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神威のお部屋。コミュの【終わりなき魂の闘い】・第一話。

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神威の所属するコミュニティ『オリジナルスタンド闘技場』において、練習で書いていたSSを加筆修正しつつ日記に載せいていた作品です。

荒木飛呂彦 作『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する『スタンド』と言う概念を用いた作品になっています。
『スタンド』とは精神のエネルギー。一種の超能力にヴィジョンを持たせたのが『スタンド』です。

普通の人間には見えず、スタンドは基本的に一人に一体、スタンドはスタンドでしか攻撃できないなど、さまざまな特徴があり、多種多様な ― それこそ考えうる限り奇想天外な能力を持ったものが数多く存在します。

今作【終わりなき魂の闘い】では、一人の少年が強制的に参加させられた、スタンド使い同士が殺し合いというゲームの中で成長していく姿を描いていけたら良いなぁ……と思っています。

それでは、それぞれの『望み』を持って闘いを繰り広げるスタンド使い達の物語を、どうぞご覧下さいませ……。

コメント(23)

【 ―― 終わりなき魂の闘い ―― 第1話】



―― 闘え。

穏やかな、それでいて重厚な響きを持った男の声が聴こえてくる。

―― 闘え。

そうだ……闘わなくてはならない。

―― 闘え!

アイツを……『綺音』を護る為に……!!





「……ねぇ、ねぇってば! もぅ、聞いてるの?」
青空の下、少女の声が学校の屋上に響き渡る。
ぱっちりとしたブラウンの瞳、スッと通った鼻筋、そして白い肌。
涼やかな風になびく栗色の髪は肩までの長さで、彩りを添えるピンクのツインリボンが頭の両サイドでヒラヒラと揺れている。

いつ見ても綺麗だな、と、仰向けになって寝転がっている少年は思った。

「んぁ……何が?」欠伸を噛み殺しながら、少年は聞き返す。
「もぅ……質問を質問で返さないでよね。 だーかーらッ! 明日は朝練があって起こしてあげられないから、ちゃんと目覚ましかけときなさいよ!って話!!」
一気に捲し立てながら喋った少女は、ハァ……と諦め顔で溜め息をついた。
「……ま、目覚ましかけたところで起きないだろうケドね」
「失礼なヤツだな。ちゃんと起きれるっつーの」口を尖らせて少年はうそぶく。


少年と少女 ――『草薙 蓮華(クサナギ・レンゲ)』と『如月 綺音(キサラギ・アヤネ)』 ―― は、家が隣同士の幼馴染みである。
両親同士が親友で、幼い頃から家族ぐるみの付き合いを続けてきた。
蓮華の両親は音楽家(父が指揮者で母はバイオリン奏者)で主に海外で活躍中の為、自宅に居ることが昔から殆どなかった。
一方、綺音の両親はと言うと、父親が豪華客船の船長で、母親は海外でも人気の女優の為、これまた家に居ることが殆どない。

そんなこんなで、幼い頃から二人は互いに支えあって生きてきた。
先の綺音の発言は、それが理由だ。
蓮華は、朝に強烈に弱い。
彼をすんなり起こせるのは、母親と綺音しかいないのだ。
目覚まし時計など論外。 時間の無駄、お金の無駄だった。

「よく言う! 今まで17年間、自分で起きれたのは何回よ?」
フフン、といった感じで綺音が蓮華を見下ろす。
「う……お、オレだって赤ん坊の頃は……」
「ダメー、無効よ。 赤ちゃんの頃なんて、誰だってそうに決まってるじゃない! バカねー」
ツン、と蓮華の鼻先を指で突っつく綺音。
「う……五月蝿いな。 あーそうだよ! どうせ両手で足りるくらいしかないですよー!」
思ったよりも近くにある美しい顔に赤面しつつ、蓮華は開き直った。
「ほらやっぱり……あ、明日は一応お弁当だけは用意しておくから。 忘れちゃダメだからね?」
弟にでも言い聞かせるかの如く、綺音は言う。
「ハイハイハイ、解ったわーかーりーましたよ! ったく……昔っから口煩いのは変わらないよな、綺音は」
悪態をつきつつも、微笑みを浮かべる。
「人間、そんなに変わらないわよ。 蓮華にはもうちょっとオトナになって欲しいけど、ね」
綺音も微笑みながら、しなやかで細い太股に乗っている蓮華の頭を撫でる。


端から見れば、誰もが羨む美男美女の仲睦まじいカップルな二人。

しかし、そんな二人の日常は、突如終わりをむかえる。


……謎の男の手によって、『矢』で射抜かれたその日から。
人類の歴史。
それは『闘争』の記録。

人類は互いに憎み、蔑み、そして殺しあい、文明を発展させてきた。

闘争は、人間の本能。
誰もが、誰かを傷つけて生きずにはいられない。
誰かを傷つけ、そして傷つけられる。
永遠に続く輪廻。

『私』は、人類の進化の過程をつぶさに見てきた。
彼等は、この地球と言う星に生きる、全ての生きとし生けるものに対する『悪害』以外の何者でもない。

だから、『私』という存在は産まれた。
母なる地球を護る為に。
人類に、裁きの鉄槌を降り下ろすために。

『私』は『追放者』。
自らを肉体から切り放し、永遠にこの世界を彷徨い続ける流浪の存在。
この世界に、真なる自由をもたらす存在。


【本体:?/スタンド:エグザイル】


****************************


全身が冷たくなっていく……そんな感覚が俺を襲う。

胸に突き刺さった『矢』が、黄金色の輝きを放つ。
『矢』を放った男が、虚無に満ちた瞳で俺を見下ろしているのが、霞んでいく視界に辛うじて入る。
口はだらしなく開き、頬は痩せこけ、全身が土気色のその男はまるで自らの意思など無いかのようにそこに佇んでいた。

……ヤバい。 意識が遠くなってきた。
俺、このまま死ぬのか……?
まだ、綺音に言ってないこともあるってのに……こんな形で死ぬのか?



――何を望む?

頭の中で、声が聞こえる。

――このまま死を選ぶか?

淀んだ瞳――そう、これは死人の瞳だ――の男の声なのだろうか?
穏やかであるにも拘らず、圧倒的なプレッシャーを感じさせる声。

――お前の望みを、言え。

俺の……望み?

――望みを叶えてやろう

俺……俺は……

――お前の望みを、言え。

俺は、まだ死ねない。 アイツと……綺音との『約束』があるから!

――では、お前の望みは……?


……死にたくない!
俺はまだ、生きなければいけないんだッ!


――いいだろう。 お前に生きる『力』を与えよう……但し

声は、何かを言った。
でも、その声が何て言ったのか、この時は解らなかった。

まだ、この時は。
「もーっ、いつまで寝てるつもりよ! 遅刻しちゃうでしょ!」
「っさいなー、昨日はスゲー疲れてたんだから仕方ないだろ?」
二人は、懸命に自転車をこぐ。

眩しい日差しが、アスファルトに照りつけて温度が上がり、路面が揺らめいている。
「どーせ夜中までテレビ観てたんでしょ? 言い訳しないの」呆れた口調で綺音は言う。
「……ったく、そうやって決めつけるなよ」
唇を尖らせて呟く蓮華。

いつもと同じ通学風景。
風を切って、自転車が坂道を下る。
学校はもうすぐそこだ。
しかし、蓮華の心は昨夜起きた……と思われる出来事の後から曇り続けていた。


昨夜、買い置きしておいた筈の野菜ジュースが切れていた為、蓮華はコンビニへと買い物に出かけた。
蓮華の家からコンビニまで、およそ500メートル。 街灯が等間隔で設置してあるうえに交番がすぐ近くにある為、この付近に不審者が出没する事は滅多にない……と言うより皆無に等しい。
それ故、普段から特に警戒する事もなく通っているこの路で……蓮華は、生気のない瞳をした、浮浪者のような風体の男によって心臓に『矢』を突き刺された……筈だった。
強烈な痛み、そして迫り来る死の気配。
薄れゆく意識の中、頭の中に響いた謎の声。 そして、蓮華は意識を失った。

そして目覚めた時には男の姿はなく……胸に深々と突き刺さっていたはずの、黄金色の『矢』も消え去っており、傷跡も無かった。
その後、何事もなかったかのようにコンビニで野菜ジュースを購入して帰宅した蓮華はベッドへと身を投げ出し、まるで精根尽き果てたかのように深い眠りについたのだった。


(昨日の事、あれは全部夢だったのか? でも、あの奇妙だけどリアルな感覚……信じられないけど、夢だとは思えない)
綺音が話しかけても、うわの空な様子で聞き流す蓮華。 それだけ昨夜の出来事が胸に引っかかっているのだ。
(あの声……最後になんて言ったんだ? ……いくら考えても思い出せない)
頭を振って、未だ頭の奥で響き続けている謎の声を追い払おうとする。
だが、何時まで経っても声は消えなかった。


****************************


「……コイツが新しい『参加者』か?」
紫煙を燻らせて男が呟く。
「そうだ……名前は『草薙 蓮華』、高校2年生。 望みは……」
長髪の女性が、落ち着きのある男の声で喋る。

男は煙草を置いて、『女』に言葉を投げ掛ける。
「アンタの趣味にとやかく言うつもりはないんだが……俺の所に来る時は、女を使うのはやめてくれないか? 気分的に『よくない』」
『女』は肩を竦めて、腰かけていたソファーから立ち上がる。
「それは済まなかった。 なにぶん、『義体』が近くにコレしかなかったものでね……さて、それではそろそろ失礼しよう」

煙草を消して、男も立ち上がる。
「そうか。 ……で、コイツの能力は?」
「まだ判らない……だが、先日の『参加者』よりは楽しめる筈だ。 期待しているぞ……『宇津木 真吾』」
そう言うと、『女』はまるで操り人形の糸が切れたようにガクン、と崩れ落ち……そして灰になった。

その様子を見て『宇津木』は呟く。
「フン、相変わらず気味の悪いヤツだ。 だが、まぁ……『望み』を叶えてくれると言うならば、『ゲーム』はしっかりと進めるさ……《エグザイル》」
宇津木は窓から飛び降り、そのまま地面に叩きつけられ……ずに、まるでスライムのようにグジュリ、とゲル状に変化して排水溝へと潜り込んだ。


【本体:宇津木 真吾/スタンド:ケミカル・ビーツ】
「ごめん、今日は練習遅くなるから……コンビニでお弁当でも買って食べてくれる?」申し訳なさそうに綺音が言う。
「いや、たまには自分で作るさ。 いっつもお前に作ってもらうのも悪いし、コンビニ弁当ばかりじゃ栄養片寄るしな。」苦笑しつつ、蓮華は自転車に跨がった。
「それじゃ、練習頑張れよ!」
「うん! 蓮華も、帰り気を付けてね!」
互いに手を振り、相手を見送る。
蓮華は、ペダルをこぎ出して自宅への道を進んだ。

綺音の前では何とか明るく振舞ってはいるものの、綺音は勘が鋭い。
もしかすると、いつもと違う自分の様子に気づいているかもしれない……そう懸念しつつも、蓮華は昨夜の事を忘れる事など出来なかった。


****************************


ブジュ、ブジュル……

マンホールから染み出す、濁った緑色をしたゲル状の物質。
それは次第に人型へと形を変え……やがて宇津木の姿へと変わった。
「確か住所はこの辺りで間違いないはずだ……」周囲を見回す宇津木は、電柱に目をやる。
確かに、調べた通り『草薙 蓮華』の自宅はこの付近らしい。

「ワン! ワンワン!!」
目の前にある家の犬が塀にある穴から顔を突き出し、宇津木に向かって吠える。
チッと舌打ちして、宇津木は犬に近づく……。


「……? ……!?」
宇津木が背を向けて立ち去った後には、口を緑色の粘液で塞がれ、おまけに首が塀に融け込むように同化している犬が残されていた。
「フッ……この『力』があれば誰にも負けん……『草薙』も、俺が殺してやろう」
瞳に狂気の色を湛え、宇津木は歩き出す。
『ゲーム』に勝つ為に。

『望み』を、叶える為に……。


****************************


「……?」
奇妙な胸騒ぎを感じ、蓮華は自転車を停めた。
同時に、目の前にある排水溝から緑色の液体が滲み出しているのを見つける。
「なんだ? あれ……?」いぶかしむ蓮華。

液体は、徐々に塊になり……突然、鞭のようになったかと思うと蓮華に襲いかかってきた!
「ッ! なんだッ!?」間一髪、回避する。

『……今のを避けるか。 少しは楽しませてくれるか?』
液体が人型に変わり、くたびれたスーツを身に纏った中年の男へと姿を変える。
全身ずぶ濡れで、何やら粘液のようなものがポタポタと滴り地面に液だまりを作る。

「草薙 蓮華だな」男……宇津木が蓮華に問う。
「何で俺の事を……ってか、なんなんだアンタ!? ドロドロのが出てきたと思ったらオッサンになって……」
半ばパニック状態の蓮華は、状況を把握しようと必死だ。

シュンッ

つつぅ……と蓮華の頬から一筋の血が垂れる。
よく見ると宇津木の左人差し指が、まるで槍のようになって伸びていた。

「いきなりで悪いが……『ゲーム』の『参加者』になった以上、お前には死んでもらう」ことも無げに言い放つ宇津木。
「し……死んでもらう!? なに言ってんだアンタ!」
「そうか、理解してないのならば、話が早くて済む。 動くなよ、すぐ楽にしてやる」
狼狽える蓮華に、今度は両手の指全てを槍に変えて攻撃を仕掛ける宇津木。
「死んでたまるかよ! マジでワケわかんねー……!!」
辛うじて全ての槍を回避し、蓮華は逃走を試みる。

「逃がさん。『力』の使い方も知らない内に仕留めたいからな」
ポタポタと、宇津木の指先から緑色の液体が溢れ落ちた。
いきなり現れたオッサンがワケの解らない事を言いながら、奇妙な『力』を使って攻撃してくる。
『ゲーム』? 『参加者』? なんなんだよ!
『力』ってなんなんだ!? 何で俺を……!?


――ドクンッ。

身体の奥から、何か熱いものが込み上げてくる。
そして、あの声が頭の中に響いた。

――闘え。

なんなんだ、一体!? 何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ!?

――お前は、『生きること』を望んだ……

望んだっ、て……まさか、あの時の『矢』のせいで俺はこんな目に……!?

――お前は『生きる為』に闘わなければならない……闘わなければお前の望みは叶えられず、死ぬ。

そんな勝手な話があるかよ! こんなとこで死んでたまるか!

――ならば、闘え。

闘うったってどうすれば……

――お前には望みを叶える為の『力』を与えた……『スタンド』と言う『力』を。

『スタンド』?

――望みを叶える為、お前は闘うのだ……望みを言った今、既にお前は『参加者』なのだから。

……釈然としないけど、俺にもあのオッサンみたいな『力』があるんだな?

――そうだ。闘え。

あぁ、闘うさ……俺にはまだ、やるべき事があるから!!

――ならば……



「終わりだ、死ねッ!」
槍が俺に迫る。
このままなら、槍は急所を貫くだろう。
でも、そうはならない。

ガシィッ!

「チッ……『スタンド』を出したか」
「あぁ……まだ死ぬわけにはいかないからな」
俺の『スタンド』が、槍を掴んでいた。

さぁ、反撃の時間だ!!


【本体:草薙 蓮華/スタンド:まだ名前なし】
ようやく『スタンド』を発現したのはいいが、蓮華はどうすればいいのか解らなかった。
既に数人の『参加者』と闘った経験のある宇津木に、翻弄されっぱなしとなってしまう。

「そら、どうした? お前の能力を見せてみろ!」
バシャッ!
宇津木のスタンド《ケミカル・ビーツ》が造り出した粘液が、蓮華の腕に付着する。
「ゲッ!気持ち悪ッ!」狼狽える蓮華。
しかし、そんな暇もなく迫りくる怒濤の連撃。

少しずつ、蓮華は傷を負っていく。
(まずい……このままじゃ殺られちまう! なんとかしないと!)
そう思っても、巧くスタンドを操れない。

「オラァッ!!」
鋭い蹴りが、蓮華を捉える。
「ガハッ!」
反撃のチャンスもなく、蓮華は蹴り飛ばされて壁に叩きつけられてしまった。
しかも、腕に付着していた粘液のせいで、腕が壁に同化してしまっている。

「物質を液状に変化させて、融かす。それが俺の『ケミカル・ビーツ』の能力」
自身のスタンド能力を説明しながら、宇津木が近づいてくる。
「融かすだけじゃなく、くっつけたり自分がスライムみたいになったりも出来るんだが……全身がぐしょぐしょに濡れるのが難点だ」ククッ、と自嘲気味に笑う宇津木。
「まぁ、能力を理解しようがしまいが、お前は今すぐ死ぬ。 サヨナラだ、草薙」
宇津木は両腕を融合させ、一本の突撃槍に変える。


****************************


(クソッ……どうしてだ! どうして何も出来ない!?)
俺は、必死にスタンドに呼び掛ける。
しかし、オッサンのように能力を使ってはくれず、ただ殴りかかるだけ。

(綺音……)
綺音の顔が頭に浮かぶ。
怒ってる顔、泣いてる顔、困ってる顔。

そして……笑顔。

アイツの笑顔は、とびきり綺麗だ。
俺は、アイツと『約束』した。

『もう二度と、悲しませるようなことはしない』って。
『オレが、お前を幸せにしてやる』って。

だから、俺は死ぬわけにはいかない。
アイツの涙を見たくないから……綺音の『笑顔』をずっと見ていたいから!!

だから……だから俺の『スタンド』!
頼む! お前の『力』を見せてくれ!!


「ぬゥありゃぁぁァァァッ!!」
突撃槍が繰り出される。 弾いて止めるには間に合わないスピードだ。
だけど。
だけど、止めてみせる。弾いてみせる。
俺の……俺の『魂』の『力』で!!


ゴオォォォォォッ!!


凄まじい『衝撃』が、俺を中心に発生する。
「なっ、なんだコレはッ!? これがお前の『能力』……!?」『衝撃』で吹っ飛ばされたオッサンは、驚きの表情で俺を視る。
まだ、俺の腕は壁に融け込んだままだが……闘える。
「『ゲーム』だかなんだか知らないが……俺はまだ殺られるわけにはいかねぇ! だから……アンタを倒す!」
俺の決意は揺るぎはしない。
絶対に、生き抜いてやる。
そして、綺音を幸せにする。

それが、俺の『望み』。


――闘え。


あぁ、言われずとも闘ってやるさ。
さぁて……いくぜ、『相棒』!
「いくぜ! 《ハイパーソニックソウル》ッ!!」
俺のスタンド 《ハイパーソニックソウル》 は、拳を天に向かって突き上げた。


【本体:草薙 蓮華/スタンド:ハイパーソニックソウル/能力:衝撃波を発生させる】
「《ハイパーソニックソウル》……それがお前のスタンドか」
変形していた両腕を元に戻し、宇津木がまじまじと蓮華のスタンドを眺める。

逞しい肉体、それでいて何処か神秘的な印象を与える人型のスタンド。
顔の部分にはバイザーのようなものが付いており、その奥の表情までは窺えない。
しかし、バイザー越しに感じる視線には、迸るほどの闘志が籠められている事だけは確かだと、宇津木は感じていた。

「『衝撃波』を操る……単純だが、それ故に強力なパワーを持っているようだな。 やはり、ここで仕留めねばならん」
今度は両腕を鋭い円錐状に変化させ、身動きの取れない本体を狙いにかかる宇津木。
「もしここで取り逃がせば……お前は必ず強敵になる。悪い芽は早いうちに摘まねばならん。悪く思うな!」
駆け出す宇津木。しかし、《ハイパーソニックソウル》がその進路に立ち塞がる。

「邪魔だッ!!」
《ハイパーソニックソウル》に向かって、連続で両腕による突きを繰り出す。
しかし《ハイパーソニックソウル》はそれを難無く捌き、逆に衝撃波を伴う強烈な拳を宇津木の顔面にお見舞いした!
「なにィィィッ!?」
予想以上の破壊力に、驚きを隠せない宇津木。
辛うじて意識を繋ぎ止め、転倒を避けはしたが。
「オォォォォォォォォォォォォッ!!」

ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ト゛コ゛ ォ ッ ! !

雄叫びを上げて繰り出される《ハイパーソニックソウル》のラッシュが、態勢を崩した宇津木を襲う!
拳が命中すると同時に身体を突き抜ける衝撃波!!
「グッブォワァァァァァァァァァァッ!!」
その衝撃で、宇津木の身体は吹っ飛び……『何故か』開いていたマンホールの中へと落下していった。


****************************


「く……クソッ……まさかここまでやるとはッ!」
宇津木は自身をスライム状にして、下水道を逃走していた。
『念の為』に逃走経路として、マンホールを開けておいて正解だった。

「あのスタンド……俺とは相性がよくない……俺のニガテなタイプすぎる」
本来、《ケミカル・ビーツ》は奇襲に長けるスタンド。 正面からのぶつかり合いでは分が悪い。
「草薙……次こそお前を……ッ!?」
復讐を誓う宇津木。が、ふと下水道内の様子が変化していることに気付く。

(息が、白い……?)

再起不能(リタイア)寸前のダメージを負っている宇津木の呼吸は荒い。
だからこそ、余計にその吐息が『白く』なっているのが解る。
そしてそれを知覚すると同時に、周囲の気温が急激に下がっている事が解る。

下水道の壁が、凍り付いていたのだ。

(今の季節は夏だ……有り得ん)

奇妙な現象をいぶかしんでいる宇津木の背後から、一際強烈な冷気が突風のように吹き抜ける。

「なッ! まさか、これはッ!! 『お前』か――」
一瞬の絶叫。そして、冷たい突風が吹きぬけた後には……

粉々に砕け、肉塊となって散らばる宇津木だけが残されていた。

その肉塊には、びっしりと『霜』が張り付いていた。


【本体:宇津木 真吾/スタンド:ケミカル・ビーツ】 ―― 死亡


****************************


「ど、どうしたの!? そのキズ!!」
帰宅後、その足で草薙邸にやって来た綺音は、全身キズだらけの蓮華を見て悲鳴をあげた。
「いや、その……転んじまってさぁ……ハハハ」
どう考えても苦しい言い訳をする。
「ハハハ、じゃないでしょ! もう……それに、ご飯まだなんでしょ? ホント、私がいないとダメなんだから!」
苦笑しつつ、食事の支度を手際よく始める綺音。
ポリポリと頬を掻きながら、蓮華は綺音の後ろ姿に声をかける。

「なぁ……明日さ」
「うん、明日? なぁに?」
トントントン……軽快なリズムで包丁が動いている。
こういう時は機嫌が良い。
言うなら今だな、と蓮華は思った。

「明日……用事ないなら遊園地でも行かないか? 久しぶりに、さ」

トン。
包丁を動かす音が止まる。
そして、ゆっくりと振り向いて……

「うん、たまにはいいわね。 もちろん行くわよ!」
蓮華の大好きな、満面の笑顔を綺音は浮かべた。

(この笑顔を、護るんだ――絶対に、哀しませたりはしない。 その為にも……ワケの解らない『ゲーム』なんかで死ぬわけにはいかない)
拳を握り締め、蓮華は改めて、誓う。
(綺音……俺はお前を幸せにする。 必ず……)
料理を続ける幼馴染の後姿を見つめるその瞳には、決意の炎が揺らめいていた。



―― 終わりなき魂の闘い  第1話 ――



終




To be continued. →

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