トラウマティック銀幕コミュの洲崎パラダイス　赤信号

藤本義一さんが亡くなった。タイガースファン、１１ＰＭで知っていたけど、
作家としては…申し訳ありません、一冊も読んでいません。
せめて、義一さんが師事したという川島雄三作品を。ご冥福をお祈りします。

「洲崎パラダイス　赤信号」

橋のうえの男女。女は男にタバコを買ってやり、所持金はあと６０円のみ。
今晩どうするのか、どこに泊まるのか、男の煮え切らない態度に女はキレる。
男「どこでも行きたい所へ行け」女「行っちゃうわよ」
女は突然駈け出して、やってきたバスに乗り込む。慌てて男もあとに続く。
ふたりがバスを降りたのは洲崎弁天町。橋を渡ると洲崎パラダイスがある。
男「この橋を渡ってしまったら、元のおまえに戻っちまうぞ」
橋の手前に居酒屋千草がある。‘女中さん募集’の張り紙がある。
女、蔦枝はおかみのお徳に雇ってもらい、男、義治の仕事も探してもらうことに。
店の客は赤線パラダイスに繰りだす前に、一杯ひっかけていく男たちだ。
さっそく羽振りの良さそうな常連客の落合にすり寄る蔦枝。面白くない義治。
蔦枝が住みこむことになった部屋に義治も寝る。「明日ここを出よう」
義治は別々に働くのは嫌だと言うが、蔦枝はどうせ働く気なんかないと切りすてる。
翌朝、お徳は義治に勤め先を探してくる。そば屋‘だまされ屋’の出前。
意外なことに義治は乗り気で、そば屋に行ってしまう。蔦枝は急に元気がなくなる。
お徳の夫は四年前に女と出奔。毎朝、弁天さまへのお参りを欠かさない。
居酒屋と貸しボート屋をやりながら、女手ひとつで幼いふたりの息子を育てる。
店に来るのは若い性悪女に入れ込む五人の子持ち男、堅気になりきれずに戻った年増女、
性風俗だと知らずにパラダイスに来た生娘と、彼女を救いだしたいその恋人などなど。
その極めつきがパラダイスで働いていた蔦枝と彼女のせいで倉庫会社をクビになった義治。
蔦枝は千草をやめて金払いのいい落合の元へ。義治は必死で女の行方を探しまわる。
そんな混乱のなか、お徳の夫が四年ぶりに家に帰ってくる。

三橋達也の義治のダメダメぶりがいい。どうせ俺なんかって文句ばかりで意気地なし。
ヒモ男を捨てきれない新珠三千代の蔦枝もこれまたいい。金づる相手に必死のパッチ。
どうせだめなら赤線に戻る手もあるが、なんとかギリギリの線で踏みとどまる。
どんどん堕ちて最悪の結末になると思いきや、さにあらず。ここが川島雄三なんだろなあ。
どこかふっきれたようなラストだから、ふたりはしぶとくたくましく生きていきそう。
可哀そうなのは轟夕起子のお徳。男女のゴタゴタに巻きこまれ、まさかの顛末を迎える。
今回のトラウマはそば屋‘だまされ屋’。めちゃ美味そう。ああ、だまされたい！