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The 執筆中。コミュの遠い日の歌

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【プロローグ】

唯。24歳夏。

恋に溺れ、
恋に泣き、
そして恋に恋をした。

葛藤、恨み、妬み、
そして別れ。

すべて自分のプライドが起こした現実。


ただ最終的に残ったものは、
紛れもない「愛」


100%の「愛」を手に入れれば、
10%の何かを無くす。
恋愛の方程式。


「愛」に生きると決めたその日から、
唯の恋愛プロジェクトは始まっていた。


いくら自分を犠牲にしてでも。





この物語は、
21世紀最初で最後の大恋愛を描いた、
“不純愛物語”です。


続く

コメント(17)

【第一話】 -出会い-

7月7日 PM22:00

唯は、カケルのライブに来ていた。
ライブは小さなクラブハウスで月に1回行われていた。

その日の唯は、煙草と酒に溺れ、ガンガン踊って、
記憶をなくすくらいに荒れていた。

そんな唯をカケルは歌いながらも横目で見る。

カケルには唯がなぜそんなにも荒れているか。
原因は分かっていた。

カケルのバンドが終わると、
唯はフラフラになりながらライブハウスの外に出た。


「唯!!!!」

カケルは唯を追いかける。

そしてカケルがドアを開けて外に飛び出すと、
その視線の先には唯が1人の男に助けられていた。







私は、3日前に彼氏に振られ心も体もボロボロになった女。
男なんて信じられない。
それに乗っかった女はもっと信じられない。
気持ちが悪い。
その男も女も。
気持ちが悪くてしょうがない。
そして今日ライブハウスを出た瞬間、
私はついに夜の路上に倒れた。

きっと倒れて5秒も経ってないだろう。
1人の男性が「大丈夫?」と私の顔を覗き込んだ。
そして私を抱えあげる。

きっとそれから気を失ったのだろう。

気づくと私は、彼の部屋のベットにいた。

部屋を見渡すが、誰もいない。

彼は?
その前に、あの人は誰?

そして1つの写真立てに目が止まった。

さっき助けてくれた彼。
その横には・・・女。


まだ酔っ払っている私。
朦朧とする頭で考えた。


この男。
明日香の彼氏だ。


続く
【第二話】  ―姉妹―
明日香。19歳。大学一年生。
幼い頃、父は女を作って家を出ていって以来、母と姉との三人暮し。
母は再婚もせず女で一つで二人の娘を立派に育ててきた。

そんな母を二人の娘はとても尊敬していた。



〔姉〕―唯

〔妹〕―明日香


顔は全くとゆっていいほど似ていないが、二人は周りでも有名な美人姉妹であった。








唯『…ヤバッ』

唯はやっと状況が把握できた気がした。

急いでベッドから立ち上がった瞬間…!?

唯は服を着ていなかったのだ…


(何も覚えていない…もしも……いや。有り得ない。あたしはあの日から人と触れ合うだけで吐き気がする。)

部屋のどこを見渡しても誰かいる気配はしない。
出かけたのだろうか。とりあえず唯は服を着て戻ってこないうちに急いで部屋を後にした。


足早に駅に向かい改札を通ろとした唯の足が止まった。

『財布…』

いくら鞄を探しても財布がないのだ。
急いで男の部屋を出てきてしまったため財布を忘れてしまったのだ。


仕方なく唯は先程のマンションに戻り、男が戻ってきてないことを願いながら部屋の扉を開けた。


そこには一人の男が立っていた。



続く。
【第3話】 -近い過去-

それは3日前。
彼氏に振られたあの日見た現実。

唯の元カレの名前は宗太。
どうしょうもない遊び人。女関係は最低レベル。
唯だって、モテないわけではない。
誰から見ても、美人で性格もサバサバしてるいい女だった。
しかし、唯は本気で宗太を愛していた。
寂しくなっても、辛くなっても、浮気ひとつせず、
宗太だけを愛し続けた。それが唯のプライドだった。
そして何より宗太を信じていた。

3日前の夜、いつもは必ず連絡をとってから宗太の家のアパートへ向かっていたが、
いくら電話しても繋がらない。
軽い気持ちで、宗太のアパートへ向かい、
合鍵で部屋を開ける。

そこで唯は、ありえない現実を目の当たりにした。
裸でベットに座り、煙草をふかす宗太。
その後には裸の女がベットに横になっていた。
焦る女。
ただ、宗太の態度は淡々としたものだった。


「勝手に部屋に入ってくる女なんていらねぇ。
 別れよう唯。」


唯は呆然と立ち尽くしていた。
襲ってくるのは、吐き気だけ。
その女が視界に入るだけで吐き気がした。

早くここから去らなければ、一生このトラウマと戦わなくてはいけない。


部屋を出るとき、唯は宗太に最後の捨て台詞を吐いた。


「二度と触れらないくらいの女になるから。
さようなら」



その夜、この日の出来事をすべてカケルに話した。
強気であの部屋を出てきたものの、唯には「SEX恐怖症」というトラウマが残ってしまった。

カケルは唯をほっておけなかった。
今すぐ抱きしめたくてしょうがなかった。
そしてカケルの手が自然に唯の頭を撫でた瞬間、

「やめてよ!!!!!!」

唯はカケルの手を振り払った。


そして唯は言った。

「ごめん・・・」


「気にするな唯。」


続く
【第4話】カケル

そんな唯にカケルはカクテルを差し出し、
「これ飲んだら送ってくよ。仕事切り上げちゃうわ」
と言った。


…カケルはバーテンとして働きながらバンド活動をしている。

そもそもカケルが唯と仲良くなったのはカケルの元カノ「瞳」と唯が親友だったからだ。
カケルは瞳と別れ数年経つが3人は普通に仲の良い友達だ。

宗太とは大学時代の先輩後輩の関係でお互い良い所も悪い所もよく知っているし、唯との事もよく知っている。


カケルにはこの3人に言えない秘密がある…

カケルは密かに唯の事を思っているのだ…。




唯「いいよ、今日は1人で帰る」

カケル「…そっか…あ、3日後、金曜の夜ライブあるから来てよ」

唯「…分かった、でも飲み過ぎて倒れても知らないよ」

カケル「(笑)そん時は任せな」



〜3日後〜


カケルが唯を追いかけると唯はどこかの男に助けられていた…

「カケル!!」

メンバーがカケルを呼ぶ。
カケルは戻らざるをえない。

「あの、その子俺の知り合いなんです、ちょっと待っててもらえます?」

その男は無反応だったがカケルはその場を離れた。

数分後、カケルが戻るとそこに2人の姿はもうなく、唯の財布だけがそこに残されていた…。



つづく

【第5話】−告白−

唯が財布がない事に気づき、戻ったマンション。
明日香の彼氏、正也のマンションだ。

ドアのノブに手をかけると、鍵は空いている。
そしてドアを開けると、正也。
その後ろには明日香が立っていた。

「お姉ちゃん!どこ行ってたの?
 正也から聞いたよ。ライブハウスの前で倒れてたんだって?」

どうやら正也は明日香をどこかまで迎えに行っていたようだ。
そしてその時に事の流れを話していた。

まだ酒が抜けていない。
状況はぼんやりとしか把握できない。

「あの、財布忘れたんだけど・・・」

正也と明日香が部屋を探すが見つからない。
すると正也が唯に10000円札を渡す。

「えっ?
 あたしは地下鉄に乗るお金さえあれば・・・」

すると正也は明日香に聞こえないように耳元で言った。


「今日の御礼。」


そして部屋のドアを閉めた。



唯は顔を真っ青にし震え上がる。
それと同時に、吐き気が襲った。

ふらふら駅まで歩く唯。


正也という男が信じられない。

人間なんてみんなそんなもの?


そして、一番信じられないのはこの自分だ。

おかしい。
あんな最低な男。
妹の彼氏。

なのに体を委ねた自分。
今は男の体すら触れられないはずなのに。

酒のせいには出来ない。

正也の事が気になってしょうがなかった。




地下鉄の駅までたどり着くと、カケルが立っていた。
ライブを終えてそのままの服で唯を待っていた。
カケルはベンチから立ち上がり、
唯のもとへ歩み寄ると、唯の財布を差し出し落ち着いた声で言った。




「ずっとおまえの傍にいたいんだ。」



続く
【第6話】−ハジマリ−


『カケル…。』
唯は予想もしなかったカケルの告白にア然と立ち尽くしていた。


実にタイミングの悪い男だ。
唯は当然カケルを受け入れるはずもなかった。

今までカケルを友達として見ていた唯。
宗太と別れた時もカケルはすごく唯を心配して時間があれば電話やメールをしてくれていた。
でも、それは唯にとっては迷惑でしかなかった。

自分勝手かもしれないけど構わないでそっとしといてほしかった。

それ以前に唯はおかしな事に正也が気になってしょうがなかった。

正也との事を思い出すだけで体が熱くなる。


唯 『ごめん…カケル。あたし今は別れたばっかりだし男の人と付き合うとか考えられない。ごめんねカケル…』


カケルは何となく唯の答えは薄々分かっていたのかあっさりうなずいた。

『わかったよ。けど絶対あきらめないから!唯!見てろよ!俺…絶対オマエを振り向かせてみせるよ。』

カケルは目を真っ赤にし涙をこらしながら笑顔で唯を見送った。



−帰りの電車の中−

唯は正也の事が頭から離れない。
携帯を取り出し送りもできない一通のメッセージを唯は衝動的に打った。


宛名:正也

あなたを好きになってもいいですか?




−翌日−

今日は前から職場の飲み会だったが、どうしてもそんな気分になれなかった唯。
仮病を使って会社を早退した。


会社を後にして唯が向かった先は唯の自宅ではなかった…



続く
【第7話】−現実− 

すたすたと引き寄せられるように正也のマンションへ向かう唯は、
明日香にメールを送信した。

[今日、明日香の仕事が終わったら一緒にご飯食べに行こう☆
明日香の会社の近くのイタリアンの店に8時10分に集合]

明日香からは、[オッケー☆]

もちろん、明日香が正也のマンションを訪れないようにと考えた計画だった。


唯は、明日香に対して罪の心など一切なかった。
明日香は、正也の他にもう1人の男がいる事を知っていたからだ。

唯は明日香には嫌というほど言ってきた。
「あんた、絶対痛い目見るよ」と。

ただそれは明日香だけに言える事ではなかった。
そう。正也にも同じ事が言える。

果たして、自分がこのまま正也に会いに行っていいのかさえ分からないが、
ただ気持ちはひとつ。

「会いたい」

それだけだった。


そんな事を考えてるうちに、正也のマンションの前に着いた。
正也の仕事は、夜勤の多い工場の技師だ。
車がある事を確認し、部屋に向かう。

ベルを鳴らすと正也が出てきた。

「唯です。明日香の姉です。」

一瞬誰か分からないといった表情をした正也だったが、
唯を部屋にあげた。

「ビックリしたよ。
 んで?何か用?」

あっさりした正也だったが、唯はそんなのも気にせずに問いかけた。

「あの夜、私を助けてくれたのは何故?
 あの夜、私に手を出したのは何故?」


正也は、その質問に答える事なく、唯を抱きしめベットに押し倒した。


「やめて!!」

1回は抵抗してみたものの、それはただの嘘の叫び。
自分の感情には勝てなかった。


「最低だねアタシ・・・」




正也が窓際でタバコを吸っている。
その姿も、
黒く焼けた大きな背中も、
すべて自分の心に焼き付けられていった。




正也がタバコを吸っている頃、唯はふとベットの下に目をやった。

1枚の写真。



それを見た唯にまた吐き気が襲う。


それは、今私が寝ているベットで撮られた写真。
布団に入り顔だけ出した2人が寄り添って移っているこの写真には、
写真の右下に日付が入っている。
2008.6.30
ついこの間だ。


笑顔の正也と、その横には明日香ではない。

別の女。



明菜だ。



続く
【第八話】 ー後悔ー

明菜…あの時宗太と一緒にいた女。

最低最悪だ。
どいつもこいつも皆最低…何がって自分が一番最低だ…。

唯は後悔の念にさいなまれていた。

唯が肩を動かし泣いていると、

正也「どした?」

唯は正也に向かって何かを投げ付け無言で部屋を出た。

正也がそれを拾い上げると、それはクシャクシャになった明菜と自分が写った写真だった。

「ちっ、明菜の奴」

正也は唯を追いかけるでもなく、窓際で笑みさえ見せていた…。

……


何時間経っただろう、辺りは真っ暗、唯は駅のホームのベンチに座り今までの自分のしてきた事を振り返っていた…。

すると携帯が鳴った。明日香からだ。

(しまった!)


「お姉ちゃんまだこないの?誘っといて、もう、早く来てよね」

「ごめん、すぐ行くから」

唯はそんな気分ではなかったが急いで店に向かった。


店に入ると明日香が膨れっ面で唯をにらみ付ける。

明日香の顔を見た瞬間唯は周りの目もはばからずに泣き出してしまった、

唯「ごめん、ごめんね明日香…」


明日香「お姉ちゃん?嘘だよ、私そんなに怒ってないよ」


唯「違う、違うの明日香」

ー店を出る2人ー

近くの公園のベンチに座り、唯は話出した…
姉妹の絆が失われるのを覚悟で…



つづく
【第9話】―決意―

唯が話し出そうとすると、明日香が先に口を挿む。

「お姉ちゃん、あたし別れるから」

明日香はあっさりと言った。

「え?誰と?」

「正也とだよ。」

唯は自分の言おうとしていた事を、明日香の言葉を聞き心に閉じ込めた。

明日香は話し続ける。

「ほら、あたしもこんなに男作ったりして最低だし、
 正也にも女がいるから。
 このままじゃ誰も幸せにならないでしょ」


唯は聞いた。
「正也の女って・・・?」


「あ、やっぱりお姉ちゃん知らないんだ。
 お姉ちゃんの知り合いの明菜さんだよ。
 あの人すごいよねー。」

そう言うと明日香は笑って、さらに話し続けた。

「あたしね、2ヶ月前からもう正也に気持ちなんてなかった。
 最低だよね。
 でもね、正也もあたしに気持ちがない事知ってたから、
 だから一緒にいれたのかな。
 でももう正也が誰と一緒になってもいいんだ。
 もう過去の恋人だから。
 これであたしの話はおしまい。
 で、お姉ちゃんの話は?」


唯は、自分の本当の気持ちを言うべきか言わないべきか。
葛藤していた。

「お姉ちゃん?どーした?」

心配そうな明日香。



「あたしね、正也の事さぁ、好きになっていい?」


堂々とした姉の告白だったが、
明日香の返事は重いものだった。


「好きになるのは自由だよ。もうあたしも気持ちないから。
 でもね、正也は正直おすすめ出来ないよ・・・
 辛い思いする事、目に見えてるよ?
 明菜さんとも、きっと今も続いてるよ?」


それを聞いたからといって冷める恋ではなかった。

「明日香、いいんだあたし。」

明日香は最後まで重い表情だったが、姉を受け入れた。



そして公園を後にする2人。

ふと通りすがりのコンビニに目をやる唯は一瞬固まる。

宗太と明菜が仲良くレジに並んでいた。

それを見た唯はなぜか大きな安堵感に包まれてしまっていた。
正也のあの写真は6月の終わり。
宗太との浮気現場は7月。

きっと正也とはもう終わっているんだ。
宗太に乗り換えた。

そう勝手に思い込もうとしている自分がいた。


明菜の事は一生許さない。
宗太を奪われた悲しみ、そしてあの日残ってしまったSEX恐怖症。
一生の傷を負った唯は、明菜と宗太を許す事はないと心に決めていた。

だた、今の願いは1つ。


正也に近づかないで明菜。


あたしが正也の女になる。
正也はあたしが更生させる。
あのどうしようもない男を絶対に振り向かせる。


そして唯の恋愛プロジェクトが幕を開けた。


続く

【第9話】−100%の愛−

「唯、元気?全然連絡くれないから寂しいよ〜(>_<)今日の夜とかってあいてない? カケル」


唯『はぁ〜…』

唯は重いため息をして携帯を眺めていた。

今の唯の頭の中は、正也でいっぱいだった。

告白されてから唯はカケルを避け続けていた。
カケルは唯にとって大切な友達だったが、もうカケルのことなんてどうでもよかった。

唯は100%の愛を手に入れたかった。
正也との微妙な関係は続いていた。
時間があれば二人はいつも一緒にいた。そんな二人の時間が唯にとってはすごく居心地がよかった。

唯 『正也に出会い正也を愛すために私はこの世に生まれてきたんだよきっと。そんくらい正也を愛してる。』

唯は真っ直ぐな愛で正也を愛した。
次第にそんな唯の愛に正也も答えてくれるように正也は唯を愛すようになった。

正也 『俺もオマエに出会うために生まれてきたのかもな』

正也は強く唯を抱き寄せた。

唯 『明日も仕事終わったらご飯作りに来るね』

正也 『うん。待ってるな。』

そんな幸せな日々が続いていた。


〜翌日〜

仕事が終わり唯は正也のマンションの近くのスーパーで買い物をし、暗い夜道を買物袋片手に正也にメールをしながらマンションに向かっていた。

「後10分くらいで着くから☆お腹すかせて待っててね。 唯」


「道暗いから気をつけてな。 正也」


唯は嬉しそうに携帯を握りしめながら夜道を歩いていた。

すると前の方から5、6人くらいの黒い陰が唯の方に向かってきた…

唯 「…!?…イヤー!!!」






唯は無理矢理押し倒され乱暴された。
唯が気を失って気づいた時には草村に倒れ、唯の携帯が鳴り響いていた。


続く。
【第10話】ー罪と罰ー

携帯の着信音…
「イッテー!」


(え?)


唯がその声のする方に目をやると男が1人倒れている…


カケル…!?


そこには体中傷だらけのカケルが倒れていた。

「カケル!?大丈夫?なんで?」

「俺は大丈夫、唯心配するな何もされてないから、もうちょっと早く気付いてやりたかったな、ごめんな…唯、携帯なってるよ」

血だらけの笑顔が痛々しい…。


「うん、でも…」

「早く出なよ、きっと彼氏だ」



偶然通りかかったカケルは襲われる女の子を唯とは知らずに必死に助けたのだった。あまりの必死さに男達は立ち去っていった。



「もしもし、正也?」

「唯?どうした?なんかあったのか?」

唯の声はあきらかにおかしく、正也は異変にすぐに気付いていた。
「すぐ迎えに行くから!」

「いいの、今から正也の所に行くから」

「でも…」 ブツッ
唯は一方的に電話を切った。



カケル「唯、病院行こう」

唯「カケル、最低な私を許してね。 お願いがあるの…私を正也の所に連れてって…どうしても確かめなきゃ行けない事があるの…」


一瞬下を向くカケルだったがすぐに顔を上げ痛々しい笑顔で、
「わかった」



ー正也のマンションに向かう2人ー

唯はカケルの背中で違う男、正也の事を考えていた…


自分が襲われた事が偶然ではない気がしていた…




つづく
【第11話】

正也のマンションに着いた2人。
カケルは唯を下ろし、「じゃぁ」と去っていった。
その時のカケルはやけにあっさりしていた。
がんばれとも言わず、悲しい顔もせず、去っていったカケル。
唯はその時少し、カケルに頼りたいといった気持ちが湧いた自分にびっくりしていた。

正也がドアを開けると、そこには傷だらけの唯。

「どうしたんだ?何があったんだよ?」

唯はその質問に答える事なく真剣な表情で言った。

「正也の女は、私だけですか?」


一瞬その質問に止まる正也だったが、物怖じせず言った。

「当たり前だよ」


どこか信用できない。
でも好きだから信じたい。

これからもずっと正也と一緒にいたいから。


「さっき襲われたんだよね。5人くらいにさぁ。
 その中に女が1人いたの。
 写真で見たことも、会った事もある顔だった。」


明菜だと唯は分かっていた。


でも正也の「当たり前だよ」といった言葉だけを信じようと決めた。
だから何も怖くなかった。

そしてその日は夜中まで正也の部屋で過ごした。
傷は正也が全部手当てしてくれていた。
一緒にいれる事が唯には幸せだった。


正也がシャワーを浴びに部屋を出て行った。
その時正也の携帯がなる。

[ 着信 ・・・ 明日香 ]


携帯は何があっても見ない主義だ。
でも見てしまった。

明日香はもう正也とは連絡をとっていない。
メモリも消したと言ってたはず。

一瞬自分の中に恐怖が襲った。

電話が切れたあと、すぐに唯の携帯が鳴った。

明日香だ。


「もしもし・・・」

「もしもし?明日香?泣いてるの?」



「お姉ちゃん、今すぐ別れてよ。
 危ないよ。
 殺されるかもしれないよ。
 今、アスカのところに明菜さんが来たんだよ。」



続く ←はいルール無視でーす
【第12話】ーなくしたモノー


「明日香何かされたの!? 大丈夫?」

「うん、正也との事聞かれて、もう何でもないって事説明したら帰ってった…でもすごい怖かった、殺されるかと思った…」

明日香のあまりの危機迫る態度にあの時カケルが助けに来なかったら自分はどうなっていただろうと唯を再び恐怖が襲った。

唯は明日香を心配させまいとあえて事件の事は言わなかった。

「明日香、私は大丈夫。ありがとう」

電話を切るのと同時に正也が戻って来た。

「誰から?」

「うん、友達…」


「正也…」

「ん?」

「…な、何でもない」

唯は思った、この正也の態度は何だろう、あきらかに自分を襲った犯人は明菜だと分かっているのに、落ち着いている…愛する人がこんな事されたら普通はこんな態度ではないのでは?

でも信じたかった。正也を愛していたから…。

愛していた…。



ー数日後ー

〈着信…明日香〉

「お姉ちゃん、急いで来て! 正也と明菜さんが一緒にいるの! ただ様子がおかしいの!早く来て!」

唯が電話を切るのと同時にまた着信…


〈着信…瞳〉

「唯、カケルの事聞いてる?大ケガしたって、理由聞いても教えてくれないんだけど。
なんかね、手が一番ひどいらしくて、もうギター弾けないんだって、バーテンのほうは大丈夫みたい。『俺には歌があるから』なんて笑ってたけど…唯にはまだ言うなって言われてたんだぁ、でも今日手術らしいから、何も聞いてない?」


「う、うん」
驚く唯…。


「だから一緒に今から病院行かない?行こうよ。あいつの事だから強がってるけどきっと落ち込んでる…唯?聞いてる?唯?」



唯は呆然と立ち尽くしていた…




つづく…(ルール変えよっ)
【第13話】−葛藤−

唯はカケルの事を気にする反面、正也の事が気になってしょうがなかった。

何で明菜といるの?
やっぱりまだ続いてたの?
じゃぁあたしはあなたの何?

不安と恐怖でいっぱいになった唯の心は、すぐさま行動に現れた。

「瞳!あとで連絡するから待ってて!」

電話を切ると、明日香が言う場所へ走った。


街のカフェ。
ガラス越しに見える2人。
明菜は下を向き、泣いている。
何も話さない正也。

するとカフェから明日香が出てきた。
明日香はカフェにこそっと入り、2人の話を聞いていたのだ。

「あの2人、今別れたみたい。
 最低だね。正也も明菜さんも」


やっぱりね。


唯は、明菜への憎しみより、正也へ対しての恨みのほうが大きかった。
あたしと会ってる間もあの女と会っていた。
考えるだけでまた吐き気が襲った。

そしてそのカフェをとぼとぼと後にした。
大粒の涙が溢れて止まらない。

今までの時間を返して。

それが出来ないなら、本当の愛がほしい。


すると後ろから正也の声。

「唯!!どこ行くんだよ」


唯は正也を睨んだ。

「うそつき」

正也はすぐさま状況を把握した。

「ごめん唯。もうあいつとは切ったから。信じてよ。」


唯はそんな言葉にも聞く耳を持たずにまた歩きだした。
すると正也は走って唯の手と引く。

「家に来いよ。ゆっくり話そう。唯が納得できるまで。」


唯は言った。

「今から病院へ行くの。離して。」

「病院って、誰のところだよ。」

正也が聞き返す。


「友達だよ。カケルって言うんだ」

すると正也はまた手を引き言った。

「行くなよ。これからもずっと傍にいてほしい。」


唯は泣きながら正也の手を振り切った。
そして病院の方向へ歩いた。

本当は正也と一緒にいたい。
あたしが正也の女になりたい。
正也がずっとそばにいてって言ってくれるならずっといたいよ。


振り返ると、正也の姿はもうなかった。

瞳に今から病院へ向かうとメールを送って歩き出す。



つづく


【第14話】―決別、そして―


唯が歩き出してまもなく唯の前に1人の女が立ちはだかった…

明菜だ。
目を真っ赤にしてこちらをにらみつけている。だが、唯はそれにひるむどころか、むしろ押さえ切れない怒りを覚えていた。
そして明菜が何を言うのかも大方の予想がついていた。

明菜「あんた、正也とわか」

パシッ!

唯は明菜の言葉をさえぎるように明菜の頬を思いっきりはたいた。
明菜「ちょっと、なにすんの!」

唯「カケルの分よ、カケルはあんたなんかよりもっと大切なモノを失ったんだから! 正也なんかもうどうだっていい!最低な人間同士勝手にしなさいよ!」

唯の涙ながらの言葉に明菜は何も言えずただ呆然としていた。


また歩き出す唯…


カケルをあんな風にしたのは明菜ではなく自分の方に責任がある事は分かっている、明菜に言った言葉…自分に対しての言葉…

そう思いながらも唯は心の中でなにかが吹っ切れた気がした。



病院に着くと、入口に瞳が立っていた。

「唯、遅い!もう手術始まるよ」

「ごめんごめん」


唯がカケルの病室に着いた時にはカケルは手術室に運ばれる直前だった。

「カケル、カケルごめんね、本当にごめんね」

涙ながらに謝る唯に対してカケルはいつもと変わらない笑顔で言った。

「唯、お前の痛みに比べたらこんなのどうって事ねーよ、気にするな!1回デートでちゃらなっ」

と、右手の親指を突き立てた。

「バカ、しねーよ」
唯の表情はいつの間にか笑顔に変わっていた。
ここ数週間見せた事のない満面の笑顔。

「じゃあな。来てくれてありがとな」

カケルは手術室へと運ばれて行った…





〜数年後〜




つづく
【第15話】−遠い日の歌−

小さなクラブハウスから聞こえるあの日と同じ歌。
一回り成長した歌声とカケルの姿に浸る唯。


あの日以来、正也とは会っていない。
居場所も知らない。

明菜とよりを戻し、子供が出来て結婚したが、
結局離婚したとか。

悪い男には、その程度の女しか寄ってこない。
悪い女にも、その程度の男しか寄ってこない。

そうやって恋愛が成立する。



今も正也への愛は残ったままだ。
3年経った今でも、あの日精一杯愛し、尽くした記憶。
唯は、自分でそれを消そうとする事もなかった。
そしてそれは自然に唯の恋愛に対する「誇り」と変わっていった。


だからこそもう会わない。




カケルの曲を聴くたびに思い出す、遠い日々。
過去は消すことは出来ない。
一生残る傷は存在する。

傷を負った当事者は、本当の愛を手に入れる事が出来る。
傷を負わせた当事者には、その場限りの愛しか手に入れる事が出来ない。

恋愛の方程式。


カケルは今でも唯のことを想っていた。
ただカケルは唯を自分のものにしようとする事はこの先もずっとなかった。
ただそばにいて、歌う事。
ただそばにいて、唯の話を聞く事。
ただそばにいて、想う事。
それが、カケルが唯に対する愛だ。


それを唯もずっと分かっていた。
カケルの歌を聴きながら、現在と過去の愛を感じる事が出来る幸せ。
それに気づく事が最高の贅沢。


カケルがその日の夜、即興で唯の過去の恋愛をテーマに詩を書いた曲を、
その場で初めて歌った。


題名は、“遠い日の歌”




THE END

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