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語部夢想〜語部夜行別館〜コミュの語部式・夏休み自由研究

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――八月下旬。

 その日の語部館は、異様な緊迫感と静寂に支配されていた。

 飴色に磨かれた机にノートや教科書、筆記用具、辞書に定規にその他諸々の学用品が所狭しと並べられ。
 カーテンを揺らす涼しげな風に、カリカリと引っかくような微かな音が混じる。

 そう、時は八月下旬。
 夏休みも終盤。

 現役高校生の若き語部達が夏休みの宿題にラストスパートをかけていた。
 涼しくて静かな語部館なら、自宅や図書館よりも宿題が捗るはずだった。

「分数の割り算って、どうやるんだっけ?」
「割る方を逆数にして掛けるんですよ」

 首を傾げたのは社会人の湊で、丁寧に教えているのは高校生の幽寺だった。

「逆数って?」
「分母と分子を……上と下を逆にするんですよ」

 湊はみんなの宿題を手伝うつもりだった。
 だけどさっぱりわからなかった。

「マイナスにマイナスを『足す』とか意味がわかんねぇぇぇぇっ」

 高校生の宿題なのに、中学生レベルで詰まっていた。

「え?何で4/12が1/3になるの!?」
「通分するんですよ」
「つーぶん??」

 読書感想文を書いていた神田は、頭を抱えて悶える湊を生暖かく見守っていたが、夜子は容赦なく湊をつまみだした。


+++++++++++++++


「あ、湊姉ちゃん」

 玄関で鉢合わせした美珠は妙な箱を抱えていた。

「おいっす、美珠ちゃん。今日の談話室は修羅場だから近寄らない方がいいぞ」

 そう言って事情を簡単に(宿題の邪魔だからつまみ出された事は省いて)説明する。

「そういや、美珠ちゃんは夏休みの宿題終わった?」
「ほとんど終わったよ。あとは自由研究だけ」
「昆虫採集や、ヤク○トの空容器で怪獣作るとかなら手伝えるよ」

 神威 彪の英語の教科書をチラ見して、眩暈を起こしかけてなんて言えない。
 湊だってほんの数年前まで、彼らと同じ高校生だったのに、内容が全然わからなかったなんて口が裂けても言えない。

「本当!じゃあ、これ手伝ってくれる?」

 笑顔で美珠が差し出した箱には【学剣の錬金術・八月号付録《三娘子蕎麦栽培セット》】とパステル調の色彩で描いてあった。

「学研?」
「ううん学剣」
「錬金術?等価交換的なアレ?」
「フリーマーケットで買ったの」
「ちゃんとお金払ったんならいいか」

 ツッコミ所が色々あったが、湊は深くも重くも考えなかった。

「サンジョウシソバとか初めて聞くんだけど。韃靼蕎麦みたいなもん?」
「特殊な品種のお蕎麦でね。普通のより凄く早く育つんだって」
「そりゃすげぇや」

 これで蕎麦を(植えるところから)手作りして、試食するところまでをレポートにまとめるのだという。

「それじゃいってみよー」
「やってみよー」

コメント(10)



 箱の中には、大小の袋が2つと取り扱い説明書が入っていた。

 取説によると、このセットの他に蕎麦を植えるプランターと園芸用の土。
 それと霧吹きが必要らしい。

 指先ほどの小さな袋Aには、茶色で三角形の粒々したモノが詰まっている。
 これが三娘子蕎麦の種だろう。
 もう一つの袋Bには……

「プラモデル?」

 プラスチックの枠にいくつもの部品。

「珍種の蕎麦の栽培観察セットじゃなかったの?」
「えっとね『1.袋Bを開けて、中身を組み立てましょうだって』さ」

 取説を読み上げる美珠に従い、湊は部品を爪切りでぱちんぱちんと切り放して組み立てる。
 幸いにもガンプラと同じく、接着剤のいらないスナップフィット・キットで初心者にも簡単だったが、出来上がったモノはガンプラとは似ても似つかないモノだった。

「……農夫?」

 簡素な服を着て笠を被った男と、牛。
 他にも、鍬や鎌や脱穀機、引き臼など細々とした農具が並ぶ。

「すごく、農家プラモです」

 蕎麦の傍に飾りでもするのだろうかと思ったら。

「次はね……『2.土を入れたプランターに農夫と牛を置きましょう』だって」
「ふむふむ」

 言われた通りにプランターの上に農夫プラモと牛プラモを置く。

「それから『3.霧吹きで水をかけましょう』」
「えりゃっ!」

 シュシュっと霧吹きを吹き付けると、なんと農夫と牛はカタカタと動き出した。

「こいつ……動くぞ」
「プランターを……耕してる」

 牛には鋤がついていて、農夫の誘導でプランターはみるみる耕されていく。
 美珠が袋Aを農夫に渡すと、農夫は種まきを始めた。

 種まきを終えると、農夫はプランターの縁で踊り始めた。

 両脚を開いて踏ん張り、両手を胸の前でぴったりと合わせて、うーんと上下する。
 その下で、牛も同じ動作を繰り返していた。

「湊姉ちゃん、これ踊りじゃない。お祈りだ」
「へ?」

 そう言うと美珠は農夫と牛を真似て両手を合わせた。

「ほら、湊姉ちゃんも」
「私も!?」

 状況についていけない湊が思わず農夫と牛を見ると、彼らは『そうだ。お前もやるんだ』と言わんばかりにこくこくと頷いた。
 嫌だと言える空気はなかった。

 そんなわけで湊も、美珠の隣で両脚を踏ん張り、両手を合わせ、全身のバネを使って上下を繰り返す。
 繰り返すうちにだんだん楽しくなってきた。脳内麻薬でも分泌されたのかもしれない。

 気が付くと、隣でトミノがケタケタ笑いながらお祈りをしていた。
 その横でチロがほっそりした体を揺らしていた。
 ビンガは種をほじくろうとして、農夫に鍬で殴られた。
 偶然通りかかった御堂は、それらを見なかった事にして、そのまま通り過ぎてくれた。

 そうやって、どれほどお祈りをしていたのか。
 変化は唐突に訪れた。

 プランターの黒い土から、緑色の小さな芽がぴょこっと飛び出した。
 次の瞬間、芽は次々と生えてプランター全体を覆い、爆ぜるような勢いで成長した。

 三娘子蕎麦は、あっけにとられる湊達の目の前でわさわさと伸び、白い花を咲かせて実を結んだ。

 この間わずか30秒。
 蕎麦は成長が早く、植えて75日で収穫ができるといわれているが。

「珍しい品種ってレベルじゃねーぞ」

 農夫はハイスピードで蕎麦を刈り、干したと思ったら木槌で叩いて実を落とし、脱穀して、唐箕で殻を飛ばした。
 牛はぐるぐる回って臼を引き、脱穀した蕎麦を粉にした。

 気が付くと、カップ2杯半ほどの蕎麦粉が小山を作り、力尽きた農夫と牛はそれに埋もれるようにして動きを止めていた。

 謎の感動に打たれた湊と美珠は、この蕎麦粉で蕎麦を打つのは明日に回して、農夫と牛を綺麗に洗って箱にしまった。



 翌日、語部館の厨房を借りて、三娘子蕎麦粉を調理する事にした。
 ついでにエプロンと三角巾も借りたのだが。

「……うわぁ」
「なぜこうなったし」

 美珠が黒猫模様のかわいい子供用エプロンだったのに対して、湊のは野菜直売所のおばちゃん的な白い割烹着だった。
 全然似合ってなかった。

「なんていうのかな、こういうの」
「違和感が来い?」

 ぶちぶち言いながら準備をすすめる。

 本日のメニューはザル蕎麦。
 かの《三娘子蕎麦栽培セット》取り扱い説明書には、三娘子蕎麦を使った焼餅のレシピがついていた。
 しかし、収穫したての新蕎麦の風味を最大限に楽しむには、ザル蕎麦が一番。
 そしてここまできたら手打ちだろ手打ち!……という事になった。

 さすがは語部館の厨房。漆塗りのこね鉢に、麺棒、駒板に蕎麦切り包丁まで蕎麦打ちの道具がばっちり揃っていた。

 蕎麦粉100パーセントで作る十割蕎麦は難易度が高いので、つなぎに小麦粉を二割ほど入れた二八蕎麦で挑戦。

 蕎麦粉と小麦粉を計ってふるってをこね鉢に入れる。
 美珠が水を糸のように細く垂らし、湊が指を細かく動かして混ぜていく。

「すぐにこねちゃ駄目だよ」
「うどんと、やり方が違うんだな」

 蕎麦粉が全体的にしっとりとしてきたら、拳でぎゅぎゅっと固めていく。

 一塊になったら、蕎麦粉を包み込むように折り畳みながら手のひらでこねる。

「粘土みたいというにはボソボソしてるよな」

 塊につやが出てきたら、折り畳んだ部分を一箇所にまとめて、そこを頂点に三角錐を作る。

 その三角錐を逆さにしてぎゅっと押しつぶして、平たい塊になったところで打ち粉をふって麺棒で伸ばす。

 伸ばす伸ばす。

 薄く、四角くなるように伸ばす。

 厚さ2?くらいになったら、打ち粉を振って二つに折り、さらに折る。

 駒板をあてて、蕎麦を切る。

「思ったよりむずい……うぁー、折り目で切れる。なんで?」
「駒板に力入れ過ぎてるんだよ」

 切った蕎麦をたっぷりのお湯で茹でる。

「差し水はしないの?」
「しないみたい」

 茹で上がったら、水洗いしてザルに盛り、お好みでもみ海苔を散らして出来上がり☆

「完成ー!」
「やったー!」

 そして……

「誰に食べさせようか」
「楽しみだねっ」


【《三娘子蕎麦栽培セット》取り扱い説明書】
 注意1:食べるとロバになります。
 注意2:効力は1日なので、ロバを売り飛ばす時はお早めに。

 とことんデタラメな栽培セットだった。


「彪姉ちゃん達は宿題の真っ最中だし」
「夜子さんや黒崎さんには効かなそうだし」

 さてどうしよう。
 このままではせっかくの蕎麦が伸びると悩んだその時。

「ちわ〜っす。圭一っす」



 語部館を訪れた圭一を、湊と美珠はとてもイイ笑顔で出迎えた。

「いらっしゃい圭一」
「ボク達二人で手打ち蕎麦作ったんだ。よかったら食べて」

 きらきらした笑顔で蕎麦を差し出された圭一は、ピキリと顔を引き攣らせた。

「……はじめてだから、おいしくないかもしれないけど。一生懸命作ったんだよ」
「乙女の手料理を、まさか食えないとは言わないよな」
「美珠ちゃんはともかく湊さんが乙女というのは……」
「何か言ったか?」
「いえあのすんません、自分。蕎麦アレルギーなんですっ!」
「えっ!?」

 蕎麦アレルギーは人によって、命にかかわる重篤な症状を引き起こす。

「そっかぁ……仕方ないね」
「ごめんね、せっかく作ってもらったのに」

 さすがの湊も、圭一がロバになって慌てる所が見たいと思っても。
 圭一が蕎麦アレルギーで苦悶する所を見たいとは思わなかった。

「湊姉ちゃんコレどうしよう?」
「ビンガに食わせるか?食べたら人がロバになる蕎麦を、動物が食べたらどうなるんだろうな」
「いいね。ソレ」

 ひそひそと人体実験を動物実験に移行する計画を立てる二人。

「それでですね」

 圭一がおずおずと菓子折りを差し出した。
 一口サイズの可愛らしい、蕎麦饅頭だった。

「取材先でもらったんだけど、俺はアレルギーで食べられないから」

 代わりに食べてほしいと。

「いいの?」
「いいですよ。食べられないからって捨てるわけにはいかないし」
「それじゃ、遠慮なく」

 湊はいただきますと、一つ摘まんで口に放り込む。

「あっ、湊姉ちゃん待っ……」
「うまー。甘さ控えめなのがいい感じ……ウグッ!?」

 突然、膝を折って苦しみ出す湊。

「――計画通り」

 ニヤリと黒く笑う圭一。
 じりじりと後ずさる美珠。

「ボク……圭一兄ちゃんが蕎麦アレルギーなんて聞いた事ない」

 去年、仕事が忙しくて『年越し蕎麦』を食べられなかったとぼやいていたのは聞いたけれど。

「ええ、嘘ですよ。蕎麦アレルギーなんてね」

 昨日、圭一は語部館を訪れていた。
 そこで、物陰で二人が《三娘子蕎麦栽培セット》で蕎麦を育てて製粉する一部始終を目撃した。
 だから、あの蕎麦を食べた人間がどうなるかも知っていた。

 そしてこういう時、そんなトホホな目に遭うのは大抵自分だと。

「君たちが帰る時、綺麗に後片付けしていったのはよかったけど、あの蕎麦粉を厨房において帰ったのはうかつだったね」
「圭一兄ちゃん……まさかっ!?」

 二人が帰った後、圭一は厨房に入りこんだ。

「そう、この蕎麦饅頭は俺が作ったものだよ、三娘子蕎麦でね!」
「ぷふっ!?」

 蕎麦粉をこねて丸めて饅頭を作るエプロン圭一を想像した美珠はフイた。

「ううっ……圭一……よくも……」
「くっくっくっ……湊さん、騙される方が悪いんですよ」
「ごめん、湊姉ちゃん。返す言葉が見つからないよ!」

 がくがくと大きく痙攣する手足に変化が訪れる。
 灰色の獣毛に覆われ、太く、長く。
 蹲った身体が膨れ上がり、割烹着が内側から爆ぜた。

 圭一はじつにイイ笑顔を浮かべてカメラを構える。
 ロバになる一部始終を写真に残すつもりのようだ。

「湊姉ちゃーーーーーーーん!」
「ガオォーーーーーーーーーーッ!!」

 返事はロバのいななきではなく、肉食獣の咆哮だった。

 太い手足に、鋭い鉤爪。
 爛々と燃える眼。
 名匠が鍛えた双剣を思わせる、両の牙。
 逞しい胴は2mを越え、しなやかな尾がそれに続く。
 その全身を覆う銀灰の毛皮に、縦縞の斑。

「ロバ、じゃない」
「虎……いやこれは」

 虎は虎でもサーベルタイガーだった。

「あ、『注意3:効果には若干の個人差があります』って、取説の隅に小さく書いてあったよ」
「ロバと剣牙虎って……個人差って、レベルじゃないだろ!?」

「グルルルルルルルル……」
「み……湊姉ちゃん?」
「がぅ」

 恐る恐る呼びかけると、湊虎は返事するように小さく鳴いて、大きな頭を美珠にすりつけた。

「な、懐いてる?」
「すごく……猫っぽいです」

 美珠が湊虎の耳の後ろを掻いたり、顎の下をくすぐると湊虎は目を細めて喉を鳴らした。

「なーんだ。全然大人しいんじゃないか」

 安心した圭一も、湊虎の鼻先を撫でた。

“ガブッ”

 噛まれた。

「ギャーーーース!!」
「湊姉ちゃーーん!『ぺっ』して!『ぺっ』って!!」
「グルアァァァァァァァァァァァァッ!!」



 パキッと小さな音を立てて、彪のシャープペンシルの芯が折れた。
 これで五度目だ。

「……ぅるっさいなー。もぉ」

 静かで涼しい語部館。
 ここでなら、夏休みの宿題がはかどるはずだった。

 なのに、ドア一枚隔てた向こうでは、猛獣の咆哮だの、悲鳴だのがひっきりなしに響いてくる。
 あんまりうるさいので、ドアを細く開けて向こう側を覗いてみた。

「ガーーーーーーーーーッ!!」
「食べないでーーーーーっ!!」
「湊姉ちゃん、人肉は癖になるから駄目ーーーーーー!!」

 そこはちょっとした阿鼻叫喚の地獄だった。

 でかくて灰色っぽい虎が圭一の襟首くわえて振り回し、前足で引っ叩き、ぱっと離して逃がしたと思うとすぐにまた捕まえる。
 つまり、大抵の猫がネズミに対して行う事を繰り返していた。

 傍らで美珠が虎を止めようとしているが、どうにもうまくいかずオロオロしている。
 その肩をぽんと叩いたのは黒崎だった。

 黒崎は美珠に微笑みかけると、シルクハットから細長い棒と、小さな注射器を2つ取り出して美珠に渡した。
 小さな注射器には赤い房飾りがついていた。
 吹き矢だった。

 美珠は大きく頷くと、吹き矢をふいて虎を撃った。
 命中した。

「ぐるるるぅ……」

 よほど強力な麻酔薬が入っていたのか、虎はすぐにドスンと倒れて眠り込んだ。
 丁度、マウントポジションをとられていた圭一はそのまま下敷きになった。

「ぐええええええっ!重っ!死ぬ!ギブギブギブ!涅槃が見えるっ!!」

 バンバンと床を激しくタップする圭一にも吹き矢を一発かますのを見届けて、彪はドアを閉めた。

 そうすると、さっきまでの騒ぎが嘘のように静かになった。

 外でツクツクホウシが鳴いているのが聞こえた。
 それにコオロギの声が重なっている。

 気が付くと、夏の終わりと秋の始まりはすぐそこまで近づいていた。


【終】

【後書き】
湊の草紙を書こうとしたら、話は脳内でできてるはずなのに、筆がまったく進まず、気分転換に軽く馬鹿な話を書こうとしたら、コレができあがりました。

あのはた迷惑な蕎麦粉の元ネタは中国の志怪『板橋三娘子』からです。
気になる方は『三娘子』でググってみるのをおすすめします。
【おまけ】

《そのいち》

美珠の夏休み自由研究『三娘子蕎麦栽培観察レポート』は新学期に提出されたが、『レポート形式で書かれた創作小説』として受け入れられ、奇想天外な作風は高評価を得たという。

美珠:本当にあった事なのに……
湊:え?そうなの?
美珠:ええっ!憶えてないの!?
湊:美珠ちゃんの宿題手伝うって言って、気が付いたらそれから三日経ってたんだけど
黒崎:麻酔の量間違えたかな(ぼそっ)


++++++++++
幽寺君は、7月中に宿題を全て終わらせてそう。
夜子さんは、「妖怪に試験も勉強もない」といいつつ、世話焼きなクラス委員が郵送した宿題をやっていたら和みます。私が。


《そのに》

湊虎が暴虐を欲しい儘にしている一方その頃……

語部館の厨房で、東南アジア系の青年がザル蕎麦をすすっていた。

青年は痩せ型で浅黒い肌に、艶のある黒髪はこめかみのあたりに黄色いメッシュが入っている。
目は丸くきょときょとと忙しなく動いていた。

「チロの兄貴も喰うデスか。結構イケるデスよ」

青年はぎこちない片言でそう言うと、蕎麦を一本つまんで白いオコジョに勧める。

「ボク、これでもカムイだから効かないと思うよ」

オコジョは両の前足で蕎麦を持って、ちるちるもぐもぐしながら首を傾げた。

「せっかクの新蕎麦、食べナきゃ損損」
「それにしても湊さんが見たら、びっくりするだろうなぁ」
「オレサマがいけめんだかラ?」
「ううん。『ビンガが食べ物をわけるなんて嘘だーーーーーっ!!』って」

++++++++++
他の語部のみなさんが動物(もしくは人間)になったらどんな感じだろうか思うとドキドキします。
ふ い たww
 
読んで思いついたので、【おまけ】聖バージョンを。
 
 
 
≪そのさん≫
 
 
 
厨房でビンガとチロが蕎麦をすすっていると、聖が厨房に入ってきた。
・・・・・・何故か上半身は裸族で。
 
 
聖「脳ミソ使ってハラ減った。なんか食い物ない?」
 
 
チロ「・・・・・・その前に聖、なんで上半身裸なの?」
 
 
聖「ああ、英語やってたらさっぱりわかんなくてイライラしてたら暑くなって脱いだ。」
 
 
そう、聖は英語が大の苦手なのだ!テストでは毎回低空飛行である。
 
 
聖「お、蕎麦あるじゃん。ビンガ、俺が食う分もある?」
 
 
ビンガ「まだアルけど・・・・って、なンでオレサマがビンガだってわかったンだ?」
 
 
聖「ああ、勘で。」
 
 
人の姿をしているのにビンガとわかるとは、恐るべし聖の勘。
ここまでくると、野生の勘とでもいうべきか。
 
驚くビンガをよそに、聖が蕎麦を口に運ぶ。
 
 
チロ「聖、待って!」
 
 
聖「ん?」
 
 
チロが止めるも遅く、聖はすでに蕎麦をのみ込んでいた。
 
 
聖「どったの、チロさん?」
 
 
チロ「聖、なんともない?」
 
 
聖「は?なに言ってんの?」
 
 
三娘子蕎麦を食べたのだが、聖の体に異変は見られなかった。
 
 
聖「まさかこの蕎麦、カビてたとか?」
 
 
チロ「いや、そうじゃなくて・・・・・・」
 
 
チロは聖に取説を見せる。
 
 
聖「へ?食べたらロバになる?」
 
 
チロ「個人差はあるみたいだけどね。ビンガは人間になってるし。」
 
 
聖「ふーん。ま、俺には影響ないんじゃね?個人差があるわけだし。」
 
 
チロ「そうかなぁ・・・・」
 
 
首を傾げるチロをよそに、聖は蕎麦を食べて厨房から出ていった。
本当に聖には効果は出なかったのか。疑問に思うチロとビンガは聖が厨房から出ていく時、あることに気づいた。
厨房から出ていく聖の背中に、来た時にはなかった見事な青龍の刺青ができていたことに。どうやら聖の場合はコレらしい。
 
 
ビンガ「・・・・・・・・ジャパニーズ・マフィア?」
 
 
チロ「というか極道だね。」
 
 
 
三娘子蕎麦の効果 聖の場合
 
不良→極道
 
 
 
聖「・・・・・・・・・・いや、俺不良じゃないから。一般人だから。」
らはぶさん>裸族上等げふんげふん。予想外のクラスチェンジGJです。ヤのつく自由業が駄目なら、龍座の聖闘士もアリですよ。

キートさん>圭一さんお疲れ様っす! 構想段階では、語部のみなさん全員動物化してたとか、美珠ちゃんは子猫(黒)で圭一さんはチワワだったとか、さすがにキャラ侵害甚だしいのでやめにしたとか内緒ですよ。
吹いたww

圭一君が立場逆転かと思いきややはり最後までオチ要員なのですね…w
そこが愛されキャラなのだけどっぴかぴか(新しい)

私も便乗しておまけでも。

***********************

「妖怪に試験も勉強もない」

「うん、でもうちのガッコにはあるし」

目の前に置かれた宿題の山を見て夜子はささやかな抵抗を試みた。
彪はシャーペンの芯を補充しつつにこりと微笑む。

「あーしと一緒に学生生活たのしもーね♪」

あれから。
夜子は身体の成長に伴い、前の学校をやめる事にした。

今の外見が人目を引く事も考慮して引きこもり生活を選ぶつもりだったのだが
一緒の学校に通おう!と駄々をこねる彪に負け、
また「学生は学校に行かなきゃだめ!」と何度自分が外見年齢と実年齢が違うことを説明しても理解してくれなかった湊の説得により夏休み明けからまた学校に通う羽目になったと言うわけだ。

「…それにしたってどうして転校前から宿題なんか」

「転校生と知り合いだって言ったらせんせーに渡されたワケ〜」

「…数学嫌だ」

「…あーしも嫌。じゃんけん負けたんだから分担ちゃんとやろーね?」

はぁ〜と深いため息をついてごろりと頭だけ机に突っ伏した夜子の頭上から黒崎の声が降ってかかる。

「おやおや?学生らしいことで。
 お昼ですし、息抜きに蕎麦でもどうです?」

「食べる!!」

一瞬でも開放されたい夜子は黒崎の言葉に跳ね起きた。

「…あーしはやめとくわ、黒崎さん」

ニヤニヤと笑いを浮かべた二人の顔に気づかず、端を割る夜子。

後に彼女は語る。
あのとき、宿題さえなければ…と。

********************

夜子が何になったかはご想像にお任せしますw
湊さんの草紙たのしみにしてますね

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