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1ページのメッセージコミュの見上げた空(作・蓮華

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 ふと見上げた空。
 雲もない、ただ青が広がるだけの空。
 どこまでも続いている、青い空。
 ねぇ、あなたもこの空を見ているの…?


彼と出会ったのは1年前。
丘の上で、私が空を見上げていた時だった。

「そんなに空ばっかり見ていると、首が痛くなるよ」

空を見上げていた私の後ろから声を掛けてきたのが彼だった。
一度彼のほうを振り向いたが、私は無視することに決めた。もう数え切れないほど空を見上げていた私の首は、5分、10分見上げていても痛くないくらいに筋肉がついていた。

「あら、無視ですか。まぁいいけど」

そう言うなり彼は、私の隣に腰を下ろした。そして、本を読み出した。――と思っていたら。

「ねぇ、どうして空ばかり見ているの?」

また話しかけてきた。
いい加減ウザくなった私は、この場から立ち去ることに決めた。

「ちょっと待って!少し話そうよ」

立ち去ろうとした私の腕をつかんだ彼は、強引に自分の隣に座らせた。腕はつかんだまま。
これにはさすがにイラついて、言い返した。

「何するんですか。離して下さい」

見た感じ、私よりも年上に見えたので敬語を使う。

「やっと口利いてくれた」

そう言うと彼は―笑った。それはもう嬉しそうに。
その顔に驚いた私は、何も言えなくなってしまった。そして仕方ないから彼と話を聞くことに決めた。

それから数十分、他愛もない話を聞いた。『話した』のではなく、話を『聞いた』。もちろん、質問にはちゃんと答えたけれど、私から質問することはなかった。
もう二度と会うことのない人だから、と何も聞かなかった。

が。
それから毎日、彼はこの丘に来るようになった。
そうして、他愛もない話をして帰っていく。(時々私について質問もするが)
1週間も続くと、それが当たり前のようになってしまって、いつの間にか私は空を見上げることがなくなっていた。


そしてある日、私は空を見上げていた理由を彼に話した。

『大好きだった父が亡くなったから』だと。

小さい頃、父と散歩に出るとこの丘に登って、日が暮れるまで空を見ていたこと。
人が死んだら、空に行くのだと父から聞いたこと。
だから、空を見上げていたのだと。

気づいたらすべてを彼に話していた。
私はすっかり、彼に心を許してしまっていた。

それからも彼はこの丘に来て、私も彼と話すのが当たり前になっていた。
そんな日々に終わりが来るなんて思ってもいなかった。

突然彼は、私に言った。

「明日からもうココに来れない」

と。
まるで時間が止まってしまったようだった。

「どうして?どこか遠くにいってしまうの?」

気づいたら彼に問いかけていた。

「…うん」
「もう、会えないの?」
「……たぶんね」
「…私も連れて行って」
「それはダメだ!」

このとき私は、初めて彼が声を荒げるのを聞いた。

「君はまだ若い。だから、一緒には連れて行けない」

意味がわからなかった。
それを尋ねようとした時、彼は突然つぶやいた。

「あぁ、もう時間だ」

と。

「何が?時間て、いつもはもっと一緒にいれるのに…」
「ごめん、もう帰らなくちゃ。その前に一つだけ約束して」
「なぁに?」

涙が出てきた。けれど、それをぬぐおうとは思わなかった。そして気づいた。

―そういえば私、父さんが死んでから泣いていない―

「何時間も、空を見上げるのはやめてね。ちゃんと前見て、歩くんだよ」

またしても意味がわからなかった。けれど、時間がないという彼のために私は頷いた。

「よかった…。それじゃ、もう行くね。君と話が出来て楽しかったよ」
「わ、私も…楽しかった…」
「それじゃあ、ホントにもう行かなくちゃ」
「あ…待って。名前…」
「名前…?」

そう、私は彼の名前を知らなかったのだ。もちろん、彼も私の名前を知らない。
出会ってから一度も、お互い名乗ることがなかったのだから。

少し迷って、彼は答えた。
それは、私がよく知っている人物の名前だった。

「え…?」
「じゃあね…真美…」

彼は、知るはずのない私の名前を呼んで――消えた。

「お父さん…?」

彼の名前―それは、私が大好きだった父の名前と同じだった。
そして間違いなく、あれは父だったのだ。

どうやら父は、空ばかり見ている私を心配してこちらの世界に戻ってきたらしい。
しかも、死んだ年齢よりも若返って。
気づいた私は、父らしくて笑った。そして、思いっきり泣いた。


あれから1年。
私は父との約束を守って、空を見上げることが少なくなった。今ではちゃんと、前を見て歩くほうが多くなった。
けれど、いいことがあった日や悲しいことがあった日は、丘に登って空を見上げている。

父に、私は元気だということを伝えるために。

コメント(3)

あとがき

のようなものです、はい(笑


すっごく長くなってしまいました(汗
予定だともっと短くなるはずでした。しかし文章がなかなかまとまらず…結局こんなに長い文章に;;

文章を短くまとめられる技術を身につけたいものです。
>赤うさぎ
きっと、とても複雑な気分だと思いますよ(笑
だって、若い頃の父ですよ?あまり会いたいとは思いませんよね(爆

長さ、調度いいですか?それならよかったです^^
あまり長すぎるのも、読むとき大変だと思ったので少し心配でした。
よかったぁ…

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