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「新型インフルエンザ」情報コミュの039、国立感染症研究所 ウイルス第3部長のインタビュー(縮刷版)

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 国立感染症研究所ウイルス第3部長のインタビューが掲載されていましたので紹介します。問題を知ることによって、冷静な対応が生まれると思います。文豪ユゴーの言葉を借りれば「無知と悲惨」すなわち情報を知らないことで悲惨は生まれると思います。この視点でウイルス第3部長のインタビューを紹介します。なお、このインタビューの分量はA−4約16ページですので、ポイントと思われる部分の情報を引用します。

1、人に感染した場合の症状は、既に我々が過去の経験で知っているインフルエンザではありません。いままで人類が経験したことがない強力な感染症です。
2、現在の致死率60%が、例えば20%に下がるとかえってパンデミックとしては危ないのです。膨大な被害を出した1918年のスペインインフルエンザの致死率が2%だったことを考えれば、致死率がたとえ20%程度にまで下がったとしても、過去に類を見ない大災害になる危険性があると言わねばなりません。(P8)
3、専門家の間では、ヒトに感染する新型ウイルスの出現は、「ほんとうに起きるかどうか」は既に問題ではなく「いつ起きるのか」が問題だということで認識が一致しています。
4、感染率を中間の30%として、日本の人口1億2800万人を掛けてみてください。米国の見積もりを採用すると、なんの対策もなしにパンデミックが起きると日本では768万人が死亡するという数字が出てきます。)
5、現在までのところ、鳥インフルエンザは致死率63%ほどですが、これらの患者はそれぞれの国で最高水準の医療を受けているということを忘れてはなりません。肺炎になれば人工呼吸器を付けますし、タミフルの大量投与も受けています。それでもなおかつ、この致死率なのです。
6、日本人はリスクコミュニケーションが下手です。新型インフルエンザにはどのようなリスクがあり、どのような社会的な影響が出るのか、被害を最小限にとどめるには我々一人一人がどのように振る舞うべきなのか、といったことが国民に対して説明ができていません。
7、リスクのある現状で、被害を最小限にとどめるには一人一人がリスクを理解し、理性的に行動しなくてはなりません。理性的な行動のためには、なによりも正しい知識の徹底と、開かれた場での議論が必要です。

 編集 NPO法人生涯青春の会 石田双三 


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 ウイルス第3部長のインタビュー
新型インフルエンザをリアルに語ろう
国立感染症研究所 ウイルス第3部長
田代眞人氏 

 鳥インフルエンザの危険性について、SAFETY JAPANではこれまで書評を通じて警鐘を鳴らしてきた。新型インフルエンザの脅威は、ようやく知られるようになったが、まだまだ正しい情報が一般に届いているとは言えない状況だ。特にこの問題を専門としている研究者の生の声はなかなか表に出てこない。
 田代眞人氏は、日本を代表するインフルエンザの研究者であるとともに、世界保健機構(WHO)で新型インフルエンザ対策を担当するインフルエンザ協力センターのセンター長を務めている。今回のインタビューはWHOに勤務する田代氏が帰国するタイミングで、貴重な時間を割いていただき行ったものだ。
 田代氏は、新型インフルエンザが、全身感染を起こす、これまでにない高い病原性を示すものになるであろうと指摘する。このままでは被害は第二次世界大戦以上になる可能性もある。「不作為は、犯罪ですらある」と、国を挙げての対策推進を訴える。
聞き手・文/松浦 晋也、写真/北山 宏一
2008年4月28日

1、新型インフルエンザをリアルに語ろう
2、鳥の世界は既にパンデミック状態・・・・・・・・・・・ 省略
3、トリ型からヒト型への変異は時間の問題
4、毒性が弱くなり致死率が下がったほうが危険は増す
5、強毒型ウイルスが毎年流行する可能性も
6、発生から1週間で世界中に広がる
7、封じ込め、健康被害の最小化、社会機能の維持 ・・・・・省略
8、パンデミック対策は防疫というよりも“戦争”・・・・・・省略
9、安全保障の一環として対策を進める米国・・・・・・・・ 省略
10、プレパンデミックワクチンのリスクとベネフィット・・・省略
11、文明が強毒型ウイルスを招き寄せた・・・・・・・・・・省略


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1、新型インフルエンザをリアルに語ろう
――高病原性鳥インフルエンザについては、今年1月に放映されたNHKの番組(NHKスペシャル「シリーズ最強ウイルス」1月12、13日放映)などでやっと一般にも認知されるようになってきましたが、その実態についてはまだまだ情報の周知が徹底していないようです。まず、「そもそも鳥インフルエンザとはなにか」から説明をお願いできますか。

田代:わたしは約20年前から鳥インフルエンザの研究をしてきました。鳥インフルエンザウイルスは、トリを宿主とするウイルスで、基本的にトリの腸管で増殖します。ウイルスに感染したトリにはあまり激しい症状は出ません。わたしが研究を始めたころは、鳥インフルエンザは鳥に特有の病気で、ヒトに感染することはないと思われていました。
 ところが1997年に香港で18人が鳥インフルエンザに感染し、うち6人が死亡するという事件が起きました。この時は香港の防疫担当者だったマーガレット・チャン現世界保健機構(WHO)事務局長が、香港で飼育されていた鶏130万匹を殺処分するという大英断を下して、感染拡大を食い止めました。
 この時のウイルスが、現在問題になっている強毒型のH5N1ウイルスでした。強毒型ウイルスによる世界的大流行、すなわちパンデミックが現実味を帯びてきたのです。
――強毒型の高病原性鳥インフルエンザウイルスというのは、自然界には存在しなかったのでしょうか。
田代:過去、自然界に存在した鳥インフルエンザウイルスはすべて弱毒型で野鳥を殺しませんでした。今回の強毒型ウイルスは野鳥も殺します。それだけではなく、ほとんどのほ乳類に感染して死に至らしめます。当然、ヒトも例外ではありません。
――その強毒型、弱毒型というのは具体的にどういうことなのでしょう。
田代:従来のインフルエンザウイルスはトリ型もヒト型も弱毒型です。トリの場合は感染してもほとんど症状が出ませんし、ヒトでは気道の粘膜細胞など一部の細胞でしか増殖しません。ウイルスは細胞に入り込んで増殖し、最後に細胞を破壊して出てきます。ですからウイルスに冒された部位では細胞が破壊されて炎症が起きます。弱毒型の場合は、気管しか炎症を起こさないわけです。
 一方強毒型は、全身の細胞で増殖する能力を持ちます。ですからさまざまな臓器で炎症が起きて多臓器不全を起こしますし、血流にウイルスが入り全身に回るウイルス血症という症状も出ます。特に重症の肺炎を起こすため、治療には人工呼吸器が欠かせません。
 これとは別にH5N1ウイルスはサイトカインストームという症状も起こします。免疫は通常、ウイルスから身体を防御するのですが、その免疫が暴走して、自分の体を攻撃してしまうのです。免疫活性が低い老人よりも、活性の高い若者のほうが危険なのです。
――全身に感染する強い毒性と、サイトカインストームを起こす性質が、高い死亡率につながるわけですね。
田代:人に感染した場合の症状は、既に我々が過去の経験で知っているインフルエンザではありません。いままで人類が経験したことがない強力な感染症です。
 普通のインフルエンザは上気道にしか感染しませんし、健康な若い人が死亡することはほとんどありません。65歳以上の高齢者や、妊婦、糖尿病や腎臓病などの慢性疾患の患者といったハイリスク群が合併症を起こして死ぬ危険性がある程度です。
 ところが今回のH5N1ウイルスは、致死率が非常に高いのが特徴です。気道のみならず、肺の深いところに感染し、ウイルスによる肺炎を引き起こします。細菌による合併症の肺炎ではなく、ウイルスが肺炎を起こすのです。妊婦が感染した場合には、ウイルスが胎盤を通過して胎児に感染した例も報告されています。このようなことは通常のインフルエンザではありえません。

2、鳥の世界は既にパンデミック状態・・・・省略
3、トリ型からヒト型への変異は時間の問題
――非常に強い毒性を示すにもかかわらず、累計の全世界での死者は360人ほどと非常に少ないです。これはなぜなのでしょう。
田代:現在のH5N1が、まだヒトからヒトへと感染する特性を獲得していないからです。
 にもかかわらず、現実に患者が出ているわけですが、実のところ現状ではどういう人がかかるのかよく分かっていません。鳥との濃厚な接触で、大量のウイルスを体内に取り込んでしまったという可能性はあるのですが、それだけではないのです。インドネシアの場合、患者の25%は鳥との接触がありませんでした。中国の患者も鳥との接触がありません。しかも、鳥の世界で流行が起きていない地域でも、人への感染が起きています。これが何を意味するのかは、まだ分かっていません。
 ウイルスの遺伝子の、どの部分がどう変わるとトリ型からヒト型へと変化するのか、本当のところはまだよく分かっていません。ウイルスが細胞に侵入する時に使うレセプターという部位は、トリ型とヒト型ではアミノ酸が1、2カ所違うだけです。既に2カ所のアミノ酸がヒト型と同じに変異したH5N1ウイルスが見つかっていますが、それでもまだパンデミックには至っていません。
――それは、「そう簡単にトリ型からヒト型になることはない」という安心材料と考えてよいのでしょうか。
田代:そうではありません。ウイルスは増殖の過程において、ある一定の確率でランダムな突然変異を起こします。そしてH5N1ウイルスは、既に鳥の世界ではパンデミックを起こしています。パンデミックということは、鳥の体内でウイルスが非常に多数回の増殖を行っているということです。確率的に、ヒト型ウイルスが出現する可能性はぐっと上昇しているのです。
 例えばサイコロを1回振ると1の目が出る確率は、1/6です。しかし2回振って少なくともどちらかで1の目が出る確率は11/36で、1/6より大きくなります。サイコロを振る回数が増えれば増えるほど、少なくともどこかで1が出る確率は1に近づいていきます。
 鳥の世界でパンデミックを起こしているということは、サイコロを振る回数が増えているのと同じです。ヒトに感染しやすいH5N1ウイルスが出現する確率はどんどん大きくなっていると考えなくてはなりません。
 ひとたび、ヒトに感染しやすい形質を獲得したウイルスが出現すれば、一気に広がるのは間違いありません。なぜなら、新たに出現したウイルスに対して免疫を持っている人はほぼ皆無だからです。感染したヒトからさらに別のヒトヘと広がる過程で、免疫によって拡大が阻止されるということがありません。
 どうやら、ウイルスがヒト型に近づきつつあるという傍証も存在します。トリ型のウイルスは、鳥の体温である42℃付近で増殖しやすく、それ以下の温度では増殖が鈍ります。一方ヒト型のインフルエンザウイルスはヒトの体温である35〜36℃付近で活発に増殖します。同じインフルエンザウイルスでも増殖に適した温度が違うのです。
 ところが、先ほど説明した「クレード2-2」の亜種のH5N1ウイルスでは、既にヒトの体温で活発に増殖するように突然変異を起こしたウイルスが見つかっています。これは、ウイルスが着実にヒトに感染する形質を備えつつあることを示しています。
――いつごろヒト型に変異したウイルスが出現するか予測できないのでしょうか。
田代:突然変異が確率で起きる以上、予測は不可能です。ヒトに感染するために必要な特性にしても、まだ我々の知らない要素があるのでしょう。
 ただし、鳥の世界でパンデミックを起こし、活発にウイルスが増殖していること、そして徐々にヒト型の特性を一部備えたウイルスが出現してきつつあることを考え合わせると、そう遠くない将来にヒト型ウイルスが出現する可能性は高いと考えねばなりません。
 実際問題として、ヒト型とトリ型のウイルスの遺伝子は共通点が多いのです。比較すると、はっきりと異なる遺伝子は10個です。そのうちの5〜6個については、既にヒト型に変異したウイルスが確認されています。10個の遺伝子の差異のうち、どれがヒト型へと変化する決定的な要素なのかは分かっていません。ひょっとすると10個全部そろわないとヒト型には変異しないのかも知れませんし、逆にあと一つでも変異したらヒト型になるのかも知れません。研究が進んでいるとはいえ、分かっていないこともたくさんあるのです。

4、毒性が弱くなり致死率が下がったほうが危険は増す
―― 一部では、あまりに毒性の強いウイルスは、感染が拡大する前にかかった個体を殺してしまうので、あまり広がらない。だから、感染が拡大するのは毒性の弱いウイルスへと突然変異したときであり、あまり心配するには及ばないとする議論もあります。この考え方は正しいのでしょうか。
田代:確かにエボラ出血熱のように致死率の高いウイルスは、あまり感染拡大を起こしません。それは事実です。ウイルスの繁殖戦略としては、感染した宿主が生き続けて、別の個体に感染させるほうが好都合なので、突然変異は弱毒化の方向に淘汰されるというのも正しい議論です。
 しかし、今問題となっているH5N1ウイルスは、全身感染を起こす強毒型です。強毒型の性質を示す部分の遺伝子は特定されており、それはヒト型ウイルスの特質である10個の遺伝子とは別の部位にあることが分かっています。
 つまり、ウイルスがヒト型に変異することに連動して、強毒型から弱毒型になる可能性はありません。ほぼ間違いなく、強毒型のままヒト型に変異すると考えられます。ウイルスが弱毒型になると主張しているのは、最新の研究成果を知らない人たちです。
――しかし、強毒型の性質を示す部分が、毒性を弱める方向に突然変異していくことは期待できるのではないでしょうか。
田代:やや専門的な話に踏み込みますが、強毒型と弱毒型の違いは、ウイルス表面に並んでいるHAという糖タンパク質にあります。HAはごくかいつまんで説明すると、ウイルスが細胞に取り付き、中に潜り込むにあたって重要な役割を果たします。大ざっぱな理解では、細胞膜を切り裂く“はさみ”だと思っていただいて構いません。
 HAはタンパク質ですからさまざまなアミノ酸が多数結合して出来ています。ウイルスが細胞に取り付くにあたってはHAのアミノ酸の並びの中でも、「開裂部位」と呼ばれる特定の部分の並びが重要な役割を果たします。
 弱毒型では、HAの開裂部位はアルギニンというアミノ酸が一つだけ付いています。一方、強毒型ではアルギニンとリジンというアミノ酸が6個から8個、並んで付いているのです。この違いが、ウイルスの細胞に入り込む能力の差となっています、生物のどの部位の細胞に取り付くことができるかは、HAの特定部位におけるアミノ酸の並び方が決めているのです。
 お分かりでしょうか。強毒型ウイルスが、弱毒型に変異するということは、HAの中の特定部位のアミノ酸が6〜8個連続して脱落することを意味します。つまり遺伝子としては連続した6〜8個の塩基の連なりが一斉に突然変異が起こすということです。
 このような突然変異は、全く起こりえないわけではないですが、非常に起きる確率が低いです。そのような非常に起こりにくい突然変異を「どうせ弱毒型に変異するだろう」とあてにしてはいけません。
――つまり、トリ型からヒト型への突然変異の過程で、強毒型が弱毒型に変化する可能性は非常に低いということでしょうか。
田代:そうです。ですから、最悪のシナリオは、強い全身感染とサイトカインストームを起こす性質を持ったまま、H5N1ウイルスがヒト型になるというものです。
 しかも、パンデミックの発生を考えると、むしろ突然変異により毒性が弱くなり致死率が下がったほうが危険であると考えねばなりません。感染者が死なずに移動すれば、それだけウイルスが広がるチャンスが増えますから。現在の致死率60%が、例えば20%に下がるとかえってパンデミックとしては危ないのです。
 膨大な被害を出した1918年のスペインインフルエンザの致死率が2%だったことを考えれば、致死率がたとえ20%程度にまで下がったとしても、過去に類を見ない大災害になる危険性があると言わねばなりません。

5、強毒型ウイルスが毎年流行する可能性も
――未来のいつか、それも遠くない将来に強毒型のH5N1ウイルスがヒトへの感染性を獲得するのは、もう間違いないことなのでしょうか。
田代:専門家の間では、ヒトに感染する新型ウイルスの出現は、「Ifの問題ではなくWhenの問題」、つまり「ほんとうに起きるかどうか」は既に問題ではなく「いつ起きるのか」が問題だということで認識が一致しています。
 インフルエンザウイルスは、ある時新型ウイルスが出てパンデミックを起こすと、それ以前に流行していたウイルスが消えていってしまうという奇妙な性質を持っています。どうしてそんなことが起きるのかはまだ分かっていません。
 1918年のスペインインフルエンザはH1N1型でした。H1N1ウイルスはその後ずっと小流行を引き起こしていましたが、1957年にH2N2のアジアインフルエンザが出現すると、H1N1のウイルスはどこかに消えてしまいました。1968年にH3N2の香港インフルエンザが出現すると、H2N2のウイルスが消えました。
 ところが1977年にH1N1のソ連インフルエンザが出現します。ソ連インフルエンザのウイルスは、さまざまな証拠からどこかの研究機関で保管されていたウイルスが漏れ出したと考えられています。このときはH3N2のウイルスは消えませんでした。その理由も分かってはいません。現在はH3N2とH1N1のウイルスが共存しています。この状況が次のパンデミックの後にどのような影響を与えるかも不明です。
 これまでと同じことが起きると仮定しましょう。すると次のパンデミックが来ると、これまでのウイルスは消えていきます。
 次にパンデミックを起こすウイルス候補は、強毒型のH5N1ウイルスのほかに、H9N2というウイルスがあります。こちらも鳥の世界では広範囲に広がっていますが、弱毒型です。ヒト型に変異するとしても、大きな健康被害は出さないでしょう。
――H5N1とH9N2とでは、どちらがヒト型に変異する可能性が高いのでしょうか。
田代:可能性としては同じぐらいです。ですから次はH9N2が来るから大したことにならないという人もいます。
 しかし、もしも強毒型のH5N1ウイルスがヒト型に変異した場合、健康被害はH9N2と比べると比較にならないほどひどいものになるでしょう。社会活動の崩壊が起こり得ると考えなくてはなりません。
 最悪の事態に備えるのが危機管理の定石です。パンデミックが起きてからでは遅いのです。起きる前に、最悪のシナリオに基づいて対策を立て、可能な限りの準備を進めておくべきなのです。
 「まず、強毒型のH5N1ウイルスへの対策が最優先事項」。これは世界的なコンセンサスです。
――今、ウイルスがパンデミック毎に代替わりするというお話でしたが、ということはもしもH5N1ウイルスがヒト型に変異してパンデミックを起こした場合、その後毎年H5N1ウイルスの亜種が冬になるたびに流行を起こすようになるということでしょうか。つまり、高い致死率を示す強毒型のインフルエンザが毎年流行するようになってしまうのでしょうか。
田代:その可能性は否定できません。ですからパンデミック対策では、いったんパンデミックが起きてしまった後の世界において、どのような防疫を恒久的に進めるかということも視野に入れておかなくてはなりません。それは社会の仕組みを組み替えるような一大事業になるでしょう。
 強毒型のH5N1ウイルスがヒト型に変異するということは、人類史に大きな影響を与える一大事なのです。

6、発生から1週間で世界中に広がる
――強毒型のH5N1ウイルスへの対策が問題になっているにもかかわらず、日本の厚生労働省は、弱毒型のスペインインフルエンザをモデルケースにした対策を立てています。これは取り組みが甘いのではないでしょうか。
田代:厚生労働省は、感染率25%、致死率2%で対策を立てています。全人口の25%が感染し、感染者のうち2%が死亡するという意味です。
 スペインインフルエンザの感染率は48%でしたから、対策の前提となる被害見積もりはスペインインフルエンザよりも甘いです。
 この数字は米国のCDC(疾病予防管理センター)が、1968年の香港インフルエンザの時のデータに基づいて作成した数式で算出されています。この数字を算出した時は「仮に」というモデルケースとして出したのですが、報告書では「仮に」が取れて数字が一人歩きしてしまいました。
 ちなみに、この数式はソフトウエア化されているのですが、米国では既にそのソフトウエアは使われていません。
 米国では新型インフルエンザが起きた場合の対策を2006年に改訂しているのですが、その中で台風と同じ1から5までの「カテゴリー」というスケールで被害規模を表しています。香港インフルエンザがカテゴリー2、スペインインフルエンザはカテゴリー5の一番下に分類しています。つまりスペインインフルエンザを最悪のケースとは考えていないということです。
――NHKの番組では米国の取り組みが進んでいるとして紹介されていましたが、米国ではどの程度の被害を想定して対策を立てているのでしょうか。
田代:米国の保健省が昨年大手メディア向けに行ったカンファレンスでは、感染率20〜40%、致死率20%ということでした。
 オーストラリアのシンクタンクであるロウイー研究所が出した推定では米国では死者200万人が出るとしています。日本は人口密度が高くて米国よりも条件が悪いので死者210万人です。しかし、ロウイーの推計はスペインインフルエンザのような弱毒型ウイルスに対してのものです。
 H5N1のような強毒型ウイルスがパンデミックを起こした場合、どの程度の被害が発生するのかについて、きちんとした推計はまだ出ていません。
 実際にはどの程度の被害を想定すべきなのか。そこで米国が想定している致死率20%を採用し、感染率を中間の30%として、日本の人口1億2800万人を掛けてみてください。米国の見積もりを採用すると、なんの対策もなしにパンデミックが起きると日本では768万人が死亡するという数字が出てきます。感染率を25%としても、600万人以上の死者が出るということになります。
――第二次世界大戦の2倍以上の死者が出るということになりますね。
田代:スペインインフルエンザの時と同じく、全く無防備のままで強毒型のH5N1ウイルスによるパンデミックを迎えると、こういう事態が起きるということです。これは社会崩壊を意味すると考えていいでしょう。
 しかも現在は交通機関が発達しています。米国のカンサス州で最初の流行を起こしたスペインインフルエンザがオーストラリアに上陸するのに1年かかりました。現在はこんな時間的猶予はないでしょう。ひとたびパンデミックが発生したら1週間程度で全世界に広がると考えておかなくてはなりません。

7、封じ込め、健康被害の最小化、社会機能の維持 ――  省略
8、パンデミック対策は防疫というよりも“戦争”・・・・省略
9、安全保障の一環として対策を進める米国・・・・省略
10、プレパンデミックワクチンのリスクとベネフィット・・・省略
11、文明が強毒型ウイルスを招き寄せた・・・省略


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