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信長の眉間コミュの「戯曲・ノブナガ」vol.1

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○永禄3年(1560年)、5月19日。
 尾洲・田楽桶狭間にて今川義元を今まさに奇襲せんとする織田軍
 激しい雨、稲妻、とどろく雷鳴。
 泥を蹴散らして桶狭間に突っ込んでいく織田軍。
 騎馬上で訳の分からないことを喚き散らし、ギターを掻き鳴らすノブナガ。
 突進していく火の玉のような兵隊の顔、顔、顔。
 それらの音に重なってテーマ曲、
 ローリング・ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」が
 フェイド・インしてくる。
 
 (訳詞)
 オレは暴風雨の中で生まれた、
 叩きつける雨にオフクロは怯えて泣いた
 でも大丈夫、そいつは冗談
 オレは稲妻、ほんの冗談さ
   
 髭だらけの、歯の抜けた年寄に育てられ、
 ムチで打ちのめされ、躾けられた
 でも大丈夫、そいつは冗談
 オレは稲妻、ほんの冗談さ
   
 オレは溺れ、打ち上げられた
 オレは見捨てられ、血を流した
 些細な事にも怒り狂い、
 大きな釘が頭を突き抜け
 そいつが王冠になった
 でも大丈夫、そいつは冗談
 オレは稲妻、ほんの冗談さ〜
 
○閃く稲妻
 〜フラッシュ・バック(モノトーン)
 乳母の乳首を噛み切る赤ん坊のイメージ。
 乳首から血が流れ、乳母は思わず赤ん坊を畳の上に落とす。
 落とされた赤ん坊は泣きもせず、唇に付いた血を舐めている。
 
○那古野城
 夜、一室の障子越しに、燭台の明かりに揺らめく小さな影が見える。影はムズがるように動きまわり、小さな足が障子を蹴破る。小さな手が障子を突き破り、手当たり次第に引き裂いていく。
 吉法師(6才)「(甲高く、悲鳴に近い声で)クソジジイ、嘘を申すでない!」
 平手(45才)「これ、吉法師様、またそのようなことを。おやめ下さいませ、爺は決して嘘など申してはおりませぬ。」
 吉法師「何、嘘ではないと申すか、うぬはこのオレが必ず死ぬというのか、何ということを、オレは決して死なぬ、決して死なぬわ!」
 感極まって障子の桟をへし折り始める吉法師。慌てて抱きすくめ、やめさせようとする平手。なおも手を延ばし桟をひっ掴もうとする吉法師。
 平手「おやめ下さいというのに!何もあなた様が、と申している訳ではございませぬ。人間は生まれ、そしていつか必ず死ぬもの、それをお教えしているのでございます。」吉法師「黙れ、黙れ、誰が死のうとオレは死なぬ、この世が無くなってもオレは無くならぬわ、そのようなごたくを信じよと申すのならうぬの指を噛み切ってくれるぞ、うぬはどうせ死ぬるのだから指なぞ要るまい、爺、その皺だらけの手をよこせ!」
 指を噛まれそうになり慌てて吉法師を遠ざける平手。飛び付き、噛みつこうと追い掛ける吉法師。その顔付きは子供ながら狂気を宿している。
 平手「吉法師様、いい加減になさりませ、これ、おやめ下さい、おやめなさいってば、あっ痛い、痛たた、痛い、放しなされ、吉法師様」
 障子越しに大小の影が揺れながらばたばた走り回る。
 平手「いい加減にしろってんだ、このガキャーッ!!」
  那古野城全景。皓々とした月が城を照らしている。
 平手「イテテテテ!イッテーッ!ヒーッ!」
 場内に響き渡る平手の悲鳴。
 
○吉法師寝所
 夜半、寝床の中でかっと目を見開き、燭台の炎を見詰める吉法師。
 月は尚も皓々と照り、遠くで木々が騒めき、山犬の遠吠えが響いてくる。
 庭の木の幹にセミの幼虫が這い上がり、また別の幹には脱皮したばかりの真っ白いセミが脱け殻につかまって羽を乾かしている。
 突然ミミズクがそのセミをくわえて飛び去っていく。
 その羽音とセミの末期の鳴声を聴いている吉法師
 吉法師「そうか、オレはいつか…死ぬるんじゃな、そう決まっておるんじゃな」
 
○軍議室
 上座で酒を飲んでいる信秀と平手が何やら話している。
 信秀(30才)「あの子はにこりとも笑わぬな」
 左手の人差し指に包帯をまいた平手、信秀の前で平服しながら、ちらりと自分の指の包帯を見る。
 平手「はい、やたらヘラヘラしているよりはよほど男らしいかと存じまするが」
 信秀「あれはまだ六歳の子供ぞ。笑わぬ子供というのも気味が悪いわ。いったい何を考えておるのかさっぱり分からぬ。」
 平手「それは見所のある、敵の目を欺く才に長けている証拠ではございませぬか。」
 信秀「お前は吉法師の事となると何でもいいように解釈しおるな。親馬鹿ならぬ、爺馬鹿めが。とにかくわしはあれの笑うところが見たい。これへ呼んで、笑わせてみよ。」
 平手、信秀の下座へ座った吉法師の前で、なんとか笑わせようと四苦八苦している。(現代風のネタ。コント。)
 にこりともしない吉法師。退屈になり膝を崩して大の字に寝そべり、顔だけ平手の方へ向けている。信秀、やれやれといった様子。
 突然飛び起き、わざと足跡を響かせて部屋を出ていこうとする吉法師。
 振り向きざま甲高い声で叫ぶ。
 吉法師「爺、オレらはいつか死ぬるのであろう。ならばオレはそのような下らぬ芝居につきおうてはいられぬわ。父上、オレはもう行きますぞ。」
 呆気に取られる信秀と平手。

〜暗転〜

<続く>

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