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深鏡椋の小説まとめコミュの【SS】ラクトガール

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「ラクトガール」

 ランプの明かりは煌々と。
 本が敷き詰められた部屋を照らしている。
 光源の元、私はいつものように本へと視線を落としている。
 それはいつものこと。
 何年も繰り返されたこと。
 でも、その繰り返される日常を。
 私は解き放たれたいと思っているのかしら?
 視線を運ぶ先は扉。
 私は待ち望んでいるのかしら、彼女が私をここから連れ出してくれることを。
 彼女のことを思うとなぜだろう。
 胸が苦しくなって、目頭が熱くなる。
「…パチュリーさま」
 声に振り向くと小悪魔が紅茶とともに手紙を差し出す。
 そこに書かれていたのは「ディア パチュリー」の文字。
 疑問は、確信へと変わる。
 だけど…私にはどうすることもできないの。

「ちっ、全く素直じゃねぇ!」
 私の前に聳えるは紅魔館。
 そこにいるんだ、私のことを待ってる少女。
 だが、私はお前じゃない。
 私は待つなんてことはできない。
 力づくでお前を連れ出すだけだ。
「魔理沙、これ以上先にはいかせないっ!」
「さいきょーのあたいをこえてみろー!」
 門の前には紅美鈴、チルノ、ルーミアの姿。
 ルーミアの生み出す闇に紛れてチルノと美鈴の弾幕が私を襲う。
「軌道さえよめれば、大したことはない!」
 チルノの直線的な弾幕、その延長線上にいるであろうチルノへ魔法。
「きゃっ」
「マスタースパークが来る!?」
 吹き飛ばされるチルノに動揺したのか闇が一瞬薄れる。
 そこに見えるは美鈴の姿。
 私のマスタースパークを警戒しているみたいだけど、私は通常魔法で応える。
「悪いが、マスタースパークが壊すのは紅魔館の扉じゃない、一人の少女の心の扉だぜ!」
 美鈴は私の弾幕の前に膝を折り、残されたルーミアにも弾幕の雨を降らす。
「くっ」
「あぅ」
 倒れる3人を尻目に私は紅魔館に侵入。
 あのカリスマお嬢様はでてくるのか?
 お嬢様が出てこなくても、あのメイドは必ず出てくる。
「人の恋路を邪魔する気はないんだけどね」
 パチュリーの部屋まであと少しというところで、案の定、私の前にメイドが立ちはだかった。
「馬に蹴られるのは痛いぜ?」
 紅魔館のメイド長、十六夜咲夜。
 その手にはまばゆく輝く数多のナイフ。
「お嬢様の命令なのよ……パチュリー様を……連れて行かないでってねっ!」
 私へと降り注ぐナイフは戦慄モノ。
 だけど、避けれなくは……!!
 私はナイフの隙間を縫う。
「ちぃっ」
 致命傷は避けられているけど、無傷ではいられない……か!
「咲夜ぁあああああ!」
「魔理沙ぁああああ!」
 私は咲夜一点に魔法を集中砲火。
 咲夜は的確にナイフをぶつけ、火力を殺ぐ。
 迎撃しつつ、私への攻撃も手を緩めない。
 だけど!
「弾幕は火力だぜ!!」
「えっ!?」
 咲夜のナイフは的確に私の魔法にぶつけ、火力を殺ぐ。
 だけど、次第に膨大な火力の前にナイフでは殺ぎきれなくなっていた。
「咲夜、悪いけど、パチュリー借りてくぜ」
「……全くあなたと言う人は……」

 ランプの明かりで朱色にそまった魔理沙の手紙。
 粗雑な彼女の性格と相反してその文字は柔らかく、そして暖かな日本語の羅列。
 なんで魔理沙は、こんなにも私に構うの?
 なんでこんなにも魔理沙は私に涙を流させるの?
 なんで溢れる涙が止まらないの?
 数多の本を読んできた私に、その疑問を解決する術は知らなかった。
 その感情がなんなのか、私は理解する術を知らなかった。

「さぁ!!そろそろ出番だぜ!!」
 私の内なる魔力を解き放つ。
「お前の頑なに閉じた扉、ふっとばすぜ!恋符!!マスタースパーク!!」

「きゃっ!」
 閃光。
 私は椅子から落ち、尻餅を付く。
 閃光が止むと、そこには笑顔。
 傷だらけの笑顔。
 そして、瞼の奥で何度も見た屈託のない。
 魔理沙の笑顔。
「さぁ、約束どおり迎えに来たぜ」
 魔理沙は微笑みながら私に手を差し出す。
 無意識に、でも迷いもなく。
 私は差し出された手を握った。
「さぁ、行こうぜ」
 魔理沙の手は想像していたよりも柔らかく。
 そして暖かかった。

 魔利沙の箒に跨り、私は魔理沙の背中に頬を寄せる。
 眼下に見えるは夕日に照らされる紅魔館。
「さぁ、パチュリー、まずはどこへ行く?」
 どこへ行くかなんて決まってる。
「まずは、そうね。あなたの…」

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