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せっしょんれぽ@しゅうまつコミュのきらきら星3

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その2
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CT1:カブキ(逆)    門出
:「彼の願った事」―B


なんだろう。
気付くと、暗い空間の中に居た。
感じるのは、不思議な浮遊感と言うか落下感。
(あぁ、これは夢か)
きっと、そうだろう。
灯り一つ無い暗闇。
何処までも続く落下感。
こんな事、現実では考えられないから。
それにしても不思議な夢。
なんで、俺は、こんな夢を見ているのか。
「…イ………て………てったら……ユイ!!」
――ん?
静寂の中で、俺を呼ぶ声が聞こえた。
人が寝てるって言うのに、うるさいな。
それに、さっきから身体が揺さぶられている気がする。
誰かが、俺を起こそうとしているのか。
良いじゃないか。
最近はずっと忙しくて。
もうずっと走り続けてきたんだから。
少しくらい、寝てても良いじゃないか。
――けれど。
ユイ。
誰だっただろうか。
その響きは酷く懐かしくて。
俺をこの呼び方で呼ぶ奴は一人しか居なかったはずで。
そいつは、確か、俺の、俺の大切な――。

目が――覚める。
周囲は喧騒で包まれていた。
そうか――ここは、教室か。
今は昼休みで。
俺を起こした張本人はこいつか。
俺の頭を、杠が教科書でペシペシとはたいている。
こいつは、何をやっているんだ。
溜息をつきながら、杠の手を払いのけた。
「あ、やっと起きた」
「もう!心配したんだぞ!全然起きないんだから」
ブーブーと頬を膨らませる杠。
「で、何の様だ、わざわざ起こして?」
杠のお門違いな苦情を適当に聞き流して尋ねる。
「あ……」
不可解な間が開いた。
(なんだ?)
問いただそうとした瞬間、杠が慌てたようにまくし立てる
「え、えっとね!そろそろ昼休みも終わっちゃうしユイちゃんはご飯とか食べないのかなーとか思ってみたり?ほ、ほら一日の計は朝食にありって言うしさまぁ今昼なんだけどねあっでも今起きたばっかりだから朝食みたいなもんだよね!ね!?」
「……」
あまりの剣幕に思わず黙る。
何を言おうとしていたか忘れたと言うのが正しいか。
「ね!?」
再確認してくる杠。
「いや、何を言ってるかも、ほとんど判らなかったんだが……」
思わず正直に答えてしまって後悔する。
『もぉ、ちゃんと人の話はしっかり聞いててよね!』
こう言った反応をすると、こいつはそんな風に怒るのだ。
が、今日に限ってはそんな反応が無かった。
「あ、そぅ……?」
そんな気の抜けた返答に、こちらが毒気を抜かれてしまう。
やれやれ。
溜息をつきながら席から立ち上がる。
「仕方ねーな……食堂でも行くか」
そう言って歩き出す。
眠いは眠いが、腹が減っているのも事実だった。
けれど。
そんなことよりも、何かが胸の奥に引っかかる。
歩き出した俺を、杠が小走りで追いかけて来た。
「……でも、大丈夫?」
けれど、何故こいつはこんな事を言うのか。
けれど、何故こいつはこんなに心配そうな顔をしているのか。
何か、大切なことを忘れている気がする。

「……あの……さ?」
終了間際ともなれば昼休みの食堂も、それなりに空いている。
食事中ずっと、何事か考えて込んでいた杠が、唐突に口を開いた。
こいつが言い難そうにするとは珍しい。
軽く驚きながら、視線で先を促す。
杠はおずおずといった感じに切り出してきた。
「あのさ、ユイ……今日って何の日だか、知ってる?」
そう言われても、ぴんと来ない。
学校がある以上、何かの休日ではないことは確かだが。
肩をすくめて心当たりが無いことをアピールする。
「やっぱり、判らないか……」
そう、前置きしてから杠が続けた。
「今日はね、ユイの誕生日」
――なに?
言われた言葉の意味が一瞬理解できなかった。
俺の、誕生日?
2、3回脳内で繰り返して、確かに今日がその日であることを認識する。
しかし。
本人ですら忘れていたようなことを――。
「なんで、お前は知ってるんだ?」
純粋に好奇心から聞くと、杠は嬉しそうに笑った。
「にひひ……先生だまくらかして調べたでござるよ」
犯罪だった。
その答えに呆れながらも、他人が自分の誕生日を知っているというのは――。
「で、ね?ユイ今日の放課後は……暇?」
「この私が直々に祝ってあげよう!」
「こんな美少女に誕生日を!この果報者め!幸せ者め!ありがたく思いたまへ!」
そんな事を言ってくる杠に、返す上手い言葉が見つからない。
「あ……いや、その、だな……」
普段なら、こいつの突飛な行動にも簡単に対処できるのに。
思わずどもる俺を見て、杠がニヤニヤ笑いを浮かべる。
「おや、今照れましたかな?」
図星。
思わず席を立ち上がる。
自分が、これほど動揺しやすいとは知らなかった。
驚きはしたものの、それは不思議と不快な気分ではなく、むしろ――。
けれど――けれど俺の16の誕生日には。
何か、何か重大なことがあったような気が――。
何か、大切なことを忘れている気がする。

思わず杠を置き去りにして教室に戻ってきた。
起きてから時間が経ったから頭がはっきりしたからか。
隣に話相手の杠が居ないからか。
先程とは違い、周囲の喧騒がはっきりと聞き取れる。
『でっさー、昨日のTVまじうけんのよ!』
『ゆっこ、告白されたって本当?相手はだれ!?』
『何それうけるー、まじありえないんですけどー』
ふと、高揚していた心が急激に冷めていくのを感じる。
どれもこれもくだらない内容だった。
奈落堕ち。
そう称される大規模災害でST☆Rの街は激変して。
自分達が今どんな状況に置かれているのか。
今の生活が、どんな犠牲の上に成り立っているのか。
この世界の儚さも脆さも知らずに生きている。
虫唾が走る。
だから、俺は学校が嫌いだ。
こんな奴らとは一緒に居たくない。
こいつらは、どいつもこいつも――。
違和感。
――違う。
違うはずだ。
俺は知っている。
知っていた。
けれど、何かを――忘れている。
そうだ。
少なくても。
あいつは――。
あいつの笑顔は――そんな単純なものでは、無かったはずで。


カチリ、と。
頭の中で何かがはまった気がして――全てを思い出した。
ゆっくりと振り返ると、そこには杠が立っていた。
どこか嬉しそうな、どこか寂しそうな表情で。
「思い、出したんだね……?」
それは、疑問というより確認の言葉。
黙って、頷く。
瞬間――。
教室が光の粒子になって消えていく。
それは、周りの生徒達も一緒で。
変わらないのは、僕と杠だけ。
全てが消えると、そこは、先程の夢の中に似た場所だった。
暗い、闇を溶かし込んだような世界。
自分がどこに立っているのか。
そもそも、自分が立っているのか、宙に浮いているのか。
それすらも定かでないような空間。
そんな気の狂いそうな場所でも、僕は意外と冷静で居られた。
それは、目の前に一人の少女が――杠が居たからか。
その姿は、先日路地裏で見たものではなかった。
目の前の杠眞守の姿は、三年前の脳裏に焼きついたものだった。
「ここは……どこだ?」
杠に尋ねると、こちらも記憶の中のそれと同じ声で答えが返ってきた。
「ここはね、奈落の最深部だよ」

奈落。
3年前、突如ST☆Rの中央に出現した空間。
未だに全貌を把握して居ない魔窟。
ここが、その最深部。
道理で、随分と無茶苦茶な場所なわけだ。
思わず、改めて周囲を見渡す僕を見ながら、杠が続ける。
「でね、さっきのは、あたしとユイの……記憶のようなものかな」
「ここまでの道は、あの人が拓いてくれたんだけど……」
「こうやって話すのにも、一端あたしとユイの意識を繋げる必要があったの」
おぼろげに、話が掴めて来た。
『せめて、彼女のそばで』
鏡花さんが最後に言った台詞は、そう言うことか。
「最初は、意識を繋げるだけの為だったんだけどね……」
杠が、バツが悪そうに続ける。
「ユイったらすっかり忘れてるみたいだし……」
「なんかね、あたしとしても、あのままやり直しができれば……ね」
「それは、それで良いかな、なんて思っちゃったんだけど……」
エヘヘと照れくさそうに笑った杠が、寂しそうな笑顔を浮かべた。
「やっぱり……駄目、だよね」
杠の気持ちは痛いほどわかった。
それは、僕も、あの日のことをずっと後悔して生きて来たから。
あの日――。
――もっと、上手く立ち回れていれば。
――もっと、杠のことを気に掛けていれば。
――もっと、自分の気持ちにに素直になっていたら。
もう一度、やり直せるなら。
何度そう思ったか判らない。
けれど――。
けれど、それは違う。
だから。
「あぁ……駄目、だな……」
そう答えた僕に、杠が肩をすくめておどけて見せた。
「うん、あたしも判ってたんだよ?」
「でもね……」
そこで切って、何が可笑しいのか、ケタケタと笑い始める。
「何が可笑しいんだよ?」
少しムッとしながら尋ねる。
「だってさ……ユイったら……」
「自分の誕生日の話題が出ても気付かないのに……」
「あたしの話なんかで気付くんだもん……ホント可笑しいったら……」
「ホント……どんだけお人よしなのよ……」
笑いながら目尻を拭う杠。
ぐぅの音も出なかった。
けれど、あまり笑い話にされるのも少し癪だった。
「だけどな……あれは、俺にとって結構大切なことなんだぞ?」
「あれは…お前に教えられたことだからな」
そう言うと杠はキョトンとした。
無理も無い。
それは、あの事件の後のことだから。
「お前の……家族のこと、な」
そう切り出すと、杠は決まりが悪そうな顔をした。
「あー、うん、ばれちゃった……だよね?」
同情されたり、気を使われたり。
そう言うのが嫌で黙っていたんだろう。
恐る恐るといった感じでこちらの顔色を伺う杠に続ける。
「僕な、正直、お前のこと、能天気な馬鹿だと思ってた」
「なんだとーーー!?」
キレられた。
むくれる杠をなだめながら続ける。
「で、な……お前が死んでから、お前の家族のこと知って……」
「それで思ったんだ」
「あー、お前って凄い奴だったんだな、と」
「結構へヴィな過去持ってるくせに、いつも明るく笑ってて」
「それで気付いたんだ」
「きっと、皆そうなんだろうな、って」
「あの当時の僕は、我ながら大分ひねくれてた」
「世界を斜に見て、自分は不幸ですなんて思って、随分嫌なやつだったと思う」
「それで、周りの笑ってる連中見て、何て気楽な、幸せな連中だって、そんな風に思ってた」
「でも、違うんだよな……皆、大なり小なり背負うもんがあって、それでも、出来る限り笑って生きてるんだろうなって……」
「そう、気付いたんだ」
そうだった。
そのことに気付いた時、僕には初めて命さんが常々言っていた台詞の意味が判った。
『お前は、もっと世界を知るべきだ』
その、言葉の意味が。
だから――。
「だから、皆の幸せを一つでも多く救えるように……」
「皆が少しでも多く、笑っていられるように……」
「僕は……剣を振るってアヤカシを殺し続けて「待って!!」」
――きたんだ。
その台詞は杠の声でかき消された。
杠を見やる。
先程までは「ほー」だの「へー」だのと言った感じで、こちらの話に相槌を打っていた顔は――恐ろしいくらい真剣な表情をしていた。

「……待ってよ……それは違うよ……やっぱり、そうだったんだ」
「ユイはやっぱり判ってないよ……」
違う?
判ってない?
何がだ?
それこそ判らない。
「何が――」
言い返そうとして、怯んだ。
杠の真剣な表情が、何故か酷く悲しげに見えたから。
杠のこんな顔は――今まで見たことが、無かったから。
何も言えないで居る僕に杠が心配そうな眼差しを向ける。
「私、この前見たんだ……ユイが、ここで戦っているのを」
僕が――?
ここで戦っていた――?
何のことだ――?
「ユイの他には、盾を持った女の人や、銃を構えた女の子が居たよ?」
あぁ――。
心当たりがあった。
そう言えば、杠は、ここは、奈落だったと言っていたか。
杠の言っているのは、この間の、犬井さんやエレオノーラとの1件か。
あの時の封印の奥に続いていた空間は、確かにここと良く似ていた。
ボイドアヴェニューと、高校は決して近くは無いけれど。
そもそも、この奈落と言う世界で実際の距離がどれどけ意味を持つのかも判らない。
あの時の戦いを、杠は、ここで見ていたのか。
「その時ね……ユイは凄い苦しそうな顔をしてた」
「それを見た時から……私はずっと、ユイのことが心配だった」
結局――。
こいつにはお見通しだったと言うわけか。
「そうだよな……結局、僕はやり方を間違えたんだよな……」
自嘲を込めて、言葉を吐き捨てる。
何も考えずに、目の前の"敵"を殺す。
そんな事では、誰も救えない。
それは僕が、数え切れないほどの血を流してやっと気付いたこと。
杠なら、そんな事はすぐに判るんだろう。
そう思った。
けれど。

「そうじゃない……それも違うよ」
杠の返答は、想像とは違うものだった。
「ユイ……君にも本当はわかっているんでしょう?」
息が詰まった。
「……それはきっと、君の願いじゃない」
言葉にならない。
「君が、本当に望んだことじゃないはずだよ?」
なんで、こいつは、こんなにも僕のことを。
自分自身ですら、ずっと忘れてきたことを。
「君が本当に望んだのは……ただ守ること」
なんで、こいつは――こんなにも判ってくれているのだろうか。
杠の言葉はこんなににも僕の胸を暖かくして――。
――同じくらい僕の胸を苛む。
杠の言葉は僕が望んできたこと。
「それは……」
それは――。
「殺すことで守るんじゃなくて、守るために守ること」
それは――僕がずっと欲しかったもの。
「それが、君の本当の願い」
だけど――。
「だけど……だけど、駄目なんだ……」
やっとの事で、声を震わせる。
「僕にはそんなの……無理なんだよ……」
言葉を紡ぐたびに、身体から力が抜けていくのが判る。
こいつの前だけでは、無様な姿は見せたくなかったのに。
「その為の力は……僕には無いんだよ……」
もう、これ以上、立っていられない。
自分を、支えることが出来ない。
「誰かを守る力は……僕には無いんだよ……」
膝から崩れるように座り込んだ。

「約束、覚えてる?」
うずくまって黙り込んだ僕に、杠の声が降ってくる。
約束――。
それはあの日交わした大切な――。
最初で最後の――。
けれど――けれど、僕には――。
「自分に……優しくなんて、なれるはずが……無い」
そうだ。
それは、絶対守ると言ったのに――。
けれど――。
「あの時、一番苦しんでいたのはお前だった……」
「僕が……誰かに優しくするなら……お前に、そうしなきゃいけなかった……」
「それなのに……」
「それなのに……僕はお前に何も出来なかった!!」
「僕には、あの時、お前を殺すことしか出来なかった!!」
「お前は生きるべきだったんだ!」
「お前の傍には、いつも沢山笑顔があった!!」
「きっと、僕なんかより、お前の方が沢山の人を幸せに出来た!!」
「僕は、絶対に……何をしたってお前を守らなきゃいけなかったんだ!!」
「死ぬなら……お前じゃなくて、僕が死ぬべきだったんだ……」
「そんな僕が……どうして、自分に優しくなんてなれる!?」
「そんな僕が……誰を守れる……」
「そんなの……無理に決まってるじゃないか……」
それなのに、どうしても守ることの出来なかった約束。
だから――。
「だから、せめて……」
「せめて……せめて他の誰かをって……そう思って……」
そうだ――。
だから、僕は――。

「違うよ?」
杠の言葉と共に、身体が何か暖かいものに包まれる。
抱きしめられているのか。
杠の身体は、ここにはなくて。
ここにあるのは、杠の意識だけのはずで。
それなのに、そこには確かな温もりがあって。
杠は、こんなになってまで僕のことを思ってくれていて。
けれど――。
けれど、これ以上、杠を心配させるわけにはいかないのに。
けれど、これ以上、杠に甘えるわけにはいかないのに。
それなのに――。
それなのに、自分を包んでくれる温もりを振りほどけない。
自分を包んでくれる言葉を振りほどけない。

「あたしは、ユイにこんな苦しい思いをさせるために、こんな約束をしたんじゃないよ?」
「人と人の出会いには、きっと何かの意味があるんだよ?」
「もしも……」
「もしもユイが、あの時のことを後悔し続けていたら……」
「そしたら、あたしとユイの思い出は、ただ悲しいだけのものになっちゃうんだよ?」
「あたしは……あたしはそんなのは嫌」
「ユイ……君とあたしの出会いは、そんな事の為にあったんじゃ……ない!」
力強く言い切った杠が、一拍間をおいてから続ける。
「それにね?」
「あの時、あたしは嬉しかったんだよ?」
「君が、あたしを守ろうとしてくれたことが」
「君が守ろうとしてくれたように、あたしが君を守れたことが」
「今、君が生きてくれていることが」
「……嬉しいんだよ」
「君が生きていること」
「君が笑っていてくれること」
「それが、嬉しいんだよ」
「それが、あたしと君が出会った意味で、あたしと君が出会った証なんだ」
「ユイは、自分には守る力が無いって言ったけど……」
「守るのは力だけじゃないよ」
「強い想いも人を守るんだよ」
「君の想いが、あたしと君の思い出を守るんだよ」
「だから大丈夫」
「ユイ……君には守れるよ」
「君がそう望めば……きっと、守れるよ」
頬が濡れる。
いつの間にか、泣いている自分に気付く。
涙を流したのは何時以来だろう。
そうだ、僕が最後に泣いたのはあの時か。
本当に――。
本当に、こいつには、泣かされてばっかりだ――。

「だから、ユイはもっと、もっと自分に優しくなって?」
泣きじゃくる僕に掛けられたその声は、何処までも、ただ何処までも優しくて。
「……ユイ、君は強い人だけど、あたしはその強さが心配だよ」
あの時も、僕は泣いていた。
「人は……強いだけじゃ生きていけないから……」
それは、あの時と同じ言霊。
「だから……だから、もっと優しくなって?」
ずっと守れなかった。
「他人にだけじゃなくて……君自身に……もっと優しくなって?」
杠が僕に向けた――。
「それが、わたしの……わたしの最初で最後のお願いだよ」
ずっと思い違いをしていた。
ずっと、判ったつもりでいた。
けれど、それは、本当に、つもりでしかなくて。
ずっと判らないでいた。
答えは、すぐ傍にあったのに。
こいつが、ずっと前に教えてくれていたのに。
それを、今になって。
今になって、やっと判っても――。
「でも、判らないんだ……」
今更何もできない。
「どうすれば良いのか……判らないんだ」
僕は、もう奈落の底に居て。
僕の胸には、大きな穴が開いていて。
「もう、どうしようも……ないんだ……」
僕がもっと早く気付いていれば。
そうすれば、もっと色々なことが出来たかもしれないのに。
気付いた時には、もう全て手遅れで。
「……大丈夫だよ」
そう言って、杠が僕の身体から離れた。
「ユイ、君は一人じゃないよ」
それは子供に諭すような言葉。
「君は強いから、全部自分ひとりで抱え込もうとするけど……」
そんな声に導かれるように、顔を上げる。
「苦しくなったら、辛くなったら……いつでも助けて欲しいって、手を伸ばせばいいんだよ」
そこには柔らかい杠の笑顔。
「……そうしたら、きっと」
そう言った杠の手がこちらに差し伸べられた。
「救いの手は、そこにあるんだよ」
その手に重なるように、もう一つ誰かの手が見える。
「……君の周りには……きっと」
僕は、ゆっくりと――その手を取った。

視界が光で溢れる。
身体を浮遊感が包まれて――。
急速に意識が覚醒していく。
杠の唇が開く。
声はもう聞こえなかった。
けれど、杠が何と言っているかは、何故か良くわかった。
それは――。
『きっと、君の周りには、君が帰る場所があるよ』
光の中で杠が僕に微笑みかける。
それは、記憶の中のそれと全く同じもの。
それはいつも僕に向けられていたもの。
何時も僕に向けられていた――それは、まるで太陽の様な。


##########
やった!
折り返しは過ぎたよ!!

その4
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=49293432&comm_id=3567686

コメント(2)

>ユイの他には、盾を持った女の人や、銃を構えた女の子が〜

ウェブゴーストの黒子や、たれぱんだ状態だったヨミはともかく……
黒野! 黒野ー!

鏡花→杠→イブキ。なんだこの怒涛のハーレム展開。浮気者!
言うても、台詞の中で名前列挙しすぎると、バランスが悪くなるんだよ。


浮気って言うかなんていうか、すごいよね!
まぁ、綾ちゃん程じゃないけどね!

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