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仮面ライダー chroMコミュのmasked rider chrom VOL13

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【 遭遇上推定遊離 】









 ‥‥‥‥‥


水崎記者は女性の声に再
び足を止め、そのあとは
目を奪われたかのように
静かに見つめていた


「‥‥‥‥‥‥」




降り出しそうに曇る夜空
の下に ‥

ひとり、門の前に立ち

大学施設内をその外から
じっと、見つめていた




女性の姿は ‥


神話のなかで還らぬ恋に

髪をなびかせるように
海へと唄い続ける

黒檀の装飾のようだった






 ───── ‥‥
───


早足で歩み寄る複数の足
音に気付き、その人影を
一度確認すると声を掛け
て、自分の方へと近付く
ことに喚起を促した女性



  ‥‥‥‥ ‥

そのあと


もう振り返ることはなく、
また黙ったまま大学校内
を見つめ続けていた

‥・



夜 22:47 八王子

東京工科大学柳谷研究所












「・‥‥ 水崎先輩、」

「ああ、わかってる」



水崎記者はその場に立ち
止まったまま、長い髪の
女性の後ろ姿にその違和
感から覚えたものを、ひ
とつひとつ推考し始めた


 ‥‥‥‥‥


「なンで黙ってるんスか、
早く行かなきゃ、あの女
は犯人の仲間なんすか?」



「‥‥イヤ、違う、」

「警察に連絡しましょう、
そんなの分かるわけない
じゃないですか、」


「何か用か?、あなたは誰
ですか?‥‥」


 ‥‥‥‥‥‥


携帯をポケットから取り
出したカメラマンは水崎
記者の声に、きょとんと
した表情で動きを止めた


「‥なンっすか、それ?」



「犯罪行為が行われていて
彼女が仲間なら、声を出
した時にそう言う、‥‥

やましいことがあるなら、
人目は避けたいのが心理
だ。彼女には別の理由が
何かあって、あの場所に
いる ‥‥‥」


「‥‥‥‥‥」



女性の後ろ姿を見つめた
まま、そう答える水崎記
者の鋭い視線に気付き、
カメラマンは答えに声を
失していた





「‥‥だ、だったら ‥‥
あそこにいちゃ、彼女、
ヤバいっスよ‥ ね、‥」

「だから、わかってる!!
オマエ少しは黙ってろ‥」



「‥‥‥‥‥」



 ザッ、‥‥‥


水崎記者は左足を前に出
して、軸足と体の向きを
変えて肩を窄めると煙草
に火をつけた

 ‥シュボッ、


「ひょっとしたら、雨が降
るかも知れないけど ‥‥
あんた、傘は持って無い
のかい?」


「‥‥ どうして?」

「もし誰かを待ってるんな
ら、その人に傘を尋ねた
ほうがいい ‥‥
中にいるんだろ?‥‥」


 スッ ‥‥‥



水崎記者がそう言い終え
ると、女性はゆっくりと
振り返って声の主を見つ
めた

「・‥誰?、クロちゃんの
知り合いなの?」

「いや、違うけど‥あんた
はさっき声がしたのを聞
いてはいないのかい?」


「‥‥ 声?、中から?‥
聞いてない。さっきまで
音楽を聴いてたもの ‥」


 ‥‥‥‥

「だったら俺の言うことを
聞いてくれ、さっき中か
ら叫び声がした。誰かが
怪我をしているのかも知
れない‥‥
私はその門を越えて中に
入りたい。君に近付くの
がまずいのなら、せめて
門から少し離れてくれ‥」



「‥‥警察の人?」

「違う、ここへ取材に来た
雑誌記者だ。頼む、急い
でいる」


「‥‥はい。」

コ、コ コ コ コ ‥‥‥


‥ギィイイ─ぃがあああ!


       ァァァァ ‥

「‥ 中からだ、あなたは
早く離れて、行くぞ」

「 ‥はい、」

タタタタ ‥‥‥









「待て、‥‥止まれ」


ふたりが門の前に着き、
カメラマンが門に手を伸
ばしたところ、奥の校内
からバイクの音が自分た
ちの方へと近付いてくる
のに気付いた水崎記者は、
慌ててそれを制止した


「あれだ、こっちに向かっ
てくる ‥‥‥」



 ‥‥ フォォオオ─── ン

フォォン‥



  キ─── ィィ、‥‥

ドッド、トトト‥‥








「‥‥‥ 茜、」



「‥クロちゃん、クロちゃ
ん心配したんだよ、怪我
はしてない?‥大丈夫?」


「なんで、ここに?‥」

「バイクを見たの、もしか
したらここにと思って」



「‥‥‥‥‥」




「‥‥ おい、いるぞ」


「あそこにいる、あのバイ
クだ。‥気を付けろ」


少し奥でふたりの警備員
と教員らしき人物の3名
は、向かい合ったあとで
声を上げた



 タタタタ ‥‥‥‥

その3名はそれぞれ刺股
のようなものを手に持ち、
バイクへ向かっていった


 ‥‥‥‥‥‥





「警察が来るまで、動かん
でもらおう、‥‥」

 ザッ ‥‥‥‥



バイクの前にふたりが回
り込んで、刺股を黒いジ
ーンズの男へ突き出した


「‥‥‥‥‥‥」



黒いジーンズの男はその
状況をちらりと確認して、
また門の向こうから、心
配そうに自分を見つめる
女性と目を合わせていた


───
 ‥‥‥‥


相手の姿から合点しない
ものにただ、バイクに乗
った男を見つめる水崎記
者は次に推測を浮かべて、

動かずにいる状況に次々
と視線を変えた


「‥‥‥‥‥‥」


(あの時と同じ、‥‥)






細身で色白な今風の男 ‥
そう、

怪物だと


そう思い込んでいた。

もしも
別件ならば、‥‥



もしも ‥‥





いや、‥‥
それがすでに思い込みだ





ここで、
彼とは、

彼を取り囲む もの、‥


なんだ

なんだ ‥‥


ただ傍観してるだけなら
次の変化に遅れてしまう

間に合わない ‥


ズレる。



遅れる ‥









「水崎先輩、‥‥」


「‥‥ 三野瀬‥
事件は私たちには関係の
ないものだ。少し離れよ
う ‥‥」

「‥‥え、は はい。」


「無理にはしないが、キミ
も関係がないのなら離れ
たほうがいい」


「‥‥‥‥‥」


「でもこれじゃ ‥‥」

「いたずらに刺激すること
は避けよう ‥
行こう、道路の向こう側
まで少し離れよう ‥‥」



「‥‥‥‥‥‥」


 コ、コ コ コ コ ‥‥‥









ドッド、トトト‥‥

‥‥








「キミ、バイクのエンジン
を切りなさい、‥」


「‥‥‥‥‥」


刺股を突き出して指示を
する警備員を、黒いジー
ンズの男はじろりと睨み
つけた


  ──── !!っ

 ザッ、‥‥‥


その不穏な空気の変化に、
水崎記者は立ち止まり振
り返った


「‥‥‥‥‥‥」




「俺は特別腕力に長けるっ
てわけじゃないぜ ‥
さっきからオマエはキミ、
キミってうるせーな、オイ
そうしたきゃ力ずくでこ
いよ、ホラ ‥‥」

「───── なッ、」

「‥‥‥ 押さえろッ」


 ズァっ、──!!


男の前にいた警備員の2
人が、その左右から刺股
を相手に向け突き出した


 ──── スっ、‥‥

‥‥‥!?



「‥‥‥‥‥」



「‥‥ すり抜けたっ?」

「水崎さん、ヤツだ、‥‥
ヤツが、ブロッケンです」


 ‥フォォオオ───ン


「茜の前だ、助かったなァ
オマエら ‥‥
次は殺すぞ、必ず ‥‥」


フォン‥フォォオオ──
 ズァァ───アア



フォンフォォ─────
── ォ

「‥‥逃げた、追えぇえ」






 ‥‥‥‥‥


水崎記者はバイクを反転
させ去っていく男の後ろ
姿を、呆然と眺めていた

「体をすり抜けた、何故、」




       ────

 ィィ─── ュュウン
‥‥


‥‥ 何か来る、


道路の中央にいた水崎記
者は、後ろからくる音と
光りに振り向き、目を覆
うようにそれを見つめた

「──── あれは、!!」


 タタタタ ‥‥

「水崎さん 危ない戻って」



 フィィ─── ン──

‥‥オイっつ!!


「気をつけろッ、ヤツは体
をすり抜けるぞ‥‥

裏だァァ──、この裏に」

ヒュン ‥





「‥‥‥‥‥」


水崎記者は前を過ぎ行く
激しい光に向けて、そう
叫んだ ────

光に包まれた男は水崎記
者の声に視線を送り、一
度こくりと頷いたように
見えた


「水崎さん、アイツはもし
かして‥‥」

「ああ、‥ 俺たちは別の
ことを急ごう。
お前は怪我人の有無を確
認して連絡を ‥‥俺は、
先に救護に当たる」

「‥‥はい。すぐに、」



 タタタタ ‥‥‥






x x x




(‥遡る時刻、)






 コ、コ コ コ コ ‥‥



子供たちの声が響く午後。

下町の雰囲気が残る街並
みの中、緑のスカーフを
首に巻いた男は計画まで
の時間を、持て余し気味
に歩いていた

 ‥‥‥‥‥‥



夕暮れどき

某所市内 路上










う── ん、‥‥

「夜までにはまだ、かなり
時間があるな ‥」



 あァ─────、


路上であそんでいた子供
たちが、一見風変わりな
その男の姿に気付き一斉
にガヤガヤと声を上げ始
めた

「緑マンだ、緑マン‥」

「違うよ、ジャッキーだ」


 オォ─── ぉい ‥





なんだよ、‥緑マンって

‥‥
勝手に名付けて、しかも
デカい声で大人を呼びつ
けやがって ‥‥


 コ、コ コ コ コ ‥‥



「お前ら、道路の上にござ
敷いて遊ぶなってこの前
教えたろ、‥危ないから」

「ジャッキー、あれやって
よ、アレ‥車と喋るの」


「ジャッキー全然関係ねー
わ、‥‥
ナイトライダーだろ?」


───くそっ、負けた ‥

ロイヤルストレートです
マイケル‥

「こんなもんインチキだ」

マイケル、‥
目の前で銀行強盗が発生


「よ──し、追うぞォ‥‥
キット、
ターボブースターだァ」

‥了解です、

チョイィィ──── ン‥



「うわー似てるぅ すげー」

「緑マン、すげー」


 ワー、ワー ‥‥



‥ ‥‥‥‥

「お前ら、ナイトライダー
知らんだろ ‥‥
なんでそれほど興奮する」






「なァ、なァジャッキー
あれやって、サーカスの」

「‥‥いいよ、」


 タタタタ ‥‥‥


スカーフの男の返事を聞
いて、ひとりのチビッコ
がシートに座って遊んで
いる女の子の輪へ駆けて
行った



 サッ、‥‥

「ちょっと、貸してよ」

「ヤメーや、男子ぃ‥」


「すぐに、返すって‥」

「いま返しーや、もう」


遊んでいた数個のお手玉
を奪われた女の子たちは、
声を合わせて騒ぎ立てた

 ‥‥‥‥

「この子たち遊んでるんだ
ろ、返してやれよ‥な、
別に石ころでも、何でも
出来るからさ ‥‥」


「ジャッキーすげー上手い
んだぞ、ケチ」



「・‥‥‥‥‥」


女の子たちは急に黙り込
んでいた

「‥‥ごめんな、」

「いいよ、貸したげる‥」



 ハハハハ‥ よ─ォし、

「チビッコたち、見てろ」


お手玉を受け取ったスカ
ーフの男が笑顔を見せる
と子供たちは皆、注目し
始めた

「お唄、歌ってあげる?」

「‥‥唄?、んん頼むわ」


せーの、‥‥

いちばんはじめは一の宮
にィは日光東照宮
さんは佐倉の宗五郎
よんは信濃の善光寺
いつつ出雲のおおやしろ


‥‥‥

 チャ、チャ、チャ‥‥






 ‥‥‥ ホイっと、
スチャ、

ワ─── ァァ すごーい


「はい、返すよ。貸してく
れてありがとう ‥」

「‥練習したの?」


「練習‥‥うーん、‥‥

俺の故郷でも似た遊びが
あったからね。
小さい頃はずっとね、 ‥」




「またな、道路の真ん中で
遊ぶなよ ‥」



バイバーイ、ジャッキー







いちばんはじめは一の宮

‥‥

空が赤く染まる夕暮れど
きの下、山あいに陽が沈
むまでの時を数えるよう
にまた、女の子たちの唄
声は繰り返し、スカーフ
の男は道路に伸びる影を
追うように歩みを続けた



 ‥‥‥‥‥


「二度と逢えない汽車の窓
鳴いて血を吐くほととぎ
す ‥か、」



 コ、コ コ コ コ ‥‥



男は唄を口ずさんだあと
口笛を鳴らしていた











end.

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