トラウマティック銀幕コミュの数に溺れて

イギリス映画でグラコロの二大トラウマ監督はデレク・ジャーマンと
ピーター・グリーナウェイ。
グリーナウェイと言えば、絵本のイラスト画家ケイト・グリーナウェイが思いつくが、
このグリーナウェイも絵画的な映像美を誇る。
初めてこの監督の映画を観たのは、「コックと泥棒、その妻と愛人」。
もうトラウマの宝庫でした。
で、他の作品もチェックせなあかんと思いながら、今まで果たさずにそれがトラウマ。
さてさて、どんな映画なのか…。

「数に溺れて」
サフォーク州の海岸線に住む三人のシシー。
母シシーは若い女と浮気する庭師の夫を入浴中に溺れ死にさせる。
娘シシーは乾ききった夫婦生活に嫌気が差し、海で泳ぐビジネスマンの夫を溺死させる。
孫シシーは妊娠が目的だったので、用済みになった無職の夫をプールで溺死させる。
全ての死をうやむやのまま事故死とさせたのは、
母シシーのトランプ仲間で、検死官のマジェット。
海辺の家に羊の群れを飼い、いつも自作のゲームに夢中。
庭師の葬式でも孫シシーの結婚式でも奇妙なゲームをやる。
彼の息子の少年スマットは数を数えるのに夢中。
特に死んだものを数え、ペンキで数字を書き、
非業の死を遂げたものに対して花火を打ち上げる。
スマットには心を寄せる不思議な少女がいる。
彼女は星を数えながら縄跳び遊びをするが、いつも１００までで終わる。
マジェットは検死報告をごまかすのと引き換えに、三人のシシーに関係を迫る。
母娘にはフラれ、孫には力ずくで迫ったため、
三人のシシーは償いをさせようとマジェットの元に。
片思いの少女の死を知らされたスマットは、花火を上げながら形見の縄で首を括り、
三人のシシーとマジェットは小さなボートで海へと漕ぎ出す。

縄跳びをする少女の大きな影が、家の壁で踊る。
庭師の家はリンゴなどの果物が散乱し、様々な虫が蠢く。
ビジネスマンの船のような家。羊達が群れる干潟。
海岸線をゼッケンをつけて走る年齢がバラバラのマラソン男性集団。
不思議なゲームに不思議なシーン。
マイケル・ナイマンの音楽は秀逸。
この映画を支配しているのは数字。星の数、死んだものの数、羊の数、ゼッケン…。
特に奇妙なのは、三人のシシーが気を落ち着かせたい時に唱えるのが３の倍数。
三人ともアホにならないか、心配したのが今回一番のトラウマティック。

今日、思いがけない訃報にショックを受けている。
緒形拳さん主演で最大のトラウマティック映画は「ＭＩＳＨＩＭＡ」でした。
今回のグリーナウェイものでは「枕草子」にも出演されているらしい。
是非とも、いや絶対に観ます。合掌。