皆さん、こんにちは。今月のフラワータイムは、「今を生きる！竜女の誓いと願い」というテーマでお送り致します。
「竜女」の名前やお話は、ご存じの方もいらっしゃることでしょう。
「竜女」は８歳の女の子で、海底に住む竜の一族の王女です。
ある日、文殊菩薩がこの一族に法華経を説いて聞かせたところ、竜女は心の底から喜び、
「私はこの法華経を広めて、すべての衆生を救っていきます！」
と自分から宣言しました。
文殊菩薩は釈尊や他の菩薩たちに、最高の教えである法華経を竜の一族に広めたことを話し、その証拠に、実際に悟りを得た者たちが菩薩となって海の中から涌き出しました。
その様子を見ていた智積菩薩が、
「法華経は深くて得難い、世の中で最高の教えですが、この中に法華経を本当に理解し、自分のものにして、最高の悟りを開いた方はいますか？」
と文殊菩薩に尋ねると、
「いますよ。竜王の８歳の娘です。聡明で、説かれた言葉と意味をよく理解して法華経をたもっています。すべての真理を知り、一瞬のうちに菩薩心を起こし、ひるむことはありません。誓願を持ち、すべてのものに自分と同じ愛情を抱いています。」
と答えました。
智積菩薩は言いました。
「お釈迦様は限りない年月をかけて、難しい修行や苦しい修行を積み重ねて、人々の幸福のため、身も心も投げ打ってきて、成仏できたのです。それなのにこの少女が一瞬のうちに成仏ができたとは信じられない。」
竜女は釈尊の前に進み出て、海底で法華経を聞いた時と同じように「私は法華経を広めて、すべての衆生を救っていきます！」と誓いの言葉を言いました。
ところがそれでも他の菩薩たちは信じようとせず、弟子の中では一番の智慧者と言われた舎利弗は 「あなたは女性だ。女性には５つの障害があって成仏はできないのだ。だからいくら頑張って修行を重ねても、あなたは仏にもなれないし、第六天の魔王にも転輪聖王にもなれないはずだ。私たちはあなたの成仏を信じない。」
と不信の言葉を投げつけたのです。
竜女は舎利弗の言葉に反論することなく、自分が持っていた「宇宙大の価値がある、たった１つの宝」を取り出しました。それは竜女自身の生命のことです。その宝を釈尊に捧げ、釈尊はその宝を受け取りました。
そして竜女は、舎利弗に質問をしました。
「釈尊が私の宝を受け取るのは速やかでしたか？」
舎利弗は「とても速やかでした。」と答えました。
すると竜女は舎利弗に向かって叫びました。
「あなたたちの神通力をもって、私の成仏をみなさい！私の成仏は、私の宝を釈尊が受け取った時よりも速やかだ！」
竜女はあっと言う間に成仏の姿を現し、衆生に法華経を説き始めました。
その姿をみた舎利弗たちは黙って信じるしかありませんでした。
これが「竜女の成仏」として語られている物語です。ここまで聞いて、皆さんはどう思われたでしょうか？
「これは自分の話だ！」と思う方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
なぜこれが竜の一族でもない、現代の私たち１人１人の話になるのでしょうか。
竜女は「私の成仏をみなさい！」と叫んでいますが、大聖人はこの叫びについて、
「舎利弗よ、これを竜女だけの成仏と思うことが見当違いなのだ。自分の成仏であると観ていくことなのだと、竜女が舎利弗を責めたのだ」
と御義口伝で仰せです。
池田先生はこの竜女の成仏について、
「竜女の成仏は、全女性の成仏を表すだけでなく、じつは男性の成仏も表しているのです。女性の成仏を否定する男性は、自分の成仏を否定しているのです。皆、そこがなかなか分からない」
「女性を差別する思想に対して、実証をもって、それを打ち破った大いなる人権宣言なのです。」
と述べられています。
ではどうして、この竜女の成仏がこれほどまで大きな意味を持つのでしょうか。
今の時代では「死んで仏になる」ことを成仏と言いますが、本来の意味は「自分の中にある仏界を開き、確立する」ことです。
仏界を開いて確立するというと難しく聞こえるかもしれませんが、「生命には無限の可能性がもともとあるのだ」ということを信じることができる状態のことです。
「悟りを開く」という言葉も、別に特別なことが分かるようになるということではなく、「皆もともと持っているものだと目覚めること」という意味です。
なので、先ほど智積菩薩が「最高の悟りを開いた方はいますか？」と言ったのは、「生命には無限の可能性があり、それは皆がもともと持っているのだと信じることができた人はいますか？」という意味なのです。
法華経以外の経文でも「成仏」の話は出て来ますが、「女性は無理」、「知恵や知識はあっても人に尽くす心がない二乗の境涯の人間は無理」、「悪人はもっと無理！」などと、必ず「成仏できない、生命の無限の可能性を信じることができない」存在が書かれていました。
竜女は海に住む竜の一族の王女でしたが、体は蛇という畜生のからだを持ち、嫉妬や憎悪といった感情に振り回されやすい「女性」という性別に生まれ、法華経を聞いた時はまだ８歳と、生命の無限の可能性を本当に自分から信じ、それを他の衆生にも教えていくことなどできるわけがないという条件がこれでもかと積み重なっていました。
しかし、竜女は「私は法華経を広めて、苦しむ衆生を救っていきます！」と誰に強制された訳ではなく自ら誓いを立てました。
この誓いは、菩薩が仏界を顕すために誓う４つの誓願（四弘誓願）のうち、成仏に不可欠な第一番目の誓いである「衆生無辺誓願度」の宣言でした。
実は法華経の経文では、舎利弗も含めてすべての釈迦の弟子たちが、将来の成仏の約束（記別）を与えられただけで、誰一人即身成仏は出来ていないのです。その中で、法華経を広めて、苦しむ衆生を救っていくと自分から宣言し、自分の全てを苦しむ衆生のため、法華経のために捧げていくという誓願をした竜女がたった一人だけ、その身のままで成仏したというドラマを起こしているのです。
それは、どんなに法華経の修行をしても、智慧が優れていようとも、優れた能力を持っていようとも「生命の無限の可能性を信じ、苦しむ衆生を救っていくという誓い」がなければ、一番大事なものを見失った元品の無明に負けた姿であり、逆にどんなに不利な条件の中に生きていようとも、竜女のように自分の人生も欠点も全て法華経に捧げ、一切衆生に尽くして行くのだという強い誓願があれば、必ず仏界は開けるという証明がこの竜女の成仏なのです。竜女がどのような生活を送っていたのかは想像の範囲でしか分かりませんが、一族の中では王女という立場であっても、蛇の身体を持ち、女性は身分が低い、子供は身分が低いと、徹底された身分制度が厳しい時代の中では、一歩外に出た時には激しい差別の嵐に巻き込まれ、たくさん傷つくこともあったでしょう。このまま差別されて一生を終えるのかと絶望したこともあったでしょう。
しかし、法華経に出会い、師匠に出会い、「自分の置かれている立場にばかり気を取られて、自分にもともとある無限の可能性が見えなくて苦しんでいる衆生を必ず救っていこう！」と決意したその瞬間から、竜女の持つプラスの事もマイナスの事も衆生を救って行くための手段となり、勇気と希望を与える存在へ大きく舵を切ったのです。
これは竜女が、竜女の未来の時代を生きて行く私たちを含めた一切の衆生に残してくれた、それぞれが歩むべき最高の姿なのです。
学会に所属している方でも、「先祖の宿業が重い」、「過去世の謗法が重い」、「なぜ私はこんなに宿業が深いのだろうか？」、「この宿業だけは、今世では転換できないのではないか」、「今の、悩みが多い私には、苦しむ人、悩む人を救って行くことなどできない。自分の悩みを解決してから他の人を助けよう。」などと思うこともあると思います。
池田先生がよく本幹の同時中継のときに引いて指導してくださったロマン・ロランは、
「自分の魂が救われるか救われないかという事ばかりにこだわっていれば、救われることからかえって遠ざかる。君が君自身を救いたいなら、人間を救え！」
と述べています。
不利な環境に左右されるか、不利な環境だからどうしていくのかでは雲泥の差があります。
せっかくお題目をあげて祈っていても、自分のことばかりに汲々としているままでは、無限の可能性を信じるという、仏法で一番大事なことを見失ってしまうのです。
今は、釈尊が生きた時代とは違う、末法の世の中です。
釈尊の時代も、悩み苦しむ衆生はたくさんいたでしょうが、現代も悩み苦しむ人は数多くいます。
大聖人は、「宿命は民衆救済の使命である」「本尊の当体は、仏壇の中の本尊ではなく、私たち１人１人の事であり、一切衆生を救う挑戦を続けなければ、成仏はできない！」と教えてくださっています。
宿命はその人の使命であり、苦しむ衆生を数っていく武器として使うことによって、救われる立場だけから、救っていく立場への大きな転換のドラマが始まるのです。
私たちも、それぞれが竜女と同じように、悩みも、欠点も、失敗も、弱気も、宿命も、プラスの事だけではなく、自分自身のマイナスの事も全てを大聖人に捧げて、「このようにマイナスの面もある自分だけれども、苦しみ、悩む人々を必ず救っていきます！」という竜女と同じ誓いを心の底から起こしてお題目をあげた時、自分の全てが苦しみ悩む人々を励まし、蘇生させる武器に変わるのです。
この「竜女の祈り」を実践することで、同じ苦しみを持った人の心を、事実として温かく包み込む精神の大きさが生まれますが、実際に脳科学の目から見ても、この竜女の祈りは身体に劇的な変化を起こします。
竜女の祈りをすると、大脳の中の前頭葉という、人間の想像力や共感力をつかさどっている部分の神経が発達し、司令塔である脳の変化によって遺伝子などが劇的に変化します。実際にこの祈りを行った女子部の方で、長年苦しんでいたアトピーの肌が、一晩で正常なきれいな肌になって、同時にうつ病が治ったという体験がありました。これは奇跡ではなく、「病気に悩む自分だけど、自分の全てを捧げて苦しむ人を救っていきます！」という誓願の折りが、遺伝子などを劇的に変化させた結果だと言えます。竜女の祈りを根本とすることにより、自分のふるまいの全てが即座に衆生を救う武器に変わるとお話ししましたが、最後にヨーロッパＳＧＩのメンバーの竜女の祈りの体験を簡単にご紹介します。
まず１人目は、ュダヤ人のご婦人を毎日折伏に行っている方からのご報告です。
ユダヤ人が虐殺された話は、誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、折伏先のこの女性も祖父母やご親族がアウシュビッツの強制収容所で全員殺されてしまったそうです。
女性の元夫は麻薬中毒、女性自身も２歳のころから孤児院で育ち、若いころは麻薬とパーティーで身体をぼろぼろにし、手術が必要になるほど。現在は身寄りもなく、２人の子供達と一緒に家具や壁が傷だらけの寒いアパートに住んでいます。
これだけ深い宿業だけれども、本当に仏法で転換できるのかと聞かれ、「宿命を使命に！」と激励したそうです。
激励から３日目。これまでは、題目をあげると全力で体当たりしてきて邪魔をした子供達がおとなしく遊んでいました。
それは、ユダヤ人のご婦人が、新しくタンスを居間に置き、仏壇を置くためのスペースを作り、ロウ
ソクとお供えをするまでに一念が変化した結果でした。
そして、折伏したＳＧＩメンバーに、
「私が使命に生ききれば大丈夫とあなたが言ってくれたから、後は使命を果たすのみです。」
と言ったそうです。
暗く、心が冷えきるような闇の中にいた民衆の１人が、「これでもか！」というほど強烈な宿業を使命に変えた瞬間でした。
２人目の竜女は、ブラジル人の国際環境弁護士です。
信心して４年目の彼女は、ヨーロッパを舞台として活躍しています。
彼女はブラジルのアマゾン川沿いを緑化し、貧しい人達に仕事を提供できるというすばらしいプロジェクトを抱えていました。
しかし、実現がなかなか難しく、この時は何とかベルギーの大臣に企画書を渡したいと苦心していましたが、渡す機会は巡ってきませんでした。
彼女は、「自分の血の最後の一滴までご本尊に捧げる」思いで、竜女の祈りを泣きながら実践。
翌日ブリュッセルの街で食事をしていたら、何と、そこに大臣の一行がいて企画書を手渡しすることができたとのことでした。
世界広布の時代、様々なドラマが今、この時も生まれています。
今年のドラゴン・イヤーは、竜女の誓願の祈りを根本に、自分の全てを悩める人達のために尽くすという心を基盤に、仏法の縁をそれぞれの場所で広げて行きましょう！
「竜女」の名前やお話は、ご存じの方もいらっしゃることでしょう。
「竜女」は８歳の女の子で、海底に住む竜の一族の王女です。
ある日、文殊菩薩がこの一族に法華経を説いて聞かせたところ、竜女は心の底から喜び、
「私はこの法華経を広めて、すべての衆生を救っていきます！」
と自分から宣言しました。
文殊菩薩は釈尊や他の菩薩たちに、最高の教えである法華経を竜の一族に広めたことを話し、その証拠に、実際に悟りを得た者たちが菩薩となって海の中から涌き出しました。
その様子を見ていた智積菩薩が、
「法華経は深くて得難い、世の中で最高の教えですが、この中に法華経を本当に理解し、自分のものにして、最高の悟りを開いた方はいますか？」
と文殊菩薩に尋ねると、
「いますよ。竜王の８歳の娘です。聡明で、説かれた言葉と意味をよく理解して法華経をたもっています。すべての真理を知り、一瞬のうちに菩薩心を起こし、ひるむことはありません。誓願を持ち、すべてのものに自分と同じ愛情を抱いています。」
と答えました。
智積菩薩は言いました。
「お釈迦様は限りない年月をかけて、難しい修行や苦しい修行を積み重ねて、人々の幸福のため、身も心も投げ打ってきて、成仏できたのです。それなのにこの少女が一瞬のうちに成仏ができたとは信じられない。」
竜女は釈尊の前に進み出て、海底で法華経を聞いた時と同じように「私は法華経を広めて、すべての衆生を救っていきます！」と誓いの言葉を言いました。
ところがそれでも他の菩薩たちは信じようとせず、弟子の中では一番の智慧者と言われた舎利弗は 「あなたは女性だ。女性には５つの障害があって成仏はできないのだ。だからいくら頑張って修行を重ねても、あなたは仏にもなれないし、第六天の魔王にも転輪聖王にもなれないはずだ。私たちはあなたの成仏を信じない。」
と不信の言葉を投げつけたのです。
竜女は舎利弗の言葉に反論することなく、自分が持っていた「宇宙大の価値がある、たった１つの宝」を取り出しました。それは竜女自身の生命のことです。その宝を釈尊に捧げ、釈尊はその宝を受け取りました。
そして竜女は、舎利弗に質問をしました。
「釈尊が私の宝を受け取るのは速やかでしたか？」
舎利弗は「とても速やかでした。」と答えました。
すると竜女は舎利弗に向かって叫びました。
「あなたたちの神通力をもって、私の成仏をみなさい！私の成仏は、私の宝を釈尊が受け取った時よりも速やかだ！」
竜女はあっと言う間に成仏の姿を現し、衆生に法華経を説き始めました。
その姿をみた舎利弗たちは黙って信じるしかありませんでした。
これが「竜女の成仏」として語られている物語です。ここまで聞いて、皆さんはどう思われたでしょうか？
「これは自分の話だ！」と思う方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。
なぜこれが竜の一族でもない、現代の私たち１人１人の話になるのでしょうか。
竜女は「私の成仏をみなさい！」と叫んでいますが、大聖人はこの叫びについて、
「舎利弗よ、これを竜女だけの成仏と思うことが見当違いなのだ。自分の成仏であると観ていくことなのだと、竜女が舎利弗を責めたのだ」
と御義口伝で仰せです。
池田先生はこの竜女の成仏について、
「竜女の成仏は、全女性の成仏を表すだけでなく、じつは男性の成仏も表しているのです。女性の成仏を否定する男性は、自分の成仏を否定しているのです。皆、そこがなかなか分からない」
「女性を差別する思想に対して、実証をもって、それを打ち破った大いなる人権宣言なのです。」
と述べられています。
ではどうして、この竜女の成仏がこれほどまで大きな意味を持つのでしょうか。
今の時代では「死んで仏になる」ことを成仏と言いますが、本来の意味は「自分の中にある仏界を開き、確立する」ことです。
仏界を開いて確立するというと難しく聞こえるかもしれませんが、「生命には無限の可能性がもともとあるのだ」ということを信じることができる状態のことです。
「悟りを開く」という言葉も、別に特別なことが分かるようになるということではなく、「皆もともと持っているものだと目覚めること」という意味です。
なので、先ほど智積菩薩が「最高の悟りを開いた方はいますか？」と言ったのは、「生命には無限の可能性があり、それは皆がもともと持っているのだと信じることができた人はいますか？」という意味なのです。
法華経以外の経文でも「成仏」の話は出て来ますが、「女性は無理」、「知恵や知識はあっても人に尽くす心がない二乗の境涯の人間は無理」、「悪人はもっと無理！」などと、必ず「成仏できない、生命の無限の可能性を信じることができない」存在が書かれていました。
竜女は海に住む竜の一族の王女でしたが、体は蛇という畜生のからだを持ち、嫉妬や憎悪といった感情に振り回されやすい「女性」という性別に生まれ、法華経を聞いた時はまだ８歳と、生命の無限の可能性を本当に自分から信じ、それを他の衆生にも教えていくことなどできるわけがないという条件がこれでもかと積み重なっていました。
しかし、竜女は「私は法華経を広めて、苦しむ衆生を救っていきます！」と誰に強制された訳ではなく自ら誓いを立てました。
この誓いは、菩薩が仏界を顕すために誓う４つの誓願（四弘誓願）のうち、成仏に不可欠な第一番目の誓いである「衆生無辺誓願度」の宣言でした。
実は法華経の経文では、舎利弗も含めてすべての釈迦の弟子たちが、将来の成仏の約束（記別）を与えられただけで、誰一人即身成仏は出来ていないのです。その中で、法華経を広めて、苦しむ衆生を救っていくと自分から宣言し、自分の全てを苦しむ衆生のため、法華経のために捧げていくという誓願をした竜女がたった一人だけ、その身のままで成仏したというドラマを起こしているのです。
それは、どんなに法華経の修行をしても、智慧が優れていようとも、優れた能力を持っていようとも「生命の無限の可能性を信じ、苦しむ衆生を救っていくという誓い」がなければ、一番大事なものを見失った元品の無明に負けた姿であり、逆にどんなに不利な条件の中に生きていようとも、竜女のように自分の人生も欠点も全て法華経に捧げ、一切衆生に尽くして行くのだという強い誓願があれば、必ず仏界は開けるという証明がこの竜女の成仏なのです。竜女がどのような生活を送っていたのかは想像の範囲でしか分かりませんが、一族の中では王女という立場であっても、蛇の身体を持ち、女性は身分が低い、子供は身分が低いと、徹底された身分制度が厳しい時代の中では、一歩外に出た時には激しい差別の嵐に巻き込まれ、たくさん傷つくこともあったでしょう。このまま差別されて一生を終えるのかと絶望したこともあったでしょう。
しかし、法華経に出会い、師匠に出会い、「自分の置かれている立場にばかり気を取られて、自分にもともとある無限の可能性が見えなくて苦しんでいる衆生を必ず救っていこう！」と決意したその瞬間から、竜女の持つプラスの事もマイナスの事も衆生を救って行くための手段となり、勇気と希望を与える存在へ大きく舵を切ったのです。
これは竜女が、竜女の未来の時代を生きて行く私たちを含めた一切の衆生に残してくれた、それぞれが歩むべき最高の姿なのです。
学会に所属している方でも、「先祖の宿業が重い」、「過去世の謗法が重い」、「なぜ私はこんなに宿業が深いのだろうか？」、「この宿業だけは、今世では転換できないのではないか」、「今の、悩みが多い私には、苦しむ人、悩む人を救って行くことなどできない。自分の悩みを解決してから他の人を助けよう。」などと思うこともあると思います。
池田先生がよく本幹の同時中継のときに引いて指導してくださったロマン・ロランは、
「自分の魂が救われるか救われないかという事ばかりにこだわっていれば、救われることからかえって遠ざかる。君が君自身を救いたいなら、人間を救え！」
と述べています。
不利な環境に左右されるか、不利な環境だからどうしていくのかでは雲泥の差があります。
せっかくお題目をあげて祈っていても、自分のことばかりに汲々としているままでは、無限の可能性を信じるという、仏法で一番大事なことを見失ってしまうのです。
今は、釈尊が生きた時代とは違う、末法の世の中です。
釈尊の時代も、悩み苦しむ衆生はたくさんいたでしょうが、現代も悩み苦しむ人は数多くいます。
大聖人は、「宿命は民衆救済の使命である」「本尊の当体は、仏壇の中の本尊ではなく、私たち１人１人の事であり、一切衆生を救う挑戦を続けなければ、成仏はできない！」と教えてくださっています。
宿命はその人の使命であり、苦しむ衆生を数っていく武器として使うことによって、救われる立場だけから、救っていく立場への大きな転換のドラマが始まるのです。
私たちも、それぞれが竜女と同じように、悩みも、欠点も、失敗も、弱気も、宿命も、プラスの事だけではなく、自分自身のマイナスの事も全てを大聖人に捧げて、「このようにマイナスの面もある自分だけれども、苦しみ、悩む人々を必ず救っていきます！」という竜女と同じ誓いを心の底から起こしてお題目をあげた時、自分の全てが苦しみ悩む人々を励まし、蘇生させる武器に変わるのです。
この「竜女の祈り」を実践することで、同じ苦しみを持った人の心を、事実として温かく包み込む精神の大きさが生まれますが、実際に脳科学の目から見ても、この竜女の祈りは身体に劇的な変化を起こします。
竜女の祈りをすると、大脳の中の前頭葉という、人間の想像力や共感力をつかさどっている部分の神経が発達し、司令塔である脳の変化によって遺伝子などが劇的に変化します。実際にこの祈りを行った女子部の方で、長年苦しんでいたアトピーの肌が、一晩で正常なきれいな肌になって、同時にうつ病が治ったという体験がありました。これは奇跡ではなく、「病気に悩む自分だけど、自分の全てを捧げて苦しむ人を救っていきます！」という誓願の折りが、遺伝子などを劇的に変化させた結果だと言えます。竜女の祈りを根本とすることにより、自分のふるまいの全てが即座に衆生を救う武器に変わるとお話ししましたが、最後にヨーロッパＳＧＩのメンバーの竜女の祈りの体験を簡単にご紹介します。
まず１人目は、ュダヤ人のご婦人を毎日折伏に行っている方からのご報告です。
ユダヤ人が虐殺された話は、誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、折伏先のこの女性も祖父母やご親族がアウシュビッツの強制収容所で全員殺されてしまったそうです。
女性の元夫は麻薬中毒、女性自身も２歳のころから孤児院で育ち、若いころは麻薬とパーティーで身体をぼろぼろにし、手術が必要になるほど。現在は身寄りもなく、２人の子供達と一緒に家具や壁が傷だらけの寒いアパートに住んでいます。
これだけ深い宿業だけれども、本当に仏法で転換できるのかと聞かれ、「宿命を使命に！」と激励したそうです。
激励から３日目。これまでは、題目をあげると全力で体当たりしてきて邪魔をした子供達がおとなしく遊んでいました。
それは、ユダヤ人のご婦人が、新しくタンスを居間に置き、仏壇を置くためのスペースを作り、ロウ
ソクとお供えをするまでに一念が変化した結果でした。
そして、折伏したＳＧＩメンバーに、
「私が使命に生ききれば大丈夫とあなたが言ってくれたから、後は使命を果たすのみです。」
と言ったそうです。
暗く、心が冷えきるような闇の中にいた民衆の１人が、「これでもか！」というほど強烈な宿業を使命に変えた瞬間でした。
２人目の竜女は、ブラジル人の国際環境弁護士です。
信心して４年目の彼女は、ヨーロッパを舞台として活躍しています。
彼女はブラジルのアマゾン川沿いを緑化し、貧しい人達に仕事を提供できるというすばらしいプロジェクトを抱えていました。
しかし、実現がなかなか難しく、この時は何とかベルギーの大臣に企画書を渡したいと苦心していましたが、渡す機会は巡ってきませんでした。
彼女は、「自分の血の最後の一滴までご本尊に捧げる」思いで、竜女の祈りを泣きながら実践。
翌日ブリュッセルの街で食事をしていたら、何と、そこに大臣の一行がいて企画書を手渡しすることができたとのことでした。
世界広布の時代、様々なドラマが今、この時も生まれています。
今年のドラゴン・イヤーは、竜女の誓願の祈りを根本に、自分の全てを悩める人達のために尽くすという心を基盤に、仏法の縁をそれぞれの場所で広げて行きましょう！
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