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ドイツのレストランコミュのバイエルンの居酒屋

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ミュンヘンに17年前から住んでいる熊谷 徹です。

バイエルンの古いレストランについて書いてみました。

熊谷 徹

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ミュンヘンの人口は、東京の十分の一にも満たない。若い人にとっては、静かすぎて退屈にすら感じられるかもしれない。

だがいくら都会っ子でも、ある程度年をとると、渋谷のセンター街や秋葉原の電器街の騒音が、神経にさわる時がやってくる。私にとってミュンヘンは、都会と田舎がちょうど良い塩梅に、ブレンドされた町である。

ミュンヘンの人口は百万人を超えていて、適度に都会のドライさ、匿名性があり、住民の誰もが誰をも知っている、ムラ社会のきゅうくつさはない。有名な美術館、オペラ劇場、歴史的な建築物がある。

日本には及ばないが、まあまあの大きさの本屋もある。吹き替えでなく、原語で映画を観られる映画館がある(ドイツでは、映画館で公開される映画の九割は、ドイツ語に吹き替えられている)ほか、全国でそこそこ名を知られたレストランもある。

また長距離便が発着する国際空港も、電車で四十分の所にあり、東京をはじめ、各国の主要都市にノンストップで行くことができる。

同時に、ミュンヘンはまだ大都会の弊害を持つに至っていない、地方都市である。東京やロンドンとは違って、それほど裕福ではなくても、広さが百平方メートルのアパートを借りることができる。

朝のラッシュ時にも、地下鉄の中で新聞を広げて読むことができ、通勤に一時間もかからない。特に都会人にとってありがたいのは、車や電車に乗ればあっという間に、豊かな自然が息づく、ひなびた山村に行くことができる点だ。

たとえば、ミュンヘンからアルプス地方へ続く高速道路A九十五号線を、南へ一時間走ってみよう。

ペンツベルグという出口で降りて、二キロほど東へ走ると、シェーンミュールという村に着く。ミュンヘンっ子ですら、知る人は少ない場所だ。

はるか彼方にアルプスの白い峰を望む小川のほとりに、古めかしい農家のような建物を見つけたので、中へ入ってみると、そこはバイエルン風の伝統的な居酒屋である。

村と同じシェーンミュールという名前のこの居酒屋は、天井、床、ベンチもすべて古めかしい木製で、素朴な造りである。カトリック教徒が多いバイエルン地方らしく、壁には、十字架にはりつけにされたキリスト様の像が掛かっており、我々をにらんでいる。

天井からぶら下がっているランプも、骨董屋で見られるような年代物である。部屋の隅には、かつてドイツの民家でよく使われた、武骨な石造りのストーブ(カッヘル・オーフェン)。せいぜい三十人程度しか座れないが、農家の居間のような雰囲気で、現代風のバーにはない、家庭的な暖かさを感じさせてくれる。

古文書にシェーンミュール村の名前が最初に現れるのは、一四八0年で、ある修道院の領地だったこの場所には、川に沿って、穀物を挽くための水車小屋や製材所があったと言われる。シェーンミュールとはドイツ語で、「美しい水車」という意味だ。

十八世紀からはこの場所に、旅人に食事や酒を供する旅籠があったが、これが現在の居酒屋の前身である。

今の建物も、建てられてから百年以上経過しており、歴史的保存建築物に指定されている。実際、低い天井や柱は煤や油煙で真っ黒になっており、時代を感じさせる。

夏には、庭にテーブルが出されるので、小鳥の声を聞きながら、食事を楽しむことができる。

ドイツの放送局ZDFは、バイエルン出身の作家オスカー・マリア・グラーフの小説を元にしたテレビドラマを制作した際に、この居酒屋を使って一場面を撮影した。

今ではなかなか見られなくなった、レトロな酒亭の雰囲気が、残っているからであろう。私はいかにもバイエルンという感じの、古めかしい居酒屋が好きだ。

私が行った晩には、オーストリアや南ドイツの伝統的な弦楽器である、ツィターの生演奏があり、田舎の旅籠という雰囲気をさらに盛り上げてくれた。

料理は素朴な地元の食事であり、洗練されたメニューを望む人向きではない。

それでもバイエルン風の塩辛いサラミと生ハム、子豚の丸焼きと生ビールを味わえば、十九世紀の旅人に生まれ変わったような気分になるかもしれない。

デザートのアップフェル・シュトゥルーデル(林檎のパイ)は、居酒屋の手製である。私がここに連れて行ったバイエルンの地元市民たちも、外国人の私に意外な穴場を教えられて、喜んでいたようである。

ミュンヘン周辺の深い森の中や、湖のほとりには、通しか知らないこの種の「隠れ里」がたくさんあり、週末ごとに一ヶ所ずつ探訪しても、すべてを味わい尽くすことはできない。これも、都会と田舎が同居しているミュンヘンの魅力の一つである。

皆さんのご意見、ご感想をお聞かせ下さい。

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熊谷 徹

筆者ホームページ http://www.tkumagai.de

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