像に触れて勇気を授けてくださいとお祈りしました。
最近歩いた西国街道では三原城跡で小早川隆景公の像に触れて知恵を授けてくださいとお祈りしました。
沼田の地はなかなかに特異な地形をしています。
利根郡は赤城山・榛名山・子持山という巨山に南を隔てられ、北には巨大山脈が連なるエリアゆえ決して豊穣の地ではないのですが、浅間、草津白根という活火山に挟まれた吾妻郡は不毛の地ゆえ真田にとっては拘った。他の大名家にとっての利根郡は交通の要衝ゆえに是が非でも欲し、戦国期に必然的に草刈場となったわけですが・・・。そんな決して肥沃とは言いがたい地に五重の天守閣があったというのが未だに信じられません。
沼田の地は、実は物心がついてから10才まで育っただけなのですが、沼田公園の広大すぎる城跡の敷地には櫓と桜並木があり、父の職場の方々に合わせてお花見が毎年ありました。
自分が育った頃の沼田は80年代であり、新清水トンネルを掘って上越新幹線を作り、関越トンネルを掘って関越道を作り、最後の巨大ダムとなった奈良俣ダムが作られた頃。雪が上州武尊で阻まれて積雪量が比較的少ないため、これらに携わる人は家族を沼田の街に呼んだため別の意味でもバブルの時代でした。市街には住宅が不足し、我が家は片品川側の沼須への台地際にある升形小学校（升形を潰して学校を作ったために学校名にあてたと聞いています）に構えたと聞いています。冬には苗場や尾瀬のスキー場へ向かうための大渋滞あり、今はホテルになってしまった「いせや」が無くなったことから、特需は去ったこと実感しつつ引っ越したわけですが・・・。
その頃から比べると残念ながら今は昔とひっそりとしている沼田市街となっています。今でも自慢は、城下町ということで言えば、江戸時代から続き、地元民がこよなく愛する東見屋の焼き饅頭。そして迦葉山の大天狗。天狗神輿。これだけは今も変わらない誇りです。
真田丸というタイトルから大坂冬の陣、夏の陣だけがクローズアップされるのかと思ってあまり期待していなかったのですが、今年の大河は当初の主家武田の斜陽から真田が独立大名となるまでの下りを前半の主眼に置いているようですので、関が原は中盤の山、大阪の陣は終盤の山となり、関が原の下りもきっちり描かれそうです。
小松姫がどう描かれるのか、その実父忠勝公がどう描かれるか興味深いです。
ちなみに戦国期の名将たちには色々肖りたい気持ちになります。
東海道歩きをした際は、桑名城跡にある本多忠勝公の像に触れて勇気を授けてくださいとお祈りしました。
最近歩いた西国街道では三原城跡で小早川隆景公の像に触れて知恵を授けてくださいとお祈りしました。
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