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新しい農業コミュの食糧危機は来るのか?一問一答

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Q1. 最近、テレビでは田原総一朗氏や勝間和代氏らが「食糧危機は来ない」といっています。食糧危機だけは必ず来ると思っていたのですが、そうではないのでしょうか。
A1. 食糧危機が来なければよいですね。両氏の発言は、二つの著作(「日本は世界5位の農業大国」浅川 芳裕著、「「食糧危機」をあおってはいけない」川島 博之著)を鵜呑みにしてのことだと思います。
この二つの著作は、「食糧危機は来ない」と主張しています。しかしよく読むと、暗黙の前提が三つあることが分かります。「日本は今後も豊かな国であり続ければ」、「工業製品が食料より常に高ければ」、「経済システムが常に正常に働けば」です。
もし「日本の経済力が低下したら」、「もし工業製品が安くなって儲からなくなる一方、食料を高めに買わなければならないならば」、「もし経済システムに混乱が生じたら」・・・前提が崩れると、日本でも食糧危機が発生する恐れが高いです。

Q2. そういえば、日本は2010年に世界第2位の経済大国の地位を中国に明け渡すというニュースがあります。しかし、食料が海外から調達できないほど日本の経済がダメになるのでしょうか?
A2. 日本が今の実力を維持するとしても、新興国の追い上げはすさまじいです。中国、韓国などばかりでなく、これまで貧しかった地域の技術的追い上げは非常に急速です。東南アジアやインド、ブラジルをはじめとする南米、アフリカに至るまで、新興国が非常にたくさん台頭しています。
日本はいずれ、インドネシアにも経済規模で負けるという予測もでています。日本の経済力は、世界の中で埋没していく可能性が高いでしょう。しかも少子高齢化で労働力が少なくなっていきます。国際競争力を低下させる恐れが高いです。

Q3. しかし日本はまだまだ高い技術力を誇っています。食料を買い付けるくらいの力は残っているのでは?
A3. その主張には、無言の前提が潜んでいます。「食料は常に工業製品より安い、工業製品は常に食料より高級」という思い込みです。確かに産業革命以降、この前提は常に成立してきました。しかしいよいよ、この前提が崩れようとしています。新興国が台頭しているからです。
工業製品が食料よりも高値で売れたのは、工業力を持っている国が先進国に限られていたからです。限られた国しか作れないから高く売れます。一方、食料は世界中のどこでも生産できるから、安値で買いたたかれる。これが産業革命以来続いてきた構造でした。
しかし、たくさんの新興国が工業力を確保し、インドなどは20万円で自動車を創る時代に突入しています。工業力はどこの国でも持っていることになり、工業製品はどんどん安くなっていきます。
他方、食料は高くなっていきます。新興国が豊かな食生活を楽しみたいからです。
「工業製品デフレ、食料インフレ」の構造です。日本は確かにこれからもそれなりの工業力を維持するでしょう。しかし海外との厳しい価格競争に常にさらされ、儲けは薄くなります。他方、食料はジリジリ高くなるでしょう。日本はこれまでのように豊かな食生活を維持することは難しくなるでしょう。
上記の2著作では、「食料が高くなれば農家は生産を増やそうとする。するとみなに食料が行き渡る。だから食糧危機は起きない」と主張しているのですが、それは経済がしっかりしている国にのみ言えることです。経済が弱くなり、海外に輸出する有力な製品を持たない国は、食料を買い付ける力を失います。貧しい国は、今でも栄養失調に陥っています。上記2著作は「金持ちは飢えることがない」といっているだけであり、貧しい人が飢えることは「食糧危機とは言わない」としているということになります。貧しい人は飢えても金持ちが飢えないなら食糧危機とは言えない、というのが2著作の言う食糧危機の定義だとするなら、食糧危機は人類史上一度もどこの国でも起きたことがないことになります。あまり意味のある主張とは思えません。

Q4. しかし、日本がそんなに貧しい国になるとは思えませんし、食料を輸入できないほど工業力が低下するとは信じられません。
A4. 確かに、世界の経済システムが健全でさえあり、真面目に働いてさえいれば、食糧危機はそう起きるものではありません。しかし「世界経済のシステムが健全であれば」ということがくせ者です。
経済システムが健全であれば、工業製品を作る人、食料を作る人がそれぞれ自分の売りたい商品を売り、交換が可能です。売値に不満が出るときがあっても、食料が世界中の人を養うのに足る量が生産されているのであれば、世界中の人々に行き渡るはずです。しかし、経済システムはしばしば、機能不全に陥ることがあります。
98年に起きたアジア金融危機はその一例で、このときインドネシアは一時的に食糧危機に陥っています。インドネシアは食糧輸入国なのですが、インドネシアの貨幣ルピアの価値が6分の1に下落し、輸入食料が6倍に値上がりしてしまいました。一袋3000円のお米が突如18000円に値上がりすることを想像してみてください。コメだけでなくあらゆる食料品が6倍に値上がりしたら、貧しい人は食料を買えなくなります。このときのインドネシアの打撃は深刻で、国連への報告によると、この食糧危機の時の乳幼児の多数に脳への後遺症が残るだろうと指摘しています。
餓死は、1ヶ月程度の短い期間、食料が手に入らなければ発生します。一時的な経済混乱でも十分に食糧危機は起き得るのです。
上記2著作は経済システムの混乱は起きないなら食糧危機は起きない、という暗黙の前提をおいています。しかし経済システムは時に大混乱することがあります。短い期間の経済混乱でも食糧危機が起き得ることを無視してはいけないでしょう。

Q5. では、食料自給率についてはどうですか。「日本は世界第5位の農業大国」では、カロリーベースの食料自給率は嘘っぱち、何の意味もなく、そんな無意味な数字を出しているのは日本だけ、と主張しています。それより、世界第5位にもなる生産額ベースで考えるべきだとも。
A5. 「自給率」に固執するのは私もどうか、と思います。しかし、カロリーベースで考えることに意味がない、というのは極論でしょう。なぜなら日本は島国だからです。
日本以外のほとんどの国は陸続きです。陸続きだと、食糧危機がもし起きたとしても食料援助が隣国からもたらされる可能性が高いです。隣国にとって、難民が押し寄せてくることの方が恐いからです。たとえば北朝鮮は現在、自国民さえ養えないほど貧しいですが、中国や韓国からの食糧支援を受けています。陸続きのため、国が崩壊すると難民が大量に押し寄せて来るのが恐いからです。
しかし日本は海の孤島です。もし食糧危機が起きても、難民として外国に逃げることは困難です。食料援助をするよりボートピープルを沈没させた方が安上がりだと隣国に思われたとしたら、食料援助も期待できません。日本は「外国=海外」という言葉の交換が成り立つ、世界でも珍しい国です。海に囲まれた孤島が食糧危機に陥り、食料援助も期待できないとなったら、悲惨なことになります。食料安全保障を考えるなら、自国でどれだけの食料を生産することができ、海外からどれだけの食料を調達できるのか、きちんと把握しておくことが大切です。ですから、カロリーベースで考えることは大きな意義があります。

Q6. しかし国産牛は国内で育てているのに、輸入飼料で育てるとカロリーベースの食料自給率では自給したことにならず、ゼロです。松阪牛など、海外にも人気の国産牛が全く評価されないというのはおかしいのでは。
A6. ビジネスの話と食料安全保障の話を混同されているのだと思います。ビジネスの視点なら、国産牛がいかに優れた品質を誇るものか、きちんと評価されるべきです。日本の農産物は世界でトップクラスの品質であり、タマネギなども甘くてモスクワっ子に人気です。イチゴやリンゴなど、果物の品質の高さは評価が高いです。ビジネス面では、日本は大変優れた農業力を備えているということに、もっと自信を持つべきだと思います。
しかし、ビジネスの話と食料安全保障の話は別です。輸入飼料がなくなれば、国産牛も生産できません。食べられないなら飢えてしまいます。国民を誰も飢えさせないという、食料安全保障を考えるなら、どうしてもカロリーベースで考える必要があります。

Q7. でも生産額ベースなら食料自給率は70%に達するそうです。この数字を軽視するのはおかしいのでは。
A7. 確かにこれほどの生産額になる日本農業の技術力はもっと評価されてしかるべきです。ただ、生産額ベースの食料自給率が高くなるのは、「他の産業力によるかさ上げ」と「輸入障壁」に原因があることに注意が必要です。
日本は自動車産業などの工業力のおかげで、給与水準が高いです。そのため、高い農産物でも購入してもらえる。また、農家も、農業資材が高く、必要経費がかかるので高く売らざるを得ない。農業資材が高いのは、そのメーカーの人件費が高いから。結局、農産物価格は他の産業の人件費に引きずられる形で高めに推移しています。
もう一つ、「輸入障壁」も大きい。良くも悪くも、ごく近年までほとんどの農産物が輸入障壁を持っていました。海外からの安い食料が流れ込まずに済みました。この結果、日本の農産物は、他の産業の価格水準に合わせた形で価格形成することが可能になりました。ダムで水をせき止めているようなものです。価格のかさ上げ効果は、非常に大きい。
生産額ベースを押し上げたこの二つの要因は、今、揺らぎはじめています。ダムの横っ腹に穴を開けたようなものです。生産額ベースでも、大きく低下することは避けられないでしょう。日本ではここ10年で、企業が100万社以上減少しました。不景気による倒産に加え、海外に移転していることが原因です。日本経済を支えてきた産業力が、急速に低下しつつあります。
中韓印の安い家電・自動車との競争に巻き込まれ、価格もどんどん安くなり、工業製品が陳腐化するスピードはかつてないほどになっています。このため、日本の労働者の給与水準を下げないと、競争力を維持できないほどまでになっています。こうなると、日本の農産物を高く購入してくれる人がいなくなってしまう。農産物価格のかさ上げ効果は、今度低下していくことでしょう。
また、輸入障壁は取り払われつつあります。TPPに加盟すれば、輸入障壁はなくなり、海外の安い農産物と価格競争を余儀なくされます。これに対抗するには、海外に負けない価格競争力を身につけるか、安値攻勢に左右されない高品質・高価格で勝負するか、です。
海外の安い農産物に対抗するのは容易ではありません。農家だって子どもの教育費など、それなりの所得がないと困るので急には価格を下げられず、海外の安い農産物に価格で対抗するのは大変なことです。農家の「倒産」はどうしても増えるでしょう。
 #商業ではごく普通の現象ではあるのですが。
品質を磨いて価格で妥協しない戦略も、中国の富裕層などにスムーズに届ける流通網を形成できなければなりません。日本の農家の多くが「作る人」に専念し、運ぶこと、売ることという技術を磨いてこなかったので、ほとんどの農家が対応できないでしょう。対応できるのは、進取の気性に富んだ農家だけとなります。
強い生産者だけが生き残ればよい、そういう考え方もできるのかも知れません。ただ、その際には生産額ベースでも国内生産は大幅に低下するでしょう。

Q8. では、日本はカロリーベースの食料自給率を100%目指すべきなのでしょうか。
A8. いいえ、残念ながら違います。日本は100%の食料自給率をかなり長い将来にわたって、達成することができません。
カロリーベース自給率で100%達成するには、二つの方法があります。食料を一切輸入しないか、輸出する食料が輸入食料より多いか、です。
食料を一切輸入しないと、日本人は半分程度が餓死する恐れがあります。この国は山がちで平地が狭いわりに人口が多すぎるからです。耕地面積が狭すぎて全国民を養うには足りません。日本の国土だけで全国民を養うことは、人口がせめて8000万人程度に減るまでは難しいです。
2050年の段階でも1億人近くと予測されているので、当分は自給自足は難しい、ということになります。
自国民さえ養うことができない生産力ですから、輸出食料が輸入食料よりもカロリーベースで多くなる、ということは達成できません。
日本はカロリーベース自給率100%というのは、少なくともここ40年ほどは達成できません。

Q9. では、当分は100%は無理としても、なるべく食料自給率を高め、自給自足を目指すべきなのでしょうか。
A9. いいえ。あまり知られていませんが、自給自足が進むほど食糧危機が起きやすいのです。江戸時代には頻繁に飢饉が起きていますが、餓死者が発生しているのは、自給自足している地域が多く、交易が盛んな地域ではあまり餓死者が発生していないことが知られています。なぜなら、自給自足している地域は他の場所からあまり食料を買いませんから、普段は取引がありません。飢饉になって食料を手に入れようとしても、飢饉が終わればパタッと買わなくなるだろう、と思うと、商人も無理して手配しようとしなくなります。
しかし交易の盛んな土地は、普段からよいお客さんですから、飢饉が起きたときに無理しても食料を調達しないと、飢饉が済んだときに買ってくれなくなる恐れがあります。だから必死になって食料を融通するのです。食料安全保障を高めるには、自給自足にこだわらず、交易を盛んにする必要があります。

Q10. よく分からなくなりました。食料安全保障を高めるには、食料自給率を高めなければならないのではないのですか?
A10. いいえ。食料自給率ではなく、「食料調達力」こそが、食料安全保障には重要です。
食料調達力とは、国内で生産し、海外から調達できる力の合計です。
国内の生産力は高ければ高いほどよいです。もし日本人が欲する以上に生産される品目、たとえばコメは現在余っていますが、こうしたものは平常時には海外にどんどん輸出して全然構いません。食糧危機には国内に振り向けられるのですから。
国産力をできるだけ高め、いざとなればたくさんの人口を養えるようにすべきですし、余った分は海外に積極的に輸出すべきでしょう。
しかし国内だけでは全人口を養うことができません。海外から大量に食料を輸入する必要があります。食料を輸入するには、そのための資金が必要です。その資金を手に入れるには、海外に輸出して儲けなければなりません。海外に輸出するには、海外にとって魅力的な商品を次々と生み出し続けなければなりません。つまり、「海外調達力」を強めるには、貿易を盛んに行わなければなりません。
「国産力」+「海外調達力」の合計、「食料調達力」が、全人口1億2千7百万人を養うのに十分になるよう、為政者は心を砕かなければなりません。

Q11. しかし、フードマイレージということが問題にならないでしょうか。食料を遠い外国から輸入するには、輸送するためのエネルギーが必要です。遠いアメリカから食料を輸入したら、石油エネルギーが高騰する今後を考えると、あまりよくないのでは?
A11. 実はアメリカから輸入した方が省エネルギーになる場合が結構あります。船を使うからです。
船はプカプカ海に浮かんでいるので、自動車や飛行機と違って、わずかな燃料で大量の食料を運ぶことができます。遠く太平洋を越えて日本に運ぶのと、アメリカ国内でトラック輸送するのと比べても、日本に船で輸出する方がエネルギーコストがかかりません。船を食糧輸送の手段としてもっと見直してよいでしょうね。
江戸時代の頃の大阪が「日本のベニス」といわれていたのはご存じでしょうか。大阪市街に水路が縦横無尽に走り、重い米俵を船でどこにでも運べるようにしていたのです。船は大量の食料を低エネルギーで運ぶのに優れています。ゆっくりで構わないのなら、船はとても優れた輸送手段です。ですので、船を利用する限り、輸送距離をあまり気にする必要はありません。

Q12. しかし食料を輸入するということは、大量の水を輸入するのと同じ事だという「バーチャル・ウォーター」の議論がありますね。日本のように水の多い国にいると分かりにくいですが、水が不足している国から食料を輸入することは、その国の水資源を大量に奪っているということにはならないのでしょうか。
A12. 生産方式によって、バーチャルウォーターの評価は変わります。
食料輸出国として最大のアメリカなどは、天水(雨水)で栽培することが主です。地下水や湖沼の水を使うわけではないので、地下水や湖をカラにする心配はありません。天水で栽培する限り、それほど水の消費を心配する必要はありません。
しかし地下水や湖沼、川の水を利用する場合は事情が異なります。使い過ぎるとなくなってしまい、生態系への影響も大きくなります。このような水を灌漑用水といいます。灌漑用水を持続不可能な形で無理に使って食料を作っている場合には、バーチャルウォーターは問題視すべきです。

Q13. では、食料輸入は基本的に問題ないのですか?
A13. 問題はあります。食料を輸入するということは、輸出国の土から養分を奪うということです。他方、日本には生ゴミや生活排水という形になって養分がたまります。輸出国の土はやせ、日本は肥料成分が溢れすぎて環境汚染が発生し、海では赤潮も発生してしまいます。養分物質の流れが輸出国から日本へと、一方通行です。輸出国は奪われた養分を化学肥料で補わなければなりません。化学肥料はどこかの国の地下資源を掘り出したり、天然ガスなどの化石燃料を使って合成しなければなりません。資源やエネルギーが乏しくなれば、こんな農業は続けられなくなります。日本は食料を輸入できなくなります。持続可能性がありません。

Q14. 資源やエネルギーがなくなると食料が輸入できなくなるのですか?
A14. 化学肥料は地下資源やエネルギーがないと生産できません。生産できなければ食料も輸入できません。バーツラフ・シュミルという学者の試算によると、化学肥料を使わない場合、地球が養える人口は30〜40億人です。現在の世界人口は約70億人ですから、半分程度は化学肥料のおかげで養えている計算です。

Q15. 資源やエネルギーが枯渇する心配はあるのでしょうか?たとえばエネルギーでは、石油がなくなっても天然ガスがありますし、石油を含んだ土であるタールサンド、海底にはメタンハイドレートもあります。原子力もあります。太陽電池も。エネルギー源に事欠かないのでは?
A15. 石油は数あるエネルギーの中でも特に優秀なようです。エネルギー密度が高く、わずかな量でたくさんのエネルギーを持っています。しかも液体なので運びやすく、さまざまな成分を含んでいるので繊維やクスリなどの化学合成の原料としても優れています。
しかし天然ガスは液化するのに手間暇がかかり、化学原料としては高くつきます。採掘の際には、ガス漏れが避けられません。天然ガスの主成分はメタンガスで、メタンは二酸化炭素より温室効果が21倍もあります。燃やしても石油ほどは二酸化炭素がでないといわれていますが、ガス漏れによるメタンガスの排出を考えると、果たしてエコなのか評価が分かれているようです。
メタンハイドレートの採掘も、天然ガスと同じ問題を抱えていますし、何より海底から採掘することの難しさは、メキシコ湾での石油漏れ事故からも分かります。メタンハイドレートの利用は採算が取れるかどうかも危ういです。
タールサンドも、石油分を抽出するのにエネルギーが必要で、欠点があります。
原子力は核のゴミが問題になります。数万年は放射能が減衰しないので、将来の子孫に責任を押しつけることになります。たとえば最近、戦前に石炭を掘った地下鉱山が陥没して地盤沈下し、家屋が倒壊しているニュースが増えていますが、これは後先考えていなかったから起きている事故です。原子力も似たところがあるように思います。もし将来、地下で重要な利用法が発見されたとしても、核のゴミが埋められているために手が出せない、ということも起こりえます。今の私たちが処理しきれないことを、子孫に任せるというやり方はどうかと思われます。
それに、石油の代わりに原子力だけでまかなおうとすれば、ウランが枯渇するのはそれほど遠い先の話ではありません。ウラン資源も枯渇する可能性のある限りある資源だということを忘れてはいけないでしょう。プルトニウムをリサイクルするという技術も開発が続けられていますが、技術的に困難で、コストも高くつくようです。
太陽電池は比較的優れたエネルギーです。しかしいかんせん、出力が弱いので、トラクターなどの動力を動かすには力不足です。化学肥料を製造するだけのエネルギーも提供できません。画期的なバッテリー(充電池)が開発されない限り、太陽電池ですべてがうまくいく、とは考えない方がよいでしょう。

Q16. では、木材などのバイオマスエネルギーで化学肥料を合成してはどうでしょう。
A16. コメで考えると分かりやすいですが、1キロカロリーのコメを化学肥料で育てようとすると、その化学肥料を合成するのに2.6キロカロリーのエネルギーが必要です。エネルギー的に大赤字です。籾殻やワラを計算に入れても、1キロカロリーのコメ・籾殻・ワラを作るのに必要な化学肥料は、おおよそ1.3キロカロリー。化学肥料を合成するのに使ったエネルギーの方が、育った作物よりも大きいので、エネルギー的に赤字です。バイオマスで化学肥料を合成するのは、ナンセンスといえるでしょう。

コメント(5)

Q17. ならば化学肥料をやめて有機肥料だけにしたら?
A17. 上のA14の回答に戻ってしまいますが、化学肥料なしに有機肥料だけで食料を生産すると、30〜40億人程度しか養えません。人類はあまりに広大な面積を畑にしすぎて、有機肥料が足りません。有機肥料は山や海、河川などから得られる植物残渣や魚のアラなどから作ることになりますが、十分な量の有機肥料を確保できません。化学肥料を使わなければ、今の人口を養うことはできない状態です。

Q18. では、開き直って石油などのエネルギーを使い続け、化学肥料を製造し続け、今の食料生産を続けていくしかないのですか?
A18. 当面はその通りです。気になるのは温室効果です。石油や天然ガスなどを燃やすと二酸化炭素を排出し、温暖効果を強めます。それが地球の気候を変えてしまうかも知れません。

Q19. 地球温暖化よりも寒冷化の方を心配すべきだという声もあります。
A19. 「温室効果」という言葉を使わずに「温暖化」という言葉を使うようになって、混乱が生じているように思います。
地球温暖化が起きているのか、それとも寒冷化が進もうとしているのか、判断することは難しいです(注・科学は一見進んでいるように見えますが、人間の身体より大き過ぎるものを細くすることはとても苦手、ということは、一般の人にはあまり知られていません。たとえば、「この地域にはスズメが何羽いるか」ということは、正確に数えることができません。)。太陽が元気であれば地球は熱くなりますし、元気をなくせば寒くなります。二酸化炭素の濃度だけでは地球の温度は決まりません。
二酸化炭素は、いわば厚着をするようなものです。厚着をすれば寒くても平気です。地球が寒冷化するとしたら、むしろ二酸化炭素が多い方が好都合です。
しかし厚着したまま太陽が照りだしたらガマンがならなくなるように、二酸化炭素の温室効果が高い状態で太陽が活発に活動すると、地球は急速に高温になりかねません。温室効果はできるだけ小さくすべきですし、二酸化炭素の排出はだからこそ抑えるべきでしょう。

Q20. しかし温暖化すると寒いところで耕作が可能になり、食料生産上はむしろ有利になるのに対し、寒冷化は作物が育たず、農業生産が低下するのではないでしょうか。
A20. 極端な寒冷化が食料生産に打撃を与えるように、極端な温暖化(というより高温化)が起きればやはり食料の生産は難しくなります。植物が生育できる温度は、 0度以上30数度未満の範囲でしかありません。それ以下、それ以上の温度で育つ植物もあるにはありますが、例外的なのでここでは考えないことにします。
40度を超えると、多くの植物は生育できなくなり、場合によっては枯れてしまいます。
土の微生物もそうです。40度を超えると硝化菌などの重要な微生物が死んでしまいます。
土壌微生物が死んでしまうと有機物が分解されず、植物が養分を吸えなくなり、育たなくなります。
「温暖」という穏やかな表現に騙されやすいですが、37度を超えるような「高温化」がたびたび起きると、農業生産に相当のダメージがあると考えなければならないでしょう。
寒冷化も問題ですが、地球高温化も問題です。二酸化炭素の排出は、できる限り減らす努力が必要でしょう。

Q21. 矛盾して聞こえます。今の食料生産を維持するには石油などを使ってでも化学肥料を合成すべきだといい、石油を使うと地球が高温化するからなるべく使わないようにすべきだと。どちらなんでしょうか。
A21. 今の人類は、自縄自縛に陥っています。矛盾したお答えをせざるを得ないのはそのためです。餓死者を出さずに済ませるには、当面、石油などのエネルギーを使って化学肥料を作り続けなければなりません。しかし石油をいくらでも燃やしてよい訳ではなく、できるだけ節約して、二酸化炭素などの温室効果ガスを出さないようにする努力が欠かせません。矛盾していますが、今の人口を養いながら二酸化炭素の増加をなるべく抑える、ということを両立させていかなければなりません。もしかしたら、もはや両立しない状態に至っているのかも知れませんが。

Q22. そのあたりはもはや神のみぞ知る、ということで考えても仕方ないのかも知れませんね。努力しなければなりませんが。では、努力の結果、地球高温化も寒冷化もとりあえず避けることができると仮定し、日本も国内生産を充実させ、貿易も盛んにして食料輸入を確実にすれば、問題は克服できるでしょうか?
A22. 日本において懸念されるのは財政問題です。国の借金はどんどん増加し、今や国・地方の借金をあわせると1000兆円を軽く超えます。なのに税収は減る一方で、もはや国の借金を返す見込みは絶望的です。経済混乱は避けられないでしょう。
厄介なのは、日本は今でもそれなりに大きい経済大国だということです。日本のような巨大な経済大国が混乱すると、世界経済が大混乱に陥ります。しばらくは貿易もストップします。食料はもちろん手に入らなくなります。国内での食料生産もうまくいかなくなるでしょう。財政破綻は、食糧危機が起きるタイミングともなりかねません。

Q23. では、日本の国全体を何とかすることは考えず、自分の身の安全だけを考えることにした場合、やはり農業を始めておくべきでしょうか?
A23 .それは確かに言えると思います。経済が混乱すると、そもそも売買が成立しません。デノミ(新円切り替え)が起きると、食料も高騰します。自分自身で食料を生産するというのは、一つの手です。

Q24. しかし、日本の農家は儲からないと聞きます。
A24. 儲かりません。農家が多すぎるからです。
日本は耕地面積が狭い割に、農家の数が多いので、一人あたりの耕地面積がフランスなどと比べて大幅に小さいです。狭い面積では食料も大して生産できません。生産量が小さければ売り上げも大きくできず、儲かりません。

Q25. 現在、農家は300万人を切って270万人ほどに減少したといわれています。もっと減った方がよいのでしょうか?
A25. 矛盾した言い方になりますが、もっと減るべきで、もっと増えるべきです。減るべきとは、平らな耕地のことです。平野の耕地はまとめて耕作すると効率的です。しかし日本の農家は小規模で、細かく所有権が分かれていました。これを一つにまとめ、大規模で生産した方が効率的です。こうした平野部での耕地では、農家の数を減らし、一軒の規模を大きくした方が効果的でしょう。
しかし平野部だけでは耕地が足りません。全耕地470万ヘクタールのうち、200万ヘクタールは中山間地域です。これらは傾斜地なので一つ一つの耕地はどうしても小さくなります。水路が壊れないよう、常に管理する手間も必要です。中山間地域では、もっとたくさんの人が生産に携わる必要があります。しかし手間暇がかかりすぎるので、こうした土地は耕作放棄地になっています。確かに中山間地域は効率が悪いのですが、全耕地のうち43% にも上る面積ですから、中山間地の食料生産をやめてしまうと、国内食糧供給力は大きく低下します。中山間地域での生産をいかに続けるか、ということは、日本の食料安全保障上、きわめて重要です。
もしそれが難しいというのであれば、中山間地での生産に見合う量の食料を輸入しなければなりません。

Q26. では、IT産業などの、必ずしも都会にいなければならないわけではない職業の人は、中山間地などで農業をすると、自分自身の食糧も確保できて、日本全体にもよいわけですね。
A26. その通りです。ただ、IT関連の職業はそれなりに高度な能力が必要で、誰でもできる仕事ではありません。中山間地の耕地をすべて耕すほどの人数が集まるかは、疑問です。

Q27. ということは、多くの人は都会に残り、食糧危機に苦しむしかなく、少数の農家だけが食糧危機を克服できる、というわけですか?そういえば農家の方が、「食糧危機が起きたら困るのは都会の人間。俺たちはちっとも困らない。都会の人間がそのときになって頭を下げて食料くださいっていったって、もう遅いよ」といっていたのを思い出します。
A27. その農家の方は、戦後まもなくの食糧難のことをイメージしてお話しされたのでしょう。しかし食糧危機が起きると、最も悲惨な目に遭うのは農家かも知れません。理由は二つ。農家が都会の人口に比べて少なすぎること、自動車が普及していること、です。
戦後まもなくの食糧難の頃は、農村に半分近くの人口がいました。ですので都会の人間が来ても追い返せるほどの勢力がありました。しかし今では農業人口はわずか270万人。都会にはその残り、1億2千万人以上。数で全く勝てません。
また、交通手段が大きく違います。戦後まもなくの頃は鉄道を乗り継いで、リュックを背負って徒歩で農村に行かなければなりませんでした。しかし今ではどこの家庭にも自動車があります。食糧危機が起きたら、どうにかしてガソリンを調達して、大挙して農村を襲うでしょう。たった一人の農家の畑に、目の前で都会の数百人が勝手に収穫し、奪っても、文句も言えません。追い返すことなんてできないでしょう。
人間は飢えれば「餓鬼」になります。飢えの苦しみは大変なものです。しかもその苦しみを我が子が味わっているとなれば、その父母は必死になって食料を手に入れようとするでしょう。もし自衛隊が暴徒化した都会の人たちを銃で抑えようとしても、飢えた子のためなら、母親は命知らずの行動をとるでしょう。とても治安を維持できるものではありません。
農家であっても、食糧危機が来れば都会の人間が大挙して押し寄せ、食料を根こそぎ奪っていく可能性があることを、肝に銘じなければなりません。

A28. 農家になっても食糧危機を克服できないとなると、どうしたらよいのでしょう?
Q28. 農家自身も、自分自身の食料安全保障を考えなければならないでしょう。
自分の畑を銃で見回りしたとしても、24時間警戒することはできません。とても体が保ちません。警戒を手伝ってくれる人が必要です。それを平時から用意しておくのです。それは消費者です。
たとえば消費者と「食料安全保障契約」を結ぶのです。「もし食糧危機が来ても、あなたに必ず食料をお渡しする。その代わり、平時にはちょっと高めの値段で買ってもらい、食糧危機が来たときには、一緒に畑の見回りを手伝ってくれ」というように。
こうすれば、農家の方は大勢の都会の人間を味方につけ、食糧危機の際には一緒に畑を守ってもらえます。ついでに平時には高めに作物を購入してもらうことができます。消費者も、自分自身では農業ができなくても、いざというときに食料を融通してもらえるという安心が得られます。
個人個人の「食料安全保障契約」というのを、考えてみてもよいかも知れません。

Q29. 「食料安全保障契約」を結んだ都会の人間はどうにかなるかも知れません。しかしすべての都会人を救えるわけではありませんね。国内での食料生産力は、全人口を養えないという話でした。足りない分はどうしたらよいでしょうか。
A29. 海外から輸入するほかありません。そのためには日本が最低限度の経済力を持ち、何らかの輸出産業を作り続け、食料を購入できるだけの稼ぎをしておかなければなりません。海外からの「食料調達力」が欠かせません。

Q30. しかし食料を海外から輸入すると、国内の農家を圧迫することになりませんか?
A30. 食料の話を議論するときに、議論が混乱しやすい原因は、食料を守ること、農業を守ること、農家を守ることを同一視するからです。食料を守ること、農業を守ること、農家を守ることは必ずしもイコールではありません。
農家を守って農業をダメにすることがあります。田畑の転売を期待しているだけの農家は、農業の真の振興を阻害しているともいえます。
農業を守って食料をダメにすることがあります。国内農業を守ろうとするあまり、食料を輸入できなくなる事態を招きかねず、かえって日本の食料安全保障を脅かすことになりかねません。
日本の食料安全保障を考える際、最も重要なのは食料です。全国民を飢えさせない、ということは最優先すべき課題です。その次に農業です。輸入食料は外国が売ってくれないことには確保できないのですから、輸入食料を確保しつつも、できる限り国内農業を育てることが重要です。その次に農家です。国内農業を担うのは当然農家です。農業全体を損なう動きをする農家を農家と呼んでよいのか分かりませんが、日本の農業を支える活動をする真の農家は、応援すべきです。
日本の食料を確保し、国内農業を発展させるための農家はなんとしても支援すべきです。食料の輸入は、国内食料生産を脅かす形であってはならず、それを支える農家を壊滅させてはなりません。
国内生産、海外調達の両方を含めた「食料」を最大化させる方策を講じなければなりません。
そのための農業振興策、農家応援策を考える必要があります。

Q31. とはいってもやはり海外からの食料輸入は国内農業に打撃を与えるのではないでしょうか。国産のコメは確かに高品質ですが、その分高いです。
A31. 日本人が海外で食料を生産することも考えてよいでしょう。「メイドバイジャパニーズ」といわれるやり方です。海外で日本人が畑を持ち、生産するのです。日本の農業技術は非常に高度です。これを海外で行い、生産するのです。その一部を日本に振り向けるだけでも、日本の食料安全保障は改善するでしょう。

Q32. しかし経済システムが混乱し貿易が成り立たなくなると、いくら日本人だといっても、海外から食料を送るのは難しくなるのでは?
A32. 海外からの食料調達を確実にするために、日本は海運国家を目指すというのも手です。パナマのように税の優遇策をとり、世界の船を日本船籍としたり、船での交易サービスをできるだけ日本の手で行い、海運を握るのです。沖縄は地政学的にアジアの中心であり、ここをハブ港として育てるのも一つでしょう。海運を牛耳れば、日本は世界になくてはならない国になります。
また、日本が海運で強くなれば、日本は「海で隔てられた孤島」ではなくなり、「海で世界中どこともつながっている国」になります。そんな戦略とも絡めて、これからの日本の食料安全保障を考えなければならないでしょうね。
参考資料
石油で作るコメ、切迫している日本の食糧危機
http://www.news.janjan.jp/living/0806/0806058791/1.php

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