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神威のお部屋。コミュの【終わりなき魂の闘い】・第二話。

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第1話・あらすじ。


『草薙蓮華』は高校2年生。
幼馴染みの『如月綺音』と繰り広げる青春の日々は……ある日、崩れ去ってしまった。

謎の男に『矢』を刺された事で『スタンド能力』に目覚める事となった蓮華。
そして、強制的に参加させられることとなる理不尽な『ゲーム』。

ワケが解らずも、自分を狙ってきた『参加者』の一人『宇津木』をなんとか撃破した蓮華は、自分の望み……綺音との『約束』を守るという望みの為、戸惑いながらも闘いに身を投じるのだった……。


そして今、新たな闘いの火蓋が切って落とされる!!

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【 ――終わりなき魂の闘い―― 第2話】



「あ、九鬼くん。 おはよー!」如月 綺音は、前方を歩くクラスメイトの少年に声をかける。
九鬼と呼ばれた少年は、振り返って綺音に微笑みかけた。
「あぁ……おはよう、如月さん。 今日は蓮華と一緒じゃないんだね」

九鬼 飛鳥(クカミ・アスカ)は、草薙 蓮華が小学生の頃からの大親友である。
成績優秀でスポーツ万能。
容姿もバツグンで、常にクールな為に女子からの人気は凄まじい。
そして、蓮華と飛鳥。 二人は美少年コンビとして、追っかけがいるほどなのだ。

飛鳥の問いかけに、綺音は不満を露にして応える。
「そうなの! 蓮華ってば、なんか最近コソコソしてるの……私に内緒で何してるんだか!」ぷくぅーっ、と頬を膨らませる。
その様子を見て、飛鳥は思わずクスクスと笑ってしまう。
「ちょっと、九鬼くん! 何が可笑しいの!?」更に不満を募らせる綺音。
「ごめん……いや、相変わらず如月さんは蓮華と仲が良いんだな、と思ってね」涼しげな瞳が、綺音を見据える。
たちまち赤面する綺音。
そして、素早く否定。
「ち、違うってば! 蓮華はただの幼馴染みで……そ、そう! 腐れ縁よ、腐れ縁!!」
懸命に否定するのが、肯定を表していることは一目瞭然。
それが、飛鳥にはとても嬉しかった。
「うん……如月さん、蓮華をよろしく頼むよ」まるで娘を嫁にやる父親のような口調で、飛鳥は言った。
「え? あ、はぁ……?」
思いがけない言葉に、ワケも解らずキョトンとする綺音。

綺音はこの時、飛鳥が一瞬だけ暗く哀しい光を湛えた瞳で遠くを見つめていたことに、気付くことはなかった。



街の喧騒から少し離れた廃ビル。 蓮華はそこに居た。
「チッ……またかよッ!」
蓮華の足下に、無惨に転がる死体。
その死体は、数時間前に自分を襲撃してきた『参加者』のなれの果て。

しかし、手を下したのは蓮華ではない。
確かに、反撃はしたが、致命傷を与えたような手応えはなかった筈だった。
それに……死因は蓮華のスタンド《ハイパーソニックソウル》の『衝撃波』などではなく……『氷』。
『氷の槍』が、死体の胸を深く刺し貫いているのだ。

およそ、普通の人間には不可能な所業。
別の『参加者』の手によるものだというのは明白だ。
おまけに、以前にも同様の手口で闘っていた相手を殺されたことがあった。
「なんだってんだ……誰がこんな事を!」怒りを露にし壁を殴りつける蓮華。
自分の預かり知らぬ所で起きた事とは言え、やはり人の死を見るのは嫌だ。

以前、自分を襲ってきた『宇津木』の――名前は後で知った――死が新聞に掲載された時には、暫くロクに眠る事が出来なかった。
だから、もし他の『参加者』が襲ってきたとしてもなるべく闘わずに済ませたい。 殺し合わずに済めば良い。
蓮華は、そう思うようになっていた。

それなのに……。

「許せねぇ……絶対に、こんなの許せねぇ!!」
歯を食いしばり、こみ上げてくる怒りを抑える。
「絶対に、止めてみせる。 認められるかよ、こんなの!」
怒りとやるせなさで靄のかかった心を抱いたまま、蓮華は重い足取りで学校へと向かった。
「おはよう、蓮華。 如月さん、怒ってたぞ?」
遅刻してきた蓮華に苦笑しつつ、話しかける飛鳥。
「あっ! やべぇ、忘れてた……」
こりゃ、今日丸一日は膨れっ面だな……と、蓮華は肩を落とす。
「何も言わずに出て来たからなぁ……謝るしかないか。 で、アイツ何処に行った?」教室中を見回すが、綺音の姿は見えない。
「そう言えば、職員室に行ったみたいだけど?」
「そっか……ちょっと行って謝ってくるわ」
そう言って、席を立つ。
飛鳥は、それを見送りつつ声をかける。
「解った……ちゃんと謝るんだぞ」
手をヒラヒラ振って、蓮華は教室を後にした。


『あ……』
バッタリ、廊下で出くわす二人。
その姿を確認するや否や、綺音はプクッと頬を膨らませる。
慌てて弁解する蓮華。
「わ、悪かったよ、勝手に先に出ちまってさ! どうしても行かなきゃならない用事があったんだよ」
我ながら苦しいな、と思いながら平謝りする。
腕を組んで仁王立ちの綺音は、15回目の謝罪の言葉の後に動いた。
「……そこまで謝るなら、許してあげないことはないけど」その言葉にホッ、と胸を撫で下ろす蓮華。
やっと許してくれるか……そう思った時。
「た・だ・し!!」
ビシッ!と指を突きつける綺音。
「な、なんだよ!?」
思わず狼狽える蓮華。
「ちょ、ちょっとだけ眼、瞑ってよ……」
何故かモジモジしているその仕草に、愛らしさを感じてしまう。
「解った。 閉じればいいんだな?」
指示に従って、瞳を閉じる。

緊張が走る。 そして――


バシィッ!!

「ッ……痛ェーッ!」
思いっきりビンタを食らい、吹き飛ぶ蓮華。
「これで許してあげるんだから……感謝しなさいよ、ね?」
ニッコリ微笑みながら、綺音は蓮華の頬にキスをした。
「何故……『山崎』を殺した?」
《エグザイル》が、穏やかながらも威圧感を含んだ調子で問う。
《エグザイル》――現在は薄汚れた服を着たみすぼらしい男性の姿をしているが――は、闇の向こうに居る人物に再び問う。
「何故、草薙 蓮華を助ける? 彼は、君にとっても敵なのだぞ?」
闇の向こうから、声が返ってくる。
「別に、助けたわけじゃない。 アイツは……」
一瞬、躊躇するかのような気配を《エグザイル》は感じた。
「アイツは、この手で葬ると決めているんだ。 いずれ必ず……この手で」
そう言い残し、フッ……と声の主の気配は消えた。
気配が消えた事を確認して、《エグザイル》は溜め息をつく。
「やれやれ……今回の『ゲーム』は厄介な『参加者』が多いな。 まったく、一筋縄ではいかない」
ぐしゃり。
男の姿が、突然崩れて灰になる。
「だが、それでこそ楽しみ甲斐があると言うものだ。 『ゲーム』は楽しむものだから、な……」
《エグザイル》の声だけが、闇の中で響き……そして、消えた。



「あっ、草薙くぅーん?」
昼休み。
綺音と一緒に、綺音の手作り弁当を食べる為に屋上へ向かう途中、教師の『美島』に呼び止められた蓮華。
ちなみに、美島先生は今年28歳で独身。
顔もスタイルもモデル並みで、おまけにバストは95cmと言う、男子から大人気の数学教師である。
チャームポイントはメガネに隠れた色っぽいタレ目と、ぷくっと膨らんだ柔らかそうな唇だ。

それはさておき。
美島に呼び止められた蓮華は 「ん、なんスか先生? もしかしてデートのお誘いだったりして」と冗談めかして笑う。
そしてその背後で負のオーラを放つ綺音。 貫くような殺気を感じ、蓮華の頬を冷や汗が伝い落ちる。
「残念、デートの誘いじゃないの。 放課後、『白河先生』が職員室に来てくれって言ってたわよ?」
独特のぽややん、とした声で喋る美島先生。
「は? 白河先生?」ポカン、と口を開く蓮華。
白河は、一年の担任だ。 自分とは殆んど面識もない筈だが……と、首を傾げる。
「……何かやらかしたんじゃあないでしょーね?」ジト目で睨み付けてくる綺音。
「なっ、んなわけねーだろ! 呼び出される心当たりないんだけどな……あ、美島先生、わざわざどうも!」
「あら、いいのよ〜。 草薙くんのた・め・な・ら!」
うふっ☆とウインクする美島。
さすがに冗談と解ってはいるのだが、あまりのセクシーさについドギマギしてしまう蓮華……しかし。
「……」
背後で燃え盛る怒りの炎が揺らめくのを感じ、足早に屋上へと向かったのであった。



「失礼しまーす……あ、白河先生。 こんにちは」放課後、言伝通りに職員室へと足を運んだ蓮華。
早速、自分を呼んだ白河を見つけ、声をかける。
「あぁ、草薙くん。 待っていたよ」そう言うと、白河はキョロキョロと周囲を見回して警戒するそぶりをみせた。
誰が見ても、明らかに様子がおかしい。
「先生……話し難い事なら、屋上でも行きません? 放課後なら滅多に人も来ませんし」もしかして……。 思い当たる節のある蓮華は、場所の移動を提案。
「……あぁ、そうしよう。 済まないね、こっちから来てもらったのに」苦笑しつつ、白河は席を立った。
「……遅いなぁ、蓮華。 何してるんだろ?」
今日は部活が休みの為、教室で蓮華が戻るのを待っている綺音。
読みかけの小説を読んでいると、不意に教室の扉がガラガラッと開かれた。 そして教室に入ってくる見慣れた顔に、綺音は声をかける。
「あれ……九鬼くん、まだ残ってたんだ?」
「うん……如月さん、蓮華はまだ戻らないのかい?」やけに険しい表情を浮かべ、飛鳥が訊ねる。
「あ、うん。 まだだけど……九鬼くんも蓮華に用事?」
「……まぁ、そんなとこかな」そう言って、窓の外に目を向ける。
視線の先は、屋上。
その瞳には、綺音が未だかつて見たことがないほどに鋭く、激しい感情の渦巻きが湛えられていた。


「で、話って何なんです? 先生」屋上に来て開口一番、訊ねてみる。
「あぁ……そのことなんだけど……」白河は、掛けていたメガネを外した。
「実はね……私も『参加者』なんだ」
貼り付けたような薄っぺらい微笑を浮かべ、白河は……
「私は君と『協力』していきたいと思っているんだ……草薙くん」
そう言った。
「協力……ですか?」予想外の言葉に、驚きを隠せない蓮華。
「そう。 君となら、きっとこのくだらない『ゲーム』を終わらせられる……そんな気がするんだ。 ダメかな? 草薙くん……」不安げに呟く白河。
それを聞き、蓮華は一も二もなく返答する。
「いえ、協力します。 俺、やりますよ先生!」
「ほ、本当かいッ!? いやー、草薙くんが居てくれれば私も助かるよ! よろしく、草薙くん!」
そう言って、二人は固く握手を交わした。
「草薙くん、右から回り込んでくださいッ!」白河のよく通る声が地下街に響く。
蓮華は指示に従い、右方向へと移動した。

二人は『ゲーム』を終わらせる為――更に蓮華は『参加者』同士の殺し合いを止める為、協力することになった。
これまで幾度も『参加者』との闘いを経験してきた白河の指示は的確で、蓮華は安心して闘うことが出来た。

「《コールド・プレイ》ッ!!」
白河が、白色の人型の『スタンド』を発現する。
そしてその能力を発動すべく、スタンドに命令する白河。
「今だッ、『弾丸』を発射しろッ!!」
ドヒュ! ドヒュ!
スタンドの拳から、二発の『氷の弾丸』が目標に向かって飛んでいく!


【本体:白河 圭介/スタンド:コールド・プレイ/能力:氷の弾丸が命中した対象を凍らせる】


ビキイィィィィッ!!
目標の両足に命中した弾丸はすぐに凍結を始め……そして脚全体に拡がっていく!!
「今です、草薙くんッ!」予め決めておいた『合図』を出す白河。
敵――『久野』と言う中年のサラリーマン――は、先程の白河の指示を耳にして慌てて右側の通路に上半身を向けて防御の姿勢をとる。

しかし。

「おっと、背中がお留守だぜ!!」
蓮華のスタンドの拳が、久野の背中に突き刺さる!
「うぬおォォッ!?」久野は、突然の衝撃に吹き飛ばされる。
下半身が凍結、しかも防御していた方向と逆の方向から攻撃されては、さしもの近距離パワー型スタンドでも吹き飛ばされるだろう。

先程の指示はフェイク。
ワザと相手にも聴こえるように、偽の指示を出して隙を生み出す作戦だった。
「どうだッ! 俺の『衝撃』はッ!!」
蓮華は『衝撃波』を繰り出した勢いのまま一気に久野を目掛けて駆け出し、そしてそのまま突き倒した!

蓮華はマウントを取り、久野の顔に向けて《ハイパーソニックソウル》の腕を突き出す。 いつでも『衝撃波』を放てる態勢だ。
「さぁ、降参しなオッサン。 もう終わりだぜ!」キッ、と久野を睨みつけながらニヤリと笑みを浮かべる蓮華。
だが、意外にも久野は全く動じていない。 それどころか蓮華に余裕の言葉を放つ。
「いいのかね? 私に『跨ったまま』で……」打って変わって今度は久野が不敵な笑みをこぼす。

刹那、背筋が凍るような感覚が蓮華を襲う。
(なんだ、この嫌な感じ……ヤバい、何かわからないけどヤバい!!)
慌てて久野から離れようとする。 だが、何故か脚が動かない。
「!? な、なんで俺の脚が『凍っているんだ』!?」
蓮華は戦慄した。
先刻まで凍結していた筈の久野の脚が自由になり、代わりに蓮華の脚が凍りついているのだ。
「嘘だろ! なんでッ!?」
狼狽する蓮華の腹部に、久野のスタンドが拳をめり込ませる。
「うあぁァァッ!?」久野の攻撃をもろに受けて吹っ飛ぶ蓮華。

久野のスタンド《リプレイスメンツ》の能力……それは、『取り替える』能力。
つまり、自分の身に起きている事を他者に移し替えることも出来ると言うわけだ。
但し、移し替えるには数秒〜数十秒の『接触』が必要なのだが……


【本体:久野 等/スタンド:リプレイスメンツ/能力:スタンドが触れたものを『取り替える』。 自分に起きている状態の異常を、接触した対象に移し替える事も可能(数秒〜数十秒ほど時間がかかる)】
「君は、私に『30秒』は跨っていたねぇ……?」
ゆっくりと立ち上がる久野。
そして無慈悲にも横たわる蓮華を踏みつける。
「グッ……せ……んせいッ!?」
痛みを堪えながら、援護を期待して白河の方へと顔を向ける蓮華。

しかし。

コツ、コツ、コツ……。 地下街に響く足音。
「フフ……ここまで巧くいくとは思いませんでしたよ」
カツン。
黒い革靴が、踏みつけられて這い蹲ったままの視界に入る。
視線を上に移動する。するとそこには――

メガネを外し、貼り付けたような微笑みを浮かべる白河の姿があった。
「先生……アンタ、俺を騙したのかッ!?」怒りを露にして叫ぶ蓮華。
その叫びに、冷笑で応える白河。
「フッ……まさか、ここまで簡単にいくとは思いませんでしたよ。 しかし、キミはつくづくお人好しだね……草薙くんッ!」
《コールド・プレイ》が拳を降り下ろす。

バキィッ!!

両足が凍りついている蓮華は、避けることも出来ずに殴りつけられた。
「ガハッ……ゴフゥッ!」攻撃を腹部に受け、吐血する蓮華。
更に、追い討ちをかけるべく《コールド・プレイ》と久野の《リプレイスメンツ》がラッシュを決める!!
咄嗟に《ハイパーソニックソウル》によるガードを試みるが、まだ2体同時のラッシュを捌ききれる程の実力がないうえ、両足が動かない状況では防ぐ事など不可能に等しかった。


「う、ぐッ……」
ボロボロになりながら地面に這いつくばる蓮華と、それを踏みつけ高笑いをあげる白河。
「クックッ……若い、若いねぇ! 人を信じ騙される……滑稽だよ、キミは」
白河は、まるでゴミを視るかのような眼で蓮華を見下ろしていた。
「さぁ……トドメといきましょうか?」
久野へ向かって声をかける白河。 久野はそれに頷き、ニヤリと下卑た笑みを浮かべる。
そして、ゆっくりと2体のスタンドが拳を降り上げた……。
ズムッ。

鈍い音と共に、《コールド・プレイ》の拳が無惨にも胸部を貫いた。

ポタ……ポタポタッ
床に、大量の血液が零れ落ちる。

ブシュゥッ!!

拳を引き抜くと同時に、飛び散る鮮血。
「な……バ、カな……!?」
ガクンッ、と膝から崩れ落ちたのは――『久野』。
驚愕の表情を浮かべながら、数回ビクンビクンと痙攣したかと思うと……久野は絶命した。


【久野 等/リプレイスメンツ】――死亡


「な……アンタら、仲間じゃなかったのかよ!?」目の前で起きた凶行にショックを隠せない蓮華。
そんな蓮華を、蔑むような視線が貫く。
「なか……ま? フン、冗談じゃあないねぇ! 僕に『仲間』なんて必要ないのさ……全ては、僕の『ゲーム』の『駒』なんだよッ!!」
その瞳に宿る狂気の色に蓮華は怒りを露にする。
「アンタ……狂ってるぜ! 簡単に人の命を奪う……他人をなんとも思ってないようなヤツを、俺は絶対に許さない!!」
怒りに震え、床を叩く。
しかし――

「フン……その脚で、僕をどうこう出来るとでも? ナメられたものだ……ねッ!!」
嘲笑と共に、《コールド・プレイ》がまるでサッカーボールを蹴るかのように蓮華の胸を蹴りつける。

ベキバキィッ!!

「うぐぅァァッ!!」
蹴りを入れられたダメージで肋骨が折れ、激しい痛みが蓮華を襲う。
両脚は、凍りついたまま。
『衝撃波』を放とうにも、スタンドを動かす前に先手を打たれ潰されてしまう。

……白河の強さは本物だった。
相手の行動を完全に読み、先の先をとる事が出来るうえに闘いの才能は蓮華を上回る。
しかも、他の『参加者』との闘いを何度も経験している為、経験の浅い蓮華では元々不利なのだ。
圧倒的な強さを誇る白河の猛攻の前に、蓮華の心は折れる寸前にまで追い込まれていた。
白河 圭介という男は、生まれながらにあらゆる物に恵まれていた。
政治家の末の息子として生を受けた白河は幼い頃より徹底した英才教育を受け、そして望むままのものを与えられてきた。
この世界に於いて、自分は支配者の側に立っている。 幼少時からそう思ってきたし、それが当然だと思っていた。

しかし、全てに恵まれた男は政治家の道へと進まずに教師への道を選んだ……いや、選ばざるをえなかった。
それは、白河という男が生まれて始めて味わった挫折。
生まれた時から誰よりも優れている筈の自分が、何故……挫折によるショックを受けた白河は、以前から歪んでいた精神を更に歪ませていく。
学校で飼育されているウサギや鶏を虐殺したり、野良犬を拾ってきては、餌を与えずに何日もつかなどと正気の沙汰とは思えぬ行為を繰り返すようになっていたのだ。
そしてその行為によって子供達が哀しんだり涙を流すのを見る事が、白河の楽しみの一つになっていた。

そんな男が望んでいたもの。

それは……

『選ばれし者だけの世界』。

挫折の末に行き着いた日々の生活に飽き飽きしつつ、その能力を持て余していた白河は、ある日『声』を聴いた。
そして……そんな彼の前に、一人の男が現れた。
男は黄金の矢を取り出し、白河に訊ねた――『お前の望みを言え』、と。
その男の声は紛れもなく、あの日耳にした『声』。
白河は、矢も盾もなく望みを言った。
そしてスタンド能力を身に着けた白河は、強大な力を手にした事で更に狂気を助長させていく。
『この優れた力こそ、誰よりも、何よりも優れた僕に相応しい力』……それは、自分が選ばれた証。
そう信じる白河は、他の『参加者』を操り、騙し、殺し合わせている。
何故なら、『選ばれし者』は自分一人だけなのだから。
邪魔者は、全て殺す。

今、自分の目の前で無様に転がっている少年もそうだ。
『殺し合いを止める』だと?
くだらない。 実にくだらない!!
お前達は、僕の『望み』を叶える為の糧でしかない……殺し合ってもらわねばならないんだ。

だから、君にはここで死んでもらうよ……『草薙 蓮華』くん。


********************


……ダメだ、身体が動かない……。
白河が近付いて来ているのを、ただ黙って視ていることしか出来ないなんて……クソッ!!
今度こそ、俺は死ぬのか……綺音……ごめんな……

霞む視界。
冷たい地下街の床に倒れ伏した俺に蔑むような視線を投げかける白河は、自身のスタンドに拳を振り下ろさせ始めた。
その動きはとてもスローで、きっと事故の瞬間とかに動きがゆっくり見えると言うのはこういう感じなのだろうな、とどこか他人事のように思えた。
しかし、白色のどこか道化じみた人型 ―― 白河のスタンド《コールド・プレイ》の拳は確実に俺に死の鉄槌を下そうとしているのだ。

そして、その拳が今まさに俺の心臓を貫かんと振り下ろされる。
このまま拳が腹を貫通して、苦痛と絶望の中で悶えながら死んでいくのか……そんなことを考えながら、俺は《コールド・プレイ》の拳を見つめていた。
だけど、いつまで経ってもその拳が俺の想像通りの結末を齎す事は無かった。

――なんだよ、ここに来て焦らすのか? 趣味悪いぜ、まったく……

何故だか急に『死』というものに対する恐怖や絶望なんて感情が麻痺してしまった俺は、先刻まで感じていた綺音との約束を果たせぬ事への自責の念もすっかり忘れてしまったらしく、まるで殺されるのを待ち侘びるかのような悪態をつきつつ瞳を閉じた。


ポタッ。

何かが、顔に落ちてくる。
生温い、なにか液体だ。

ポタポタ。

鼻腔を擽る、錆びた鉄の臭い。
これは――

重たい瞼を懸命に開き、白河に視線を向ける。

白河は、立っていた。
俺の目の前に立ちつくしていた。

ただ、そのシルエットはまるで誰かがくだらない悪戯で造った、悪趣味なオブジェのようだった。

白河の胸から、『氷の槍』が突き出している。
そして、その『氷の槍』を伝い滴る鮮血。


【白河圭介/コールド・プレイ】――死亡


俺の背筋に、衝撃が走った。
この『氷の槍』は、先日の……!!


カツーン……カツーン……

通路の向こうから、足音が近づいてくる。
俺は、起き上がって足音がやって来る方を見る。
白河の絶命に伴い、両脚はようやく自由になっていた。

通路の向こうに、人影が見える。
しかし、顔には影が落ちていてはっきりと確認する事が出来ない。
「誰だ……何故、何故殺したッ!!」
自分が殺されそうになってた事なんてすっかり忘れるくらいに、俺は人影に対し怒りを爆発させる。


はぁ……。


溜め息が聴こえた。 どうやら人影が漏らしたらしい。
そして、その人影は俺に向かって言った。
俺がよく知ってる……いつものアイツの声で。
「仕方ないだろう。 こうしなければ、お前は死んでたんだぞ? ……蓮華」
俺は、言葉を失った。 ショックだった。
信じられなかった。 信じたくなかった。
どうして、お前が……


――小さい頃から親友だったお前。

――いつも、俺の隣で一緒に笑っていたお前。

――お前の事は、全部解ってると思ってたのに


どうして……どうしてなんだ――


「『飛鳥』ァァァッ!!」


飛鳥は、いつもと変わらぬ笑顔を俺に見せた。
「まさか、お前まで『参加者』になるとは思わなかったよ」
いつもと変わらない口調。 それが、更に怒りを冗長させる。
「なんでだよ……何でお前がこんなくだらない『ゲーム』なんかにッ!!」怒りにまかせて怒鳴り付けるが、飛鳥は涼しい顔で受け流す。
「決まってるだろ? 僕に『望み』があるからさ……まぁ、僕の『望み』はお前には解らないよ」
その瞳に、底知れぬ哀しみを湛えて俺を見つめる飛鳥。

何が、お前を駆り立てた?
お前の『望み』って、一体なんなんだ……?
解らない。 解らないけど……

「俺は……お前とは闘いたくない……」
俯いて呟く。
飛鳥は、全く口調を変えずにあっさりと言い放つ。
「そうか? 僕はお前を殺したいよ、蓮華」


┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛・・・・・・・


飛鳥の背後に、鮮やかなブルーの人型スタンドが姿を見せる。
その瞬間、周囲に強烈な冷気が漂い始めた。
「《ディープ・フリーズ》……全てが凍つく絶対零度の世界。 それを支配するスタンド……」


【本体:九鬼 飛鳥/スタンド:ディープ・フリーズ/能力:『総て』を凍りつかせる】


近くにいるだけで、全身に霜が張り動きが鈍る。
ただ存在するだけで、総てのものを凍てつかせていく……今の俺に、それに抗う術がある筈がなかった。
そして、俺の意識は深く沈んでいって……
「もぅ……大勢相手に喧嘩売るなんて、無茶すぎるわよ! 本ッ当に、しょうがないんだから!」
林檎を剥きながら、綺音がプンスカ怒る。
意識を失った後、どうやら俺は病院に担ぎ込まれたらしい。
しかも、三日ほど意識がなかったみたいだ。

ちなみに俺の怪我の理由は、不良どもに喧嘩を売ってボコボコにされたから……という事になっていた。
その現場には、死体も、飛鳥の姿もなかったと言う。


……病室の窓から外を眺める。
夕陽が沈んでいく――空が雫した、一粒の涙のように―― 。


そして、その日から飛鳥は学校にも、俺の前にも姿を現さなくなった。


――終わりなき魂の闘い 第2話――



終




To be continued. →

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