Visionary ArtコミュのKitsch more than Art

‘Kitsch more than Art’　はノルウェーの画家　オッド　ネルドルム　を中心として提言された具象美術の方向性であり、現代における伝統的具象絵画が蔑称としてのキッチュの言葉にくくられ、キッチュではない現代美術のみがファイン　アート　とされている西洋文化事情が背景になっていると思われます。最近になって日本語版ウィキペディアが編集されるようになりました。　http://ja.wikipedia.org/wiki/オッド・ネルドルム
　
　オッド　ネルドルムの作品はとうていキッチュとは呼べない重厚な質を備えており、なぜ彼が自らの作品をキッチュと呼ぶようになったのか？これもアメリカのローブローアートの事情のように日本国内では理解し難い背景がありそうです。
　未だ真因は私には不明ですがネルドルムは脱税容疑で身を拘束され、彼のアトリエは無人のようです。起こってまもないこの事件、彼の悲劇が投げかけるものとは何か？

　キッチュという言葉が現代の欧米でどのような扱われ方をしているのか、肌では分からないのでベルリンに住むヴィジョナリーアーティストLeo Plawさんに訊ねてみました。彼の返信から私が読み取ったものを以下に出しました。直訳ではなく概要を私の解釈を加え日本語にしたものです。


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「キッチュ」に関してはすすんで話する気にならない。それはもう充分に溢れている言葉である。国際的に知名度のあるネルドルムが「自分はキッチュ」であると大胆に言うことは非常にショッキングであり注目をあつめることになる。それは軽蔑用語であるキッチュとネルドルムとのコントラストを生み出すからであり、無名画家が同じように宣言しても意味がないだろう。

　第一次世界大戦前のロマン主義、新古典主義、象徴主義、アールヌーボーも全て今日ではキッチュと看做されている　キッチュの言葉の問題は、それが粗悪で過剰にセンチメンタルな何かを指す用語として一般化しているということである。

　感情に訴える芸術は戦中に国民を煽動するために悪用され、これの反動としてモダンアートが出現してきた。美の偽善に対抗するためである。第一次世界大戦後、過去の古い文化に縋り付こうとする一群と全てを破壊しようとする一群があった。ダダやシュルレアリスムはその直接的なる結果である。初期のシュルレアリスムは今日我々が考えるようなものとは異なっていた。

　それらは後に社会主義の美学とともに新しい試みとなった。それはアール　デコや社会主義リアリズムへ、いわば脱皮し、一般民衆の価値を激賞するものとなり共産主義やファシズムに利用された。政治的アイデオロジーに適した選ばれたものだけとはいえ、そこにはまだ過去の芸術の居場所はあった。古典芸術の技術が伝授される余地はあったのである。

　ナチズムの敗北、その人種的文化的純粋さのための思想は、西側のアメリカにとって冷戦における新たな共産主義とともに全て「敵」となった。そしてアメリカはモダニズムを冷戦下における対抗手段として強力に進めた。

　近年になってCIAがモダンアートを構築したということが証明された。

　しかしながら馬鹿げたことは、実際はモダンアーティストの多くは共産主義に共感していたということである。

　古典技術を学ぶということは、いかなる場合もナチや共産主義へ傾くと怪しまれた。モダンアートのほうの偽りの経緯とアート市場の崩壊は今日になって知る段階となった。

　ここに過去の世紀の後遺症を見ることができる。オッド　ネルドルムのような画家は公式には「反動主義者」と看做されている。しかし歴史自体を見るなら明かにその視点自体が反動主義なのである。自由思想の王者として自身を喧伝しながらも公的なサークル、組織は今なお冷戦時代の戦略をとっている。今日のアイデオロジー　プロパガンダに対して人々が従順誠実でありつづけるために。

　しかし私個人はこういったゲームは無視にしようと数年前に決めた。自身のユニークな方向性を自ら創造することのほうが大切ではないだろうか。
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　オッド　ネルドルムを中心にした　ワールド　ワイド　キッチュ　のサイトがあります。このサイトのステートメントの翻訳です。

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http://www.worldwidekitsch.com/cgi-bin/nyheter/visnyhet.cgi?id=3&menu=about


・キッチュの歴史

キッチュ(Kitsch)という言葉の起源は定かではない。それは英語のsketchやドイツ語のskizzeから来ているのかもしれない。Hans Reimannによるとこのキッチュという用語は画家達のアトリエの中で古い文化を攻撃するために使われるようになったとされている。

この言葉はTheodor AdornoやHermann Broch、Clement Greenbergらによって採用され、芸術とキッチュは二つの異なるものであると彼らは定義づけようとした。

Broch にとっては、劣悪な芸術とキッチュは同じものではない。劣悪な芸術とはそれ自体がシステムの産物である。彼は「真実」ではなく「美」に到達しようとすることにキッチュは関わっていると主張している。

Gillo Dorfles　によれば、「本物」のキッチュの作品は「その時代における美的トレンドの間違った解釈」をする傾向があるとされている。


２０世紀の終わりに オッド　ネルドルムによって具象絵画のさらなる次元のためのキッチュが開始された。現代芸術を支配するルールに対抗するために。つまり職人技術の否定、美に無関心であることを誇張する芸術に対して。あるいは「我々の時代に属す」ことを義務とする強制力に対して。


・我々のステートメント

　キッチュは不変の人間性、愛、死、ドラマ、嫉妬、家族を扱います。
もし、あなたが自分の作品に情念やメロドラマやセンチメンタリズムを吹き込もうとしているのなら、あなたはキッチュな人物です。

これらの本質はネガティブなものではありません。あなたが手を使って技術を学んでいるうちは。

キッチュは乾いた自然主義ではありません。しかしそれは詩であり命です。
人間の内なる感情を技術を通して描き出すとき、あなたはキッチュに接近しています。

ミケランジェロの「ピエタ」が今日創られたとしたら、それはキッチュと呼ばれるでしょう。

キッチュは独自性の上に質を与えます。それによって、キッチュの創造者は歴史全体を現在と捉え、もはや「自分は別な時代に生きている」と弁明する必要はなくなるでしょう。

ワールドワイドキッチュは、このコンセプトが古典的な具象絵画の復興、つまりルネサンスを創造するかもしれないと思っています。しかしキッチュはまた音楽の分野（例えばRachmaninov）あるいは文学（例えばVictor Hugo）そしてRodinのような彫刻も含みます。キッチュの心的傾向とは人生の描写に関して「不真実さ」に恐れを抱かないことです。



ワールド ワイド キッチュはアートに対して「抵抗運動」を示そうとしているのではありません。私たちは現代の美学の中で具象画家たちがどの位置にいるのか、それを知るための鍵を提案しようとしているだけです。

私たちはキッチュに対して新たな定義を採用しようとはしてません。しかし明白にそれは何かポジティブなものだとみなしています。

キッチュは才能を擁しています。現代芸術が敵だとみなす才能をです。
キッチュは技術、ドラマ、情念、そしてアイロニーではない真摯さを表現します。


キッチュは具象画家たちのための自由な場所であるべきです。彼らの感情生活を表現するために。

絵そのものの中で皆さんと再び、お話したいものです。