■炭疽事件:胞子から容疑者まで Science NOW The Anthrax Case: From Spores to a Suspect By Martin Enserink 12 August 2008 http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2008/812/1?etoc 自殺した62才の陸軍科学者Bruce Ivinsが炭疽菌事件の犯人であるという科学的根拠がついに発表された。先週FBIがいくつかを公表した。重要なものの一つは、手紙に入っていた菌とIvins の研究所USAMRIIDで使われていた菌の同定である。 調査は大量の炭疽検体の配列決定を行ったThe Institute for Genomic Research (TIGR)などの外部機関に多くを依存している。先週発表された主要文書は2007年の10月の郵便検査官のThomas Dellaferaの供述書である。 調査を理解する重要な鍵は攻撃に用いられた炭疽は単一の遺伝配列を持つものではないということである。各封筒には数十億個の胞子が含まれていたようだが、その中には多くのものとは違うサブ集団が常にあり、そのサブ集団は胞子を作るのに用いた親株にもあると考えられる。通常の配列決定方法では希な変異種は検出できないため、それらをみつけるために封筒の胞子を培養して単一胞子から生じたコロニーを数百、数千と作成して他の多くのものとは見かけの違うものを捜しては変異を見つけ出していった。もとになった炭疽系統Amesと比べて単一塩基多型や縦方向繰り返し配列などを含む多数の変異が見つかった。それらのうち4つの変異のスクリーニング法を開発し、Ames系統の炭疽を持つ米国やカナダやスウェーデンや英国の16の研究室の1000以上のコロニーを検査した。その結果封筒に入っていたものと同じ4つの変異を持つものは8コロニーで、そのいずれもがIvinsが1997年に作成し、彼だけが管理していたRMR-1029と呼ばれる胞子フラスコに直接関連するものだった。しかし疑問はまだ多い。 弱点の一つはIvinsの動機である。FBIはIvinsが炭疽ワクチンプロジェクト終了による失業を恐れたとしているがIvinsには他にも多くの炭疽関連の仕事があり、無理がある。