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秘密のバイト大作戦。コミュの【ミステリアスハンドルネームズ 第七話(その3)】

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※第七話(その2)からの続きです
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=28152681&comm_id=2963003







酒井さんの匂いがする。
女の人を抱くと、こういう匂いがするのか。
僕は初めて知った。


手の中の酒井さんを抱きしめながら、僕はたまらなく酒井さんが愛しかった。
ただただ、酒井さんが愛しかった。
この愛しさを酒井さんは、もはや感じることが出来ないのだろうか。
この喜びを酒井さんは、感じることが出来ないのだろうか。


何も感じられないままただ生きていくのは、どういう気分なのだろう。
僕は想像するにつけ、恐ろしくなった。

何も感じないまま、ただあり続ける無限と、
あらゆることを感じながら、でもいつかは消えてしまう有限。


そんなことを考えながら、ふと酒井さんを見た。
相変わらずメガネをかけている。
それは行為の最中にも変わることはなかった。
しかも、かなり度のきついレンズだということが、その分厚さから見て取れる。


なぜ、酒井さんはメガネをかけているのだろう。
傷も一瞬で治る酒井さんの体だ。
視力を補正するなんて、造作もないことだろう。
僕は疑問をぶつけてみた。



「細かいところを見てるわね。
確かに私にメガネは必要ないわ。
別に趣味でかけている訳でもない。

これはね、誓いなのよ。」


「誓い、ですか・・?」


「そう、誓い。
いつか元の体に戻るという、死ぬための誓い。

この完璧な体の中に、あえて不完全な箇所を無理にでも作る。
実際にはこんなメガネ全く必要ないのだけれど、
これは私の誓いのよりどころなのよ。

死を取り戻すまで、私はこのメガネをはずさないわ。
そして私は死ねるようになるためには、何者をも厭わないわ。

会社でパルプンクルを抽出したドモホリアンが、どうなるか分かる?」



それこそが僕の知りたいところだ。
彼らは一体、どこへ行ってしまったのだろう。



「会社は、彼らの能力を欲しているの。
彼らの、確率を操作できる能力をね。

ありえないことでも現実に出来たら?
そしてそれを、いつでも恣意的にコントロールできたら?
・・・それは恐ろしい力を生むわ。

だから会社は、能力を発現させたドモホリアンを捉えて、様々な実験を繰り返すの。
その途中で死者が出ることも珍しくないわ。

カオリだってそうよ。
実験に曝された結果、彼女の脳は破壊されてしまった。
でも彼女の生み出すパルプンクルはあまりにも貴重だから、
ああして特別の部屋を割り当てられてる。

事象確定能力者もまた、常に危険に曝されているわ。
さっきあなたが危ないといったのも、そのせいよ。


私は、その闇をただ傍観してきたわ。」


「なぜ!?
なぜなんですか!?

そんな酷いことを、なぜ止めようとしなかったんですか!?
そもそもあなたも、実験体にされたんじゃないですか!

それなのに、なぜあなたは・・・・!!!」


言いながら僕は気が付いていた。
酒井さんは、何も感じないのだ。
善であろうが悪であろうが、酒井さんは何も感じないのだ。



「そう、私は何も感じないの。
私がここにいる理由はただ一つ。

不老不死のパルプンクルがあるように、
それと対になるパルプンクルが生まれるかもしれない。

私のこの体を元に戻してくれるパルプンクルが、いつの日か生まれるかもしれない。
それ以上に大事なことなんて、今の私にはないの。



近藤君、どうする?
組織を告発する?
そのために必要な資料は、全て私が持っているわ。

でもそうすると、あなたは殺されてしまうかもしれないし、
ドモホルンリンクルやパルプンクルを望む人は、不幸になるわ。

最瞬間製薬のほとんどの社員は何も知らない。
でもその彼らも、仕事を失うことになるでしょうね。
彼らが支えている家族も、不幸に陥るかもしれない。

その内情を知りながらパルプンクルを欲する人は、政治家や大企業にも大勢いるわ。
日本だけじゃなく、外国にもね。

おそらく世界は、未曾有の混沌が襲うはずよ。
何より、不老不死の薬が手に入るんですもの。
社会秩序も、あっというまに崩壊しかねないわ。

そんな権利が、あなたにあると思う?



それとも、見てみぬ振りをする?

そうしたら無用の混乱は防げるかもしれないけれど、
社内ではドモホリアンが殺されていくわ。
よくても実験体ね。

『ドモホリアン』なんて呼んでるから忘れてしまいがちだけれど、
彼らもまた一人の人なのよ?

その彼らの生を踏みにじってまで、パルプンクルを作る価値はあるのかしら?
誰かの幸せのために、他の誰かの幸せを奪っても良いのかしら?


あなたならどうする、近藤君?

何を選ぶ?
あなたは何を考える?


それとも、もっと他の選択肢を、あなたは提示してくれるのかしら?


それとも・・・。」



酒井さんは妖艶な表情で僕を見つめた。
その表情に感情がないなんて、到底信じることが出来ない。
酒井さんはさらに言葉を重ねた。



「私と二人きりで、逃げる・・?」




次々と投げつけられる酒井さんの言葉。
僕の頭は痺れてしまったかのように、まるで何も浮かんでこない。
僕はようよう言葉を搾り出した。




「何で、僕が・・?
なんで、こんなことに・・?

僕は、一体どうすれば・・?」


「近藤君、それはみんなが思っていることよ。
実験に晒されてるドモホリアンも、
パルプンクルを心の底から望む人も、
そう、例えば理由なく殺されてしまった人も。

それはみんなが思うことだわ。」


酒井さんの言葉はどこまでも透徹としている。



「あなたの人生は、誰のものでもないあなた自身のものだわ。
あなたの選択もまた、あなた自身のものだわ。
それに他の誰かが干渉することは出来ない。
あなたが選択することによって、結果が生まれる。

でも、忘れないで。
それを選んだのはあなた自身なの。
その答えはあなたそのものなの。

そしてあなたがどんな答えを出すにせよ、あなたは責任を取らなくてはならない。
生まれる結果に対して、そのリスクを負わなければならない。
どうしようもないことでも、あなたは選ばなければならない。
何かを選ぶと言うことは、自らリスクと責任を負うという、そういうことでもあるの。

選んだことによって生まれた、結果。
別の選択肢を殺した、結果。
あなたはその全てを負わなければならないわ。
選択するという行為は、そういう自覚を必要とするわ。


そしてあなたはまた一つ、汚れていくの。
その積み重ねで、あなたは少しずつ汚れていくの。
人は、何かを選ぶことで、ただ生きていくだけで汚れていく、
そういう哀しい生き物なのかもしれないわね・・。


今回のことで、あなたには決定的な汚れを負わせてしまうことになるわ。
それが申し訳ないけれど、でも私はそれを実感できないの。
それが私の汚れね・・。」




独白の後、酒井さんはうつむいた。
髪に隠れて、その表情を窺うことは出来ない。
ただ、白く美しい裸身が闇に浮かんでいる。


僕の頭は痺れたままだ。


振り返ってみて、僕は何かを選ぶと言うことに対して、何も考えたことはなかった。
ただ、惰性で生きてきただけだった。


何かを選択することは、汚れることなのか。
僕はこれから汚れて生きていくのだろうか。
人が生きることとは、そんなに哀しいことなのか?



僕に。
この僕に。










僕にこの手を汚せと言うのか。







・・・最終回に続く。
皆さんお疲れ様でした!

コメント(26)

づこぷこぺこのすけん作
第七話(その1〜その3)でした。

いやーすばらしい!
もう言うことないです!

酒井さんの正体もわかったし
そして“パルプンクル”という謎も解明していますね!
スッキリしました!
まさに最終話にふさわしい作品ですね!

最後に結末がどうなるのか!?
という読者に判断を委ねた終わり方も
思わず想像を掻き立てさせられてたまらないと思います。


そしてみなさん、
いままでミステリアスチームのお話を読んでいただいて
おつかれさまでした!

案内人は私、gabegabegabuが務めさせていただきました!
本当、ご愛読ありがとうございました!
 素晴らしい最終話です。

 このチームから、シュレーディンガーの猫だとかの話が出てくるなんて、卑怯です。

 ライバルチームをここにしてしまったせいで、今書いている途中の荒野の最終話には、出しちゃってますよ、うんこ。
 全然違うじゃないですか。

 だから、最終話と言いつつ、この後あと一話くらいあって、それをgabeさんが書いたりなんかしてくれるといいなあ。
やっきーさん、これが最終話な訳ないっしょ!

我がチームのgabegabegabeリーダー様がおおとりを飾ってくれます!

(・_・;) …

飾ってくれるはずです…

(-.-;)

飾ってくれるんじゃないかな…

(-o-;)

待つ身は辛いよぉ(泣)

o(_ _*)o
ミステリアス、ずるいなあ。
名前変なのに、一番美しくて哀しい文章を紡いでくるなんて。

今のところ唯一濡れ場を描いたのに、ずるいや!

さて、主人公が選ぶのは、どんな世界なんでしょうか。

ねぇ、gabegabegabuさん。
素晴らしい。
こう、なんていうか、半透明なとろりとした白色ドモホルン○ンクルって雰囲気が素敵です。
お疲れ様でした。
あれっ...
ドジョウは知ってるのかこの秘密??
二人とも事象確定能力者なんだよね。

二人の事象確定能力者がドモホリアンに働きかけると何が起きるのだろう?

しかもそれぞれ「猫は生きてる」「猫は死んでいる」ことを観察しようとしたら・・・


さてもさても、づこさんの手腕には感服。懐かしの脳啜りどこの話じゃないね。
腕上げたね〜板さんって感じです。お疲れ様。
>リーダー
あはは!!
いやもう、ホントにスイマセン。
改めて読み返してみると、やっぱりムチャ振りですねぇ。
とか言いながら、最終話期待してます。

情報によれば金曜日アップの予定だとか??
楽しみにしてます!

素晴らしい最終回に案内してくれるんですよね!
いやまさかプレッシャーかけてるなんて、そんなことはないですよ。
>やっきーさん
ありがとうございます!
いえいえ、最終話はこんなもんじゃないですよ。
なんせgabeのリーダーですからね。

はてさて、ライバルチームと呼んで頂くに値する文章だったでしょうか。

ちなみにシュレーディンガーの猫は、結構早い段階から出てたアイデアでした。
やっぱミステリアスチームとしては、こういう要素が必要だろうと。
ふっふっふ。

うんこが出てくるかどうかは、最終話のお楽しみということで。

>カヨの姉御
ホントに早く最終話読みたいですよね!
こんな話振った俺が言うのもなんですが。

いやしかし、どうなるんだろうなぁ。
俺はこんなバトンもらったら、しばらくは泣いてますがね。
(オイ)
>aniさん
光栄です!

そうです、今のところ唯一の濡れ場ですよ。
皆さん意外に書かれないもんですね。

こんなものが濡れ場と呼ぶに値するのかどうかは疑問ですが・・。

さて、近藤君がどういう選択をするのか、俺も非常に気になります。

ホント、どうなるんですかリーダー!?
>せっちんきょさん
>長さには驚きません
そうでしょうそうでしょう。
やっぱり日記以外もガンガン長くなるんですよね。
困りものです。

まとめるためには仕方がない、と言い訳をしてみます。

いやいや、外伝ではないですよ!
次回こそ最終話ですから。
なんせgabeさんですからねぇ。

しかし、メガネ女子好きと言う情報をどこから!?
さてはストーカーですか?
(コラ)

女子好きと言うことも否定しませんよ、えぇ、まったく。
むしろ大好きですよ。

でもだからこそ、こういうエロシーン(オイ)が書けるワケですよ。
エロも何かの役に立つもんです。

>くろさん
ありがとうございます!
しかし、くろさんのコメントには何か不思議な妙味がありますねぇ。
>EDOさん
はてさて、どうでしょうねぇ。
そのあたりも含めて、最終話でリーダーがどうにかしてくれるはずです。
きっと。
>OZ!さん
シュレーディンガーの猫については、詳しく突っ込まないで下さると助かります。
ホラ、その辺はオトナの事情ってヤツで・・・。

いやまさか、書いた本人も全然分かってないとか、そんなことはないですよ。
そんなまさか・・!

しかし、二重干渉という発想はなかったですねぇ。
面白いなぁ。

しかも、脳啜りを覚えていて下さるとは!!
いやぁ、光栄と言うか恥ずかしいと言うか・・。
嬉しいです。

ありがとうございます!
>しの@執筆中さん
あんまり褒めるのは勘弁してください・・。
て、照れます・・。

もう気が付けばいつの間にか7話ですねぇ。
各チーム、動きが随分激しくなってきてますね。
さて、どんな最終回になるんだろう。

しのさんも大変だとは思いますが、がんばってくださいね。
コメント遅くなってすみません!

づこさん、すげえっす!超、かっこいいっす!
ミステリアスチームなのに(笑)、なんでこんな切なくて美しい展開なの?
こんなに完成度たかいなら、もう7話で終わっていいじゃん(笑)。

…と思っていたら。…さっき8話、読みました。
思いっきり文学的な高みから、思いっきり○んこまみれに落とす。
さすがっす。さすがミステリアスっす。うす。お疲れ様でしたぴかぴか(新しい)
すごいですっっ

あぁぁぁ。
本当キレイです。

最終話、お疲れ様でしたっっ
(あ、違いましたね。)
今から8話に行ってきます(o´∀`o)
>タラオさん
いえいえ!
単なる助平野郎ですから。

文章を叙情的だと言って頂いたのは初めてです。
うれしいなぁ。

ありがとうございました!
>こあきさん
ふっふっふ。
そう言って頂けると、嬉しいですねぇ。
こあきさんの第5話が公開された時には、既に書きあがっていたのですが、
読んだ後で書いていたらもうちょっと変わっていたかもしれません。

多分、シンプルチームを攻撃してたでしょう(オイ)。

最終回でリーダーが見事な作品を仕上げてくれましたからね。
俺も嬉しいです。
>巨ムッ兵〜さん
ありがとうございます!

そんなにみなさんが仰っていただくほど綺麗なのか??という疑問がありますが、
やっぱりうれしいですねぇ。

最終回付近は長い作品が多くて大変だとは思いますが、がんばって読んでくださいね!
>☆亞子ちゃ☆ さん
お褒めに預かり、光栄です!
俺も、まさかドモホルンバイトが被ることはないだろうと考えていたので、
内心ちゃちょちんきょの方向が流れてくれてよかったなぁと思ったのは秘密です。

最後にバッチリ絡んできましたけどね。

まぁ俺は、作戦会議で出た結果をまとめ上げただけなので。
酒井さんを抱いたのは、明らかに俺の暴走ですが。

スケベでゴメンなさい。

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