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せっしょんれぽ@しゅうまつコミュのBlade opera(後編)

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####ここから後編####



MD2:カブトワリ(正)  挫折
:「盾と刃との邂逅」

千家様の話でも、残念ながら汎元殿ではエスピアトーレの行方は掴めなかった。
汎元殿の霊査能力者の力を持ってしても行き先がつかめないとなると――。
随分厄介な相手だと言うことだけは判った。
一方で教えられたのは、汎元殿が天元刀を持つ者によって襲われたと言うこと。
そして、保管されていた法具を奪われたと言うこと。
その事件の後ろでは浄化派が動いているらしいと言うこと。
きな臭いものを感じながら汎元殿を後にすると、道の向こうから見知った顔が近づいてきた。
汎元殿の場所を探すのに集中しているのか。
難しい顔をしながら周囲に意識を飛ばしているのは御影息吹さん。
そして、その影に同化する様に佇むのは伝説の暗殺者。
(……何故、この二人が?)
一緒に居るのか。
ここに居るのか。
疑問に思っていると、月代さんが彼らに声を掛けた。
今回の件に関しては、あくまで僕は月代さんの付き添い。
主な会話を月代さんに任せ、口出しは彼女には判らない事の補足だけに留める。
どうやら、彼女達も浄化派に関して調べているようだった。
しかし、追っている件について語るその口は重い。
そして、わざわざこの二人をST☆Rに派遣するほどの依頼人とは――。
――それだけ、今回の事件は大事と言うことか。
あまり深くない部分で情報交換をしつつ、彼らと別れた。

正直、御影さんとは顔を合わせづらかった。
彼女達が立ち去っていく。
少し寂しいような気も。
少しほっとしたような気も。
背中を向けた御影さんが、数歩歩いて振り返る。
発したのは仕事とは無関係の、ただ僕に向けられた言葉。
「貴方には、帰ってくることの出来る居場所があるわ」
不意打ちだった。
「……えっ?」
思わず、間抜けな声を出してしまう。
向けられたのは、彼女の何時もの眼差し。
それは、少しこちらを伺うような。
それは、少し心配そうな。
彼女の言葉が、少しずつ胸に染み渡っていく。
自分がどんな顔をしているのか。
――僕にはわからなかった。



MD3:レッガー(逆)   災難
⇒ミストレス(逆)  豊穣
:「血に染まる街」
CT1:アラシ(正)    離脱
⇒フェイト(正)   公正
:「理想の行き着く先」

僕達が向かったのはボイドアヴェニューと言う地区だった。
N◎VAで言うところのレッドエリアのスラム街。
人間や同胞達に追われたアヤカシや外道の退魔士の吹き溜まり。
普段から、お世辞にも治安が良いとは言えない地域だったが――。
それにしても、目の前に広がる光景は、控えめに言っても――酷過ぎた。
辺りに散らばるのは無数の肉片。
巻き込まれた人間達のものも混じっているが、その多くはアヤカシのそれ。
足元に転がっていたアヤカシの身体が助けを求めるように、こちらに手を伸ばす。
『助けてくれ』
そう言うようにこちらを見あげたアヤカシの頭を、一発の弾丸が貫いた。
「本当に、こんなところまで来たの?お嬢さん?」
からかう様に月代さんを見る幽体。
そして、その手には一丁の神魔の銃。
この女が、エスピアトーレを奪って行ったと言う浄化派のエージェント。
"極彩色の指揮者"エレオノーラ・キャンベル。
目の前の惨状だけ見ても、彼女のやり口は随分と目に余る。
だが、彼女の相手をするのは僕ではない。
彼女と、そしてエスピアトーレの相手をするのは――。
軽く月代さんを見やる。
僕は、この子を守る、それだけだ。
その為に僕が相手をせねばならないのは、血溜りの中で佇むアーマーギアに身を包んだ男。
――犬井 良介。

犬井さんは、言った。
13年前の事件で全てをなくした、と。
自分のして来た事に自信が持てなくなった、と。
自分にはアヤカシを殺し続けることだけが全てだ、と。
それでも、天元刀は自分に力を貸してくれる、と
この場を通るには、自分を倒す他に道は無い、と。
そして――。
「……俺は、その刀でなければ止められんぞ?」
確かに、犬井さんの言う通りだった。
彼の右手に下げた天元刀から放たれる妖気。
自分の腰に下げた二振りの刀を見やる。
一方は、銘も無い斬魔刀。
あの刀を受けきるには、いかにも非力そうな――。
そして、もう一振り。
握り締める。
今の僕に、この刀を抜けるのだろうか。
ずっと抜けなかった刀が。
力を振るっていた時期ですら抜けなかった刀が。
軽く横に目をやる。
それでも、僕の後ろには。
抜かねばならないのか。
抜けたとしても、今、ここで刀を振るってしまえば――。
二度と"答え"は見つからない。
そんな気がした。
それでも――。
一つ一つ、退魔士の教えを思い出していく。
もう一度、あの頃のようになれば良いだけだ。
心を凍らせて――。
なんとなく、判っていた。
力を失ってしまったのは。
刀を抜けないのは。
きっと僕の心の中に迷いがあるから。
天元刀の柄に手を掛ける――。
なら、その迷いを切り捨ててしまえば良い。
その迷いが何か判らなくとも。
判らないからこそ、縛られる必要など無いはずだ。
心の奥に――、風が――。

柄に掛けた手を、横から伸びた手に押さえられた。
この距離に近づかれるまで、気配も感じなかった。
一体、誰が?
その場にいたのは、影を纏ったような男。
伝説の暗殺者、黒野晶。
……何故?
シェードの奥、心を読めない瞳がこちらを見つめる。
「……止めておけ……まだ、見つかっていないのだろう?」
「奴は……俺が斃す」
そう言って、黒野さんが――ナイフを引き抜いた。



CM1:カゼ(逆)     勝利
:「封印を解く鍵は」

目の前にあるのは、強力な術式で封鎖された空間の歪。
今回の事件の黒幕は、そしてエスピアトーレはこの先に居ると言う。
そして、その歪みを超えるには、僕の持つ刀で封印を断ち切る必要があると言う。
その場に居合わせる人達の視線が僕に集まる。
だが、今の僕には……。
刀を見やる。

比良坂ヨミ。
浄化派に身体を奪われたアヤカシの少女。
「お主は、その刀に自分の信念を乗せる事が出来るのか?」
影崎さん。
彼女はエレオノーラに大切なものを奪われたと言う。
「あなたは、そこで足踏みをしてれば良いわ」
「私は、どんな手を使っても、あの先に行ってあいつを殺すわ」
皆の声が、聞こえる。
けれど、何故だろうか。
それらが、どこか遠くの事の様に聞こえるのは。
けれど、何故だろうか。
彼女達が何か言うたびに、胸の中で風が吹く音がする気がするのは。
何故、この剣は僕の元にあるのか。
この剣で、僕に何が出来るのか。
僕は一体、何がしたいのか。
僕には――。

唐突に、頬を殴られた。
一体、何が起こったのか。
戸惑っていると、胸に重い衝撃。
視線を下に向ける。
そこに居たのは――伊織だった。
「何……やってんだよ……」
ぼそぼそと、彼が呟く。
「なんだよ……お兄さんは魔法使いなんだろ?」
小さい拳が、力なく僕の胸を叩く。
その彼の姿が、昔の自分にだぶる。
あぁ、そうか。
彼にとっての僕は、僕にとっての父さんや犬井さんのような――。
「なんだよ、女の子の頼みひとつ叶えてやれないのかよ、魔法使いってのは!?」
ばっと顔を上げた伊織の目尻に光るものが浮かんでいて――
「あの子を守るんじゃなかったのかよ!」
何かが見えた気がした。
それは、迷いの正体か――。
それは"答え"の片鱗か――。
「僕に……守ることが出来るだろうか?」
目の前の少年に問いかける。
「できるさ……お兄さんは……魔法使いなんだろう?」
伊織の言葉。
それは、確かめるように。
僕を、信頼するかのような瞳で――。
彼は信じている。
僕に守れるものがあると。
自分の力で守れるものがあると。
(僕に……何かが守れるのだろうか?)
心の中で、過去の自分に問いかける。
胸の中の少年は何も答えない。
それでも――。
天元刀を、握り締める。
きっと、今ならば抜ける。
胸の中に――何故かそんな確信があった。
風が――止んだ気がしたから。

伊織の頭を撫で付け、歪みへと歩を進める。
目の前には、御影さんが居た。
その瞳が、心配そうに揺れて、こちらを見つめていた。
その右手が、躊躇う様に僕に差し出される。
この手を取れば、楽になるのだろうか。
この手を取れれば、どれだけ良いのだろうか。
けれど――。
今の僕には、この手は取れない。
"答え"が出なければ、この手を取る資格が無い。
手を差し出す彼女と目が合って。
――彼女の横を通り過ぎた。



CT1:カブキ(逆)    門出
⇒チャクラ(正)   調和
:「歪みの奥で」
CT2:カブト(正)    庇護
⇒カゲ(正)     死
:「神をも打ち倒し」
CM2:クグツ(正)    維持
:「道を選ぶ」

歪みの奥に居た事件の黒幕たちを打ち倒し、目の前にあったのは犬井さんの姿。
13年前。
多くの退魔士の命を人柱として、狂った神を封じた場所。
そして、多くの退魔士が命を落とすのを、犬井さんが見ているしか出来なかった場所。
そんな場所だからか。
彼の姿が、より小さく見えたのは。
そして、その彼が小さい声で呟く。
「なぁ、陸……お前の手で、俺の人生に幕を引いてくれないか?」
そこに居たのは、気の良い子供好きの男性でも、使命感に燃えた歴戦の対魔士でも無かった。
ただ、生きることに疲れ果てた一人の男だった。
何となく悟る。
それはきっと、剣を振るい続ける僕の行き着く未来の姿。
以前の僕ならば、あるいは彼を斬ったかもしれない。
生きる意志を見失った人間には、生きる意味は無い。
ずっと、そう思っていた。
けれど――。
「……ごめんですね」
「貴方の口癖でしょう?自分の人生は……自分で決めろって言うのは」
今の僕には彼を斬る気にはなれなかった。
それは――掴みかけた気がしたから。
歩いてきた道を見失った先にも――違う道が続いているかもしれない。
選べる道は、一つではないかもしれない。
そんな、気がしていたから。
だから、僕は彼に背を向けた。
彼の道を決めるのは、きっと僕ではない。
この人の道は、僕とは交わっていなかったから。
けれど、彼女は違う。

そこに居たのは、影崎黒子さん。
けれど、そこに居たのは好奇心で無邪気に瞳を輝かせていた情報屋の少女では無かった。
その瞳に宿るのは絶望と憎悪。
声を掛ける御影さん達。
影崎さんが、今回の事件に彼女が関わった経緯を唐突と語る。
「わたしは、全部失ったわ」
「後は、あいつを殺すことしか……私には残っていない」
彼女の台詞が、洞窟の中に木霊する。
その言の葉の一つ一つから、彼女の悲しみと憎しみが伝わってくる様だった。
「随分荒れてるじゃないか?」
声を掛ける。
制御しきれていない力と。
決して強くは見えない危うい心と。
最初に彼女に出会った時から、何時かこんな日が来るのではないかと思っていた。
これは、僕にとっての杠の事件と同じ。
彼女が道を選ぶ分岐点。
今の彼女は、あの時の僕と同じ。
そして、僕は知っている。
絶望と憎悪で剣を振るった先に、何が待っているかを。
絶望と憎悪で剣を振るった先に、何も待ってはいないことを。
――だから、僕はここで彼女を止めなければいない。
それがきっと――僕と彼女が出会った意味だから。
何を言ったところで、今の彼女は止まらない。
僕には、それがわかる。
僕だからこそ、それがわかる。
だから――。
彼女の前まで近づいて――ゆっくりと剣を構えた。



ED1:イヌ(正)     審判
:「少年に手向ける言葉」

彼らを残して、一足先に歪みの外に出た。
ずっと不安だったのだろう、待ちかねたように伊織が駆け寄ってきた。
「うまく……いったの?」
恐る恐ると言った風に声を掛けてくる伊織に笑顔で――。
応えようとして、自分の意識に反して膝が折れた。
脇腹に激痛。
そう言えば、一発良いのを貰っていた。
正直、食らった時には死んだと思ったのだが。
「おい、大丈夫かよ!?」
慌てふためく伊織を手で制して懐を探る。
胸ポケットから出てきたのは、一枚の呪術が施された札。
見覚えが無い札。
施されているのは防御術の類か。
少し悩んでから、気付く。
このジャケットはそう言えば――。
思わず苦笑がもれる。
「……余計な事をしてくれる」
以前の自分であれば、アヤカシに助けられ等したら怒りを覚えただろうに。
何故だろうか。
不思議と悪い気分はしなかった。

「俺、一旦N◎VAに帰るよ」
唐突に伊織が切り出した。
視線を向ける僕に、伊織が続ける。
「俺は、やっぱり力が欲しいよ」
「お兄さんの言うことも判るけど、やっぱり俺は力が欲しい!」
「力が無けりゃ……いざって言う時、結局誰も守れないから……」
伊織を見やる。
伊織には、ずっと力なんて良い物じゃないと言い続けてきた。
だから、か。
まるで、父親に怒られるのを覚悟する子供の様に。
機嫌を伺う様に、上目遣いでこちらを見てくる。
その姿は本当に――。
本当に、昔の僕に――。

溜息を一つ。
腰に下げた斬魔刀を黙って差し出す。
「お兄さん……これは?」
予想もしていなかったのだろう。
伊織が、訳がわからないと言った風に問いかけてくる。
「餞別だよ」
そう言うと、伊織がおずおずと刀を手にする。
「良いのかよ?」
疑問を浮かべる彼に続ける。
「あぁ、力が、欲しいんだろう?」
「だけど、見失うなよ?お前が……守りたいものを」
「ほら行け、お前の守りたいものは、この街には無いだろう?」
それだけ言って、背中を押してやる。
少し離れたところには、不自然に空に浮かぶ赤い扉。
為されるままに扉へと駆け寄っていった伊織が、しばし逡巡して、こちらに戻ってくる。
僕の手に何かを握らせて、そして赤い扉へと駆けていく。
手の中を見やる。
それは銀の懐中時計。
今時滅多に無さそうな、一切の電制が入っていない品物。
扉を開けた伊織がこちらに手を振ってくる。
「それ、親父の形見なんだぜ、何時か絶対返せよ!」
そう言って笑って、今度こそ伊織の姿が扉の奥に消え、扉も中空に溶ける様に消えていく。

扉が消えたその先には、ST☆Rの空が広がっていた。
この空は、N◎VAまで繋がっているのだろうか。
「大丈夫、お前なら強くなれるさ」
「きっと……僕なんかよりも、ずっと」
それは、遠い街に帰って行った少年に向けて――。
あるいは、遠い日にこの街に居た少年に向けて――。
見上げた空に、一人ごちる。
返答はあろう筈も無く、言葉はただ消えるように空に吸い込まれていった。



xyz

################
メインの補完は、天元刀を抜く時の心境。
タイムアウトまで取った以上、無理やりにでも書かざるをえなかった。
こうしてみれば、PC1っぽく見えないことも……無理かなぁ。
正直、セッションにおいては、ゴミ屑PC1と言わざるをえなかった。
陸の性格とテーマ上、仕方無かったんや許してたもれ。

コメント(2)

黒野かっこよすぎるwwwさすが伝説www
そして黒子がちゃんとシリアスやってて嬉しいわー。

しかし、こんないいもの見せられたあとに、りっくんにあんなハンドアウトを投げなければならないのか……。
胸が痛む……。

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