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ねこ時計コミュの『ロックンロール・ウイドー』

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カール・ハイアセンという小説家のことは全然知らなかったのだが、目黒孝二さんの『新・中年授業』という読書エッセイで紹介されていて、面白そうなので買った文春文庫(¥886+税)。

主人公は自分が勤務する新聞社ユニオン・レジスター社の経営陣を批判というか、罵倒したせいで、第一線から死亡欄担当に左遷された46歳の記者。彼は死の観念に取り憑かれていて、有名人の死亡した年齢を克明に記憶している。それは死亡欄担当記者の職業病だと言うのだが、彼、ジャック・タガーは自分の年齢である46歳と重ね合わせる。この歳で死んだ有名人として、エルヴィス・プレスリー、JFKやジョージ・オーウェルを挙げている。ジャックは不安に陥る。なぜならエルヴィスやケネディほどの大物であっても、死を前にしてなすすべもなかったこと。そして何より彼はこの46年間の人生で「何もしてきていない」ということに絶望感を抱いてる。それが可笑しい。またジャックが同じように気にしているのは、幼い頃に出て行った自分の父親が死んだ年齢だ。親父より長生きしているのかどうかが、気になって仕方がない。そのことを母に聴くのだが、彼女は何だかんだと理由をつけて答えてくれない。

そんな彼がひとつの事件に出くわす。ジミー&ザ・スラット・パピーズというロックバンドのリーダーであるジミー・ストマが謎の死を遂げたのだ。溺死という警察発表だが、ジャックは未亡人となった妻のクリオに取材し、違和感を憶える。ジミー&ザ・スラット・パピーズはもちろん創造の産物だが、ジミー・ストマはイーグルスのドン・ヘンリー張りとは言わないまでも、女好きのするいい男で、唄もうまいシンガーであると喩えられている。こう書かれると、だいたいどういうバンドなのかイメージしやすい。

ジャックには、若くて上昇志向の強い女性上司がいる。彼女、エマとは日々口喧嘩を繰り返していて、ソリが合わない。だがこのロックヴォーカリストの謎の死を追いかけることが新聞記者としての、あるいは46歳の男としての大事な仕事だと考え、のめり込んでいく。そしていつのまにかエマもそんなジャックに惹かれていく、というロマンス風味も盛り込まれていく。

文中、数多くの実在のロック・ミュージシャンの名前が登場するのが愉しい。先に書いたドン・ヘンリーもそうだけど、ジャックが事件を追う中で出会うザ・スラット・パピーズのキーボード奏者との会話では、ザ・ビートルズと共演したビリー・プレストンや、グレッグ・オールマンなどの名前が登場する。また、検死官のカレンという女性と一夜を過ごすことになったジャックが、彼なりの演出のためにローリングストーンズの「メインストリートのならず者」のCDをかけると、カレンは不満の声を上げる。彼女が好きなのはナタリー・マーチャントというフォークシンガーなのだ。Natalie Merchantで引くと、iTunesに一曲だけ歌があるので、興味のある方は聴かれるとよろしい。

小説の方はジャックが47歳になることと並行して、この謎に満ちたロックミュージシャンの死が解明されていく。ストーリーそのものはあまりミステリー仕立てとはいえないのだが、事件を追いかけるジャックという男の人生への対し方が面白く、滑稽であり、「ダイ・ハード」のブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーン刑事ほどタフではないが、懸命にがんばる。娯楽作品としては実に楽しめた。

ちなみに上記したエルヴィス・プレスリーの死亡年齢は42歳が本当なのだが、それについて作者はこんなことを言っている。
「エルヴィスは46歳で死んだと思っているが、実際はそうじゃない。エルヴィスが死んだのは42歳のときだ。エルヴィスのファンからいつかそのことを指摘されると思っていたが、いまだに何も言ってこない。でも、考えたら当然だろう。彼らはエルヴィスが死んだと思っていないのだから」

もうひとつ。この書名は山口百恵のヒット曲と同じ題名だが、これは日本語版だけで、原題は「BASKET CASE」。これはジミー&ザ・スラット・パピーズのヒット曲のタイトルで、BASKET CASE=いかれた、ひどく破損したという意味。第一次世界大戦当時、負傷した兵士は籠=BASKETにのせられて運ばれたことから俗語化し、歌の中では「いかれた女」という意味で使われている。たしかに小説は「ロックンロール・ウイドー」なんだけどね。

コメント(6)

なかなか興味をそそられる本です。
目黒氏の「中年授業」は面白く読みましたが、この本のことは失念。
この小説の舞台はアメリカのどこなのだろう?
また貸してください。
でも、飲みたくなる小説みたいだね。

写真はもしかして松本ホテル花月前の昭和喫茶?
そして部屋の中?
遊園地はみさき公園?違った?

あの松本ホテル花月に4日くらい滞在して
こんな小説や伊藤整の「若き詩人の肖像」を読むというのは
贅沢だよなあ。旅先で本を読むことにほとんどの時間を費やすって
やりたくても根が貧乏性なのでいまだ出来た試しがない。
松本ホテル花月なら出来そう。
昼は蕎麦「蔵の花」かカレーの「デリー」、
夜は「山女や」のカウンターで決まり!

それと書評は掲示板じゃなくてレビューじゃないの?
本、また持っていきます。
小説の舞台となっているのは南フロリダで、作者の出身地。
あまり酒を飲むシーンというのは出てこないけど、
ずっと背景にロックミュージックが流れているような感じですね。
翻訳、もう少しアナーキーな方が良かったかも。

写真は松本ホテル花月前の怪しげな喫茶&スナックと、部屋です。
もう一枚は、今はなき神戸ポートピアランド。
3月末で閉園しちゃったんだね。

旅先読書の贅沢、いいですね。温泉があればなお結構。
散歩して、読んで、飯を食って、また歩いて、読書して…
そういう時間を愉しみたいものです。

書評をこちらに書いたのは、
レビューに書くと、他の有象無象のレビューと一緒になるのが
ちょっとイヤだったからで、ねこ時計の住人だけに読まれたい、
そんな風に思ったからです。
どうも本書の他のレビューはあまり面白くないのです。

さて、今から親父の納骨です。
雨が降っている・・・。
午後からなので、何とか降りやんでほしいな。
追記

この小説の原題『Bascet Case』は、
翻訳者によると「ノイローゼ気味の変人」なんだそうです。

目黒さんの同じ本にも紹介されていたけど、
クリントン・マッキンジーの『コロラドの血戦』は読んだ?
今、これを読み始めたところだけど、
冒頭シーン、ロッククライミングからだよ。
きっと読んでいるだろうね。
読了したら、書評また書きます。
今からすこし忙しくなるから、ちょっと先になると思うけど。
『コロラドの血戦』読んでない。
それと目黒孝二の本は『中年授業』だった。
『新・中年授業』はまだ読んでいない。
こっちも貸してくれ。今すぐ貸してくれ。
今日の昼3時に、梅田のスターバックスで春雨に震えて待っている。
それじゃあ。
スタバで震えて待つという
ちょっと魅惑的なことをさせて上げられなくてすみません。
納骨式、無事終わりました。

今日は編集漬けの一日です。
できるだけ早いめに本を貸しましょう。
今週はいそがしいんだったね。
震えて待ってなんかいねえよ。
ご安心あれ。

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