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絵を描いて旅をするコミュの#3 家族の肖像  writ byあゆみ

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砂埃の舞う庭先に、おじいさんが座っていた。
目が合ったので、こんにちは、と声をかける。
その人はくいっと顎を引き下げ、不思議な頷きを見せてくれた。

つい調子に乗って、近寄ってみる。
私、日本人で絵を描いているの、と。

絵を描かせてくれと頼むと、今度はちょっと控えめに頷いてくれた。
近くにいた孫がそれを見て、飛び跳ねるようにおじいさんの肩に乗る。
その子は大声で他の孫、そして両親までもを家の中から呼んできて、
それはまるで家族写真でも撮るかのように、
いつのまにか家族みんながおじいさんを囲んでいた。

白いプラスチックのガーデンチェアに、すこし目を伏せて座る男。
大事になった、と思ったのは、どうも私だけではなかったらしい。

椅子のまわりにぴったりと、家族全員が寄り添って、事の成り行きを見守っている。
まるで自分のことのように。
私が年老いた男を描いている、ただそれだけではなく、
その男の人生までも描かせてもらっている、
いや、描かせてもらわねばならないのだと、そんなように思った。
祖父の右腕に手をかけ、目を輝かせてこちらを凝視する女の子。
おじいさんが描かれることによって、きっとこの子自身も描かれているのだ。

あまりにもみんなが誇らしげで、なんだか恥ずかしくなってしまう。
当事者ふたりの緊張っぷり、といったら、ない。
いや、それだけの男を前にしているのだと、鉛筆を走らせる。
ほっとして出来た絵を見せて笑うと、直ぐさま男はもう限界とばかりに手を振って、
家の中へ入ろうと身を翻すのだった。

そんな彼を引き止めて、サインをお願いする。
みんなにまた何かを言われながら、疲れた顔で、けれどしっかりと
かっこ良く名前を書いてくれた。
サインを見て嬉しいと言うと、家族は笑ってステキな絵だと言ってくれた。

逃げる背中にありがとうとお礼を言う。
そして見守ってくれた家族にも、ありがとう。
おじいさんは素晴らしいね、と言うと、みんなは笑顔で頷いた。

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