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胸キュン高校文芸部コミュのリレー小説『仙人掌のブルース』前編

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一.

風のジョーイを知ってるかい?


『ああ、知らずに、どうする。オース・ティンで十五の生娘がならず者三人にさらわれたんだ。納屋に連れ込まれ、あわやというときに、風が吹いた


バン、バン、バン、


三発で三人ともいちころよ。
悪党どもはそろって額をぶち抜か、ポカーンと阿呆面さらして死んでいた』


『見たのか』


『いや、見ちゃいねえ。見ねえから、風のジョーイなんだろ』

『ちげえねえ』





あくどい奴が勝つ。
そんな時代だった。南北戦争が終わり、数年が経つ、中央政府こ威光はまだまだテキサス全土へ届かない。
北部への悪感情、インディアンとの確執も消えたわけではない。

ブルーハーツの歌だ

治安の安定は表面上、影に廻れば無法がまかり通る。


金ぴかに光った銃で、


ブルーハーツの、歌だ。




風のジョーイが現れた。
ジョーイは無法の現場に現れる
ジョーイは拳銃の名手、一発で無法者を仕留める、悪賢こい役人や警官、牧場主を、撃ち殺す。
しかし、だれもジョーイの姿を見た者はいない。文字どおり、風のようにやってきて、風のように立ち去る。何も残らない。

『風のジョーイだ』
と、誰かが言った。
民衆はいつだって、正義の身方を待っている。無法の池を修正するヒーローを。

銃声が響き、後は死体が転がるだけ

『薄闇そっくりの黒い姿だった』

『ブルースが聴こえてきた』


後ろ姿を見た者は、こう証言する。



噂話か実在か、ジョーイの噂は馬が駆けるより速く、風より広く、荒野に点在する町々を駆け巡った。



二.

「ねえ聞いた?風のなんとかって、知ってる?ジョーイとかいう」

「ああさっき誰か話してたやつ?いや知らない、なんなの?」

「風のジョーイってやつ、ほんとに知らない?みんな話してるよ」

「ふーん、知らないなあ、それ一体だれなの」

「うん、よくわからないけど、ジョーイっいうヒーローらしいよ、凄いんだって」

「へーどうすごいのさ」

「なんでも自分の額に穴開けたんだって」

「ええなに、そういう話?いきなり自殺?なんで、なんでそうなったの?」

「なんか正義感が強すぎて自分の存在が許せなかったらしいよ」

「うわ気持ち悪い、それは病んでたなあ、しょうがないな、え、もう即死?」

「いや生きてるらしいよ」

「うそつけよ」

「足めちゃくちゃ速いって」

「うそつけって」

「本当だって、みんな言ってたし」

「じゃあなに、今もジョーイは額に穴空いてんの?

「たぶんね」

「うそつけよ」

「だってみんな言ってたし」

「なんだよそれ、それこそ気持ち悪いだろー、じゃあさ風のっていうのは何なのよ、風ってのは」

「いやなんでも、ジョーイと話してると、額の穴を吹き抜ける風がコォーーって鳴くのが聞こえるんだって」
「なんだよそれ」

「コォーーって」

「いやそれは可哀想だよ、風の、なんて付けたら、ちょっと差別になるじゃない」

「どうして」

「いやいや本人は気にするもんだって」

「そういうもんかなー、それならさ、なんか穴につめたらいいのになあ、そしたら鳴らないよ」

「うーんそれは難しい問題だよ、自分の額の穴に何詰めるなんて考えれる?」

「そこらへんの石とかでいいじゃん」

「おまえはデリカシーがないよー」

「それならホームセンターで色々はめてみればいいじゃん」

「いやどうかな、もしそれがフィットしなかったらどうする?棚に戻すんだろ?、ぜったい成分のわからない液がついてるよ、店の人に怒られるって」

「そうかなあ、いやあのさ、大丈夫だよ、もうさ、わかるって、自分の額にピッタリはまるモノなんか、ピンとくるって、一発で選びぬくってジョーイならさ」

「いやいやおまえは甘いって、仮にさ、当てはまるモノ探しあててもさ、額に穴あけてさ、レジに持ってく勇気でる?レジの人がピンときちゃうって、はずかしいよ」


「ふーんそんなものかなあ、あ、だからジョーイは穴あけたままなのかなー、そういえばおまえはやたらジョーイの肩もつなあ、さてはおまえジョーイだなー額をみせてみせろー」

「よせよ」

「ハハハまてー」

「ハハハやめろー」



三.

その時、店の扉が蹴破られた


バタン!!!


「ひゃっふぅ!ここに風のジョーイって奴はいるか〜い」


突然店に入ってきたモヒカンは銃を天井に向けて撃った


パンパン!!


「名乗り出ねぇなら一人ずつ殺していくぜ、ほれ」


パン!


カウンターにいた男性が撃たれる


「おいおいやばいよ、風のジョーイって…え!?ま、まさかおまえほんとに…」


「うぅぅぅ」


「どうしたおまえ!額押さえて!」


「うううぅぅぅぅぅ」


「やっぱりおまえだったのか!」


「うおぉぉおお!!!キサマの血は何色だぁああ!!!」


突然俺達のとなりの席で一人で飲んでいた眉毛が立ち上がった




眉毛はすぐにモヒカンに撃たれて死んだけど、俺はその直前に確かに聞いたんだ

風の吹き抜ける音を…



四.

モヒカンはしばらくの間きょとんとした顔をしていたが、額から鼻の横を流れる血を指ですくって確認すると、きこりが斧を入れた大木のようにゆっくりと倒れていった。

俺と突然の頭痛に襲われたツレも、その光景をきょとんとした顔で眺めた。

倒れたモヒカンの背後から現れたシルエット。

構えた銃の先から立ちこめる煙。

その向こうから覗く鋭い眼光、ってあ、あれ?

見えない。

煙で見えない。

ていうか量すごくね?煙の量すごくね?

もう完全に顔隠れちゃってるし。

しかも勢い増してない?

新郎新婦入場のときのドライアイスなんてもんじゃねえぞあれ。

何だよその銃。どこで売ってんだよ。

何かシューシュー聴こえてくるし、恐えよ。

しかしよくあんな状態で平気でいるな。

「ゴフンムックッ!ゴ、グフン・・」

煙いんだ。やっぱり煙いんだ。

多分微動だにしないの格好つけてるだけだ。

てかムックッって。分かるけど。

あと何故グフンと言いなおした。

てかおい煙こっちまできそうだし。

「あ、あの・・」

「ゴフッ!ゴッホッ!!ヒュー!」

「大丈夫ですか?」

「だコッ!大ムッフッ!ゴフッゴフッ!!」

「あの、あなたはひょっとして」

「オーーホッ!!ゴォーーーホッ!!」

「風の」

「グム!ゼェエエエ!!ゼェエエエ!!」

「風のジョーイ?」

「ゼェエエエ!!ゼェエエエ!!」

これが自称風のジョーイのライバル、煙突キッドとの出会いだった。



五.

「すいません。ありがとうございます。ゲホッ」

男は私が手渡したコップの水を飲み干すと礼をいった。

「片肺だとほんっとツライんすよね〜」

30分むせ続けた男はそう言って大きく空洞になっている右の胸を開いて見せてくれた。

『乳首もないのか』私はさすがに声にこそ出さなかったががっかりした。

乳首見たかった。

「まあ話は長くなるんですがこの大穴のせいでいつの間にやら煙突キッドと呼ばれるようになっちまって」

「すごいよね。その穴」

「どうしてそんな穴が?」

「手、入れてみていい?」

「ところであのモヒカンだれ?」

「左の乳首は大丈夫?」

「あれ?眉毛の死体どこいった?」

私たちは次々と尋ねた。


そのたびにキッドはとても楽しい話をしてくれた。

そして最後にはお休みのキスをくれたんだ。そんなキッドを僕たちは大好きだった。





風のジョーイの噂は時々聞こえてくるのだが、どれも信ぴょう性のないものばかりだった。

それでもキッドは噂を聞くたびに出かけていき、風のジョーイを探した





「どうしてそんなに風のジョーイを探してるんだい?」

こう尋ねた時に彼は笑ってこう答えた。



「絶対音感っての知ってるか?俺はな、低い方の『ド』なんだ」



六.

「ど?」

「ドーナツのド?」

「ははは、そうだよ」

キッドはそう言って微笑んだ。

その時、大きな声が近めの遠くに響いた。

すぐさま駆けつけるとそこは小さな路地。女性が1人、大柄の男に突き飛ばされたという風に見てとれた。

「キッドーっ!」

呼び掛けることを待たず、キッドの銃口が男をとらえた。




バーーーンッ




響き渡るとやや遅れ、大柄はずしりと砂に伏した。

「やった!キッド!」

そう言って駆け寄ったがいつもの風でない。

キッドの姿ははっきりと、そう、煙がないのだ。



ザッ、ザッ、


去り行く背が見えた。


―まさか―


「待って!」

とっさに背に投げる。

「あなたはまさか…」

振り向き男はにこりと笑った。

「こんばんは。みんなの柿原です(^〇^)」

「カキ…ハラ?」

「はい、みんなの柿原です(`□´)」

細身の体にガガガSPと書かれたTシャツ。

その薄い顔はどう見ても東洋人だ。

目付きは悪いが凄まじく愛嬌がある。

サンリオとかにいそうだ。

言葉交わさずとも、なんだかワクワクしてきたことは皆明らかであった。



七.

では、煙突キッドは何処に・・・?

と、問いかけるのは無粋と言うものだろう。この集落唯一の大工が簡単に暖炉に取り付けてしまったくらいに思えばいい。


重要なのは柿原の存在だ。ヤツは突如現れた東洋人で明らかに異質なオーラを放っている。皆は彼に興味を抱き、駆け寄った。

「カッキハラ!!カッキハラ!!カッキハラ!!カッキハラ!!」

すると、柿原は金髪を黒に染めなおし、髭をそり落とし、ビシッとスーツで決めて外回りに出かけた。彼の現実と想像は常に忙しい。

民衆は黙って見送るしかなかった。




「コォーーーッ」




風穴を通すような音が辺りに響く。


煙突キッドの存在は曖昧になって、柿原は銃を持っていなかった、するとっ?

この音は?

まさか?

黒い人影、耳に届くブルース間違いない!!


皆はその音のする方向を見たっ!!


「こんばんは。みんなのカキハラです(^0^)」

民衆は

「HAHAHA!!」と大爆笑した。

「カキハラ, オチャメ,オチャメ!!」

柿原は異質な存在にありながらにして、民衆の心をグッと掴んだ。そして、金髪を黒に染め、髭を落として、ビシッとスーツに決めて立ち去った。

こうして、荒野にはもう一つの噂話が広まることとなる。

「風のジョニー」



「東洋のカキハラ」


この2人のバウンティー・ハンターの存在は、巷を2つに割る人気者となった。


そして、人々はついに噂し始める。


悪を、この世で1番非道な悪をどちらが先に仕留めるかということを。


悪の名は「ヤマモクン・カーヴァー・ホムンクルス」


ヤツが通れば仙人掌も針を隠すと言われた男である。

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