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アーノルド・ベックリンコミュの福永武彦研究会 例会案内

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福永武彦研究会の例会案内をさせていただきます。

「死の島」繋がりということでご了承ください。

福永武彦研究会 11月例会(第113回例会)案内
 
日時:11月9日(日) 13:00〜17:00 
場所:代沢地区会館 第2会議室 東京都世田谷区代沢5-8-19 TEL.03-3413-4448
    小田急線・京王井の頭線「下北沢駅」南口徒歩10分

  道順・小田急線「下北沢駅」南口を出、右を見るとマクドナルドがあります。マクドナルドとみずほ銀行のキャッシュコーナーの間の商店街を下ると最初の信号が代沢三叉路で、そこを「バイク王」の方に曲った2軒目です。
  
【内容】
? 覚書と余談11「『アルノルト・ベックリーン展』図録の余白に」 H.W氏

【発表者より予告文】
 「死の島」を描いた世紀末の画家アルノルト・ベックリーンについては、専門書の一項目や美術随想の一節に見ることはあっても、纏まった画集、文献の類がなく、知られていることは多くありません。
 今回の話の前半では、1987年、国立西洋美術館で開催された『ベックリーン展』の図録を参考に、同じ構図で描かれた5作の「死の島」の比較も交え、「死の島」の画家ベックリーンの画業を辿ります。

 また「マチネ・ポエティク」の同人で現在も御壮健の山崎剛太郎先生には、昭和13年、20歳で雑誌に発表されたエッセイに、一枚のベックリーンに触れた一節があります。
話の後半では山崎先生の、この「マチネ・スタイル」の原型とも云うべきエッセイを紹介しながら、言及された作品について考察を試みます。
気軽に御参加いただければ幸いです。

? 討論「『死の島』を読む」第1回              参加者全員
  元版で上巻153頁、全小説版(全集)で第10巻173頁、文庫版で上巻155頁まで(「二八〇日前 春」の前まで)。
     
【意図】福永作品を読み解く。各人の「読み」を突き合せ討論し、作品に対する了解(事項)の共有を目指しつつも、まずは各々が発見した疑問点・問題点を列挙するなかから当作品の多様性を掘り起こし、開示することを第一の目的とする。

 そのためにも、最終本文(決定稿)だけでなく、「文芸」初出本文まで遡って本文推移をも確認していく。
「全集版」を底本とするも、何版で(準備して)も可。

参加費は会員500円、非会員1000円です。

参加御希望の方は、夢の輪までメッセージください。
前回同様、「とりあえず見ているだけ」も歓迎です。

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2008年11月 福永武彦研究会第113回例会報告

日時 2008年11月8日(日)13時〜17時
場所 代沢地区会館 第2会議室

【内容】
 第113回例会は11月9日、世田谷区代沢地区会館第2会議室にて行なわれた。当日は立冬を過ぎて肌寒く、空には鉛色の雲が低く垂れ込め、昼過ぎからは時折小雨も降るという、普通の会合なら生憎の、という天候ながら、いかにも「冥府」の日和(?)、窓の外には鮮やかに紅葉した小さな木立の向うに墓地が広がるという、長篇『死の島』を語り合うには実に相応しい会場であった。

例会前半は「覚書と余談11『アルノルト・ベックリーン展』図録の余白に」と題するWの発表。
これは福永の長篇『死の島』に出る画家 Arnold Boecklin (1827〜1901)の人と作品を紹介・検討するもので、話の前半で画家の生涯を簡単に要約・説明した後、後半では、Wが5月に Berlin で実際に見た「死の島」(1883)など3点、さらに1977年に Basel で、また87年に東京で開催された回顧展の図録から8点の作品を択んで解説を加え、画家が同じ主題を繰り返し描いたことの意味について考察を述べた。取り上げた作品は、山崎剛太郎氏が昭和13(1938)年、学生時代に発表されたエッセイにふれられた Boecklin の作品を含む。

参加者には取り上げた作品の複写(原色7,白黒3)に図録の解説文(独語原文とWによる訳)を附したもの、および独逸近代絵画史の研究書から採ったBoecklin を論じた一節(独語原文とWによる訳、含原色複写2)を、資料として配布した。この資料については若干の残部があるので希望者は事務局まで連絡のこと。

なお、M氏より、フランツ・ツェルガー著、高阪一治訳『ベックリーン <<死の島>>』三元社(2008)なる解説書のあること、御教示をいただいた。97年初刊の新装版として08年8月に出たもので、簡潔なものながら、後半に渡邊の発表ではふれなかった、「死の島」の後世への影響についての記述を含む。感謝を込めて、合せて報告しておきたい。
                                  (続く)
(後半)
例会後半は、参加者全員による福永の長篇『死の島』の共同討議。
第一回の今回は、元版で上巻153頁、全小説版(全集)で第10巻173頁、文庫版で上巻155頁まで(「二八〇日前 春」の前まで)を範囲として意見を交換した。

最初にY氏が、かつて修士論文に『死の島』を論じた経験を踏まえ、研究者の立場から独自の読解の方向を提示。資料としてY氏の配布された、今回の範囲の各断章ごとの簡潔な要約は、断片の集成から成るこの長篇の内容を整理、確認する上で、有益であったと思う。

M(f)さんは昔、この作品を雑誌連載で読み「当時は難しくて良く分りませんでした」と回想。今回読み直して、相見綾子、萌木素子などの「韻を踏んだような」名に興味を惹かれたことを述べ、素子の内面を語る「内部」の章がAからMまであることと、関係があるのでしょうかと問題提起。
これに対してWは、理系の読者にとって---Wは理系の出身である---素子の「素」は容易に「元素」element、「原子」atomを連想させるので、その素子が被爆者として、すなわち原子爆弾atomic bombの被害者として被害者として設定されていることには意味があるだろうと指摘、「内部」の章がAからMまであるのは、A to Mの(atomの)意ではないか、と仮説(?)を提出。

既に福永について一著を出版し『死の島』を扱ったK氏は、改めて、庶民としての西本さん、ゲンちゃんの役割に注目。そこから話は漫画「はだしのゲン」や、西本さんの住む「文化住宅的な名残をとどめた二階建ての洋館」に及び(何だか懐かしい、とM(f)さん)、当時の庶民の暮らしへと発展した。

詳細な書誌研究で知られるM氏は、今回の範囲について雑誌「文芸」連載分(第1回から第8回途中)と71年河出書房より刊行の元版との異同を克明に調査、比較して、その「目次」の対照表、および本文の異同一覧表とを資料として配布した上で、前者については一部に章(節)の順序の入れ換えのあること、また後者については、多くの修正箇所(428箇所の内、一覧には主要な76箇所を掲載)のあることを、具体的に説明された。
良く知られた書き出しの一句「相馬鼎は夢を見た」が初出では「彼は夢を見た」であったことから始めて、例えば初出には雑誌の読者を考慮してか、相馬鼎の心理を説明した部分が、元版では削られていることなど、いつものことながら教えられるところの多い報告であった。労多くして報われることの少ない作業だが、作品の正確な読解は、こうした地道な努力の蓄積の上に初めて成り立つものだと思う。

今回の試みは、前回の報告にもある通り、今年度前半の会の活動停滞の反省の上に立ち、謂わば「とにかくやってみよう」で始められたことだが、第一回の討議を終えてみて、その「各々が発見した疑問点・問題点を列挙するなかから当作品の多様性を掘り起こし、開示する」という目標は、概ね達成できたように思う。参加者数の少なかったことが唯一、残念ではあったが、当面は手探りにせよ、こうした方向で回を重ねることで、各々がそれぞれの理解を深め、この作品の多面的な魅力を発見/再発見することを期待したい。
                              (文責・W)

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