ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

ブリキの楽園コミュの知らない人はこちらから

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トピ、というよりは管理人の自己満足です。

ブリキの楽園に興味がある人はこちらへ。

マンガをそのまま載せるのは少々、というか、かなり無理があるので。

管理人の主観のままに漫画を小説へと変換していきます。

活字が平気ならこちらで少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

コメント(2)

第一話 ある泥棒のおはなし

 ある泥棒の話をしよう。

 とある町の高層ビル群の一つ。強いビル風の吹く屋上の落下防止柵の外。
 そんな処に『彼』は居た。その身に纏った黒いジャケットが風に舞い、翻る。その中途半端に長くなってきた髪も風に遊ばれる。
 しかし、『彼』はそんなことなど全く気にせず、斜に構えたまま眼下を見下ろしていた。瞬く星々の光をかき消すかのように煌めく人工の光りたちが眼下の街を照らす。
 その光の中で、彼の眼に映っているのは歴史ある古い美術館だった。
 その美術館を見据え、微笑いながらこう言った。
「さあ、はじめようか」

 その日のまだ太陽が昇り切らない時間に一枚の紙片が舞い落された。出勤してきた館長がそれを見つけ、文面に目を通すとそのまま気を失った。その顔は、怒りと困惑に満ちていたと他の従業員はトラウマを負ってしまった。
 舞い落された紙片の文面にはたった一言こう書かれていた。

  今宵「子を抱く聖母」の絵をいただきに参ります

 そして、『彼』が見下ろしているまさにその時、美術館の中には余裕で三桁に届く警察官が闊歩していた。蟻の子一匹通さないとでも言うように全員が目を光らせている。
「そろそろやつが現れる頃だ!全員気を引き締めろ!」
 そう声を張り上げ活を入れているのはオズワード警部。五年前、『彼』が現れてからずっとこの警部が担当している。姿すら見たことのない無能っぷりだが、それでもほかの事件ではすべて黒星を挙げている、優れた警察官だ。
「今度こそ捕まえられますかねぇ。警部?」
 呑気な声を出し、ピリピリした空気を醸し出している警部に問いかけたのは、まだ年若いランバーク刑事だ。特徴的なのはその糸目。その目つきのせいでどんな時でも笑っているように見られてしまうのが悩みの種だ。まあ、今は関係ないことだが。そしてこれから先も。
「ぶぁかたれ!この人数で逃げられてどうする!」
 問いに対して怒鳴り声を返す。ランバーク刑事はすっかり縮こまってしまった。
 確かに、この人数でたった一人の泥棒に逃げられてしまっては警察の面目丸つぶれだろう。統率がとれていないのも確かなのだが。

 ビルの屋上から、『彼』はそんな光景を目にしていた。
「…ご苦労様、ケーブ」
 瞬間に彼の姿は消え、しばらくして同じ場所に一枚の絵を持って帰ってきた。プラチナブロンドの優しく微笑む女性と、その腕に抱かれた、生まれたばかりであろう赤子の絵。
 彼はそれをしばらく眺めてから身をひるがえした。

 一人の刑事が異変に気付き、青ざめ、そして叫んだ。
「警部、大変です!絵が…絵が在りません!」
 その刑事が指で示すその先の、絵があった場所には今朝の紙片と全く同室の紙にたった一言。

  いただきました

 と。

 この街には一人の泥棒がいる。
〜翌日〜

「姿無き泥棒、予告どおり犯行に成功…か」
 中年か、老年か。そんな男が新聞の見出しを読み上げ、ちらりと隣に座る男を見た。
「大変ですねぇ。オズワード警部も失敗続きで」
 呑気に返事をしたのは『彼』。そして、先ほど新聞を読み上げた男は、洪。
 二人とも噴水の縁に腰掛け、互いに親しげにしている。情報屋の彼は、七十に届くかという年齢だが、纏っている雰囲気は五十代のそれ。全くつかみどころのない男性だ。
 『彼』の発した言葉が気に食わなかったのか、苦虫を数匹噛み潰したような顔をした。
「お前、そんな他人ごとみたいに」

 泥棒の名前はアース・コードウェル

「だって他人事でしょう?」

 …『彼』である

 にこやかに言葉を返し、近寄って来た野良であろう、黒と灰色の斑模様の猫を膝に乗せて撫で始めた。とても気持ちよさそうに目を閉じている。
「お前なぁ。…そりゃ、ワシは仕事をしてくれりゃあいいんだが、仮にも何でも屋だろう?それなら他にもやり方ってモンが」
 独り言のような口調で小言を言いながら、ごそごそと懐を探り、年季の入ったパイプを取り出した。草を詰め、いざ吸おうと口に咥えた途端、今度はポンポンと服の上を叩いている。
「どうぞ」
 アースは自分のポケットからマッチを取り出し、洪さんに手渡した。
 紙製の、どこかの喫茶店でもらえるようなものだ。手渡されたそれで火を付け、パイプをふかす。
「ところで洪さん」
 目を瞑り、美味そうにパイプをふかしている洪さんに一区切りついたところで顔だけ笑いながら話しかける。
「説教臭いのは年寄りの証拠って知ってま 痛っ」
 突然どこに持っていたのか書類の束をぶつけられた。ぱっと見た限りではどうやら二桁に上りそうだ。
 どうやら(当然だが)洪さんの気に障ってしまったようだ。
「短気だなぁ」
「口が悪いよりマシだっ」
「悪口になるか否かは聞く人次第」
「やかましいっ」
 冷静に切り返してくるアースの言葉がまた気に障る。堂々巡りも甚だしい。
 しばらくその、子供のような口喧嘩が続いてから、洪さん遊びに飽きたアースが書類のことを話題にした。
「何ですか。コレ」
 書類に目を移し、パラパラとめくってみる。一頁目には幸せそうに写っている写真が留められている。
 息をようやく整えた洪さんが答えた。
「次の依頼だよ」

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

ブリキの楽園 更新情報

ブリキの楽園のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング