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語部夢想〜語部夜行別館〜コミュの雨音ショータイム

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お久しぶりです。毎度おなじみ馬鹿話をどうぞ。



++++++++++




《人は皆、与えられた役割を生きている。それは、雨の中、傘を差すのと同じくらい当たり前のことだ。》
 ――R.D



 雨が降っている。
 バケツをひっくり返したような雨が。

 雨が降っている。
 天気予報にない突然の雨が。
 
 煙草屋の軒先に雨宿りする三人。
 ジャージの女と、トレンチコートの男と、神父服の少年。
 葦谷湊、神宮寺一誠、神田聖。

 語部館に行く途中、雨に降られ思わぬ足止めをくっていた。

「ここからなら全力で走れば……やっぱずぶ濡れか」

 目的地まで徒歩五分。
 然れども大粒で横殴りの雨はあたると痛いほどの勢いで、視界を白く霞ませている。

「どうせ通り雨だ、じきに止むだろう」

 神宮寺はタバコをくわえ、湊と聖は煙草屋の隣の駄菓子屋で買ったココアシガレット(煙草っぽい菓子)をくわえた。




 一時間後、降り続ける雨の中、傘を差した圭一が煙草屋の前を通り過ぎた。
 
『お先に〜』と爽やかに笑いながら手を振って。





「……どうする?」

 ジト目で圭一を見送りながら相談する三人。

 提案その1
 向かいのコンビニで傘を買う。
 ただし、三人の所持金合わせても、子供サイズの小さい傘しか買えない。

 提案その2
 向かいのコンビニでゴミ袋を買って、合羽代わりに被って語部館までダッシュ。
 ただし、他人に見られると物凄く恥ずかしい。

 提案その3
 もう面倒なのでこのまま語部館へダッシュ。
 
「それって、今まで雨宿りしてた意味ないんじゃ……?」
「でも、今日はこのまま雨止みそうもないし」
「ちょっと待て、いっその事あれを買うのはどうだ?」





 5分後、語部館ちょっと手前。

「やっぱり悪い事したかなぁ……」

 溜息をつく圭一。
 先ほど煙草屋で雨宿りする三人を華麗にスル―してしまった事に、少しばかり罪悪感。
 自分の傘に詰めればもう一人くらい入ったのにと。

「……でもなぁ」

 自分の傘にはもう一人しか入らないのだ。
 残った二人がどうでるかと思うと、こめかみに冷や汗が伝う。

「神宮寺さんは、傘に入れなかったくらいで怒ったりはしないだろうけど」

 例えば湊を傘に入れる→残った聖に後で報復される。
 例えば聖を傘に入れる→残った湊に後で復讐される。
 例えば神宮寺を傘に入れる→肩幅広くて入りきれないので二人とも肩がずぶ濡れになった上、湊と聖がタッグを組んで……

「怖ッ!……いやはや世の中には沈黙でしか答えられない問いがあるものなのですヨ」
 
 そんな事を呟いてるうちに、語部館の前に着いた。

「あ、夜子さんに傘を三本借りて持っていけば丸く収まるんじゃ……」

 名案を思い付きかけたその瞬間。

“ズバシャッ”

 何かが圭一の背後から頭上を跳んで、目の前に着地した。

「ヒャッハーーーーー!」 

 イイ笑顔の湊だった。
 ずぶ濡れで、その両手に一丁ずつ拳銃を持っていた。
 
「え?ちょ……ッ!?」
「往生せいやあああああああああっ!」

 湊は圭一に銃口を向け、引き金を引いた。

“バシュッ!ブシュッ!ビシャッ!!”

「ギャー―……って冷ああっ!?」

 二丁拳銃は水鉄砲だった。
 容赦のない乱射に圭一の服がみるみる濡れていく。 

「ちょっと!何するんですか!?」
「――悔い改めよ」

 重い声に振り返ると、雨の中で聖が聖書片手に立っていた。
 ゆっくりと開かれた聖書は頁がくりぬかれていて、そこに拳銃が収まっている。
 それを手に取って聖は銃口を圭一に額に向けた。

「トイレは済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする準備はOK?」
「聖君話せばわか……ギャー!」

 圭一の額に水流が勢いよくヒットした。

「やれやれ、悪い奴ほど生き残る……」
「神宮寺さーーん!これ何事ですかーーー!?」

 神宮寺は水の滴るボルサリーノの下でニヤリと笑みを浮かべると、自分が持ってるのと同じ型の銃を圭一に投げ渡した。

「やられたらやり返せって事ですか」
「いいや、やられる前にやれ……だ」

 神宮寺は流れるような動きで、銃(水鉄砲)を抜き、圭一の心臓(のあたり)を打ち抜いた。
 そうこうしてる間も、湊や聖がばしばし撃ちまくっているので、圭一はすっかりずぶ濡れになっていた。

「ふっ……クククッ……わかりました。よぅくわかりましたよ」

 かくりとうなだれてブツブツ呟いていた圭一は、傘を閉じて語部館の門柱に立て掛けた。

「やってやんよ……やってやんよぉぉぉぉーーーーーーー!」

 ふっきれた圭一は渡された水鉄砲を乱射した。


「さあ、お前の罪を数えろ!」
「タナトスの声を聞け」
「落ちろ蚊トンボ!」
「汚物は消毒だーーーーー!」 


 提案その4
 駄菓子屋でおもちゃの水鉄砲を買って、みんなでずぶ濡れになる。


 三人の所持金で、傘は小さいのが一本しか買えないけど、水鉄砲は結構な数が買えた。
 駄菓子屋店主の老婦人は神父服の聖を見て、そういう遊びかと思ってスパイごっこ用の『聖書型銃ケース』をおまけにくれた。

 そして降りしきる雨の中、いい年した大人と、いずれ大人になるはずの少年達は、げらげら笑いながら水鉄砲で撃ち合いを続けた。





 一時間後、語部館玄関ホール。

「……馬鹿なの?」
「世界でトップクラスの馬鹿なの?」
「たんぽぽの綿毛が『自分、まだまだっス!』って猛省するくらい頭が軽いの?」

 彪は全身びしょ濡れの四人にタオルを渡しながら冷ややかに言った。

「……返す言葉もありません」
「えー?結構楽しかったよ」

 湊は空気を読むことなく、ジャージを絞った。

「神宮寺さん、貴方がついていながら何やってるんですか」

 夜子が着替えを配りながら呆れたように言う。

「いや、面目ない。ただ……」
「ただ?」
「自由というものを体感してみたくなったのさ」




《雨の中、傘を差さず踊る人間がいてもいい。自由とは、そういうことだ。》

 ――ロジャー・スミス



【終】

コメント(3)

語部館で、行動力と攻撃性(物理的に)が高い人員を一か所に集めるとこうなるという話でした。
神宮寺さん、聖くん、圭一さんごめんなさい。

ジョン・ウーでブラックラグーンな話にするつもりが、こんな事になりました。

あと、土砂降りの雨が降ると、いつも末尾の格言が脳裏に浮かびます。
きっと聖はトリガーのガイアメモリーを使ったんだろうなぁ、などと思ったり。



あと読んでこんなお馬鹿なのを思いついてしまいました。


【おまけ】


聖「さーて、土砂降りにも関わらず我々を見捨てた圭一さんには罰を受けてもらおうか。」


圭一「ば、罰って・・・・何をするんスか?」


聖「ずばり三択です。
1.用水路の様子を見に行く
2.屋根に登って雨漏りしてないか見てくる
3.屋根上の雪かきをする
さあ、どれがいい!?」


圭一「ちょっ!それ全部死亡フラグ!」

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