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映画人・西周成コミュの良い「レトロ映画」とは

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 私は基本的に「レトロ映画」を好きではない。
しかし、このジャンルの中でも映画的に優れた作品、誠実な作品はある。まず映画史に残る典型的な作品を幾つか復習しておこう。

 『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督)
 『アマルコルド』(フェデリコ・フェリーニ監督)
 『そして船はゆく』(フェデリコ・フェリーニ監督)

 これらの映画を観れば分かるように、「レトロ映画」とは、基本的にスタイリッシュな(ロシア文芸学の用語で言い換えれば「制約的な」)ジャンルである。要するに、時代考証だけでなく、時にはそれを敢えて無視してもスタイルを優先できるほどの、芸術的教養が必要とされるジャンルである。このジャンルの抒情性は、作品の本質ではなくむしろ技法の一部であることが多い。

 「レトロ映画」は知的であることが要求されるジャンルなので、このジャンルの秀作は「昔は良かった」的な感慨に終始することは決してない。フェリーニの『アマルコルド』でさえ、そうではない。
 他ジャンルとの混交が見られる「レトロ映画」の傑作・佳作としては次のような作品がある。

『明日に向かって撃て』(ジョージ・ロイ・ヒル監督、西部劇のクリシェを打ち破ったリアリズムと、「レトロ映画」特有の抒情性の絶妙な組み合わせ)

『愛の奴隷』(ニキータ・ミハルコフ監督、これは帝政ロシア時代の映画制作者たちをモデルにした「レトロ映画」)

『オブローモフの生涯より』(ニキータ・ミハルコフ監督、原作の時代設定とは一致しないディテールがあるが、それはこの映画のスタイルが「制約的」であることを示しており、『スティング』などの経験を踏まえた映画であることを示唆している)

 ミハルコフは、特に『黒い瞳』までの彼は、基本的に「レトロ映画」のジャンルでしか映画を作っていない。もともと俳優だったせいか、演劇という「制約性」が映画よりも顕著な分野での経験が活きているのかもしれない。
 日本ではあまり知られていない、セルゲイ・ソロヴィヨフという監督もやはりこのジャンルが得意だが、もっと毒のある映画を作る。彼も非常に芸術的教養のある人である。

 という訳で、最近日本で制作された抒情性過多な某映画は、このジャンルの本質も歴史もまったく踏まえていないことが分かる。だから世界に通用しないのである。
  
 

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