クズシリ、クズコ、ムレコも長帯を左横で結び、その端を右脇に〆縄に吊り結びにしてはさむ。三人とも双刃（ウメガイ）をもつ。エラギの一も同様の服装で、クズシリと相対して座につく。 さて、母から「アワズフタノ」を祝われた処女妻（ウブメツマ）は、後に下がってお腰を取り替え、外した処女巻きはたたんで、ムレコの前において一礼する。ムレコは、これを前の川に流しに行く。これを処女流し（ウブメながし）という。 この風習や慣行に無関係な一般人は、ただ変わったことをするものだとしか考えられないが、当事者や関係者には、これほど厳粛な複雑な感情の湧き起こる儀式はないと感無量である。また、当の花嫁もムレコにそれを渡した時には、十人中 八、九人までは泣き出してしまい。それにつられ新郎まで泣くこともある。処女と永遠の別れをして、これから瀬降の女房になる処女別れに感激して泣くのである。それで、ここでは一切助言や慰めの口はきかないのである。一切黙して、泣き止むのを待つのです。花嫁は歯を食いしばって泣き止み、その別れの泣きも「ウブメ流し」の戻って来るまでである。ウブメ流しのムレコが戻るとエラギの一が竹笛を吹き、クズシリは立ち上がってウメガイを抜き邪気払いをする。そして、懐中から「婚姻の法歌」を記した歌紙を取り出して花嫁に渡す。花嫁は、それを開いてムレコに渡すのである。
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