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映画人・西周成コミュのスタニスラフスキー・システム<西周成>

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 最近の日本映画を観ていて気になるのが、俳優の演技。
どうも説得力に乏しい。そうでない映画もあることにはあるが、そういうのに限って単館上映で知らないうちに終わっていたりする。
 「ありのまま」、「等身大」の人間を描くにしても、幻想的或いは異常な状況の人間を描くにしても、何かスクリーン上の形象に統一感を与える原理がなければならないと思うが、それの存在を感じさせる日本映画は少なくなった。その分、物語や映像でカヴァーされている映画もあるのだが…。
 
 現在、世界の大部分の地域には、ハリウッド映画的な俳優の演技が広まっている。役になりきる、そのためには体形まで変える。そう言ってしまえば単純にすぎるが、このリアリズムの源流はグリフィスにまで遡ることができる。彼のお気に入りの女優リリアン・ギッシュの証言によると、グリフィスの演技指導はコンスタンチン・スタニスラフスキーの方法を想起させるものだったという。

 スタニスラフスキーは、19世紀末から20世紀前半にかけてリアリズム演劇を俳優の仕事という面で確立した人である。彼が率いるモスクワ芸術座の俳優達は、サイレント時代の傑作『母』(フセヴォロド・プドフキン監督)に出演したりした。今でもロシア映画における優秀な俳優の演技には、その伝統が生きてる気がする。
 スタニスラフスキーの方法と対照的なのが、映画ではエイゼンシュテイン、演劇ではブレヒトの方法である。彼らは俳優による役の「追体験」ではなく諸々の要素が衝突し合うことで生まれる「異化効果」とそのイデオロギー的な作用を重視した。
 トーキー時代にこれに近いことをやっていた代表格が、ゴダールである。
 
 どちらの考え方からも、学ぶ必要があろう。映画作家は俳優との仕事に関してもの自分なりの原則を、その都度念頭においていなければなるまい。映画は非常に複雑な構成物なので、俳優の演技に関してもテレビ風或いは小劇場風の紋切り型では通用しないのだ。
 「異化」は分かりやすい考え方であり、自分を過信している演出家にとって誘惑になりやすい。何でも派手な「効果」で済ませてしまうということになりがちだ。
 
 スタニスラフスキーの方法は、俳優との地道で誠実な仕事を要求する。世界の優れた監督達は、昔から大抵、そういう風に仕事をしている。観客が登場人物に共感できなければ、撮影がどれほど優れていても映画はよそよそしい人工的なものに見えるだろう。異常な登場人物にさえも共感を抱かせるためには、その形象が人間としてリアルに見えなければならないだろう。私は個人的には、小津安二郎の登場人物には、それほど共感を抱けない。その最大の理由はおそらく、日本の伝統芸能にもある「型」の演技なのだ。能・歌舞伎じゃあるまいし、と思うのである。

コメント(11)

なるほど、小津映画の登場人物は
確かにどこかよそよそしいですよね。
古きよき何かを描いている、という印象を持ってました。

その独特な雰囲気が愛される所以でもあるのかもしれませんが、
確かに僕もリアリティは感じません。

時代の違いか?とか思ったりしていたのですが、
能、歌舞伎を引用しているのであれば、
欧州などで、やたらと人気があるというのは
そういう伝統芸能的なエキゾチックさが原因なんですかね。

ただ原節子は綺麗だと思います(笑)。
>Rubleyさん
「異化」の話、とても分かりやすかったです。
映画に限らず演劇もですが、いろんな要素がバッチリ衝突し合った時に感じる、気持ちよさとか、心もとなさみたいなの、ありますもん。

小津安二郎の映画は別に好きでもなんでもなく、あまり観てないので何も言えないのですが、私がいままで観た数少ない映画の中で、一番リアリティを感じたのは、キアロスタミの『友達のうちはどこ』で主人公が出会う大人達の演技です。
人間が本来もつ“存在の重さ”みたいなのがビシバシ伝わってきました。
あとは、ゴダールの『女は女である』の演技も瑞々しかった印象があります。
『友達のうち』のリアリティが、人間1人1人が自分の内側で感じているリアリティであるとしたら、
『女』の方は、それとは違って、はたから見たら人間って意外とそう見えるよなー、みたいな、人間の外側にあるリアリティな気がします。
説明下手ですんません。
たしかに。
それは『キムタク風演技』のことではないですか?
「自然体」を演じてすぎて、いつも同じ演技にしかならない。
本人はまだいいものの、昼ドラなどで
その亜流を観ると、かなりイタい。

キアロスタミやソクーロフ、
クストリッツァ(もそうではないですか?)らの
登場人物を観ると、根本的に迫ってくる迫力が違うように、
日本人のわれわれは感じますが、
それは異文化だということだけなのでしょうか
ただ、「自然体」と「リアリティ」って完全に別物ですね。

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