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子供も大人も読みたい絵本&物語コミュのテイルズ・オブ・ワールド 〜第6章・壱拾弐〜

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『こんな言い争いをしている場合じゃなかった! アッツイの奴を捜さないと!』



ドランと言い合いをしていたカズヤは我に返り、当初の目的を思い出す。



(チッ…仕方ねぇ。
ここは一時、休戦にしておいてやるか。)

『確か、屋敷の中に逃げ込んで行ったよな…』



カズヤは、ドランのオーラの爆発により、全ての屋根・壁が吹き飛び、瓦礫の散乱した屋上のようになった、元・三階の部屋を見渡す。



『……これの中から、下への階段を探すのか? ドランの奴、まったく余計なことをしてくれたよな。』

(あ? なにブツブツと文句言ってやがんだ?)



『お前が余計な破壊なんてしなけりゃ、スムーズにアッツイを追い掛けられたんだよ!』

(んだとぅ!?)



性懲りもなく、二人が言い争いを始めようとしたその時、カズヤ達が侵入した庭の方から声が響いた。



『…! 今の!』

(捜す手間が省けたみてえだな。 アッツイの野郎だ!)



二人は瓦礫の上を、声のした庭の方へ走り、下を覗き込む。

すると、ラークヨ(カズヤ達の乗ってきたラークヨではない)に跨がり、庭の中央から三階のカズヤ達を睨みつけるアッツイの姿を発見した。



「貴様らよくも、このワシの屋敷をここまで破壊してくれたな!
望み通り、決着をつけてやる! 着いて来い!!
もし来なければ、町の住民を水人形達に襲わせてやるわい! アーチチチチ!」



そう言うとアッツイは、ラークヨに鞭を走らせ、オーシスの中央の方へと走っていった。



『まずいぞ、ドラン! 町へ急がないと!!』

(んな事ぁ、わかってんだよ! 行くぞ、カズヤ!)
『行くったって、こう瓦礫だらけじゃ、階段を探そうにも…
て、ドランなにしてんだ? まさか………』



ドランは床の縁に立ち下を見ると、身を屈める動作をしている。



(決まってんだろ。
飛び降りるんだよ!)



ドランの発言を聞いた瞬間、カズヤの顔が青ざめる。



『こ…ここ、三階だぞ!?』

(つべこべ言わずに飛べ! 急いでんだろが!!
最初、この世界に来た時を思い出せッッ!!)



痺れを切らせたドランは、カズヤを背中から下へ突き落とす。



『どわあああああ……ッッ!!??』



カズヤの足元から地面と、身体にかかる重力の感覚が消え、視界にはどんどんと庭の景色が近付いてくる。



『…最初に来た時!
身体を浮かす、ゆっくりと着地するイメージ!』



カズヤは目を閉じ、身体全体をオーラで包み込む。

すると、落下のスピードは緩和され、フワフワと、まるで風に乗る綿毛のような感覚が身体を覆った。



(最初の時と比べりゃ、幾分マシになったじゃねえか。)



不意に飛び込んできた声に、閉じていた目を開けると、カズヤの隣をドランも同じように【想】を使って、ゆっくりと落下していた。



『…ドラン!』



ドランの言葉に少し安堵した瞬間、カズヤのオーラのバランスは崩れ、再び猛スピードで落下を始めた。



『うわああああ〜〜…ッッ!?』

(馬鹿! 下手糞のくせに、油断してんじゃねぇ!!)










…ドサッ





確実に地面に叩きつけられた!

カズヤがそう思った瞬間、尻のあたりに地面とは違う感触が伝わってきた。

恐怖に瞑っていた目を、恐る恐る開け、状況を確認すると…



「ぶふふーーん!」



カズヤの顔を、湿った感触が這い、眉の長いグロテスクな顔立ちの生き物が視界に飛び込んできた。



『ヘタレ…!?
町の入口に繋いでおいた筈なのに!!』



ちなみに【ヘタレ】は、ドランがこのラークヨに付けた名前だ。

カズヤが地面に叩き付けられるかという刹那、わざとらしいくらいのナイスタイミングで滑り込み、背中に乗せたのだ。



『た、助かったよ! ヘタレ!!』

「ぶふぅ〜〜ん。」



ヘタレは生意気にも、ウィンクをし、ニヤリと笑う。



ドサッ



カズヤの頭の上にドランの肥えた身体がのしかかる。



(下手くそめ。 修業が足らんぞ、バカ弟子が!)

『うるさいな、わかってるよ。
でも、これで一気にアッツイを追うことが出来るぞ!
頼む、ヘタレ!』



ヘタレは「ぶふん!」と大きく鼻息を吐き出すと、町のオアシスの方へ向かって走り出した。



『…ていうかヘタレの奴、勢い良く走り出したはいいけど、アッツイが何処に行ったか、解ってるのか!?』



カズヤが着地した時、アッツイは既に夜の闇の中に消えたあと。

方向から町へ向かったのはわかるが、詳細な位置までは特定のしようがない。



(いや、コイツは解ってんだ。
ラークヨの眉毛ってのは、センサーであり、毛を擦りあわせて特殊な音波を出す、発信機でもある。
それは、個体個体で違う音波を出してるから、アッツイの乗ったラークヨの音波を追えばいいんだ!)

『…ヘタレ。
実は凄い動物だったんだな。』










やがて、ヘタレに乗ったカズヤ達はオアシスに到着する。



『アッツイ! どこにいる!
望み通り、決着をつけに来たぞッッ!!』



カズヤは大声をあげ、アッツイを呼び出す。

すると、どこからともなくアッツイの独特な笑い声が、辺りに響いた。



「アーチチチチチ!
やっと来たか、小僧共!!」



辺りを見回すと、モウモウと立ち上る熱湯オアシスの湯気の中、ユラリと浮かび上がるアッツイのシルエットが目に入った。

湯気を掻き分けるように登場したアッツイは、身体にオーラを纏い、戦闘体勢をとっている。



(アッツイ、覚悟しろよ!
テメェの悪事は今日、今ここでお終いにしてやるぜ!)

「アチチチ…!
若い者は、威勢がいいのう!
どれ、もういっちょお手並み拝見といこうか?」



アッツイはニタリと笑うと、懐から例の小石を取り出し、辺りにばら撒いて水人形を作り出していく。



『ドラン、ちょっと変だと思わないか?』

(あ?)



カズヤが、今にも飛び掛かりそうなドランを、制止するように声を掛ける。



『だって、屋敷の三階で戦った時は淡くって逃げ出してたのに。
今…いや、屋敷から出る時からアッツイの奴、やけに自信たっぷりというか。』

(んなの、開き直ってるだけだろ!
ビビッてんじゃねえぞ、カズヤ!)



ドランはカズヤの制止を聞かず、水人形達に向かって飛び掛かっていった。



「アチチチ…!」





水人形の弱点を知っているドランは、オーラも纏わずに胸の小石目掛けて、突起させた爪を振り下ろす。



バシャッ…!!



水人形は防御の体制をとるも、ドランのスピードに追いつけず、小石を破壊され飛沫をあげながら崩れ去る。



(熱っちちち……ッッ!?)



その瞬間、倒した筈のドランがその場を飛びのき、砂に身体を擦りつけるように転げ回り始めた。



『な、なんだ!!
どうした、ドラン!?』



突然の、予想もつかない出来事に、カズヤも慌てふためく。



『…まさか。』



ドランの倒した水人形の残骸の水から、白い湯気が上がっている。



『コイツら…、今度はオアシスの熱湯で作られてるのか!?』



オアシスから発する湯気に紛れて気が付かなかったが、よく観察してみれば、水人形たち自身の身体からも同じように湯気が立ち上っている。



「アーチチチチッ!
その通り。 今度の水人形は、前と力は変わらないが、触れれば大火傷の【熱湯人形】だ!
オーラで身体を包んだところで、防御できるのは衝撃のみ。 熱湯の熱までは防げんぞ!?
しかも見たところ、お前達の能力は【肉体強化】のみらしいからな!!」



アッツイに勝ち誇った、いやらしい笑みが浮かび上がる。



(クソがあぁ〜〜…ッ!
二度までも俺様に、火傷なんぞ負わせやがって!!)

『こうなったら【氷の刃】で、熱を中和させながら戦うしかないのか!?』



胸元に下げられた【氷の刃】を握るカズヤに、今後はドランの制止の声が入る。



(待てッ!
ソイツはまだお前には消耗が激しすぎる! ここぞという時の為に、温存しとけ!
逆にヤツは、僅かな【想】で何体もの熱湯人形を作れる。 どう考えたって、こっちが先にバテちまう。)

『そんなこと言ったって!
じゃあ、この状況をどうやって切り抜けるんだよ!?』

(うるせぇ! こっちだって今、それを考えてんだよ!!)



そんな戸惑う二人に追い撃ちをかけるように、アッツイの言葉が投げ掛けられる。



「どうした、抵抗せんのか?
まぁ、お前達の能力じゃ、抵抗したところで火傷してのたうち回るだけだろうがな! アチチチ!
そんなお前達に、更に【絶望】というプレゼントをくれてやる。」



『…なに!?』



アッツイの額にある紋章から、黒い光が放たれる。

すると、纏っていたオーラは更にその大きさを増し、屋敷で見た黒い靄も色濃くなっていった。



『ドラン…あれって!』

(あぁ、やっぱり俺様達から逃げた後、何かありやがったな。
あのまがまがしいプレッシャー。
【ヤツ】が絡んでるのは間違いねえ!!
…だが、疑問もある。)

『疑問…?』

(そうだ。
アンジュやヒガシ卿を思い出せ。
あの二人に共通していたのは、【漆黒のオーラ】と【ヤツの囁く声】。
だが、アッツイのオーラは黒い靄が、かかっているだけ。 他の二人には、あの額の紋章だって無かった。
この違いには、何かあるのか?
【力が増大する】ってのは、どちらも共通みてえだがな!)

『何にしたって、僕達のピンチに変わりはないってことだろ!?』

(そりゃあ、違えねえ!
カズヤ、気を引き締めていけよ!!)



アッツイの増幅されたオーラはやがて、触手のように大きさや形を変えながら、熱湯人形に接合していく。



『なにが…起こるんだ?』



接合された熱湯人形は、一体…また一体と宙に浮き、一箇所に集まり始めた。

集まった熱湯人形はその人形としての形を崩し、溶け合うように纏まり、膨らんでゆく。



(クソッタレめ…! まさか、あの野郎!!)



溶け合い、球状になった熱湯人形達は、更に形を変え、やがて人を模倣した形へと変化。

カズヤ達の目の前に、全長15メートル程の、巨大な熱湯人形が姿を現した。



「アーーーチチチチチチ……ッッ!!!!
これでお前達も終わりだ!
ゆけ! 【ジャイアント・熱湯人形】ッッ!!」



アッツイが指示を出すと、熱湯人形は右の拳を大きく振りかぶり、カズヤ達目掛けて振り下ろしてくる。



『くッ…!!』
(うおッ!?)



ドズンン…ッ



間一髪、攻撃を避けた二人は、オーラを身に纏う。



『ど、どうするドラン!?』

(でかくなったところで、アイツの弱点は変わらねえ筈! だが…)

『だが?』

(もう、火傷は御免だ! 俺様は、やりたくねぇ!!)

『はぁ…ッ!?
そんなこと、言ってる場合かよ!!』

(じゃあ、お前がやればいいだろ!!)



言い争う二人にも、熱湯人形は容赦なく襲い掛かってくる。



『と…とりあえず、またまた一時休戦だ!
まずは、コイツをなんとかしないと!!』

(仕方ねぇな! やるしかなさそうだッッ!!)










『テイルズ・オブ・ワールド』〜第6章・壱拾弐〜 完

コメント(6)

〜作者の独り言〜


69本目。

アッツイ・・・以外と面倒なキャラに成長してしまいました。

ちょっと、強くなりすぎたかな?

どうやって、カズヤとドランに戦ってもらおう??

> R嬢さん


今日の気温と一緒ですね。

あつ〜〜いです。
アッツイが強過ぎて
全然勝てる気がしないんですけどあせあせ(飛び散る汗)
> ガリットチュウさん


意外なところに…弱点があるかもしれませんよ?
更新予告を忘れてましたあせあせ(飛び散る汗)

次回、第6章・壱拾参は

明日、5/26(火)

アップ予定!!

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