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SS倉庫コミュの【オリジナル】魔都の歩きかた〜A child of Pinocchio〜#捜査ファイル3『リトルハピネス』前編(16)

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〜〜新歴98年、12月17日、午後16時45分、横浜、菊名〜〜


「リシル兄、39メートル先の十字路に二機いるよ」
「分かった!!」

入り組んだ街中をダナラの指示に従い走るリシル。
菊名は商店が多く、大規模攻撃になるダナラの衛星攻撃は街ごと吹き飛ばしてしまうため使えない。
故に、ダナラが衛星で索敵を、発見した【PC】をリシルが一体一体撃破する作戦を打っていた。
しかし、

「市街地での防衛戦が、こうもやりづらいとはね」

リシルの能力は磁力誘導を使った引力と斥力操作。
したがって磁力誘導に反応が高い金属パーツの塊たる【PC】にはうってつけだが、菊名の商店には金属製品も扱う店も多く、常時能力を使い続けるのは危険だった。
しかも、【PC】は数体に別れ分散、混乱する市民のために移動を阻害されることもありリシルは苦戦を強いられていた。

「『リフレクション・ドロー』!!」

到着した目の前で、逃げ惑う人間達に向かい発砲された弾丸を自分の手元に引き寄せるリシル。

「ボサッとしないで、さっさと逃げろ!!」

身構えたまま動かない者に激を飛ばしながら、更に攻め立てようとする【PC】に引き寄せた弾丸を鈍器がわりに叩き付け機能停止に追い込む。

「ダナラ、次!!」
「東70メートル先に三機!!」

新たな敵を探し、リシルは再び駆け出した。


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〜〜新歴98年、12月17日、午後16時45分、横浜、山下公園〜〜


山下公園に展開したベルガーの部隊は、思いもがけない形で壊滅していた。
【PC】が与えられた命令は、「場を混乱させ、排除に来る【OP】を足止めしろ」の一点のみ。
その目的通り公園内で活動していた治安組織の人間を無差別に攻撃を仕掛けると、数分後に【OP】は現れた。
彼等の不運は、巨大戦車型の【P8】とという最悪の手合いと交戦だったこと。
【OP】は人型を模していることから対人型を想定し機動力優先の軽火器を主体としていた【PC】は通常ならば撤退を行うべき状況にも指令を優先して足止めのために散開し、遮蔽物に身を隠しながらEXISへと効きもしない弾幕を降らせ続けていた。

『質問、残存非戦闘員数?』

矢襖の如く銃弾を撃ち続ける【PC】から竜神会の者達を守るため、身を盾にしていたEXISは一人の構成員にそう質問した。

「わからねえ。
だが、お前さんのお陰でずいぶん時間が稼げたから、ほとんど逃げれた筈だ」

読み取りづらい質問に何とか意味を読み取って答える構成員。
竜神会の者達は、最初こそEXISを敵の増援かと警戒していたが、登場と同時に主砲で何体もの【PC】を容赦無く破壊し、こちらを一人も殺そうとせず逆に無差別に人間を狙うものの注意を優先的に引き付ける姿から、敵ではないと彼等は判断していた。

『了解。
退避推奨、完全殲滅開始予定。
巻き添え必至』
「あ、ああ。
済まねえが、そうさせてもらう。
ありがとよ。ええっと…」
『EXIS』
「EXIS、感謝する」

EXISの告げた台詞に従い、生き残った構成員はEXISに礼を述べると影に隠れながら山下公園から離脱していく。
逃すまいと銃器を構える【PC】。
だが、EXISのガトリング砲が大量の弾薬を吐きだし牽制、それを許さなかった。

『最優先事項、人命救助…クリアー。
早期殲滅及び【P0】救援急行優先に移行。
急務、完全殲滅』

確認出来る限りすべての人間がいなくなった事で、EXISは防護から最速で殲滅を遂行するための形を選ぶ。

『『ペルーン』最大出力稼動開始。
『general-purpose tank form』から『person type form』へ移行』

その言葉通り、EXISのパーツが変型を開始。
後部が二本の脚へと形を変え、上部が五指の付いた腕となり右腕に砲塔が装着、残る胴体部から頭部が突出、全長16メートルにも至る巨大な人型へと変型を成した。

機動性を最低限にまで削り、躯体の持つ攻撃と防御のすべての要素を前面に集約した人型という形態。
この形態の前では、規格に収まる程度の存在に勝つ術は無い。

『殲滅、開始』

右腕の砲塔を含む全火器を稼動させ、ターゲットをロックしたEXISは無機質な声で宣告する。
そして、実行開始から数分の後に動くものは彼女以外いなくなった。


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〜〜新歴98年、12月17日、午後16時47分、横浜、桜木町〜〜


数分前からラプター改にて上空を旋回し敵勢力の全把握に勤めていたクラウスだが、ようやくそれを終了した。

「総数18体を確認。
殲滅に移行します」

言うなり、ラプターのキャノピーを開きシートベルトを外して立ち上がるクラウス。
吹き荒れる強風に髪が激しく乱れるが、構わず懐からバイザー型の機械、『オルトリンデ』を取り出し装着した。

「『ゼウス』最大出力稼動開始、『オルトリンデ』同期!!」

その言葉に併せ、ヘッドセットのバイザー部分が発光し、文字が表示されていく。

『Valkyrie03, preparations completion Please anytime.』
「行きますよ。
ここから先、誰一人として死なせません」
『Yes Master.』

そう告げ、風に煽られながらクラウスは光る砂の瓶の蓋を片手で外し、中身を振り撒いた。
すると、砂状の物体は風に流される事なくクラウスの回りを数秒旋回し、一斉に桜木町全域へと散開した。
散開した砂はターゲットたる【PC】の頭上に集まると、一斉に牙を向き【PC】へと群がる。

「『ウェポン・デストロイ』、開始!!」
『Yes
weapon destroy Start』

バイザーに開始を告げる表示が出た次の瞬間、桜木町から銃声が途絶えた。
見れば、【PC】は持っていた銃器までを含めた全てを砂のように分解され、一機たりとも残ってはいなかった。

『ウェポン・デストロイ』

『オルトリンデ』を介して対象にナノマシンの塊の砂を付着させ、振動破壊を起こして対象に確実な死を与える攻撃である。
だが、対象を絶対に殺してしまうという点からクラウスはあまり使いたいとは思わないモノだった。
別段、クラウスが情け深いわけではなく、クラウスにとって殺しが非効率的だからである。
ヘッドセットを外しキャノピーを閉めながら、クラウスは通信回線を開く。

「ダナラ、こちらは片付きました。
そちらは?」
『もうちょいだよ。
エーちゃんも同じ。
それよりも切兄のところに行って。
なんか、ヤバイ気がする……あっ!!』
「どうしました!?」

突然のダナラの叫びに、クラウスは声を荒げる。

『大変だ!!
切兄が…切兄が!!』
「っ!!??」

ダナラの信じられない台詞に、クラウスは操縦をマニュアルに切り替え操縦桿を目一杯前へ、切の下へとラプター改を飛行させた。


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〜〜新歴98年、12月17日、午後16時43分、横浜、大桟橋〜〜


混濁したクゥの頭には、たった一つの事しか頭に無かった。

『偽者を殺して、キリのところへ帰る』

そのために、監禁されていた部屋から連れ出された事も、数時間前に部屋で打たれた注射も、思考を回すことが出来なかった。
今、数十メートル先で『偽者』は誰かを殴っている。
その殴りかたは、『偽者』が言っていたように手加減なんてない、ただ相手を壊すだけの殴りかただ。
時折『偽者』はなにかを怒鳴っている。
今まで言われた数々の辱めの言葉がリフレインされ、クゥには今『偽者』が自分にそう叫んでいると誤聴して聞こえていた。
クゥの指が揃えられ抜手の形を成す。

「起きて、『狼牙』」

父に教えてもらった『獣偉』の『魔式』の発動に、クゥの右手に赤いラインが何本も走る。
そして、クゥは風の速さで疾駆。
真横に着地すると『偽者』は気付いて驚いた顔でなにか叫んでいるが、構わない。
クゥは抜手をまっすぐ突き出し、混濁した意識のまま『偽者』の横腹を貫いた。


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