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SF小説『Public of Born』コミュの【2】●●●『発起』●●●

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 ■PSYCHOANALYSIS BOX■

午後になって、呼ばれた12人がブレーントレーニングルームに集まった。
ゆっくりと【TC教官】が入ってきた。

「それでは、今日の試験の概要を伝える。
これから諸君に、このサイコアナリシスボックス(精神分析室)略してP―BOXに入ってもらう。

このP―BOXは君たちの深層精神意識体に働きかけて
様々なフォビア(phobia・恐怖)を作り出す。
それは君たちが創り出す自分に対してのフォビアだ。
すなわち深層精神意識体でのシュミレーションなので、
君達の目の前に展開する事は私にも想像はつかない訳だ。

どんな敵も、あらゆる方法を使ってもかまわないから
徹底排除してもらいたい。
しかし、あくまで自分が作り出す恐怖のイメージが
実像になって、君達を襲う。

様々なphobiaに対していかに耐えうるか
そして、恐怖に対峙して排除し得るかが課題だ。
それによって、自分の中に産まれて来る一種の精神による
細胞の活性と集中を見せてもらいたい。
あくまで、シミュレーションなので身体には影響は無いと思われるが、
100%と言う事ではない事を伝えておく。
リミッターは50だ。
神経を集中しろ!β−6波が、君達を助けてくれるはずだ。幸運を祈る!・・」

ゆっくりと全員を見まわして【TC教官】が叫んだ。
「まずは【YOL】からだ。」
【YOL】がP−BOXの中へ入った。
外からは、なんの変化も見られない。
ガラスの向こう側にオペレーターと【TC教官】が何か小声でしゃべっている。
突然、【YOL】の顔が歪んだと思うと
「ハゥ!」
動物のような叫び声と共に床に倒れこんだ。

「10秒も持たんのか!それで精鋭といえるのか!衛生兵!」
タンカーで運ばれて行く。
「いいか!シミュレーションとはいえ、イメージで出てくる者達は、
はっきりと意思を持っている。もしお前達がそいつに食われたら、
捕り込まれることもある。
バランスが崩れた状態をアニマが包み込んで治癒しようとするからだ。
しかし、一旦捕り込まれたらそこから出てくるのは用意ではない!わかったか!
次!【RIKO】だ」
…結果は同じだ。【トヨタク】も【sami】も同じだった。

「なんだお前等!ブラックアウトか!今まで何をしていた!」
「次だ!おお、【かおり】か、君には期待いいんだな?」
「はい!わかりました!がんばります!」
【かおり】が敬礼をする。
機敏な動作でP-BOXの中に入った。

天井から二本のセンサーが静かに下りてきて止まる。
続いて白い網のようなものが天井を覆った。
しばらくすると僅かに振動し始め小さく火花が飛び交う。
軽く音を発したかと思うと、網全体が瞬間的に電磁波を放出した。

あの小さな身体に大きなエネルギーを蓄えているのか分からないが。
いつも【かおり】は笑っていた。

そして、今もP-BOXの中で少し笑っているようにも見えた。
ゆっくりと【かおり】は瞳を閉じた。
しばらくは何も変わらない状態が続いたが、
電磁波が放出された時から少しずつ変化が現れ始めた。
既に1分は経過している。
その頃から、ボンヤリと【かおり】の体を青い光が包み始めていた。
姿勢も変わらず顔色も変わらない、穏やかな表情だ。
「ほう!面白い、この現象は始めてだな・・脳波の動きはどうか?」
「はっ!β―6波が大量に反応を繰り返しております・・ただ・・」
「ただ、何か!早く言え!」
「はあ、通常の物とは少し違います」
「どういう事なんだ!」 
「β−6波にシンクロするように。アデオロギ線が
開いたり閉じたりしているんです。」
「アデオロギだと!その機能そのものは、数万年も前に死滅していると聞いているが・・」
「だから、おかしいのです。そんなはずは無いんですが…」
「これはっ!もしかしたら・・遺伝子が踊り始めているのか?」
「遺伝子が踊ってる?・・んですか?」
「いや。聞かなかった事にしろ!いいな」
「ハッ!」 
起立して最敬礼をした。

白い網状の物はボンヤリと光を強くしたり弱くしながら色を変えて輝いていた。
【かおり】取り巻く青い光はゆっくりと小さな粒に形を変えていき。
一層、輝きを増しながら【かおり】の体の周りをまるで衛星のように
周回を続けている。【かおり】の表情は変わらない。
「よし、リミッターを上げてみろ。65%だ。」
「はい。分かりました。」オペレーターが卓のスライダックを65%に合わせる。
【かおり】の表情が少し歪んだが、また平穏に戻った。
「80%だ!。」
「いえ!これ以上は危険です。自己意識を破壊する恐れがあります。」
「かまわん!上げろ!」
「はい・・わかりました」
80%に合わせると、
網が揺れ始め音が一段と大きくなる。

ウォォォォォォォォォォォンンンン
【かおり】の顔から汗が吹き出てきた。・・と、瞬間。
周回を続けていた青い小さな粒が一斉に【かおり】の体の中に消えた。
「キャアアア!!」悲鳴と共に【かおり】が崩れ落ちる。
「よし!ストップだ。」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥンンンンンンンン…・あたりは、静けさを取り戻す。
「うっ・・ゲホッ!」【かおり】が苦しそうに嘔吐した。
「危険だ!衛生兵!」

「【TC教官】!何故リミッターを上げたのですか!これじゃあ試験じゃない!
拷問だ!あれだけがんばったのに、【かおり】を見てください!」
【TC教官】に食って掛かったのは【まあく】だった。
いつもは冷静な【まあく】が完全に自分を失っている。

「ばかもん!戦場じゃあなあ。敵にはリミッターなぞ無いんだぞ!
お前達はいずれ戦場に出て行く、その為の目安となる試験であるし
訓練なのだ!それを忘れんようにな。分かったか!分かったら
BOXに入れ。次は【まあく】だ」

■ 再びPSYCHOANALYSIS BOX ■

【まあく】はもう、15分間もP―BOXの中にいた。
汗を流し破れてしまった服を踏みつけながら上半身裸で
見えない敵と戦っていた。
「この男のタフさは何処から来るのか?」
ひとり言のように【TC教官】はガラスに向かって話しかけ見守っていた。
【まあく】はクン・フーのようなカラテのような格闘技の殺陣に似た動きを
繰り返していてかなりの人数の敵と戦っているようだった。
しかし、時間が時間だけに徐々に迫ってくる疲労の色は隠せなかった。
「あうっ!」やられた表情の数が増えてくる。
とその時【まあく】が両手を上に上げたかと思うと妙な動きと共に
両手の指を色んな形に組みながらおろしてくる。
それが丁度、胸の所まで降りてきたかと思うと。
一瞬輝いたかと思った。無論それは幻に過ぎなかったが。
【まあく】の髪がザワザワ動き始めゆっくりと逆立って行く。
「なに!スーパーサイヤ人なのか?・・」
(あっと・・まちがい・・)
「なに!数値の上がりが異常だな」
「はい!何が起こったのでしょう?」
「肉体と精神のシンクロが起こったのだ・・こいつ等は【かおり】といい
俺を随分、楽しませてくれる・・」
やがて「よし。もういい!クリアーだ」【TC教官】の声が鳴り響くと。
軽い振動と共に音が止まった。
【TC教官】が近寄り「ごくろう」とねぎらった。
すると
「【TC教官】!何故、俺にはリミッターを上げてくれなかったんですか?」
とまたもや食って掛かった。
「お前はそういう戦い方をしてもらう。戦場に出た時、小さなザコと限りなく戦うのだ」
【まあく】は納得のいかない表情ではあったが、そう言われれば
一も二も無かった。
「【まあく】その動きは何処で覚えた?」【TC教官】が聞く
「はい!私の祖父はニホンジンの系統でした・・」
「ふふ・・それで、【かおり】の時あれほどいきり立ったのかな?」
「いえ・・そう言う訳では・・」
「まあいい。お前の祖父に感謝しろ。ともかくお前は今までとはまた違う
タイプを作ろうとしている・・俺はお前に感謝してるぞ」
「あ・ありがとうございます!」【まあく】は最敬礼をした。
「次は・・【KENOBI】だ・・」
ルーム内が一瞬シンとなった。まるで何かが起きるのかを知っているように。
何も答えずに【KENOBI】がP−BOXの入る。

■ metamorphose (メタモルフォーゼ) ■

「よし!【KENOBI】入れ!」
いつもはお喋りのはずの【KENOBI】が何も喋らずにP−BOXの中に入った。
「75%から始めろ。」静かにオペレータに指示を出す。
「えっ!75%ですか?それはあまりに・・」
「いいから75%に合わせろ。」
「はい、分かりました」
丁度その時【がぁ】がルームに入ってきた。
「まいど。」
「おや?【がぁ】じゃないか。こんな所に勝手に入ってきて叱られないかい?」
【PAPA】さんが気付いて声をかけた。
「これからですか?」【KENOBI】の方を見て答えた。
「ああ・・誰も何も知らされていないんだが妙に空気を感じ取る連中が
集まっているのでな。何かが始まる予感めいたものを感じ取っているのさ」
「はあ・・」知っているのかそうでないのか頼りなく答える【がぁ】。
ウィイイイイイイイイーーーーーンンンン!
いきなり軽い振動と共に始まった。
あの【かおり】でさえもブラックアウトした寸前のリミッターだ。
【KENOBI】は平然と立っていた。
「なんやあいつ。バカなんかすごいんかわからんなあ。」
間延びした口調でつぶやく【がぁ】。
口元には微かに笑みさえ浮かべている。
「おい!本当に75%なのか?」
「はい、間違いはありません」
「一体どうなってるんだ?普通の人間が絶えられる限界だと言うのに
平然と立っていられる奴は・・何者なんだ?」
「【TC教官】!見てください!α波とΩ波が・・」
「何!どういうことか?!」
「分かりません!α波は精神集中した際には多量に出るものですがΩ波は
通常は非常に微量であり10年前にはまだ知られていないほどでした!」
「むうっ!・・αでありΩである・・か・・」
「どういう事ですか?」
「古代の哲学者の言葉だ。『始まりであり終わりである、1にして無限であり、
以上で無く以下でもない、すなわち、全てを含む全てである』どういうことなんだ?
【KENOBI】今、お前は何処をさ迷っていると言うのだ…。」

「あ〜気持ち良いなあ」【KENOBI】は言い知れぬ心地よさに酔っていた。
身体がフワフワと浮揚している感じ・・いや・・文字通り浮揚していた。
「【KENOBI】気持ち良さそう・・私も気持ち良い・・」【125】が話しかける
「あぁ、【125】いたのか・・何時も飛んでいるお前の気持ちがわかるよ
何て気持ちが良いんだ。身体が一切の重力から開放されているみたいだ」
今【KENOBI】は自分の住んでいる街を、浮遊しながら見下ろしていた。
「あっ【がぁ】だ。お〜い【がぁ】!あいつまた体感聞いてるんだな?
だから、僕の声は聞こえないんだ。フフフ・・脅かしてやろうかな?」
下に下りようとした時、突然風が吹いてきた。
「ワアアアアアアアア」どんどん流されて行く。
次第に街の風景は無くなり、郊外へと飛ばされて行った。
「何処まで行くんだろう・・」【KENOBI】はボンヤリと考えていた。
しばらくすると身体がゆっくり降下を始めた。
「あれ?なんだか見た事がある風景だなあ・・すごく懐かしいような・・
胸が締め付けられるような気持ちだ・・なんだろう?この感じ・・」
地上に降り立った。

「構わん!100%に上げろ」
「無理です。P―BOXそのもののリミッターを越えてしまいます。」
「くどくど言ってないでやれ!」
ブレーントレーニングルーム全体が振動に包まれ始め
何かが焼ける匂いが充満し始める。
「いくらなんでもやりすぎやないかなあ・・【TC教官】意地になってるみたいや」
【がぁ】が【PAPA】さんに話しかける・・【PAPA】さんはじっと見入っていて答えなかった。

「ここは・・母さん・・の・・!!・・母さんがいる!母さ〜ん!」
母さんの面影は何時もおぼろげではっきりは記憶に無かったが
始めて分かったここで僕は生まれて母さんと父さんと暮らしていたんだ・・」
母さんも【KENOBI】に気がついた様子で少しビックリしたようだったが
すぐに分かったようで【KENOBI】に話しかけてきた。
「【KENOBI】かい?【KENOBI】なのかい?・・」
「そうだよ!母さん!僕は戻ってきたんだ!」
近寄ろうと走りかけた瞬間。
母さんと【KENOBI】の間を裂くように閃光が走った!
小さな泡のようなものがグルグル旋回を始めゆっくりと形を作って行く
人型の形を取り始め透明色から色が濃くなった。
そして、ゼルメダ星人の兵士が出現した!
「なにい!お前!どけ!」【KENOBI】が叫ぶ!

「探したよ【KENOBI】・・やっと見つけた・・クゥークゥクゥ」
鳥のような笑い声だ。
「今のうちにお前をつぶさなければならんのよ。悪く思うなよ!」
両手を前にかかげた!突然、何も無い空間から銃のようなものが表われた。

「やめろ!」
「そう言う訳にゃあまいりません。蒸発しろ!【KENOBI】!」
引き金を引こうとしたその時、
ゼルメダ兵士の背後に影のようなものが現れた。
その陰は有無を言わさず、そいつに回し蹴りを食らわす!。
白い泡の尾を引きながら頭だけがふッ飛び転がった。

「【PAPA】さん!どうしてここへ!」
形があるようで、姿は透けて見える。
「どうしてもこうしてもあるか!ウウ・・よくこの空間に耐えられるな。
俺はもうだめだ行くぞ!」
「あっ!待って!行かないで!」
【PAPA】さんは消えた・・。

「今の奴がゼルメダ軍の・・」
「キャアァァァ」

声に振り向くとさっきの奴が自分の頭を肩の上に乗せて再生をしようとしていた。
「うるせえ奴だ!」
ポーンとジャンプして母さんの背後に回った。

「なに!やめろ!母さんに触るなあ!」
「フエフエエフエエ・・こいつを食ってやるぜ!」
「手を離せええええええ!」
【KENOBI】は身体の中に何かもう一つ別の自分が育って行くのを感じていた。
「ニャニオ!俺に指図するなあ!」

母さんの頭に手をかけて一気に身体を引き裂いた
「ギャアアアアアア!」
母さんの叫び声と共に血しぶきが辺り一面に飛び散りその一部が【KENOBI】にも降り注いだ。
母親の血液を額に垂らしながら【KENOBI】の身体がブルブル震え始める。
「お前!お前!お前!…・母さああああああんんんんん!!!!」
》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》ギン!《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《

【KENOBI】は苦しげに身体をくねっていた。
ドサッ【PAPA】さんがまるで上から落ちてきたように倒れた。
「だいじょうぶですか?」
【がぁ】が身体を起こす。
「グウウ・・すごい世界だ・・【TC教官】!す・すぐに中止しろ!」

「どうした!?【PAPA】さん・・何かあったか?【がぁ】。」
「ええと・・チョット前から変やなあと思ってたんやけどな・・
【PAPA】さん一瞬体が透けたように見えたんです・・
そしたらいきなり倒れてきて・・」
「飛んだな・・【PAPA】さん・・大丈夫か?」
「ああ。シグナルがな・・跳ねたんだよ・・シンクロは完璧だったが・・
ゼルメダの兵士が・・危険だ・・【KENOBI】が・・」
それだけ言うと気を失った。

「ゼルメダの兵士?何故【KENOBI】の所へ?
しかもイメージの中へシンクロ出来るのか?」
「あっ【KENOBI】が・・」
誰かが叫ぶ。
【KENOBI】の身体中の血管が盛り上がって
体が一回り大きくなったように見えた。

》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》ギン!《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《
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音が鳴り響いた瞬間だった。
【KENOBI】が見た事も無いような化け物に変身した!

「メ・メタモルフォーゼ!」
本当にあったのか・・噂だと思っていた・・
「実験は中止しろ!オール・オフだ!」

「お前は許さん!」
硬い甲冑のようなものが【KENOBI】のまわりを覆っている。
両手を大きく広げて息を吸い込み止めて叫ぶ
「消えろおおおおお!」
身体の前の部分から凄まじい光の帯が発射された
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
!!!!!!ジュン!!!!!!叫び声と共にゼルメダ兵士は光の渦に巻かれ蒸発した。

ドドォォォォンンンンン!!!!!ブレーンルームに大きな穴が開いた
シュウウウウウウウウウウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「母さん・・」
一言そうつぶやいたように聞こえた…・・。
【KENOBI】はいつもの姿に戻り・…落ちた…・。

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